プレミアムブランド入門
200万円の認定中古車でドイツ御三家オーナーに

100年に一度といわれる大恐慌に突入した今年2009年。そんな時にクルマどころじゃあないと言われそうだが、こんな時こそ憧れのドイツプレミアムブランド御三家を手に入れる計画を立ててみるなんていうのは如何なモンだろうか。 そんなことを言ったって、ボーナスはカットだし残業はゼロに規制されているのに無理だろう・・・・と言いたい気持ちも判るが、こういう時こそ少ない予算で手に入れることを考えるべきで、この厳しい時代だからこそ発想を変えてみたらどうだろうか 。

という訳で、今回のテーマはベンツ・ビーエム・アウディのエントリーモデルをアプルーブドカー(認定中古車)で手に入れるという、このサイト初の企画を組んでみた。候補の車種はメルセデスAクラス、BMW1シリーズ、アウディA3で、これらのクルマはアプルーブドカーならば3年落ちの1〜2万キロ走行程度で200万前後の値段がついている。この予算だと最近値上がり傾向の国産車なら2ℓ級セダンだって怪しいくらいだし、軽だって上級車なら170万円クラスで、これにナビやら何やらつければ200万円に届きそう だから、200万円でドイツ御三家というのは、かなり現実的な予算だと思う。

今回は試乗記初登場のメルセデスAクラスを中心にBMW1シリーズとアウディA3という、何れもエントリークラスを比較することにしよう。ここでグレードをどう選ぶかだが、今回は認定中古車の相場で200万円前後ということで各社の新車価格や仕様がまちまちだが、これも中古車の現実という事で納得してもらうしかない。今回の各グレードは下の 一覧表を参照願うとして、まずは各車の比較をしてみよう。
 

 表1

    Mercedes Benz BMW Audi
      A200 ELEGANCE 116i A3 Sportback 2.0FSI

全長(m)

3.850 4.240 4.285

全幅(m)

1.765 1.750 1.765

全高(m)

1.595 1.430 1.430

ホイールベース(m)

2.570 2.575 2.575

車両重量(kg)

  1,320 1,430 1,430
 

最小回転半径(m)

  5.3 5.1 5.1
 

乗車定員(

  5 5 5

エンジン種類

  I4 SOHC I4 DOHC I4 DOHC

総排気量(cm3)

  2,034 1,596 1,984

最高出力(ps/rpm)

135/5,500 110/6,000 150/6,000

最大トルク(kg・m/rpm)

18.9/4,000 15.3/4,300 20.4/3,500

トランスミッション

  CVT 6AT 6AT

駆動方式

  FWD RWD FWD

サスペンション方式

ストラット ストラット ストラット

*1 5リンク ウィッシュボーン

タイヤ寸法

195/55R16 195/55R16 205/55R6

195/55R16 195/55R16 205/55R6

新車当時の車両価格(円)

3,098,000 2,930,000 3,390,000

アプルーブドカー価格

190〜220万円 200〜230万円 180〜220万円
 

年式
走行距離

2006
1〜2万km
2006
0.3〜2.5万km
2006
0.8〜3.2万km
  *1 スフェリカルパラボリック
スプリングアクスル
 

メルセデスA200は昨年の秋で販売中止となったA200を取り上げてみる。現在新車で買えるのはA170のみだが、その理由を考えれば単純にA200が売れなかったからだろう。これについては結論の部分で詳しく分析する事にしよう。BMWは3車の中では一番パワーの少ない1.6ℓだが、このクラス唯一のFRということもあり中古車として人気があり、 従って相場も高いことから中古車価格は割高となっている。そしてA3については、新車価格の割には値落ちが大きいようだ。この辺がアウディのブランド力の無さを表している。

今回は中古車としての比較で難しい面もあるが、紹介する写真は極力同一グレードにすべく努力はしてみた。それでも手持ち写真の関係で一部排気量違いやグレード違いも含まれていることを容赦願いたい。それと共に、実際に中古車を 探すとなると、オプションやグレードもマチマチだから、写真とは異なる部分があるのは当然で、ここではあくまで一例として紹介していると思っていただきたい。

先ずはエクステリアを比較してみよう。1シリーズとA3は5ドアのハッチバックだが、A3の場合はワゴンに近いスタイルとなっているから、1シリーズに比べるとクラスが一つ上のようにすら見える。実際にはA3が45mm長いだけなのだが、見た目はそれ以上となる。Aクラスはハッチバックというよりもハイトワゴンとかミニミニバンというべき スタイルで背が高くて全長も短いから、他の2車とはジャンルが異なるといってもいいだろう。そして、他の2車がそれぞれ上級グレードである3シリーズやA4の延長上のイメージがあるのに対して、AクラスはCクラス以上のメルセデスとは根本的に違う種類のクルマである。


