【速報版】
 
PORSCHE Cayman PDK (2009/3/15)


フロントの変更点はバンパーのエアインレットとヘッドライトの形状だが、オーナーや強度のポルシェ
ファン以外には気が付かないだろう。

今回の試乗車は発売したての09ケイマンで、ミッションは話題のPDKを搭載したモデルだった。ベース価格は708万円にザッと見ただけでもスポーツクロノ(19.4万円)、PASM(27.4万円)、18インチケイマンSUホイール(19.1万円)のオプションで総額774万円也。税金や諸経費を含めると総額では850万円は軽く超えそうだ。
これがケイマンSのPDKともなればベース価格は877万円だから、これに各種オプションを付ければ、1千万円の大台に乗る勢いとなる。これは数年前ならノーマルカレラが買えるくらいだ。まあ、性能も数年前のカレラ並だが。


写真1
リアの変更点はテールランプとバンパー形状で、更に良く見ると排気管の出口が少し異なる。

 


写真2
こちらは09ボクスター。例によってケイマンよりは大人しいインレット形状を持つ。

 

室内の眺めは前期型と殆ど同じで、最大の違いはセンタークラスターのエアコン&オーディオパネルがブラックを基調(前期型はシルバーに近いガンメタ)とするものになったことと(写真3)、標準でナビが搭載されたためにディスプレイが全車に装着されていることだ。 そして、今回の試乗車のように2ペダルの場合はトルコン式ATであるディプトロニックSから今流行のツインクラッチミッションのPDK(世間一般ではDCTと呼ばれる)となったことで、このためにステアリングホイールのスポーク上のスイッチ(写真6)とセンターコンソール上のセレクター(写真7)が変更となった。 もっともPDKになったからといって、これらのスイッチ類のデザインを変更する必要は無いのだが、そこは、まあ気持ちの問題として・・・・・・。
そして、これらの変更は997(カレラ/カレラS)と同様だから詳細は新旧比較はNewカレラS試乗記も参照願いたい。

LHDのポルシェに共通したステアリングコラム左の鍵穴に挿しこんだキーを左手で右に捻るとエンジンは難なく始動する。アイドリングは前期モデルよりも細かい振動を感じる。 2.7ℓから0.2ℓ拡大された2.9ℓエンジンは、これまた前期型のノーマルカレラに近づいたようなアイドリング振動を伴っているから、振動という面では2.7ℓ版の方が静かだった。 ブレーキを踏んでセレクター(写真7)をDに入れるまでは前期型のティプトロSと同じ要領だが、パーキングブレーキを解除して、フートブレーキから足を離した瞬間には、クルマは前進しない。しかし、その一瞬後にはアイドリング状態でも僅かにクルマが前進する。 トルコンのクリープよりは弱いが、それに近い感覚はある。そこで右足と静かに踏み込むと、クルマは違和感なく発進する。 幹線道路に出た直後に軽くスロットルペダルを踏んでやれば、速い流れでも難無く付いて行ける。片側3車線の一級国道バイパスの流れに乗っていると、何やら回転計の指針は1300rpm程度を指している。 この時、右側の集合メーター内のシフトインジケーターは既に7を表示しているから、7速で巡航していることになる。 普通、ポルシェのMTに乗るようなマニアならば、間違っても1300rpmで巡航なんかしないし、流れが速いとは言っても一般道ならば、使うギアポジションは精々4速だろう。 バイパスを巡航中に流れが遅くなり、再び前車が加速した為にこちらもスロットルペダルを踏むと、6速 1400rpmから直ぐにはシフトダウンが起こらない。それでも踏み続けると、 状況により5速にダウンしたり、場合によっては一気に3速まで落したりと、思うようには動いてくれない。殆どおろしたての試乗車は言ってみれば 世の中に全く無知な状態だから、もう少し社会経験をして(走行距離を重ねて)学習してからでないと何とも言えない。

Dレンジでのオートマモードを諦めてレバーを左に引いてMモードにしてみる。マニュアルでの変速は2つの方法があり、一つはコンソール上のセレクターレバーで、前に押してアップ、手前に引いてダウンとなるが、これは高性能車としては使い難い。 現行BMW各車やランエボ]などは引いてアップであり、同じポルシェのレーシングモデルであるGT3カップカーも引いてアップとなっている。ただし、 GT3カップカーは3ペダルのドックミッションであるが、この手のミッションは全て引いてアップとなっている。 もう一つはステアリングホイールのスポーク上にあるスイッチ(写真6)で、今までのティプトロとも違うが、これも基本的には押してアップとなっている。ステアングスイッチの標準は右がアップで左がダウンのパドルタイプが主流となりつつあるなかで、 何やら独自の方式に拘っているのは、頑固というべきか、呆れたというべきか。したがって、慣れていないこともあり非常に使い難い。加速して体が後ろに持っていかれるのだから、引くのが動作としては自然なことは議論の余地がないのだが。 そんな訳で、時間がなかったこともあってマニュアル操作についても十分な評価をする程には試せなかった。試乗車にはオプションのスポーツクロノが装着されてたので、その性能の変化も試したかったが、これについては別の機会を作って詳細なテストをしてみ たいと思っている。  


写真3
ステアリングホイールの形状とセンタークラスタのオーディオ&エアコンパネル以外に大きな違いは見つからない。
写真はオプションのホワイトメーターをつけているが、標準のメーターはブラックとなる。


写真4
PDKにより7速化されたことでカレラと同様にシフトポジションの表示が7セグメント化された。

 


写真5
試乗車にはオプションのスポーツクロノが装着されていたために、ダッシュボード中央上面にはストップウォッチが見える。

 


