MINI COOPER CONVERTIBLE (2009/8)

      






屋根が空く以外は全くのミニそのもの。
本来が遊び心のある車だからオープンにしても違和感がない。

マツダのユーノスロードスターを発端にして、2ドアオープンスポーツ、いわゆるロードスターとかスパイダーとか呼ばれる分野の車は結構各社から発売されているが、4シーターのオープン、すなわちカブリオレとかコンバーチブルと呼ばれる車はかなりマイナーな存在で、特に日本においては走っているのを殆ど見ないし、さらにオープンで走行している姿には一度もお目にかかったことが無い。それはお前が田舎に住んでるからだろう!・・・と、言われそうだが、都会の真ん中ならオーポン走行のカブリオレっているのだろうか? そういえば以前、恵比寿駅の傍で屋根を空けたBMW (E46)M3 カブリオレ(日本には正規輸入されていない)を見たことがあった。(ついでに隣にはF355が路駐していたが。)

このように(都心の一部を除いて)日本ではマイナーな4座オープンであるミニクーパー コンバーチブルに試乗してみた。 価格は318万円にレザーシート31.6万円を足すと約350万円となる。試乗車にはその他のオプションも結構装着されていたが、これはサンプルの意味も あり、実際には特に必要なないだろう。

エクステリアはウエストラインから下は、ほぼミニクーパーそのものだから、これは誰が見てもミニと判る。幌を降ろしてオープンにすると、ウエストラインが真っ直ぐでフロントウィンドウもかなり直立している。そして畳んだ幌は最近のクルマには珍しくリア後端に出っ張るが、これが何となくクラシックな雰囲気で、元々オリジナルミニという数十年前のデザインを現在に再現したミニには、 このレトロな幌の畳み方が結構似合っている。


写真1
特徴的なチョコレートブラウンの幌を掛けたところだが、個人的には決してカッコ良いとは思えない。このクルマはオープンが本来の姿となるのは当然ではある。

 


写真2
ウエストラインから下は標準のクーパーと全く同一。

 


写真3
水平なウェストラインと直立したフロントウィンドウ(Aピラー)で開放感は抜群だ。

 


写真4
ハッチバックのミニに比べてサイドの窓面積が小さいから、室内は多少暗い。

 


写真5
 

 
写真6
 


写真7
このままで走ると、リアーパッセンジャーは風の直撃を食らう事になる。

 


写真8
幌の畳み方はレトロな雰囲気だが、ミニには合っている。

 

ドアを開けるとチョコレートブラウンにアイボリーのパイピングを施した独特のシートが目に入る。 屋根がキャンバスである事以外は、基本的にミニクーパーその物のインテリアだから、センターの柱時計のようなバカデカい速度計や、センタークラスターに並んだレトロなトグルスイッチ等、ミニではお馴染みのデザインが目を引く。しかし、これ程に好き 嫌いが分かれるクルマも珍しい。 シートに座ってみるとオプションのレザーシートはBMWサルーンに比べて表皮が薄くシボも目だたない(写真12)から、体に対する当たりは柔らかいしグリップも良い。左右のホールドも先ず先ずだから、このシートは充分に良い部類にはいる (写真10)。
ここで前方を見ると視界も充分だが、その理由は着座位置が高いことに気が付く。これはソフトトップのオープンカーに乗っているという意識が低い着座位置を勝手に連想していたからで、元々ミニは背の高い車だし着座姿勢も背筋 を伸ばした正座スタイルに近いから、これは当然でもある。そして、フロントウィンドウの上端とドライバーの距離も、最近のクルマとしては多めだ。これはソフトトップを降ろしてオープンにした時に頭上に広い空間が広がることを意味する (写真3)。

ところで、リヤシートはといえば、ハッキリ言って狭い。特に前後方向に狭くて足の置き場に苦労するし、バックレストは直立しているし、これは子供用と割り切るしかない(写真9)。


写真9
リアスペースは狭く、あくまで+2だから、大人4人乗車は厳しい 。

 

