Mercedes Benz A180 (2018/12) 後編 その2


  

話が前後するが、ドライバ−正面のメータークラスターは A180 では全面が一枚のカラー液晶ディスプレイを使用する最新のタイプであり、これは開発時点の違いからオーソドックスな C180 とは多いに異なるが、質感はやはり本物のメカを持つ C180 が圧倒的に上回っている。やはり CG によるバーチャルなメーターでは限界があるのだろうか? いや、待てよ。E クラスの場合も既にこの手のフルディスプレイタイプだったのを思い出した。そこで比較して見ると、同じく CG によるバーチャルなメーターにも関わらず、よりリアルで質感も勝っている (写真25) 。しかしIT 機器何てハードウェアは価格的にそんなに変わる訳が無いのだが、そこはヒエラルキーを保つために A クラスが E クラス並では問題があるのでワザと安っぽいデザインで表示しているのではないか、何て勘ぐってしまうが、まあそれは商売としては当然だろうし、EクラスのオーナーだってAクラスと共通のメーター何て見たらクレームを付けたくなるだろう。

写真25
A クラスのメーターは最新のフルディスプレイタイプだ。対するCクラスはオーソドックスなメカ式メーターだが、これは妙に落ち着く。
ところが、同じフルディスプレイのEクラスでは流石に表示の質が良い。

ここでボンネットフードを開けた時の眺めを C180 と比べてみる。車名こそどちらも "180" ではあるが、A180 は 1.4L 136ps/5,500prm 200N-m/1,460rpm 、C180 は 1.6L 156ps/5,300rpm 250N-m/1,200-4,000rpm と言う事で結構な差がある。ただし車両重量を考慮すれば動力性能は変わらないと言いたいのかもしれないが、やはり同じ "180" を名乗らせるのは釈然としないものがある。

そしてエンジンの配置はといえば横置き FWD の A180 とオーソドックスな縦置き RWD の C180 では大いに違うのは当然としても、それらの補機類までを完全にカバーで隠して見た目がスッキリしている C180 に比べれば、カバーが少なくゴチャコチャとしたメカ部がマル見えの A180 ではトヨタで言えばヴィッツとレクサス位の差がある (写真26) 。しかもボンネットフードを開けた時に支えているダンパーは普通は左右に付いているのだが、Aクラスの場合は何と片側だけだった。まあ今時エンジンルーム何て開けるユーザーは殆どいない事を考えれば問題は無いが、しかし "最善か無か" だった頃のメルセデスとは全く違う会社と思った方が良いかもしれない。それにしても‥‥寂しいねぇ。

写真26
同じ "180" でも A180 は1.4L 136ps/5,500prm 200N-m/1,460rpm C180 は 1.6L 156ps/5,300rpm 250N-m/1,200-4,000rpm と結構な差がある。

エンジンの配置も横置き FWD のA180 と縦置き RWD の C180 では大いに違う。また A180 には上部を覆うカバーが少なくゴチャコチャとしたメカ部がマル見えとなっている。

ボンネットフードを開けた時に支えているダンパーはAクラスの場合は何と片側だけだった。

さてそれでは操舵性と旋回性はと言えば、先ずは操舵力は軽めでレスポンスは決して悪くは無いが、これがスポーツモードの場合は‥‥って、実は前述のモード切り替え騒ぎで、例の馬鹿スタップがステアリングのみならスポーツモードが可能だとか訳のわからない事を言い出して、何やら設定を変えて事で妙に軽くてクイックな設定になった。確かにクイックと言えば言えるし、スポーティーといえばそうなのだが、スロットルレスポンスはトロイのにステアリングだけワザとらしくクイックという奇妙な状況となった。

まあそれなら少し過激にやってやろうか、とばかりに久々に派手な運転をしてみる。先ずは2車線の道路で急なレーンチャンジを繰り返すが車両は良く付いてくるし動きも軽快だ。車両重量自体は1,365s (欧州仕様) と決して軽くは無いのだが、その動きは妙に軽く感じる。

ここで青一の交差点を赤坂側から来て左折して乃木坂方面に進むと、例によって中速コーナーとして丁度良い左カーブが現れる。ここはこの付近の試乗では定番でありテスラの試乗ではその驚くべき低重心の安定性を見せつけられた場所だ。既にミッションはマニュアル状態でありコーナー手前で4,000rpm を維持しての臨戦態勢で突入すると、とても FWD とは思えない極々少ないアンダーステアで綺麗にクリアして行く。現行 BMW 1シリーズもCセグハッチとしてはトップクラスだが、流石にあれは RWD だから直接比べたらAクラスが可哀そうだが、同じ FWD のゴルフだったら決して負けていないと感じる。しかしコーナーリング中の微妙なステアリング修正は妙に軽くてオーバーレスポンスの特性は挙動がギクシャクしてしまう。

次にブレーキについてはメルセデスらしく無く妙に軽くて喰い付くような BMW 的なフィーリングで、寧ろ最近は少し大人しい味付けとなった BMW よりも BMWっぽいという妙な事態となっている。そのブレーキを C180 クラスと比べてみるとキャリパーの構成はどちらもショボい鋳物の片押しだが、見た目でも容量が C180 方が大きい事が判るが、まあこれは車両重量の重いCクラスだから当然だ (写真28) 。なおCクラスの場合は上級車種 (C200等) ではフロントにアルミ対向ピストンキャリパーが奢られているが、Aクラスだって将来発売される高性能モデルには採用される可能性は大きい。


写真27
A180 Style のタイヤは 205/60R16 と今時としては大人しいというかショボいものが標準となっている。


写真28
ブレーキはどちらも極々普通の鋳物製片押しシングルピストンキャリパーを使用しているが、当然サイズ(容量)が異なる。

という事で、スポーツモードで通常走行時の結果が良ければ5つ☆の評価になった可能性が大だが、運営会社とその社員のレベルの低さから残念ながら☆一つ減点、という感じだ。しかもメルセデスの場合は販売店にも問題がある場合も多く、Eクラス以上の客はソファーのあるエリアでコーヒーにケーキが付くが、Aクラスの客は普通のテーブルで使い捨て容器のコーヒーとか‥。って、想像していたら、友人が奥さん用のセカンドカーを探している事から前評判の良いAクラスを見にディーラーに行ったそうだ。それも以前嫌な目に合っているヤ○セは避けて別の販売系列に行ったのだが、展示車は昨日まであったが今は無いという事と共に、マルで売る気が無いのか相手にする気が無いのか、という想像通りの結果だったようで、まあこれが日本に於けるメルセデスの欠点であり、言い換えれば BMW からすればこれで大分助かっているのだろう。

近い将来に BMW も1シリーズを FMC するだろうから、C セグハッチを検討しているならそれまで待つのが賢明であり今飛びつくべきではない、と言うのは個人的な感想で、最後は購入する本人の考え次第だが‥‥。

うーん、今回は下請けの馬鹿社員のお陰で久々に毒舌が冴えわたってしまった。このところ年を取って丸くなったのとネタ切れ気味とで、独特のキャラクターにイマイチ陰りが出ていたが、これで今年は一気に盛り返す事にしよう。

ありがとう、メルセデス。ありがとう、下請けの馬鹿社員!