写真1:フロントビュー


写真2 :リアビュー

フロントシートは3車ともヨーロッパスタイルの粗い織り目のファブリックとなっている。 手持ち写真の関係でBMW1シリーズは116iではあるがMスポーツのものを使用しているので、標準モデルだともう少しチャチで平らなシートになる。Aクラスは他の2車よりもシートの着座位置が高いのが分かる。
リアのスペースはFRの1シリーズが一番狭いのは仕方が無いだろう。Aクラスは高さで稼げるから当然3車中で最も広いが、A3と比べて劇的に広いわけでもない。スペース効率という面ではVWゴルフをベースとするA3の手馴れた設計が光っているようだ。とは言っても、このクラスでは4人乗車の長距離移動は決して満足出来ない レベルであるのも仕方のないことだ。


写真3 :フロントシート付近
※BMW1erは116i Mスポーツのもの。


写真4 :リアシートとスペース

各車のシート表皮を写真5に示すが、Aクラスの表面に染みのようなものが写っているのは、雨などの水分を吸った部分が白くなってしまったもの。 試乗したクルマは現在クレームで交換用シートを取り寄せ中とのことだが、このクルマ独特の不具合なのか、この時製造されたAクラス全てにこの傾向があるのかは判らない 。何れにしてもAクラスの中古車を購入する場合は要注意点だ。

ラッゲージスペースは何れもハッチバックという形式では共通しているし、広さも似たようなものだが、強いて言えばA3が多少広いだろうか。 特にAクラスは幅方向が狭い。


写真5 :シート表皮


写真6 :リアラッゲージルーム

ダッシュボードについては各メーカーのボトムレンジのクルマだから、 Dセグメント以上と比べると高級感に欠けるのは仕方ないが、以前のよう極端にチャチという事はない。そして全体の雰囲気はここでも1シリーズとA3は上級クラスとの共通性を見出せるが、Aクラスは雰囲気、デザインともCクラス以上とは異なる。 メーターについても同様で、取り分け1シリーズは3シリーズとほぼ共通のものを使用している。A3もアウディ独特の赤いディスプレイなど上級セグメントと共通しているが、AクラスとCクラスのメーターは全く共通点が無い。


写真7 :フロント&ダッシュボードの眺め
*写真をクリックすると上位セグメントとの比較を表示


写真8 :メーター

今度はセンタークラスターのエアコン&オーディオ操作パネルについて比較する。 車内の雰囲気やメーターのデザインなどでCクラス以上とは全く違う印象を受けていたAクラスだが、このパネルについては細かいボタンがゴチャゴチャとしていたり、左右に丸いスイッチを対称に配置したエアコンの調整部分など、一応はメルセデスの文法に従っている。さらには写真のAクラスが上級の エレガンス仕様のために、左右にウッドパネルと使用するなど他の2車に比べて豪華に見える点にも注意が必要だ。1シリーズとA3のパネル表面は何れもプラスチック製で、質感も決して良くは無いから、この部分は割り 切りが必要かもしれない。


写真9 :エアコン&オーディオ操作パネル

いよいよ、走り出すことにしよう。今回の試乗記はAクラスを主に、BMW1シリーズとアウディA3と比較することにする。ここで1シリーズは116iを取り上げるが、排気量でA200に合わせて120iとすると、新車価格は勿論のこと、認定中古車の価格が今回の200万円程度という範囲を超えてしまうことになる。そしてA3だが、200万円という中古価格から2.0FSIを比較対照としたが、実はこのモデルには試乗していない。 そこで、MC後のモデルである1.8TFSIの経験から比較するので、2.0よりは評価が良くなるであろうことを考慮願いたい。


