Mercedes Benz C200 & C300 (2007/9/2)前編 ⇒後編


写真は上級モデルのC300アバンギャルドSでAMGのホイールやエアロパーツが装着されている。
BMWがMspで上手い商売をしているのを、指をくわえて見ている訳には行かないのが、現在のメルセデス、
というよりダイムラーグループの状況だ。
 

メルセデスベンツといえば本来はSクラスのことだった。そして、今から30年以上前にコンパクトと呼ばれた新型はW123、すなわち3世代前のEクラスということになる。勿論、当時はEクラスという呼び名はなかった。現行Cクラスのルーツは1983年にリリースされた190E(W201)で、当時の日本国内価格は確か530万円くらいだったと記憶している。190Eを除くと当時のメルセデスのベースグレードは230E(W123)で、価格は 600万円を切るくらいだったから、190Eも決して安くはなかったことになる。その190Eは10年間というロングセラーだったが、1993年に次期モデルがCクラスとして発売された。従来からの最善か無かというメルセデスから、新時代へと変わる過渡期でもあり、発売当初は 「こんなチャチなクルマはメルセデスじゃない」などと批判の的となっていたが、大多数のユーザーからみれば190Eより大きく立派で室内も広く、しかも価格的にも190Eより買い得感が高かったから、これは大いなる成功となった。
ところが、Eクラス以上では世界中で事実上のライバル不在に近い絶対的な存在であったメルセデスも、欧州でDセグメントと呼ばれる分野では、Cクラスの前に立ちはだかるBMW3シリーズの存在があった。 とりわけ1991年に発売された先々代(E36)3シリーズは、極端に短いボディのオーバーバングにより、短い全長からは信じられない程に広い室内など、現在の小型セダンのルーツとなる設計で、さらに先代(E46)で完成の域に達したことで、プレミアムDセグセグメントの王者の座 には3シリーズが居座ってしまった。事実E46時代は世界的に見て、3シリーズが2に対してCクラスは1という販売台数となっていた。メルセデスにとって更に悪いことに、ダイムラーのクライスラー買収により巨大化した組織は、メルセデス部門の開発体制を弱体化させ、EクラスのSBC(フルエレキのブレーキバイワイヤ)の大失敗 などにより、EセグメントでもBMW5シリーズに追いつかれるなど、正に後が無い状況となってしまった。そんな、危機を乗り越えるべく手段の一つとして、今回の新型Cクラスに賭けるダイムラーの意気込みは相当であることは 容易に想像できる。打倒3シリーズに燃える新型Cクラスは、見事にメルセデスの救世主となるのだろうか?
 


写真1
190E(W201、1983〜1993)。写真は高性能版の2.5-16でツーリングカー選手権用のエボリューションモデル。
 

 


写真2
初代Cクラス(W202、1993〜)
190Eの後継車はCクラスと呼ばれた。190Eよりも大きく立派で、しかも安い。

 


写真3
2代目Cクラス(W203、2000〜)
写真はC180ワゴンで、前期型の2ℓNA版。後期は1.8ℓのコンプレッサとなった。

 


写真4
そして今回の新型Cクラス(W204)で、写真はC200エレガンス(450万円)。先代W203に対して、幅が+40の1770mm、ホイールベースが+45の2760mmと多少大型化したが、それでもBMW3シリーズより小さいのが好ましい。
 

 

今回のCクラスは従来の路線を引きつぐ”エレガンス”とスポーティに振った”アバンギャルド”の2種類が設定されている。と、言っても当分の間は4気筒1.8ℓスーパーチャージャのC200のみが、エレガンス(450万円)とアバンギャルド(460万円)を選択でき、3ℓのC300(664万円)はAMGのホイールなどを装着したアバンギャルドSのみの設定となる。なお、中間グレードのC250は試乗した時点では未だ発売されていなかった。
エレガンスの外観はボンネット先端に御なじみのスリーポインテッドスターがおっ立っている、誰が見ても”ベンツ”と判るもので、これに比べるとアバンギャルドの場合はラジエターグリルの真ん中にコレデモカと大きなマークをつけている。これは本来ならばSLを代表 とする高級スポーツモデルの証だったのだが、何時の間にやら敷居が低くなってしまったようだ。まあ、そんな事をいっても、実際にアバンギャルドの外観を見れば、中々カッコが良い。特にC300の場合はアバンギャルドSと呼ばれ、この”S”はAMGデザインのホイールやバンパーのみならず、スポーツサスの装着により車高も15mm低いから、外観は実にアグレッシブで、(気持ちの)若いユーザーならばイチコロとなるのは間違いない。勤務先の後輩で、その昔はヤンキーやっていたクルマ好きによると、「今度のC300って、頭悪そうで最高っすねぇ!そのうち欲しいなぁ」といっていた。確かに、ヤンキー入ったベンツというのは、ある面魅力があるし、BMWがチョッと気取った優等生の雰囲気があるのに 対して、こちらは不良の雰囲気がムンムンしている。気取ったBM乗りを体育館の裏に連れ込んで、「てめぇ、カッコつけてんじゃねえぞ」と脅かして、お金を借りたり・・・みたいなイメージだし、音楽好きでもBM乗りが吹奏楽部でまじめにクラリネットを吹いていたころ、ベンツ乗りは フェンダー担いでロックンロール、というのがピッタリとハマる。
なお、C300の(頭)悪そうな外観は魅力だが、そんな動力性能は不要だし予算も無い、という場合には、C200にパッケージオプションという手もあるらしい。それにしても、BMWのMスポーツで成功した”なんチャってM”路線は、ついにメルセデスでさえ”なんチャってAMG”を出すまでになってしまった。昔のメルセデスだったら意地でもこういうモデルを出すことは無かっただろうが・・・・・。
 


