特別付録 BMW X−3 vs SUBARU Forester
X−3とフォレスターの比較なんて、なんとまあ、掲示板チックなネタを引っ張り出して、B_Otaku
の奴、それ程までにしてアクセス数を稼ぎたいのか?なんて言われそうだが、でも、このネタって、結構好きな人も多いようで・・・・。
その比較として、X−3は最近試乗した3.0siで、価格は632万円也だが、標準でレザーシートやHDDナビが装着されている。それに対する国産代表のスバルフォレスターはターボモデルのXTで、価格は257.3万円だが、レザーシートが欲しければプラチナレザーセレクション(281.97万円)を購入する事になるし、ナビもオプションなので、結局X−3 3.0si並みの装備をすれば車両価格で300万円は確実に超えることになる。
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BMW |
BMW |
スバル |
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X-3 3.0si |
X-3 2.5 si |
フォレスター XT-PL |
寸法・重量・乗車定員 |
全長(m) |
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4.585 |
4.585 |
4.560 |
全幅(m) |
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1.855 |
1.855 |
1.780 |
全高(m) |
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1.675 |
1.675 |
1.675 |
ホイールベース(m) |
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2.795 |
2.795 |
2.615 |
最小回転半径(m) |
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5.80 |
5.80 |
5.30 |
車両重量(kg) |
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1,830 |
1,800 |
1,480 |
乗車定員(名) |
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5 |
5 |
5 |
エンジン・トランスミッション |
エンジン種類 |
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I6 DOHC |
I6 DOHC |
F4 DOHC TURBO |
総排気量(cm3) |
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2,996 |
2,496 |
1,994 |
最高出力(ps/rpm) |
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272/6,650 |
218/6,500 |
230/5,600 |
最大トルク(N・m/rpm) |
315/2700 |
250/4,250 |
319/2,800 |
トランスミッション |
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6AT |
6AT |
4AT |
サスペンション・タイヤ |
サスペンション方式 |
前 |
ストラット |
ストラット |
ストラット |
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後 |
セントラルアーム |
セントラルアーム |
ダブル
ウィッシュボーン |
タイヤ寸法 |
前 |
235/50R18 |
235/55R17 |
225/55R17 |
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後 |
235/50R18 |
235/55R17 |
225/55R17 |
価格 |
車両価格(\) |
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6,320,000 |
5,580,000
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2,819,700 |
備考 |
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ナビ標準装備 |
ナビ標準装備 |
ナビはオプション |
さて、例によって国産車原理主義者の大好きなカタログスペックで比べてみよう。
最高出力はX−3 3.0は272psに対してフォレスターXTはターボを持ってしても230psだから、この点では敵わないが、X−3でも2.5の218psには勝っているじゃないか。しかもトルクでは319N・mとX−3 3.0の315N・m
にさえ勝っている。成る程、BMWはボッタクリだ、ということで、スペックではフォレスターの勝ち! |

写真1 |
スペックはフォレスターが勝ったとして、それでは実車の比較は外観から。
写真1を見てみれば、別にどちらも変わらないじゃぁないか。外形寸法(全長×全幅×全高)は
X−3: 4585×1855×1675mm
フォレスター: 4560×1780×1675mm
全幅はX−3が大分広いが、それ以外は似たようなもの。第一、1855mmなんていう幅は、この狭い日本では使い辛くてしょうがない。と、なれば、第1回戦はフォレスター有利か?
スタイルについては、まあ、好き好きでしょうから、ここでは特にコメントはしないことにする。 |

