AUDI Q7 3.6 FSI quattro (2007/12/1)


全長5.085m×全幅1.985m×全高1.74mの外寸はカイエンやX-5と比べてもひときわ
大きさが目立つ。フロントエンドは誰が見てもアウディ以外に有り得ない形をしている。

B_Otaku の試乗記ではSUVシリーズと銘打ってポルシェカイエンS、メルセデスG55 AMG、BMW X-5 3.0si そしてVWトゥアレグV6と続けたが、そこで一休み。しかし、アウディの新型SUVであるQ7のリクエストが意外と多かった。更にはレンジローバー、ボルボXC90というリクエストもあったが、その中から珍しさも手伝ってアウディQ7の試乗と相成った。

実際に目の前でQ7を見ると、その大きさに圧倒される。欧州車というよりも、まるでフルサイズのアメ車のようだ。実はB_Otaku は試乗の前にスペックなどを頭に叩き込む、いわゆる”予習”をやらない。理由は、スペックなどを知ると先入観を持ってしまい、試乗フィーリングを素直に感じなくなってしまう危険があるからだ。なにっ?「ただサボっているだけだろ!」という、あなた。それは・・・・・実は・・・・・正解です。ハイ。

 

さて、今回のQ7は上の表で見ても判るように、スペックにおいてはビッグサイズSUV中でも一際大きい。 長さは5mを超えているし、幅も2mに限りなく近いから、なるほど一目見てバカデカく感じたのは、気のせいやデザイン的な原因ではなく、本当に大きいからだった。
大きさを別にすれば、スタイル自体は誰が見てもアウディと判るアイデンティティに満ち溢れてはいる。アウディのオフロード系といえば、数年前に試乗した先代モデルのオールロードクワトロを思いだす。 このクルマは当時の輸入車全ての中でもトップクラスの乗り味と、運転席に座った瞬間にため息が出るほどの高級感、見かけの高級感ではなく本当に質の高さを感じ、メルセデスやBMWを大きく引き離した内装の魅力など、正直言って本気で欲しいと思った一台でもあった。その、アウディのSUVだから、もしかして、あのオールロードクワトロのSUV版かという期待も込めての試乗となる。さて、結果は?


写真1
リアスタイルは好みの分かれるところだろう。リアドアのラインを見ると、ハッチの大きさがよく判る。

 


写真2
サードシートを畳んだ状態でのラッゲージスペースの広さは圧倒的だ。

 


写真3
リアスペースも流石に広いがシートはどちらかといえば二人用で、長距離の三人掛けは想定外のようだ。

 


写真4
写真でもドライバーズシートの高さが良く判る。それにも増してダッシュボードは更に高い。

 

 

Q7のラインナップはV6の3.6 FSIクワトロ(5人乗り)が698万円。アダプティブエアサスペンション仕様が738万円で、V8版は4.2FSIクワトロが945万円で、エアサスは985万円となる。3.6ℓの7人乗り(3列シート)は5人乗りに対して50万円高く、4.3ℓは標準で7人乗りとなる。今回の試乗車は3.6FSIの7人乗りのために価格は783万円と、ライバルのBMW X−5 3.0siと同価格となっている。

既に述べたようにサイズの大きい事には圧倒されるが、リアゲートを開けると全長5m超は伊達ではなく、特にサードシートを畳んだ状態のスペースは極めて広い。しかもリアゲート自体が目一杯大きなサイズで、開口 面積の大きさも圧倒的だから、 箪笥の一つも積みたくなる。ただし、リアから眺めたスタイルは、何やらヌメーっとしていて、好き嫌いが分かれるところだ。
 


写真5
シボの深いレザーシートは決して悪くはないが、先代オールロードの英国車的ななめし革を期待すると裏切られる。

 


写真6
ウッドの質も先代オールロード程の高品質ではないが、これも決して悪いものではない。

 

ドアを開けて乗り込むにと、これまた運転席の高さに圧倒される。背の高いSUVは、どんな車種でもサルーンに比べて運転席が高く、路面を見下ろすようになるのは当然だか、このQ7の高さは尋常じゃない。さらに、意外にもダッシュボードの位置が高いから、ドライバーズシートに座った眺めは路面を見下ろすというよりも、ダッシュボードの上から外を覗くようで、しかも着座位置自体は物凄く高い位置にいるという、今まで体験したことの無い視界が広がることになる。 後で写真を見たら、ダッシュボードの位置も高いが、それに輪を掛けたようにウィンドウスクリーンの下端も高かった。ただし、これは10分も運転したら慣れたので、実際にオーナーになれば特に問題はないだろが、このクルマをカタログで見ただけで気に入って買うような場合(普通は無いだろうが)は、あとで痛い目をみる可能性があるから、少なくとも実車のチェックは必須だ。

