【速報版】
NISSAN FIRLADY Z Version ST 6MT (2008/12/7) |
基本的にはキープコンセプトだがより短く広くマッチョになった。フロントはGT−Rのイメージと
共通するものがあるから、これがニッサンのスポーツカーイメージなのだろう。 |
日本を代表するスポーツカーであるニッサン フェアレディZは初代のS30が発売されてから何と半世紀近くが経過したという、世界のスポーツカー
の中でもポルシェ911と並ぶ老舗ブランドの一つということに異論はないだろう。そのZがFMCしてZ34となった。今回は新型Zの中でも最も上級でスポーティなVersion STについて、その内容とチョイ
乗りではあるが簡単な試乗記とともに速報版としてお届けしよう。
試乗車のVersion STの車両価格は435.75万円(6MT)で、さらにナビが装着されていたから+32.235万円で約468万円、総額は500万円というところか。
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写真1
大きく膨らんだリアのブリスターフェンダーや太い2本出しの排気管など、後姿も中々マッチョだ。 |
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写真2
恰好は良いが決して使い良くはないドアハンドル。それでも普通のクルマとは違うという非現実感を演出しているのは成功か。 |
写真3
意外と狭いリアのラッゲージルームだが、先代のように巨大なストラットタワーバーが無くなった分は使いやすくはなった。しかし深さが浅い。
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写真4
ラッゲージスペースが浅い原因は、下にあるスペアタイヤスペースが原因で、この上級グレードの場合にはボーズのサブウーファーが標準で居座っている。 |
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今回は速報版ということで、室内の状況については写真5〜13と、その解説を読んでいただくことで本文での解説は省略する。
まあ、一言で言えば先代に比べればガキっぽさが無くなって、大人が乗っても耐えられる程度には進歩していたから、団塊世代のオトウサンが乗っても恥ずかしい事はなさそうだ。
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写真5
伝統的なZらしさを引き継いでいるコクピットは先代の玩具っぽさが薄れて大人のユーザーでも
けっこう満足できるようになった。
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写真6
シートの座り心地もマズマズ。
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写真7
上級グレードはサイドがレザーで座面はスエード調のファブリック。座面もレザーにするとサポート性能が落ちるということらしいが、それならアルカンターラくらいは使って欲しかった。 |
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写真8
伝統的なZの3連メーターも健在だ。
ダッシュボードのシボは高級感に乏しい。
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写真9
今回からはセンターに大径の回転計が配置された。レッドゾーンの7500rpmはハッタリ臭いが・・・。 |
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写真10
ニッサンお馴染みのテーブルのようなナビ操作部分。 |
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写真11
6速MTのシフトパターンは右下がRとなる。
シフトレバーの操作感は決して褒められない。 |
写真12
アルミのペダルがスポーティー感を強調する。国産車だけあって右MTでもペダル位置や間隔に不満はない。
試乗車は未だ保護ビニールが掛かっていた(セコイ〜っ!)。
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写真13
シートと同じスエード調のファブリックやイマイチ高級感の無い樹脂部分のシボなど、堅い事をいうと不満も出るが、チョット見はマアマアか。 |
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早速ドアを開けて乗り込んで見ると、シート自体の出来は悪くないし室内もタイトで非日常性をアピールするスポーツカーの雰囲気を上手く演出している。この辺りは長年に渡ってZを手がけてきたニッサンらしく実に手馴れているし、先代Z33が
妙に非日常性を追及し過ぎてヘンテコな雰囲気になってしまったのに比べて、新型はこれらの欠点を改良されている。
シートを調整しようとして座面の右側面のスイッチを探すが見つからない。なんと前後とリクライニングの調整は左側(車体中央寄り)にあった。まあ、こんなことは自分で購入してオーナーとなれば不便もないのだろうが。
着座位置を調整して、今度はステアリングホイールを調整するために、ステアリングコラム底部にあるリリースレバーを解除して上下させ、次に手前に引こうとしたが動かない。何と上下のみで、前後には調整できないのだった。まあ、無いものはしょうがないので、上下調整をしながらメーターとステアリングの関係を自分の好みに合わせようとしたが、何故か位置関係が変わらない。そう、先代と同様にメーターパネルとステアリングは一体になって上下するのだった。先代のメーターパネルも同様
な構造だったが、そのために如何にも取って付けたようなメーターになってしまったことに比べれば、新型は自然な雰囲気になっている。
ステアリングの高さを合わせて正面をみれば、スポーツカーらしく高めにそびえ立つダッシュボードが雰囲気を高めると同時に視界は余り良くない。そこでもう少しシートの高さを上げようと思ったが、頭上の隙間はこぶし一個あるかないかの状態だった。ポジションは結構低く感じているのにと思って気が付いたのは、Zのシャーシーは基本的には乗用車であるスカイライン、という事はフーガだって兄弟だし、
要するにZの生まれはサルーンだったということが、この高いフロアとなって現れたのではないか。その高めのフロアを誤魔化す為に、ダッシュボードはより高くなり、結果的にボンネット位置も高いからダルマみたいなエクステリアになってしまった・・・・・と、いったら身も蓋もないし、何よりニッサンファンの攻撃が恐ろしいので、この話はこれまで!
