BMW F40 118i (2019/11) 後編 その1


  

試乗のためにドライバーズシートに座ってみれば、ここはお馴染みの BMW の世界であり、同じCセグメントハッチバックとはいえ 118i M Sport (334万円) に比べてベースグレードなら100万円以上も安いカローラスポーツでは絶対に味わえない雰囲気もある、って当然だろう、という突っ込みが来そうだが、いやいや未だその差が判らないのが一般大衆というものなんすよ。

それでエンジンのスタートはというと、これも最近の BMW では標準となるコンソール上のスイッチを使用する。エンジンが始動すると、1.5L ターボは3気筒としては十分静かだが、耳をそばだてれば多少の振動はある。ATセレクターはこれまた最新のBMWに共通のもので、周辺の機器を含めて一体化されたものであり、3シリーズやX5とも全く同じユニットが付いている。

勿論そのユニット上の電動式パーキングブレーキのスイッチも最新BMWに共通であり、これを解除して走り出す。なお、メーターやペダルについても最近の新型 BMW に共通したものだから、今更説明は不要であろう。


写真31
スタートスイッチも他の新型と同様にダッシュボードからコンソール上に移動している。


写真32
コンソールも新型には他の最新モデルと共通の一体化されたユニットが装備されている。

写真33
新型のメーターは勿論フルカラーLEDタイプで、その表示も他の新型と全く同じだ。
しかしこうして見ると従来のメカ式のメーターが妙にレトロに見える。


写真34
ペダルも新型のセオリー通りにアルミスポーツベダルとなった。

実は今回の試乗では公道に出る前に、駐車場スペース内に設けられた特設コースでハンドリングを試すことが出来る (トップ写真参照) 。コースは直線の後にレーンチェンジを行い、次に180°ターン、そして90°の左直角ターンで、この2つは何れも左周りとなっている。

先ずは説明員が運転してコースを走って見せる。コースを覚えたところでドライバー交代して、先ずはレーンチェンジから始める。言うまでも無いが、今回はBMW のサルーンとしては初の FWD であり、さてその影響はと思いながら最初のレーンチェンジを行う。この段階で皮肉にも先代 F20 より明らかにレスポンスで劣るのが感じられてしまう。とはいえ F20 は BMW サルーンでは最も小さいボディに RWD という組み合わせの集大成であり、そのステアリングレスポンスは BWM ラインナップ中で最高だったから、それと比べるのは酷ではある。

次の 180°ターンではステアリングギア比が穏やかな事とそれほど強度ではないがアンダーステアは明らかで、車の先端は外側へ向きたがるのでステアリングをソレっと切るのだが、ここで持ち替えが必要となるまで回す必要がある。続く左90°ターンは180°よりも多少半径が大きいために、少し速度を上げられるが、勿論基本は変わらない。

ではこれをトヨタ車と比べるとどうかと言えば、トヨタの場合はお台場のメガウェブのコースにスラロームがあり、勿論コースの条件が違うとはいえ今回のレーンチェンジと比べてみると、カローラスポーツでは、う〜ん、まあ足回りに金が掛かっている1シリーズの方が多少安定感はあるとはいえ、明らかに勝っているとは言えない程度だった。

天下の BMW とはいえ、1シリーズの FWD 化は初であり、それ以前に2シリーズ ツアラーを世に出しているとはいえ、あれはミニバンの親戚であり、アンダーステアが如何のこうのという車ではない。対するトヨタはカローラの場合、1983年の E80 から FWD 化されたのだからその経験は何と三十数年もあり、この経験の差は無視できない。

今回は公道に出る前のハンドリングコースという中々のアイディアものであり、その意味では賞賛できるのだが、運悪く初めて FWD 化された1シリーズの経験不足を暴露する結果となってしまった。ところで、このコースが出来た時に最初に M2 で試走したという事で、この時は M2 の能力の高さに舌を巻いたというが、M2 は BMWで最小となる Cセグメント RWD だから、その軽快なハンドリングは当然かもしれない。その M2 は今のところ RWD モデルを継続販売しているから買うなら今のうちだ。M2 については下記の試乗記があるが、その後の MC で更にパワーアップされている。
 ⇒ BMW M2 Coupe 試乗記 (2017/1)

ハンドリングコースは納得するまで何周でも走行できるというが、3周程で終了にして公道の試乗に移る事にした。

つづきはその2にて。

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