写真10 :ATセレクター付近

Aクラスのエンジンは直列4気筒 2ℓで、今時珍しいSOHCだが、だから性能が悪いという事はない。アイドリングは決して静かではないが、まあこんな物だろう。ブレーキを踏みながらATのセレクターをDに入れセンターコンソール後方のパーキングブレーキレバーを解除して、ブレーキペダルからも足を離すが車は殆ど前進しない。実はAクラスのミッションはCVTだったのだ。そこで少しアクセルと踏んでやると特に違和感も無く走り出す。敷地内から公道に 出て加速をしようと右足に力を込めると、車のサイズや重量からすると大きめの2ℓエンジンは結構トルク感があり、意外に加速が良い。Aクラスの売れ筋はA170であり、このA200はハイパワーの上級モデル的な位置づけであるから当然ではあるが、Aクラスのように街中のセカンドカー用途の車としては十分過ぎる動力性能でもある。Aクラスを運転していると他車に比べて高めのドライビングポジションからの前方視界は結構良いのに気が付くが、運転姿勢はミニバン的でもあるから、天下のメルセデスを運転しているという充実感は無 く、ステアリングホイール中心にある栄光のスリーポインテッドスターは全く似合わない。
CVTのフィーリングは決して良くないし、加速中にエンジン回転が一定でまだるっこしく如何にもCVTでございます、という感覚は少し前の日本車的で流石のメルセスもCVTに関しては未だ未だというところか。A200のATセレクターのパネル付近にはC/Sというボタン式のスイッチらしきものがあるが、これを押すとCとSが交互に変わり、SにするとCVTが高回転側を使うようになる。このSは結構効果があって、 相対的に大き目の2ℓエンジンとの組み合わせからは結構十分な加速が得られる。

これに対して116iの動力性能は言うまでもなく、必要最小限と思ったほうが良い。何しろA200よりも100kg近く重い車体を1.6ℓ、110psのエンジンで引っ張るのだから遅くて当然でもある。ただし、救いは3シリーズ以上と同様 な出来の良いZF製の6ATを搭載していることで、きめ細かいシフトスケジュールで美味しい回転域が使えるから平坦な道を普通に走るには問題ないが、日光のいろは坂クラスの丘登りはキツイかもしれない。

アウディA4については、比較表では2.0FSIを取り上げているが、実際に乗った経験があるのはMC後の1.8TFSIしかないために、 以下は参考として1.8Tについて述べてみる。
1.8Tは適度のトルク感とターボエンジンとしては低回転からのレスポンスも良く、実に自然なフィーリングだ。1500rpm程度で巡航していてスロットルをシフトダウンが起こらない程度に踏み込むと、ストレス無くトルクを発生する 。そしてフルスロットルを踏んでみると、驚く程速いとはいえないものの、ストレスの無い加速が得られる。ミッションはゴルフGTIでもお馴染みの、DSG(アウティではSトロニックという )6速を備えている。この1.8Tは160psの出力と25.5kgmのトルクを発生するから、2.0FSIに比べて+10ps/+5.1kgmの 差で、とりわけターボ過給によるトルクの差が大きい。だから本当はもう少し奮発して1.8TFSIを買うという手もあるのだが。ただし、2.0FSIでも116iよりはどう見ても速いとは思うが・・・・・。

欧州車、とりわけドイツの御三家を選ぼうというユーザーならば、単なる動力性能よりも国産車には無い乗り味を求めることが多いだろう。そういう意味ではAクラスの操舵性や旋回性はメルセデスのブランドから想像するようなものとは全く異なる。ステア リング中心付近の鈍さは最近BMW的になったCクラスはもとより、ポリシーとして中心付近での不感帯を設けて安定性を重視しているEクラスのような次元の高いそれではなく、典型的 な出来の悪いFF車の特性を持っている。更に中心付近が緩いから直進性が良いかといえば決してそうでもなく、昔の日本車のようにセンタリングがやたら強いが手を離していれば直進する、というものでもない。要するにFF車 を作り慣れていないのがハッキリと判ってしまう。乗り心地自体は決して悪くはないが、良くも無い。初代Aクラスは例の転倒騒ぎでメルセデスの面目丸潰れだっ たが、この2代目だってコーナーリングは決して良くない。なにより高い重心のボディは乗り心地がそれ程柔らかくないにも関らず、結構なロールを感じるから、思い切ってコーナーに突入するなんて事は相当に勇気がいる。それでも少し頑張って、しかもコーナーの入り口までブレーキングを残してフロントに荷重を移すというFF乗りがよくやるようにして回ってみたら、結構速いコーナーリングが可能だったのは伊達にメルセデスマークを付けてはいない 、と少しはAクラスを見直したが、それでもこの程度の事は最近の国産FF車ならば当たり前だから、操舵性を期待してはいけない。
動力性能では他2車に水を開けられた116iだが、操舵性となると俄然強みが出てくる。なにしろ1シリーズとはいえBMWのFR車で、お馴染み前後軸重配分が50:50というポリシーと、1.6ℓというBMW各車の 中でも最もフロントの軽い116iだから、その軽快な操舵感は言うまでもないだろう。自分の腕が上がったのかと勘違いするような誰が乗ってもニュートラルな特性は他のメーカーでは味わう事が出来ないから、この特性に惚れて116iを買うのなら大いに薦められる。
これら極端な2車に比べるとA3の操舵性は実に良く出来たFF車の一言で、ベースのVWゴルフが最も良く出来たFF車の一つであることからも、これまた想像どおりなのだが、逆に言えば優等生的でもある。