写真6
PDKのマニュアル操作ボタンは前期モデルと異なったデザインとなる。なお、これもカレラと共通。
 

 

写真7
これまたカレラと共通のPDKセレクターレバー。表示は全てパネルと同色に近く、昼間の視認性は決して良くない。

09モデルでは、特にボクスターS&ケイマンSがカレラと同じ直墳エンジンとなったが、”素”のボクスター&ケイマンは従来のタイプを継承している 。ただし排気量が0.2ℓ増えて2.9ℓとなった点が大きく異なる。今回からはボクスターよりケイマンの方が多少最高出力が高く設定されているが、これはまあ、オープンのボクスターの方が価格が安いという矛盾を少しでも 正当化す対策と思って間違いない。 さて、その2.9ℓエンジンはといえば、ちょっと乗っただけで2.7ℓとはマルで違う・・・という感じはしなかった。むしろ最大の違いは高回転域の勢いが良くなったことで、4,500rpm以上でも衰えは無く一気に6,000rpm程度まで加速した。試乗車が事実上の新品であったためにレッドゾーンの始まる7,400rpmまで回すのは諦めたが、それでも十分に高回転域の改善が確認できた。 特に、5000rpmからのバルブ音のハーモニーは911系を彷彿させるものがある。ご存知のように、08モデルまでの997(911系)と987(ボクスター&ケイマン)のエンジンは、基本的には単なる排気量違いといってもよいくらいに同一のものだったのだが、それでは2倍の投資をした998ユーザーの立場が無いので、ワザと987の高回転域の性能を落としていた。 しかし、今回の変更で998は直噴化された事から、2.7ℓエンジンは以前の998並の高回転域特性を持たせても問題ないと読んだのだろう。ポルシェという会社は常に新型が最良となるように計画的に改良して いるので有名だから、今回もこの手法に従った訳だ。 それでは、08以前のモデルは駄目かといえば、これまた各イヤーモデルに夫々特徴を持たせているから、総合的には最新が最良だが、以前のモデルもそれなりの良さがあり、オーナー には新型も良いが自分のも決して悪くない、とかある面なら自分のポルシェのほうが上だ、と思わせるのもポルシェの戦略に間違いない。

元来クローズドボディのケイマンはオープンボディのボクスターよりも車体剛性という面で有利なのは当然だが、これまでに何回か乗ったケイマンは何れもボクスターとの大きな剛性感の違いは体感できなかった。しかし、今回のケイマンは明らかに剛性感を感じたし、クルマ自体の動きも何やらドッシリしていて911 に近づいた感じだった。前述した高回転時のエンジンの勢いとも相まって、 カレラに乗っているような気になったのも事実で、これはやっぱりポルシェの策略なのだろうか。部品レベルで50%以上を共有しているという997と987が、フィーリングが似ているのは当然で、それをワザと違う雰囲気にしていたのも、これまたポルシェの確信犯的な政策の結果 に違いない。 操舵性も同様に前期型よりもドッシリと重く感じるのは、操舵力自体が大きめになったことと、中心付近の微妙な操作が従来型よりも更に正確になったことからだろうか。試乗車にはオプションのケイマンS用18インチタイヤ&ホイールを履いていたから、その影響もあるとは思うが、前期型のケイマンSはコンナではなかった覚えがあるが・・・。  


写真15
試乗車にはオプションの18インチケイマンSUホイールと前235/40ZR18、後265/40ZR18タイヤが装着されていた。


写真16
こちらは標準の17インチケイマンUホイールと前205/55ZR17、後235/50ZR17タイヤがの組み合わせ。

 

今回も結論としては正常進化していたから、『最良のポルシェは最新のポルシェ』であることには間違いなかった。それにしても、数年前に比べてカレラのベース価格(6MT)は990万円(04モデル996)⇒1046万円(05モデル)⇒1162万円(09モデル)と値上がりの一途で、 カイエンにしてもベースモデル(3.2AT)は659万円(04モデル)⇒692万円(07モデル)⇒718万円(09モデル)という上がりようだ。それに比べてボクスターの場合(MTベースモデル)は550万円(04モデル986)⇒572万円(05モデル)⇒608万円(09モデル)というように値上げ幅が少ない。 しかも09ボクスターはそれまでオプションだった6MTとナビが標準装備されているから、事実上の値下げともいえる。
ケイマンの場合は発売が遅かった事もあり同列では比較できないが、それでも633万円(07モデル)⇒661万円(09モデル)で内容はボクスターと同じだから差額の28万円は事実上の値下げといえる。 このように987(ボクスター&ケイマン)を取り分け日本市場では破格の安値で供給しているのはポルシェの戦略に他ならない。998(911カレラ)はタップリと付加価値を乗っけた金持ち(というより、主に法人)向け。987はクルマ好き(それもオタクの部類)の個人ユーザー向けとハッキリ区別しているのは周知の事実だ。 そんなことは百も承知でカレラを買うユーザーが後を絶たないのは、やはりRRのポルシェの魅力が価格以上だという事だろう。最も、911ユーザーの中には、もしも自腹で買うならばボクスター&ケイマンを選ぶのが当然だが、どうせ法人の経費で落すんだから高くたって全く問題なし・・・だそうだ。 それに911ならば資産台帳には”4人乗り、箱型”となり、これはカローラ(5人乗りだが)と同じようなものだが、ボクスターの”2人乗り、幌型”はマズイでしょう、だって!

確かに趣味で乗るボクスターは自腹で買って、ビジネス特急として仕事にも使うカレラは会社名義で買えば、ポルシェが2度美味しい、という事になって、これは中々楽しいクルマライフを送れる。
えっ?ポルシェを2台も買うなんて、アホか!
と言いたい気持ちも判るが

アホの気持ちも良く判る。