写真10
試乗車はオプションのレザーシートが装着されていた。
チョコレートブラウンに白いパイピングという独特のスタイルは、いかにもミニらしい。

写真11
ダッシュボードはハッチバックの標準的なミニクーパーと共通している。


写真12
レザーはBNWサルーンに比べてシボは少なく薄くなめした革が使われている。

 


写真13
この独特の内装をオシャレと見るか、”きもい”と見るかで評価は全く異なる。

 

どう考えても割り高のコンバーチブルを選ぶのは、オープン走行の開放感を求めるからで、折角のコンバチだから今回は走り出す前にフルオープンにしてみる。トップの開閉は全て電動でフロントウィンドウ上端のトグルスイッチ(写真15)を押し続ければよい。このソフトトップは最初に先端が40cm程後退して、丁度サンルーフを空けたような状態となる。 すなわち、フルオープンにしなくてもサンルーフ的にも使えるのが何ともユニークだ。そして、そのままスイッチを押し続けると左右にあるガイドレールごと少し上方に上がってから後方へ畳まれていく。
最近はソフトトップでもルーフが完全に収納されるタイプが多いが、前述のようにミニの場合は車両後端に畳まれた幌が丸見えになるというレトロな方式となっている(写真7、8)。 今回は幌の開閉は公道外で行ったために、信号待ちでの開閉のようにイライラすることは無かったが、ミニの開閉時間は幌であることと畳んだ幌にカバーなどがかからない事もあり、 開閉時間は新Z4などのハードトップタイプよりは短かかった。

オープン状態で走りだすと、320i等の4気筒Dセグメント車よりは明らかに動力性能が良いが、同じミニでもターボエンジン搭載のクーパーS程のカッ飛び感はない。 車両重量はオリジナルのクーパーの1,130kgに対してコンバーチブルは1,220kgと90kgも重いことも不利な原因だ。新型ミニの試乗は既にクーパーS(MT)とクラブマン クーパーS(AT)に乗っていて、今回は初めてNA版の試乗となったが、 クーパーSのターボパワーを味わうとNAのクーパーはちょっと物足りない。ただし、人によってはこれで充分と感じるかもしれない。クーパーのATはトルコン式の6速だが、動作のレスポンスは決して良くはなかった。本家BMWの320iの6ATはもっと軽快にシフトダウンをするし、クラブマンは同じくATだったがもう少しレスポンスが良かった覚えがあるのだが、今回のクーパーはどうもモア〜っとした感じがした。クーパーとクーパーSの違いなのか、コンバーチブルは味付けが違うのか?ハテ。

さて、一番気になる風の巻き込みはといえば、サイドウィンドウを下げた状態では当然巻き込みはあるが、それでも外観から想像するような、常に体全体を風が直撃するなどということはない。元々、そんなに速く走るというよりも、風を受けてノンビリと走るような車だから、特に問題はない。とはいっても、せいぜい60km/h程度がいいところで、片側2車線以上の国道バイパスのように速い流れに 乗ると結構風が舞ってくるから、人によっては辛いかもしれない。そして、サイドウィンドウを上げると、上部(額の辺り)で多少風が巻くが、これまた意外にも見かけの割には少ないほうだ。とはいっても、高速道路での100km/h巡航は厳しいかもしれない。
当日はうす曇りとはいえ真夏だから、直射日光は弱いものの気温は32℃ほどあった。よく出来たオープンカーならば屋根が空いていてもエアコンはしっかりと効くので夏でも結構涼しいはずだ。そこでクーパーの状況を調べてみようとエアコンの操作しようとしたが、どこで温度を調節するのか?とりあえずセンタークラスタにあるミニマークをモチーフにしたようなスイッチがそれらしい。しかも右端には上下のシーソースイッチがあり、上が赤で下が青だから、これが温度調節に違いない。そしてミニマークの中心に円形パネル内にある赤い液晶表示が温度を表しているようだ(写真19)。そんな、こんなで何とかダッシュボード上の噴出し口から涼しい風がでるようになったが、 一千万円超の4座オープンのように目に見えない屋根があるがごとくの空調の効きは望めないが、とりあえず涼しい風が顔にあたるようにすれば 結構快適となる。でも、そんなことよりも、このクルマの場合はサイドウィンドウを下げて風の直撃を楽しみながら60km/h以下で走るのが本来のような気がするし、それが嫌ならば他に選ぶべきクルマはいくらでもある。