室内はアウディらしく高品質な仕上げを感じられるが、先代のオールロードクワトロの溜息が出るほどの高級感と比べてしまうと、ちょっと見劣りがする。どうも、最近のアウディは新型になる度に原価低減をしているようで、この方針は旧来のアウディのファンにとっては寂しいのではないだろうか。シート表皮はシボが深く厚めの革を使ったBMW的なもの (写真5)で、これはこれで良いのだが、やはり先代オールロードに代表される、英国車のようななめし革に比べると、これまた寂しいものもある。それでもウッドパネルの質や色などは以前の面影を残してはいて、メルセデスやBMWとは一味違うこから、まあ一安心というところか(写真6)。
 



写真7
高い着座位置に対して、更に輪を掛けたように高い位置にあるダッシュボードと、それにも増して
下端が高いフロントウィンドウだから、慣れないと違和感を感じる運転姿勢となる。
 


写真8
一目でアウディとわかるメーターはA6に似ている。それにしても奇数表示の速度目盛りは慣れないと見難い。

 


写真9
試乗車はエアサス装着モデルのために、電子的にサスペンションの特性と車高を切り替えられる。

 


写真10
足踏み式のパーキングブレーキペダルはフートレストに邪魔にならない位置にあり、リリースはレバー(黄↑)で行う。やはりこの方式が一番良い。

 


写真11
ダイヤル式のライトスッチはポルシェにソックリの形状をしている。

 


写真12
ATセレクターはアウディ御なじみのDの手前にSがあるタイプ。その手前のスイッチ群の左奥がエンジンストップ、手前がスタートのボタンで、門外漢にはエンジン始動からまごつく事になる。

 


写真13
赤いLED表示は、いかにもアウディという雰囲気になる。
左右独立の温度設定は下のツマミでアナログ的に設定をするし、オーディオにしても操作は一般的で、初めてでも面食らう事は無い。

 


写真14
V型6気筒、3.6ℓエンジンは280ps/6200rpmの最高出力と360Nm/2500rpmの最大トルクを発生する。
このスペックはVW トゥアレグと全く同じで、調べてみたらエンジン型式はどちらもBHK、要するに同じエンジンだった。

エンジンのスタートは当然ながらハイテク仕様のインテリジェントキーを所持して、スターターボタンを押せばよい。ダッシュボードにあるスターターボタンを押す・・・・・・つもりで、んっ、ボタンが無い。なんと、コンソールボックス上のATセレクターの手前にある、各種スイッチの左上がエンジンストップ、その手前がスタートのボタンだった(写真12)。アウディの門外漢は、一人で行き成り発進する場合には、エンジン始動からまごつく事になるだろう。 アウディ独特のDの手前にSがあるATセレクターをDに入れて、ブレーキペダルを踏みながら、ダッシュボード右下のパーキングブレーキリリースレバーを引いて解除する(写真10)。国産車のようなプッシュ/プッシュタイプではなく、ちゃあんとリリースレバーを装備しているのは、ある面当然ながら妙に嬉しくなる。

走り始めた第一印象は、やはり重量級丸出しだが、その割には3.6Lエンジンはまあまあの動力性能をみせてくれる。エンジンは型式名もスペックも、VWトゥアレグのV6と全く同じ。しかも、Q7のほうが幾分車両重量も重いにも係わらず、なぜか動力性能はQ7のほうが活気がある。スロットルの味付けが違うのかもしれないし、ギア比の違いもあるだろうが、とにかく今回のQ7は動力性能としては不満がないレベルだった。 と、いっても、これだけの重量級のSUVだから、スポーツカーのような加速は望むべくも無く、重量を感じさせない大排気量車らしいトルク感満点というのは期待するほうが無理だから、アメリカンな高級SUVのフィーリングを味わうならば、V8版を選んだほうが良いかもしれない。

試乗車はエアサス装着モデルだったが、これはコンソール上のスイッチにより走行モードが切り替えられ、その状況はディスプレイに表示される(写真9)。今回は時間の関係から”コンフォート”に設定しての試乗とした。それが原因の一つかもしれないが、Q7の走行感は路面の凹凸でピッチングが起こり、まるで一昔前の大型高級乗用車のようだ。言ってみれば”アメリカン”というか、 巨大なボディは路面に従ってユラ〜リ、ユラリと上下する。設定を”ダイナミック”にでもすれば多少は改善されるのだろうが、いくらコンフォートモードとはいっても、ドイツ車なのに、この基本設定はチョッと驚く。ただし、重量感という面では圧倒的だから、こういう乗り味が好きなユーザーには良いかも知れない。