写真2 |
次はダッシュボードの比較といこう(写真2)。
むむっ、左のX−3は何やら高級感がみなぎっている。しかも、アイボリーとブラックのツートーンって、如何見ても標準じゃ無さそうだし。きったねぇーぞ!と、お怒りのスバルファンの声が聞こえてくるような気がするが、
これは単なる偶然で、本当は標準仕様の2.5siに乗る予定が、何故かキーと渡されて「あの白いクルマです」と言われてみれば、そこに見えるのは、お洒落な内装の3.0siだった、という事情による。
そんな訳で、多少はフォレスターにハンディをあげたい気持ちを持ってしても、内装の質感は圧倒的にX−3の勝ちに異論ないだろう。
いいや、まだ、信じられないぞ!あんな写真で誤魔化したって、実際にはBMWの内装なんて安っぽい筈だ。と、いうスバリストのクレームに応えて、もう少し詳細に各部を見てみよう。
なお、以後の写真は全て左がX−3で右がフォレスターとなっている。 |

写真3 |

写真4 |

写真5 |
先ずはシートの質感から。今回のX−3は3ℓモデルだった事から標準でレザーシートが付いていた。これに対してフォレスターはオプションのプラチナレザーセレクション(約25万円プラス)を選べばレザーシートとなる。X−3のレザーはBMW御なじみの深いシボの付いた厚めのレザーを使ったもので、見るからに長持ちしそうだ(写真3)。
対してフォレスターのレザーは、まあ、レザーシートの経験が少ない日本車の中でも、高級サルーンをラインナップに持たないスバルとしては、こんなモノだろう。えっ?レガシィの3リッターは十分高級車だって?いや、そういうのではなく、レクサスLSとか
シーマとか、そのクラスの話でして・・・・・。
レザーはフォレスターでは分が悪いが、それでは布のシートはどうかということで、写真4を見てみれば、X−3は典型的な欧州のベースモデルっぽいファブリックで、今更いうまでも無い。この手は豪華さはないが、実に丈夫で使いやすい。
そして、フォレスターはといえば、これもX−3と同じような系統の材質で、この面では同等といってもいいだろう。日本車によくある毛足の短いモケットもどきや、スエード調の布など、新車の時の見かけは良いが、2〜3年でヨレヨレになるという、国産ハイオーナーカーにお馴染みモノではないのが救いだった。
結果を整理すれば、シート表皮については、レザーではX−3の勝ち。ファブリックでは引き分け。
それでは、クルマの後部に移動してリアゲートを開けて、ラッゲージルームの内装を見てみよう(写真5)。X−3は一面にカーペットが張り巡らされていて、
しかもその材質は室内と同じ。タカが荷物室ごときに勿体無いと感じる程だった。それに比べてフォレスターは、硬質樹脂よりはマシだがカーペットとは言えないような、いかにも荷物室という質感で、これは圧倒的にX−5の勝ち。こういう、普段は目にしない部分では大いに差が付く。やはりBMWは伊達に高いわけじゃあない。 |

写真6 |

写真7 |

写真8
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次なる対戦は、センタークラスターの空調やオーディーオ&それに続くコンソール、そして、メーター類といこう。
これらは、運転中に常に見たり、触ったりするので、結構重要だ。先ずはセンタークラスタ(写真6)を比較すれば、X−3の場合は、これまた3.0リッターモデルであることから、えらく見かけの良いウッド(勿論本物)パネルが貼られていて、アイボリーのレザーとともに室内を高級感で満たしている。フォレスターはといえば、インプレッサと共通化して金型償却費をケチったのは目をつぶるにしても、
両サイドの安っぽいウッドもどきのプラスチックパネルは何とかならないのだろうか。
次にセンターコンソール上のATセレクター付近を見てみよう(写真7)。X−3は旧3シリーズと共通だから、言ってみれば一世代前のデザインで、最新のX−5に比べると正直にいって見劣りするが、それだけ見ていれば決して古臭くは無い。フォレースターはといえば、
樹脂にメッキをしたと思われる、ジグザクゲートを切ったシルバーのプレートは、これだけ見ていれば特に悪くはない。これは趣味の問題もあるから、オマケのイーブンとしよう。
そして、メーターはといえば、これは運転中に年がら年中見つめているのだから、質感の良さも重要だが、安全上からも視認性が良くなければならない。X−3のメーターはBMWに共通した雰囲気で、これまた今更言うまでも無い。フォレスターは見易さはマアマアだが、このデザインを毎日見つめるのは、個人的には勘弁してもらいたい(写真8)。と、いうことで、メーターについてはBMWの勝ち。長い伝統は伊達じゃない。ところで、X−3の丸メーターで底辺が平らなデザインは、国産のSUVで見たような気がする。と、思って調べてみたらば、何と現行のCR−Vが同じようなメーターデザインだった。何ていうと、熱烈なホンダファンからは、「なにっ、BMWはホンダをパクったのか?」なんて、言われそうだが、あっ、いや、そうではなくて・・・・。 |