ブレーキ性能については3車とも特に問題はないが、背の高いAクラスはパニックブレーキ時に車両としての安定性ではどうしても不利になるだろう。そして下の写真を見れば判るようにAクラス は他車と同じ16インチのホイールなのにローターはスカスカだし、キャリパーもチンケ(小さい)なのが判る。メルセデスといえ20年ほど前ならば自社のマークの付いたクルマにこんなブレーキを付けるなんて考えれなかったが、ブレーキのみならず、Aクラスはメルセデスと思ってはいけない。


写真11 :エンジン部分の比較


写真12 :フロントホイールと中に覗くキャリパー。
全て右方向がフロントだから、アウディのみキャリパーが前付となっている。

概ね予想はしていたが、Aクラスはやはりメルセスのマークを付けただけのイマイチFF車ということで、とてもではないがCクラスの弟とは言えない代物だった。Aクラスのメリットはスリーポインテッドスターが付いていることで、”御ベンツ様”に乗っていることをステータスと思えて仲間内にもこれが自慢とるような環境ならば、それなりに価値 はある。しかし、ベンツマークに対して何も感じなければ殆どメリットは無いし、ド田舎とはいわずとも首都圏でさえチョット外れになれば「ベンツに乗っている」というだけで 近隣から白い目で見られる地域だってあるようだから、これらの状況だとメリットどころか大いなるデメリットにすらなってしまう。

Aクラスの新車は現在A170のみが販売されていて、今回取り上げたA200は昨年秋のMCの際にカタログから落とされてしまった。理由は簡単で、売れないから。ハッキリ言ってAクラスを買うユーザーは動力性能なんて求めていないだろう。A170の新車価格はベースグレードで269万円也。上級グレードのA170エレガンスが305万円となっている。あれっ?3年前ならA200がこの値段だったのに、今ではA170エレガンスが昔のA200と同価格となっている。まあ、どうでも良いが、何やらユーザーの足元を見られているようだ。いや、実際にはエレガンスなんて売れなくて、殆どがベースグレードなのかもしれない。

116iとA3については、どちらも夫々に長所短所があるが、買い得感という面ではA3に軍配が挙がる。新車のときは116iに比べてランクが一つ上のA3が、中古価格では同等になってしまうのだから、中古車としての買い得感はA3が勝っている。一般に中古の値落ちが大きいといわれるBMWだが、その最大の原因は新車のダンピング販売で、新車を叩き売りすれば必ず中古車価格に跳ね返ってくるのだが、1シリーズの場合は発売当初は値引き無しのワンプライスで頑張っていたことから、中古になっても意外と値落ちが少ないのだろうか。ところで、アウディの 新車販売時の値引きはといえば・・・・・まあ、御存知のかたは多いと思うが・・・・。

さて、今回初めて中古車での比較という企画を試みたのだが、どうもシャキッとしない結果になってしまった。中古車というのは各個体によって価格も内容もマチマチだし、グレードなんていうのも状況によって は同価格で上級とベースグレードが入り混じっていたり、中々比較が難しい。それでも、車両価格200万円で2〜3年落ちのプレミアムブランドが買えるのは事実だし、116iと比べてどちらがお勧めかといえば、やっぱりA3が無難なのは、既にA3の試乗記でも述べたとおりだから、今回初めて乗ったAクラスが予想通りの出来だったことから、特に新しい発見はなかった。まあ、A3が 得とはいってもBMWへの憧れというのもあるだろうから、最後は、これまた各ユーザーの好みという、面白くも何ともない結論となってしまった。

ところで、アプルーブドカーというのが果たして得かと聞かれれば、何とも難しいところだ。今回の3車種で一番値落ちの大きいA3でも新車価格の53%程度で、割高の116iでは68%以上にもなる。しかも新車には当然値引きがあるから、この比率は更に高くなる。ということは、もしも6年償却で10%残るとして3年物ならば55%だし、2年物ならば70%だから、これ以上の価格だったら損ということになる。一番買い得なのは1年物で走行距離5千キロ程度で、しかも新車の75%以下というころだろうか。それ以上ならば新車のキャリーオーバー(イヤーモデル落ち)なんかを見つけて叩いた方が得の場合もある。 考えてみれば、本当に買い得な物件だったらディーラー関係者が親類縁者や友人、それに取って置きのお得意さんに紹介するから、中古車センターなんかで一見さん相手に売ってはいないだろう。まあ、こればかりは世の中の市況なども絡むから何ともいえないが、ディーラーや輸入元のカモにだけはならないように気をつけよう。