乗り心地が大味なことと共に、ステアリングもかなりトロイ。ステアリングの操舵角も大きく、 トゥアレグ等の感覚でステアリングを切ったら、チョッときつめのコーナーでクルマは外に向きたがり、慌てて切り増しをした。だたし、この鈍い操舵感と多目のアンダーステアは現行タイプのA6でも経験しているから、アウディの4WD(クワトロ)に共通した特徴ともいえ、これはニュートラルステアによるスポーティーなハンドリングを特徴とするBMWは勿論、安定性を第一とするメルセデスとも異なる。こんな特性だから 、Q7の直進安定性は抜群で、広い道をユーラ・ユラとクルージングするには正に最適だ。では、狭い道ではどうかといえば、標準的な市町村道では、センターラインからはみ出さないようなラインをとれば、必然的に左は一杯になっている。路肩に自転車でもいれば、減速して対向車をやり過ごさないとパスできないなど、結構気を使うし、速度もユックリと走るしかない(写真1 6)。これが裏道ともなれば、更に苦労する事は言うまでも無く、東京の世田谷などの狭い裏道には入る事すらできないだろ。

この全てが大味で巨大なSUVも、何故かブレーキはシャキッとしている。初期の遊びこそ、ポルシェなどよりは大きいが、その後のフィーリングはカイエンに近いものがあった。そんな事を感じながら、試乗の中間地点で写真撮影のために車外に 出て良く見たらば、その形状からしてブレンボの対向ピストンキャリパーが装着されていた (写真17)。しかも、黒いアルマイトによる表面処理の色も質感もポルシェのベースモデル、それも同じSUVのカイエンではなく、むしとカレラ (写真18)やボクスターとほぼ同じだった。更には、ポルシェ独特のパッドのトルク受けをキャリパーに圧入したピンを使用する方式まで同じで、これは間違いなくポルシェ設計のブレンボという事になる。ブレーキフィーリングがポルシェに似ているのは、同じキャリパーを使用していた事 が大きな原因だった。ただし、ブレーキというのは最終的にはクルマ自体の特性によるところが大きいから、この柔らかいエアサスと巨大な車体は、急制動をしてみると、吸い付くようには止ま るというの無理にしても、大型のSUVとしては十分合格でもある。
 


写真15
フロント・リアともに255/55R18タイヤが装着されている。写真はリア。


写真1
2mに迫る車幅は、普通の県道、市道では流石に大きすぎる。どういうラインを取るかではなく、左右の隙間を決めれば必然的にラインも決まる。

 


写真1
フロントキャリパーを良く見るとブレンボの対向ピストンのようだ。しかも仕上げといい、独特のピンによるパッドのトルク受け構造(黄色い↓)といい、明らかにポルシェ設計と思われる。

 


写真1
この写真はポルシェカレラのフロントキャリパー。色や形状がQ7とそっくりで、トルク受け構造も同じ。従来、この構造はポルシェ以外のブランドへは装着されているのを見た事がなかった。

 

現在のアウディはVWグループで、そのVWはポルシェの傘下となった。そうなると、大型SUVであるカイエン、トゥアレグ、そしてQ7は同じグループの車種となるから、住み分けを狙うのは当然でもある。SUVとはいっても、スポーティーな路線を徹底しているのはカイエンで、ポルシェブランドということからも、当然ではある。トゥアレグはカイエンとは兄弟関係にあるが、カイエンに対して、質素というかハイコストパフォーマンスというか、 とにかく買い得度は満点で、その割には他のライバルに比べても決して安っぽいわけでもなく、動力性能もまあまあ、そして操舵性や安定性も結構イケルという、正に質素な中にも基本性能はシッカリしている買い得車種だ。これはゴルフやパサートのコンセプトそのものでもあり、言い換えればVWそのもののSUVに仕上げられていた。そして、Q7はといえば、カイエンともトゥアレグとも違う、もっとアメリカンで大らかなクルマに仕上げられていた。これは、今まで描いていたアウディのイメージそのものではない ところが、カイエン、トゥアレグと異なる点だ。価格的にはBMW X-5と競合するが、特性はマルで違うから、これはもう、どちらが好みかで決めるしかない。これだけ乗り味が異なると、ちょっと乗り比べただけでも、即座に自分の欲しいのはどちらかが判るから、悩むことはないだろう。

ただし、本文中で何度か触れたが、理想の万能車ともいえた先代のオールロードクワトロが正常進化して、よりSUV色を強めた車種を期待すると、大いに裏切られることになる。 既に前半で触れたように、先代オールロードは本気で買おうかと考えた事もあるほど、当時としては抜群の乗り味と内装だったから、余計に思い入れがあるのかもしれない。日本では元々マイナーな存在でもあるアウディの、そのまたマイナーなQ7だから、乗り比べて気に入ったら買えば良いといっても、実際に試乗車なんて滅多にないのも事実で、今回の試乗車も輸入元の所有するデモカーが偶々回ってきたタイミングでの試乗だった。 個人的には、この狭い日本の実情には全く合わないクルマだと思うし、実際に走っているのも見た事がないから、恐らく販売台数は少ないだろう。そういう意味ではちょっと珍しくて面白しそうだから、余った経費で買ってみようか、というユーザーには良い掘り出し物かもしれない。勿論、V8を選ぶのは言うまでもないが。