写真8 |
以上、目に見える部分で比較してきたが、クルマは走ってナンボ。両車の走りは如何なんだ、という声が聞こえてきそうだ。まあ、そう焦らないで。これから、やりますから。
X−3は3.0も2.5も直列6気筒エンジンを搭載している。BMWの6気筒は、現行のバルブトロニックタイプになってから、以前のモデルに比べると特に高回転域でのスムースさがイマイチだが、それでも世界中の実用エンジンの中でもBMWの6気筒は滑らかさと気持ちよさでは最高のエンジンで、正にシルキーシックスそのものだ。
フォレスターの水平対向4気筒エンジンは、なるほど国産車のなかではスムースだし、以前ほどではないが加速中の独特の排気音は、スバルファンにとっては堪らないようだ。とは、いっても4気筒で、しかもターボによる過給だから、6気筒で自然吸気(NAとかノンターボとも呼ばれる)のX−3と比べれば、幾ら何でも
レスポンスやフィーリングで見劣りがするのは仕方ない。更に差がつくのはミッションで、何れもトルコンタイプのATではあるが、X−3は最近流行の6ATを搭載するのに対して、フォレスターは4ATと、今時それは無いだろう、と言いたくなる。
ヨーイドンの直線加速は、特にATならば誰がやっても、ある程度の違いは判るが、ハンドリングとなると個人の感覚やテクニックで大きく結果が異なるし、比較するクルマ同士を、同時に同一条件でテストするというのは、雑誌の取材でもなければ
出来るものではない。実際にX−3とフォレスターも、別々の場所で、別々の条件で試乗したので、大きな違いが見つかる程ではなかった。しかし、幾ら条件や場所が違っても、本当に大差がついていれば即座に判る
ものだ。例えば、20年前のメルセデスEクラス(当時はEクラスとは呼ばなかったが)とクラウンやセドリックの最上級車ならば、乗った瞬間にあまりの違いに愕然とするくらいの差があった
。
要するに操舵性ではX−3とフォレスターは、10m走れば即座に違いが判るというレベルではなく、フォレスターも結構良いセンをいっているということだ。と、いっても、一部のスバルファンが言うように、フォレスター(というよりスバル全版)に乗ったらばBMWのハンドリングでは満足できない、ということは無い。
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写真9 |
こうしてみれば、フォレスターの乗り味はX−3と比べて、大差が付くという程でもない。しかし、これは冷静に考えた場合で、ブランド好きのユーザーならば、両車のステアリング中央にあるエンブレムを見ただけで、気持ちが変わる。実際に運転している気分だって、憧れのBMWマークのついたステアリングを握っていれば、気分は満点となるのは間違いない(写真9)。これを、単なる見栄とかで片付けられないのも、また事実だ。
そろそろ、結論に入ろう。Xー3かフォレスターかを考えた場合、クルマに600万円以上を出せるのなら、問答無用でX−3を勧める。なんだ、かんだ言っても、総合的な満足感はフォレスターの比ではない。しかし、フォレスターを買ったユーザーも、それなりの満足感は得られるのも、また事実。国産車として、この価格帯として考えれば、
フォレスターは実に良く出来た車だ。フォレスターXTは安いといっても、ナビ等を付けずに、最小限のオプションでも何だかんだで支払い合計は300万円を超える。簡単に300万円というが、チョット前ならばクラウンなどの高級サルーンの価格だ。クルマに300万円出せる家庭は、むしろ裕福の部類かもしれない。そんな場合は、自然吸気のモデルを選べば、少なくとも50万円は安くなる。車両価格200万円ちょいのSUVとしては、フォレスターX/XSの買い得感は抜群だろう。