クラッチは飛びぬけて軽いとは言わないが、この大トルクエンジンにしては軽いほうだろう。試乗車の場合、クラッチのミートポイントが多少手前気味で、いわゆるクラッチが浅い状態だった。Zの場合はこれが本来なのかもしれないが、個人的にはもう少し深い位置から徐々に繋がり出す特性の方が好ましい。だたし、これも慣れの問題だから、10分もすれば違和感は
殆ど無くなったが、今回はチョイ乗りだったので、その後充分に慣れるまでの時間はなかった。
クラッチをミートすると3.7ℓの自然吸気エンジンの低域からモリモリと湧き出るトルクのお陰で、決して軽くはない車体も難なく発進する。そこから少し踏み込むと、少しわざとらしいV型エンジンのビートが耳に入ってくる。このクルマはV6エンジンの筈なのに、何やらアメリカンV8に近いような雰囲気で吠えまくるのは流石に対米輸出がメインのクルマだけあるし、この雰囲気が堪らないマニアもいることだろう。こんどはフルスロットルを踏んで見ると、1,520kgに対して336psだから4.5kg/psという
、数字だけで比べればBMW Z4 Mクーペの4.4kg/ps(1,495kg/343ps)に近いのだから速くて当然で、回転計の指針は一気にレッドゾーンに向かって飛び上がっていく。試乗車は走行距離が110kmという殆どマッサラの新車だったから、レッドゾーン(7,500rpmはちょっとハッタリ臭いが)までは回さなかったが、それでも6,000rpm程度までは一気に回ってしまった。その時の音は中々上手くチューニングされていて、決して煩くはないが適度の迫力を持っていて、これが基本的にスカイラインクーペと同じエンジンには思えないほどにスポーティな雰囲気だった。
さらに狭い道のすれ違いなどで極低速で走行する時にヒューンという補機類の音が聞こえるのも、それらしい演出だ。この手の演出はケイマンSの場合にはコレデモカとばかりに音の洪水となるが、それ程では無いにせよ、ZもケイマンSを意識した味付けをしているのでは、という考えが脳裏に浮かぶ。
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写真14
V型6気筒、DOHC 3,696ccのVQ37HRエンジンは336ps/7000rpmの最高出力と
37.2kg-m/5,200rpmの最大トルクを発生する。
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動力性能に対しては全く不満のないニューZだが、6MTのフィーリングは決して良くなかった。シフトレバーはカチッ、カチッとポジション間を移動するタイプなのだが素早いシフトは受け付けないし、ゲートも判り難いというか、左右のストロークが意外と大きいし、言ってみればイマイチフィーリングの代表的なものだった。と、いっても、このタイプのミッションを持った高性能車は内外に沢山あるし、その一例ではあのBMW Mロードスターも似たようなモノだったから、Zが特に悪い訳ではないのだが、素早いシフトがスパッと決まるケイマン/ボクスターの6MT(ゲトラグ製)とまでは言わなくとも、可也フィーリングの似たホンダシビック タイプRや、チョッとフィーリングは違うが実にスパッと決まるマツダRX−8など、出来の良いMTは結構あるのだから、ニッサンも頑張って欲しいものだ。
実は後でカタログを見て気が付いたのだが、今度のMTにはシフトダウン時に自動的にブリッピングをする機能が備わっていた。これはブレーキペダルを踏みながらシフトダウンをすると、クルマが関知して一瞬エンジンを空吹かしして、クラッチミート時に回転数を合わせる機能だそうだ。これがあれば例のヒールアンドトウなんていうテクニックを必要とせずに本格的な運転が出来るという便利機能のようだが、残念ながら今回は試せなかった。
ステアリングは中心付近から結構クイックな特性で、今回ホイールベースが短く縮められたこともあり反応も良く、更には
幅が広がったりエンジンが拡大されたにも関らず重量増加も少ないことで、先代に比べれば明らかに軽快感が増している。コーナリングもアンダーが強かった先代に比べて大いに改善されている。しかし、その代償は最近のクルマとしては硬すぎる
乗り心地というデメリットとなってしった。チョットした凹凸でも常に振動が伝わるし、継ぎはぎだらけの道ではクルマ全体が跳ねるような挙動をする。
