VW Passat V6 4MOTION (2006/5/7) 前編
※この試乗記の内容は2006年5月時点のもので文中の価格や状況は現在とは異なります。

今回はフォルクスワーゲン(VW)の新型パサートに乗ってみた。VWのラインナップの最上位に位置するのがパサートで初代は1973年(欧州、以下すべて同じ) にリリースされた。基本的には同じグループのアウディ80をベースにファストバック仕様としたものだった。 続く2代目(1980年)もアウディ80ベースのファストバックで、初代と異なりテールゲートが付いていた。この2代目のバリエーションとしてノッチバック 版が日本でも1984年からニッサンでノックダウンをしていたサンタナで、中国では今だに最もメジャーなクルマとして現地生産されているという、超々ロングセラーだ。

3代目は1988年リリースで、2代目までがアウディ80ベースだったのに比べてゴルフの上級車的なコンセプトに変更された。次の4代目もキープコンセプトで93年末にリリースされた。そして、5代目は99年というように 欧州では3代目以降はキチンと6年毎にフルモデルチェンジされてきた。ところで、輸入車の場合、最近は本国仕様がリリースされてから日本仕様が準備出来るまでのライムラグは長くて数ヶ月、売れ筋なら2〜3ヶ月となり、欧州からの海上輸送が1ヶ月掛かる事を考えれば、ほぼ同時と言っても良い状態となったが、10年程前には考えられない事だった。特にパサートの場合は本国で発売が開始されてから、日本で発売されるのが2年遅れなどが当たり前で、其れまでは本国では既に旧型となったモデルを細々と売っている状況だった。流石にこんな事をしていれば、他社に遅れを取るのは当然で、最新の6代目ではライバルと同程度まで改善された。

パサートに関する思い出としては、亡き父がニッサン製のサンタナを買ったことがあった。 確かグレードは2.0Xi5だったので価格は251万円。これは内容的に同等に近かったアウディ80より大幅に安かったから、その買い得感で買ったようだ。当時 B_Otaku も乗ってみたが、確かに国産車には無いものを持っていて、成る程欧州車だと納得できる面もあったが、当時のメルセデスあたりに比べれば同じ欧州車と言っても圧倒的に差があった。父は車検(当時は初回も2年)を待たずにMBの190E(W201)に乗り換えてしまった。 同じ2L級の小型車とは言え190Eは当時で約530万と、サンタナの2倍もしたから直接比較するのは可哀想だが、当時の190Eとサンタナの差はマルで別世界くらいに違っ ていた。 勿論、サンタナと国産屋も大いに違ったのだから、190Eとコロナなんて月とスッポンを絵に描いたようだった。それに比べれば、現代のW203(現行Cクラス)とパサート、それに国産車も含めて差は大いに縮まってしまった事になる。

先代の5代目パサートは3年ほど前に今回とは別のデーラーで見た事があったが、展示車の2.0ワゴンは300万円(ただし、当時だから消費税抜き)を切る買い得価格は良いとしても、 余りにもチャチだったのを覚えている。それから1年ほど経って、パサートに4L、W8エンジン搭載モデルが発表され、その後に偶然近所で見かけたが、 前年に見た2.0ワゴンと同じパサートである事が信じられないくらい高級感に溢れていた。


2代目パサートのハッチバックモデルがサンタナでニッサンにより国内生産(1984〜88年) された。
価格は193.5(1.8Li)〜288.3(2.0Xi5 DOHC)万円と輸入車に比べて買い得だった。


3代目パサート(1988〜1993) 日本では90年から販売された。グリルレスが特徴。


4代目パサート(1993〜1999) 3代目のリファイン版でゴルフベースの4ドア版ジェッタの兄貴的な性格だ。欧州では8割以上がワゴンボディのヴァリアントで、セダンは少数派となっている。


先代(5代目)パサート(1999〜2005)
写真はワゴン。
W8気等を除けは先代パサートはチャチい。

ところで、パサートの販売状況は如何なのだろうか?まずは米国に於けるパサートとライバルの販売台数を比較して見よう。

車種名  (販売価格)     2004年販売台数  2003年
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パサート ($22,950 - 31,900)   67.6千台   77.0千台
AUDI A4  ($28,240 - 45,490)   47.2千台   51.0千台
LEXUS ES ($32,300 -       )   75.9千台   65.8千台
BMW 3er  ($30,900 - 38,500)  106.5千台  111.9千台
MB C-Class($29,200 - 54,450)   69.3千台   66.0千台
カムリ  ($18,270 - 27,520)  427.0千台  413.3千台
アコード ($18,225 - 29,300)  414.8千台  399.0千台
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こうして見れば米国でのパサートは、価格的にはMBやBMWのようなプレミアムカーとカムリやアコードのような一般的なクルマの中間を狙っているのが判る。 そして、販売台数はと言えば、決して大成功とは言えないまでも、アウディA4より多いしレクサスESと同程度だから、まあまあというところか。
次に、お膝元のドイツではどうなのだろうか?