今度は幌を上げてクローズド状態にして走ってみると、ハッチバックの標準車に比べて何やら車内が薄暗い気がする。まあ、直前まで屋根のないクルマだったのだから、相対的に暗く感じるのかとも思ったが、ミニの広いサイドウィンドウに対して、コンバーチブルはリア サイドのガラス面積が非常に小さく、またリアウィンドウも小ぶりだから車内が暗いのも当然だ。それと同時に、後方視界もイマイチ良くない。やっぱり、このクルマは極力幌を降ろしてオープンで走るのが正解のようだ し、それでこそ価値がでる。


写真14
正面に回転計があるのはミニに共通だが、左のメーターはオープンの開度計??。

 


写真15
幌の開け閉めはスイッチ一つの電動だが、そのスイッチは知らないと探すのに苦労する。

 


写真16
ATのセレクターは表示が左ハンドル用は許すにしても、レバーのブーツに隠れて殆ど見えないのはドンナ物か。

 


写真17
センターの馬鹿でかい速度計も慣れないと走行中に目線が行かない。

 


写真18
ペダル類は楕円をモチーフにしているようだ。こんなところにまでオシャレ感覚満点だが、殆どの人はペダルなんて見ないだるう。

 


写真19
ミニ独特のエアコンとオーディオの操作スイッチ。その下のトグルスイッチは窓やドアロックなどで、慣れないと何が何だか判らない。

 

動力性能に対しては、決して遅くはないが驚く程には速くないというのは既に述べが、ハンドリングについては驚く程機敏だった。 とに角微妙な操舵でもクルマはクイックに反応して、これぞミニ!という程に面白い。そしてコーナーリング性能はといえば、FFらしいアンダー は多少感じるが充分にハンドリングカーとして使える。しかし良く出来たFFの代名詞的なVW ゴルフGTI(新型は未設定なので先代GTI)と比べると、やはりゴルフが勝っているように思う。ただし、ミニクーパーのガキっぽいステアリング特性も、これはこれで面白いことは間違いない。

キャリパーはハッチバックのクーパーと同一の、というよりもクーパーSも含めてミニに共通と思える一般的な鋳物の片押しタイプで、例によって軽い踏力でもガツッと効く欧州車の標準的なものだ。と、いっても最近は国産車もハイミューパッドを装着して欧州車バリの効きを実現している例も多くなったから、ミニのブレーキ が特に勝っていることも無い。

クーパーコンバーチブルの乗り味は基本的にはミニクーパーそのものと言ってもいいだろう。元々遊びの要素が多いミニクーパー が、さらに屋根が空いてオープンとなるのだから、その遊び度は満点だが、これが理解できないユーザーには薦めない。いや、薦めたって買わないだろうが。


写真20
直4、1.6ℓエンジンは120ps/6,000rpmの最高出力と16.3kg・m/4,250rpmの最大トルクを発生する。
このエンジンはプジョー207と共通で使われている。


写真21
クーパーは175/65R15タイヤが標準となる。

 


写真22
キャリパーはごく普通の鋳物製の片押しタイプ。

 

300万円台中盤の4座オープン(カブリオレもしくはコンバーチブル)といえば輸入車の独壇場で、しかも種類は意外に少ない。 更に下の表をみれば判るように夫々趣味性の高い車種ばかりとなる。そんな中で海外生産とはいえ国産車ベースのマイクラC(マーチの英国生産車)はユニークかもしれない。
 
