MINI COOPER S (2007/4/6) 前編 ⇒後編


知らなければ、これがフルモデルチェンジした新型とは気が付かない。いや、知っていても何処が
変わったのかと疑問に思うほどに先代のイメージを引き継いでいる。
それにしても、この試乗車は結構派手で気恥ずかしい。

フォルクスワーゲン(VW) ビートルとならんで、20世紀後半の超ロングセラーと言えば英国のミニがある。最初のモデルは1959年にオースチン(セブン)およびモーリス(ミニ・マイナー)という2つのブランドで発売された。このクルマの設計者は言わずと知れた天才アレックス・イシゴニスで、このミニこそが現代でも欧州小型車のスタンダードでもある横置きエンジンによるFF2ボックスの原型であることも、既に周知の事実だろう。このオリジナルのミニ ・マイナーにイシゴニスと、その友人であるジョン・クーパーが1962年に共同で開発したのがミニクーパーで、オリジナルに対してエンジン排気量をアップし高性能キャブレターやディスクブレーキを装着した高性能版だった。実はこのクルマはWRCの国際ラリーに出場するためのホモロゲーションモデルで、言ってみればランエボの本家本元ということになる。そして1963年にはミニクーパーの更に高性能バージョンであるクーパーSが発売された。今回試乗する新型BMWミニのクーパーSというブラント名は実に44年間も引き継がれたものであることは実に驚くべきことだ。国産車でこれに匹敵するグレード名といえば、GT−Rという事になるが、流石に 年季では1963年以来というクーパーSには勝てないのが残念だ。

このオリジナルミニは2000年頃まで造り続けられ、その後はローバーの経営権を取得したBMWによる全く新しいMINI(オリジナルに大して大文字で表記する)として出発したのが2001年で、日本では2002年に発売となった。このニューMINIはオリジナルの雰囲気を上手く出して はいるが、ボディはオリジナルと比べるとはるかき大きく、当然全く別のクルマでもある。


写真1
オリジナルミニは1959年から2000年まという超ロングセラーだった。後期のモデルはマダマダ現役で結構見かける。

 
 


写真2
先代のミニクーパー。右の新型と比べてみれば・・・。

 


写真3
こうして、2つを並べてみれば、成る程、微妙に違いはあるが、今時マイナーチェンジだってもう少し変えるものだ。

 


写真4
今度は真横から見た先代。

 


写真5
新型はウエストラインが高くサイドウインドウの高さが狭いなどの違いがある。

 

この、BMW MINIが今回フルモデルチェンジとなった。ところがこの新型は先代と並べても何処がどのように変わったのか?よく判らないほどにキープコンセプトとなっている。前から見ても殆んど同じ。真横からみれば、何となく違うのが判る。 外形寸法は先代の全長×全幅×全高が3650×1690×1455mm に対して、新型は3700×1685×1430mmと僅かに全長が長く、高さが低い。 ホイールベースはどちらも 2465mm と変わらない。 外観が殆んど変わってないのに対して、エンジンは全く新型となった。先代はBMWとダイムラークライスラーの共同開発だったのに対して新型ではBMW製となり、性能的には クーパーが116psから120ps、クーパーSが170psから175psと数字的には大きく変わったわけではないが、さてフィーリングはどうなのだろうか?
なお、このエンジンはほぼ同じ物がプジョーでも造られていて、新型の207に搭載されている。

今回の試乗車はクーパーSの6MTでベース価格が295万円。これにレザー・シート(27万円)とクラウン・スポーク・アロイホイール17インチ(205/45R17、12万円)が装着されていたので、 合計の車両価格は334万円となるから、さらにオーディオや内装等を気に入った仕様にすれば、支払い総額は殆んど400万円に迫ることになる。 国産車も含めて、どうも最近のクルマは新型になる度に値上がりしているような気がする。数年前なら総額400万円と言えば結構な上級車だったし、BMWならば3シリーズ(318i)が十分に買えたものだったのだが。  


写真6
リアのセンター2本出し排気管がクーパーSであることの証となる。

 


写真7
ラッゲージスペースは狭いが、積載性の良さを求めてミニを買うユーザーはいないから、特に問題はない。

 


写真8
試乗車のシートはオプションのレザーシートでしかもインテリアがブラックの試乗車はこの写真の角度から見るとオーソドックスでもある。

 


写真9
リアの足元は最小限のスペースしかない。ギリギリ4シーターと言えるか言えないかとう状態で、2+2と割り切ることも必要だ。

 


写真12
ドアハンドルはグリップが固定されていて写真の矢印部分に仕込まれたレバーを握ることで開錠される。良き時代のメルセデスのようだ。

 


写真11
これは内装にレザー/ファブリックのコンビシートを装着した展示車の場合。ミニらしさという点では試乗したクルマより上を行っているような・・・・。

 