マイカーに許される予算というのは、収入が同一でも、家族構成や住宅事情で大きく変わる。特に金がかかるのは住宅ローンと、そして子供達の教育費だ。例えば、世帯年収1000±200万円
(奥さんのパート103万含む)という、大企業の典型的中堅サラリーマンの場合でも、子供二人を小学校から私立に通わせ、しかも5000万円超の住宅ローンがあったりしたら、X−3どころかフォレスターXだって買うのは大変だ。ところが、年収500万円だとしても、住宅は農家の実家の脇の余った土地に家を建てたから、
住宅ローンは公営住宅の家賃並。子供達も地元の公立に通うし、塾なんて近所にはないし、もちろん塾に通っている子なんて近所では聞いたことがない。なんていう場合ならば、600万円のクルマを買うのは容易だろう。
そう、クルマなんていうのは、自分の状況にあった予算で、好きに買えばいいのだ。勿論、同じ経済状況でもクルマに対する思い入れが多ければ、予算も多目となるし、他にもっと予算を回したいのであれば、そうすれば良い。一番危険なのは、念願の3シリーズを手に入れて、サラリーマンなのに中小企業経営者たちを主とするオフ会などに参加するうちに、何時しか自分も、更に上級車が欲しくなり、無理に無理を重ねているうちに借金地獄にはまって行くというパターンだ。経営者達は経費で落すのだから、3年もすれば次のクルマに買い換えるし、その度に車両価格もエスカレートしていく。今の世の中、パート一人雇っても年間100万円以上かかるのだから、合理化でパート従業員を二人減らせば、3年で600万円となり、少し足せば1000万円超えのクルマ
を3年ごとに買い換えるのは、実に容易なことなのだ。それに比べて、先程の中堅サラリーマンの場合は、条件が良くて3シリーズやCクラス。それも車両価格の上限は500万円というところで、しかも最低6年、できれば10年は乗り続けるのが普通だ。
これが530iクラスとれば、前出の中堅サラリーマンでは余程条件に恵まれないと無理だろう。
ところが、聞くところによれば、本当の金持ちは経費で落すなんてケチなことは言わずに、有り余る個人資産のほんの一部で、ポルシェカレラGTでもマクラーレンF1!でも、勿論フェラーリエンツオでも、キャッシュでポンと買うそうだ。なるほど、上には上があるものだ。
ところで、「B_Otaku
のクルマ試乗記」のターゲットユーザーはといえば、
ズバリ前出の中堅サラリーマンだ。実際にアクセスを解析しても、3シリーズやCクラスが最も興味を持たれるアイテムだった。
しかし、もっと一般的な価格帯も扱って欲しいというリクエストのメールも結構もらうに至り、始めたのが「簡易試乗記」で、そのために両試乗記では評価基準が異な
っている。簡易試乗記で絶賛されたアイテムでも、本編試乗記でボロクソのアイテムの方が、クルマとしての性能は上だったりする。すなわり、簡易試乗記で絶賛したフィットやデミオが、本編でボロクソ評価のレクサスISより良いのかといえば、そんなことはない。車として直接比較すれば、フィットはISの足元にも及ばないのも、また事実。そういう意味では、今回の比較は簡易試乗記で好評のフォレスターと本編試乗記でイマイチ評価のX−3を対決させるという企画を立ててみた。以前にもBMWとスバルの比較という企画はやっているが、別にスバルをオチョクルのが目的ではなく、むしろ、国産車としては評判が良く、コストパフォーマンスが良いからこそ、とりあげているのだ。
この手の企画、評判次第では、またやってみようか、とも思っている。
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