    ミニクーパー プジョー フォルクスワーゲン 日産
      コンバーチブル 207CC レザー ニュービートル
カブリオレ 2.0
マイクラC
プラスC 1.6

車両型式

MR16 A7C5FW 1YAZJ FHZK12

寸法重量乗車定員

全長(m)

3.700 4.030 4.130 3.820

全幅(m)

1,685 1,750 1,735 1.670

全高(m)

1,415 1.395 1,500 1.445

ホイールベース(m)

2.495 2.540 2.515 2.430

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  5.1 5.3 5.1 4.7

車両重量(kg)

  1,220 1,430 1,390 1,200

乗車定員(

  4
 

ルーフ

  キャンバス メタル キャンバス メタル

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  - - AZJ HR16DE

エンジン種類

  I4 DOHC I4 SOHC I4 DOHC

総排気量(cm3)

1,598 1,984 1,597
 

最高出力(ps/rpm)

120/6,000 305/6,500 310/6,400

最大トルク(kg・m/rpm)

16.3/4,250 36.7/4,900 36.7/5,500

トランスミッション

  6AT 4AT 6AT 4AT
 

 燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

  14.6 10.8 10.6 13.2

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

マルチリンク トーションビーム

タイヤ寸法

前/後 175/65R15 195/55R16 205/55R16 175/65R15

ブレーキ方式

前/後 Vディスク/V゙ィスク Vディスク/ドラム

価格

車両価格

318.0万円 330.0万円 327.0万円 249.9万円

備考

      英国生産マーチ

マイクラを除けばどれも価格は300万円代の前半で、しかもミニとプジョーは全く同じエンジンを搭載している。しかしミニの幌に対してプジョーはハードトップだし、ヤンチャなミニとオシャレなプジョーだからユーザー層も大いに異なるだろう。そして、ニュービートルもマトモに損得を考えたらとても選択肢には入りそうも無いクルマだ。まあ、そんなクルマ達だからこそ4座オープンがラインナップされているのだろう。
そしてマイクラについては、Bセグメントの4座オープンとして比べれば確かに買い得とも思えるが、マーチに260万円もだすと思うと、ちょっと考えてしまう。

今の時代に4座のオープンというのは、実に贅沢な車種だから、高いのは当たり前と割り切りも必要かもしれない。何しろ、クルマとしての性能や内容が充分に満足できて、オープン走行でもクローズドボディと何ら変わらない快適性なんて求めたらば、それこそBMW650iカブリオレ クラスとなり、この時お値段は1,260万円也で、軽く一千万円を超えてしまう。
一ランク落として3シリーズでも335iカブリオレは802万円もするし、1シリーズでも120iカブリオレにレザーシートを付ければ軽く500万円コースとなる。 3シリーズに800万円とか1シリーズに500万円なんて普通の感覚ではないが、どうしても欲しいとなれば話は別だろう。いや、もしかすると、5シリーズを転がすには運転が下手過ぎるが、安いクルマに乗るのはプライドが許さない。「3シリーズで一番お高いの持ってきてくださる」なんていう成金マダムの言葉が目に浮かぶ。
おやっ?そこの大将!なんか文句がありそうですなぁ。なるほど、3シリーズで一番高いのはM3だって?
だからぁ、運転がド下手だって言ったでしょうに。あっ、でも最近はDCTもあるから、成金マダムでも何とかなったりしてね。

話が逸れてしまったが、ミニクーパー コンバーチブルの350万円(レザーシートを付けて)という価格は、4座オープンとしては低価格の部類かもしれないが、クラウン2.5ロイヤルサルーンが368万円であることを考えれば何とも割高と思うのは、B_Otaku が庶民で、しかもセンスが無いからだろうか?

センスといえば、北欧のオーディオメーカーであるB&O製品を非常に高く評価している人もいるようだが、はっきり言ってあれの何処が良いのか判らない。オーディオといえば、アンプはマッキンかマークレビンソン。そしてスピーカーはJBLかアルテックと相場は決まっていると思っているのだが。