ドイツ国内販売台数
車種名     2006年3月   2006年2月
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VW PASSAT    10,773台    8,145台
AUDI A4     10,456台    6,658台
BMW 3er     12,400台    7,057台
MB C-Class    6,793台    3,101台
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VW GOLF,JETTA  22,496台   13,444台
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TOYOTA COROLLA   4,871台    2,581台
TOYOTA AVENSIS  2,770台    1,623台
LEXUS IS      212台     140台
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ドイツ国内でのパサートは流石に強い。常に1位のゴルフは別格としても、2位のBMW3シリーズに迫る4位を獲得している。因みに3位にはオペルアストラが入っており、5位はアウディA4でMBのCクラスは12位となっている。欧州で人気と言われているトヨタアベンシスは、本場のドイツで2000台/月以上売れているのは大健闘と言っておこう。しかし、カローラの方が更に健闘している。今や欧米ではBMWやMB以上の人気とも噂のレクサスは、少なくともドイツでは悲惨な結果で、BMW3シリーズとは2桁も違うという事実は認識が必要だ。最も最近 は、欧州ではレクサスはマルで勝負になっていない事実が一般にも知られてきてはいるが。


パサートと言えばCピラーにもウインドウを持つ6ライトのサイドビューが特徴だったが、新型はBMW的なスタイルとなってしまった。


左右からの2本出し排気管とV6FSIのエンブレムが3.2Lであることを主張している。テールランプのデザインはヘッドランプの形状と共通している。

本題の6代目新型パサートのラインナップは、セダンがベースグレードの2.0(319万円)、ターボモデルの2.0T(365万円)、そして今回試乗したV6 4MOTION(439万円)の3グレード構成となる。 ワゴンボディは今回からヴァリアントと呼ばれ、こちらは現在のところ2.0(335万円)と2.0T(381万円)のみが発売されており、V6は設定されていない。2.0は直4、2、150psエンジンを搭載し、2.0Tはターボチャジャーにより200psを発生する。最上級のV6 4MOTIONは3.2L、250psとなる。先代に設定されていた4LW8の設定は新型にはない。

新型パサートのフロントグリルはアウディに端を発した、シングルフレームグリルと呼ばれるラジエターグリルがバンパー部分までつながるスタイルで、これはVW-AUDIグループの証ともいえる。 しかし、幾ら同じグループといっても、プレミアムブラントのAUDIと本来は大衆路線のVWが同じようなアイデンティティを持つのが多少理解できない面でもある。 実はこの新型は先代パサートがアウディA4ベースだったのに対してゴルフXをベースとしている。したがってエンジンは横置きだし、4MOTIONといっても常に4輪に駆動力が配分されるアウディとは異なり、リアが滑らない限りはFFとなっている。こんな事がお買い得な価格の秘密でもあるのだろうか?


リアの前後方向は決して広くは無いが、Dセグメントとしては標準的なスペースを持つ。


最上級グレードという事もあるが、VWのイメージとは大きく異なり、メルセデス顔負けのドイツ製高級車的雰囲気に満点の内装。


トランクスペースもDセグメントとしては標準的な奥行きだが、幅方向は決して広くない。 出世街道を狙う真っ当なサラリーマンにはゴルフバッグ4人分が入らない欧州Dセグは致命的だ。

ドアを開けると、そこには以前のパサートからは想像も出来ないくらいに高級な雰囲気に包まれた内装が見られる。これではアウディの立場は無いじゃないか、なんて思ってしまう。試乗車は現ラインナップでは最上級グレードだから、特に高級な内容なのかもしれないが、当日、2.0Tバリアントも展示されていたが、この展示車はオプションのレザーシートやポプラウッドのトリムを装着していたので、内容的には殆ど3.2と同じだった。こうしてみると、素の2.0が見てみたいものだが。

シートに座ってみれば、VWに乗るたびに感心する出来の良いシートの座り心地は実に良い。VWのシートを納入しているのはレカロ社という事実は結構有名のようだ。スピードショップ入りびたりのシルビア小僧あたりは、レカロ社がショップなどのルートで高性能なシートを売っている会社だと勘違いしているムキもあるが、自動車部品メーカーというのは量産車に装着するOEM品を作るのが本来の商売で、最低でも月に千個単位でないと採算に乗らない。ショップ等のアフターマーケット向けというのは、言わば片手間の副業と思えば良い。走り屋の兄ちゃんが憧れる、ビルシュタインのダンパーや、ブレンボのブレーキ、モモやナルディのステアリングなど、全てはOEMが本職の会社だ。


試乗したV6 4MOTIONの室内。ウォールナットのパネルとレザーシートは標準で装着される。VWというと安っぽいイメージが浮かぶが、新型パサートは、特にこの最上級のV6の内装はMBやBMWに勝るとも劣らないドイツの高級車的な雰囲気で満ち溢れている。


こちらはバリアント2.0Tの室内。白っぽいウッドはオプションのポプラウッドで、標準ではウッドパネルは装着されない。

いよいよ走り出す事にするが、この続きは後編にて。

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