試乗車のボディーカラーはクーパーSのみに設定されているレザー・ブルー・メタリックという派手で目立つ色で、屋根とサイドミラーとホイールが白、更にはボンネットストライプ (これも白)とドアの側面には”32”と書かれたゼッケンのような大きなステッカーが貼られていて、ハッキリ言ってこれに乗るのは気恥ずかしい。

ドアを開けようとしてグリップを握ると、何故か凄くガッチリ感がある。良く見ればドアハンドル自体はボディに固定されていて、ハンドルの内側にあるレバーを握ることでドアを開錠する (写真12)。 最近はグリップ式のドアハンドルが流行っているが、そのほとんどはグリップ自体を引っ張る方法だ。このミニのようにグリップが固定されているのは「最善か無か 」の時代のメルセデスが採用していたが、たぶん2世代前のCクラス(W202)が最後だったと思う。 メルセデスがグリップ式のドアハンドルを採用していた理由は、事故の時にグリップを引っ張って損傷したドアを強引に開けたり、クレーンで吊り上げる時にフック代わり にワイヤーをかけられるからだった筈だ。 ところが、今のメルセデスはハンドル自体を引くと手前に動くことでロックが外れるので、事故の時にワイヤーなんか掛けたらレバーがぶっ壊れて外れるんじゃないかと思うような造りになってしまった。 その面ではミニの方式は好感が持てるが、残念ながらフィーリングは最盛期のメルセデスのようにガッチリはしていない。

そんな事を考えながらドアを開ければ、そこに見えるのは巨大なセンターの速度計やトグルスイッチを使った各種のスイッチなど、これはもう誰が見てもBMWのミニに違いないと思うほどにキープコンセプトだが、細かいデザインは結構違うようだ。ミニの内装は多くのオプションやカラーが用意されていて、その組み合わせは膨大となる。試乗車は無難なブラックの内装(写真8〜9)だったが、ショールームに展示されていたクルマは同じクーパーSながら、レッド/ブラックのコントラストカラー(写真11) で、このほうがミニのコンセプトに合っているような気もする。

シートに座ってみれば、オプションのレザーシートは適度に柔らかく、座った瞬間は多少沈むが直ぐに底突きして安定する。サイドのサポートもまあまあで、レザーの表面も通気用と滑り止め(らしい)を兼ねて細かい穴があることもあって滑ったりはしない。ただし、ポルシェのようにカチンカチンの座面とガッチガチのサポートとは違うし、兄貴分の1シリーズM−Spのシートとも違うが、不満はでないレベルでもある。

エンジンの始動には、円盤のような奇妙な形のインテリジェントキーをダッシュボート右側のスロットに差込み、START/STOPと書かれたボタンを押す(写真17)。 試乗車はMTだったから、始動にはクラッチベダルを踏み込むが、この時にクラッチペダルがヤケに右に寄っている事に気が付く。そう思ってペダル配置を良く見たら、国産車も含めてRHDの場合はホイールハウスに干渉してペダルが左に寄りがちなエンジン横置きFF車としては例外的にペダル配置が右 寄りな事に気がつく。そのために、マルでLHDのようにアクセル位置が右に寄っていて、ブレーキペダルさえもがセンターより多少右だから、右足の負担は軽くて疲労も少ないだろう。 しかし、その分だけクラッチペダルも右寄りで、しかもフートレストさえも右寄りで、おまけに間隔が狭いので、慣れないとクラッチを踏もうとした時に靴の左端がフートレストに引っかかることもある。 これは130iでも経験した輸入RHDのMT車ではお馴染みの配置とは正反対で、右足は天国、左足は地獄となる。と、言っても慣れの問題だから、実際にこのクルマのオーナーとなれば、直ぐに慣れるであろう程度のことには違いない。


写真12
先代のコンセプトを引き継いだ室内は好き嫌いがハッキリ分かれるところだ。
 


写真13
正面には回転計とインフォメーションディスプレイを組み込んだ丸型メーターが一つだけ。ただし、設定でディスプレイにデジタル速度表示が可能だ。

 


写真14
輸入車のRHD-MTとしては例外的に右に寄っているペダル配置。タイヤハウスの突起は全くなく、アクセルペダルは右の壁一杯にある。その分、クラッチとフートレストも右に寄っている。

 


写真15
先代から受け継いだマルで柱時計のようなセンタークラスタ。

 


写真16
特徴的なセンターの巨大な速度計の下半分はオーディオの操作パネルとディスプレイになっている。速度計に組み込まれているのは燃料計。

 


写真17
円盤型の不思議なキーをダッシュボードのスロットに差し込んで、右の小さな押しボタンスイッチでエンジンの始動/停止を行う。

 


写真18
上からCDのスロット、音量ツマミ、空調のコントローラ、そしてトグルスイッチ。慣れないと何がナンだか判らない。

 

この続きは後編にて。

⇒後編へ