写真5
今回からCクラスはオーソドックスな従来路線のエレガンス(写真左)と、スポーティなアバンギャルド(写真右)の2種の設定がある。
写真は何れもC200で、エレガンスが450万円、アバンギャルドが460万円と価格的には変わらないから、好みで選ぶことになる。


写真6
Cクラスは代々2クラス上のSクラスと共通のデザインだったが、今回もイメージが似ている。
左がC200エレガンスで右はS350。

15年ほど前、すなわち開発コードが200番台(W2**)になった頃から、メルセデスセダンのスタイルは一番大きなSクラスと一番小さいCクラスが、大きさは違えどもデザイン的には似ていて、中間のEクラスは少し違うというのが基本となっている。 今回のCクラス(W204)も現行のSクラス(W221)とイメージが似ている。写真6を見れば、タイヤハウスに沿ったフェンダーの膨らみやCピラーとウエストラインのつなぎ方など、共通点が多いのが判るだろう。

昔からCクラスや190の事を”小ベンツ”と言って馬鹿にする輩がいるが、実際に街中を走っている車を見て、一瞬でCクラスと判断できるのだろうか。まあ、Eクラスの場合は4つ目だから判るにしても、案外CをSと見間違えるケースはあるのではないか?
 


写真7
C200エレガンスの室内。写真はレザーシートが装着されているが、本来はクロスとなる。
 

 


写真8
C300アバンギャルドSの室内。シートはレザーのスポーツシートとなる。

 


写真9
リアーのスペースはこのクラスとしては標準的。
大人4人なら長距離走行も可能だが、Eクラス以上に比べれば、やはり狭い。
 

 

 
 

内装は例によって豪華絢爛どころか質素ではあるし、1980年代までの”最善か無か”の時代のように、「実用車の内装はこれで良いのだ」と言うような強烈なメッセージもないが、それでもメルセデスはメルセデス。その独特な雰囲気はちゃぁ〜んと持ち合わせている。 ダッシュボード付近のエレガンス(写真10)とアバンギャルド(写真11)の違いは、ウッドパネルの色(ウォールナットとブラックメープル)、メーターパネルの色(ブラックとシルバー)くらいで、他の部分は共通となっている。エンジン停止時はダッシュボード中央上部のディスプレイは閉じられていて、イグニッションオンとともに開く。全車に標準のナビの操作はコンソール後方のコマンドダイヤルと呼ばれるダイヤルで操作するのはSタイプと同じ。といえば聞こえは良いが、言ってみればi-Driveのパクリ(写真1 2)。こんな所も昔のメルセデスならば意地でもBMWの真似なんてしなかった筈なのに・・・・。
エンジンの始動は電子キーをスロットに差し込むが、スターターボタンは無く、差し込んだ電子キーを捻ることでスタートし、この時、中央天部のティスプレイはムニューっと起き上ってくる。ATのセレクターは最近のメルセデス独特で、ジグザクゲートのくせに根元にレザーのブーツが被さっていてゲートが見えないので、メルセデスの門外漢にはスムースにDまで入れるのは至難の業だ。
先代Cクラスのシートはハッキリ言って世間の評判は良くなかった。座面のサポートをスプリングで吊るす変てこな方法で、決して座り心地の良いものではなかった。巷ではトヨタを意識して原価低減のやりすぎだなどと陰口を叩かれていたが、成るほどトヨタの低コストを見習ったら椅子の出来の悪さまで見習ってしまったということか。とは、いっても先代Cだってカ○リ辺りのヘニャヘニャシートよりは遥かに良いのだが・・・・・。そこで、新型のシートはと言えば、流石に先代より良くなっていた。シートの調整はC200がシートの側面下にあるスイッチと前後のみは シート前部の座面下のレバーで行う のに対して、C300の場合はドアのインパネについたスイッチを使用する(写真14)という、良き時代の方式を採用している。
Cクラス、というよりもメルセデスのパーキングブレーキは伝統的に足踏み式で、しかも解除はダッシュボード上のレバーで行う(写真13)。最近は国産車でも足踏み式パーキングブレーキは増えているが、その殆どはプッシュ/プッシュ式、踏んでON、もう一度踏んでOFFというタイプで、どうもこれはシックリしない。解除レバーを持つのはクラウンくらいなものだろう。流石はクラウン!ところで、あのプレミアムブランドは?
 


写真10
エレガンスの室内ではウッドトリムにウォールナットが使用されている。写真はイグニッションONの状態なので、ディスプレイが起き上がっている。
 

 
写真11
こちらは、アバンギャルドの室内で、ウッドがブラックメープルなことと、メーターパネルのボードがシルバーなとろこが大きな相違点。写真はイグニッションOFFの状態なので、ディスプレイが閉じている。
 
 


写真12
コンソール中央手前のコマンドダイヤル(黄色い↓)とディスプレイで各種セッティングを行う。要するに、iDRIVEのパクリ!
 

 


写真13
パーキングブレーキは足踏み式@で、解除はレバーAによる。この方式が正しい姿で、勿論クラウンもコレと同じ方式を採用している。
 

 


写真14
C200はシートの調整スイッチがシート側面(写真上)で、C300はドア内張り(写真下)となる。
 

   
 
 

この続きは後編にて。

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