試乗車はスポーツグレードのために、フロントに4ピストン、リアは2ピストンのアルミ製対向ピストン式キャリパーを装着していた。しかし、このブレーキは踏力が軽すぎて、しかもチョット踏むだけで食いつくように減速するという、BMWサルーンのようなフィーリングだから、スポーティなMTとしては使い難い。停車時にブレーキを踏んでみたら遊びが殆ど無いことではカレラS以上だったが、軽すぎるカックンブレーキではこのキャリパーの良さが生かせないと思う。といっても、これも好みの問題だし、効き自体は極めて良いから安楽なサルーンとして使うには悪くないが、今時MTを選ぶような物好きなユーザーにとっては、宝の持ち腐れでもあるが、そんな場合はその道で定評あるブランドから耐フェード性重視でμの低めなスポーツパッドに
でもすれば改善されるだろう。と、思ってNISMOのカタログを見たら、しっかりとS−tuneブレーキパッドというのが既に用意されていた。
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写真15
リアには275/35ZR19タイヤが標準装着されている。 |
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写真16
そしてフロントは245/40R19タイヤが標準装着されている。
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写真17
リヤキャリパーはアルミ対向2ピストンを使用している。
なお、ベーグレードとVersion Tは鋳物のピンスライドタイプとなる。
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写真18
フロントはアルミ対向4ピストン。前後ともスカイラインクーペと共通だが、スカイラインのシルバーに対してZはガンメタに塗装されている。 |
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新型Zは先代に比べて100mm短いホイールベースとなったことで、乗り味にスポーティーさが増したという面ではクルマ好きには朗報だが、それにしても
未だ車重は重いし何より大きすぎる。
そして先代より更に30mmも広くなって1,845mmという全幅は、峠道をスポーティな走りで楽しむには如何せん大きすぎる。
それに価格も高い。
先代Zの場合、街中で見かける度にドライバーの年代を見ると、多くが熟年男性だったりする。確かに、Zというブランドに郷愁を感じるユーザーといえば団塊世代前後に多いのは当然としても、それ以上に今のZの内容が若い人が憧れるようなものでは無いのではないか。先ずは価格的に200万円代であること。そしてもっと小型軽量であること。となると、行き着くところはやはり現代版シルビアとなるのかもしれない。今の若者はクルマに興味が無いといわれているが、若者が興味を持つようなクルマが無いというのも原因ではないのか。現代版シルビアが復活したら、若者が興味の目を向けるだろうか?という疑問もあるが、とに角、その手のコンセプトのクルマが欲しいと思うのはクルマ好きなら当然だろう。トヨタと富士重の小型スポーツと共に、若者の間でクルマブームが復活する?それに対抗する新世代シルビア。そんな時代を期待している
のだが・・・・・・そんな世の中は、来ないかもしれないなぁ。
と、まあ多少Zに対して否定的なことを書いてしまったが、試乗車より1つ下のグレードであるVersion Sならは車両価格は409.5万円で豪華なシートや内装はなくなるが、走るのにサイドがレザーのシートなんて要らないから、これで充分だし、さらにベースグレードとなれば362万円と、かなりリーズナブルな価格となるが、これはブレーキキャリパーが鋳物のピンスライドとなる点が辛い。等など、悩みは尽きないが、フルサイズのミニバンだって400万円越えは常識となった今日この頃。400万円を奮発して、スポーツカーのある生活も良いのではないか。子供が成長して、もうミニバンなんていらないというオトウサン。退職金でクルマを買い換えるのにティーダは無いでしょう!新型Z、いっちゃいましょうよ!
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