Nissan X-Trail Hybrid (2016/8) 後編 その2

  

”走る”については発売時のガソリン車の試乗でもそんなに悪くなかったが、これに対して安定性や旋回性はチョッと問題だった。それが今回どのくらい改善されているか、というのは動力性能以上に興味ある内容だったが、結論からいえば安定性も充分に改良されているし、旋回性能も弱アンダーで特に良いとは言わないがこの手のミドルクラスの SUV としては水準に達してはいる。この原因を考えれば、発売時の試乗車が初期生産車 (初期流動物件) で詰めが甘かったのか、それとも今回のクルマはハイブリッドということで重いモーターやバッテリーが床下にあることで重心が下がるし、後部に大型バッテリーを搭載することで重量バランスが良くなった、という事もあるだろう。実際にハリアーの場合でも乗り比べれば明らかにガソリンよりもハイブリッドの方が安定性が良いのが判る。

標準装備のタイヤは 225/60R17 と、まあ最近のこのクラスの国産 SUV としては標準的なものだ。ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクでフロントに至っては2ピストンキャリパーが奢られている。ただし、フィーリングとしては何故かストロークが妙に長くチョットした制動でもペダルが結構置くまでストロークするから、パニックブレーキでは床に近いくらい深いところまで行きそうだ。これは偶々試乗車の整備不良か、それともこのクルマはこれが普通なのか? ただし、制動力自体は充分だし踏力も適度だから踏み込み量が大きい事以外には別に問題はないから、慣れれば良しとするのだろうか?

そのブレーキのシステムだが、これは HV とはいえガソリンモデルと同じだろう。要するに HV 用として特別な事はやっていなさそうだ。日産の HV 用ブレーキシステムとしてはフーガハイブリッドから採用された電動型制御ブレーキというのがあるが、これはあくまで電動式で、トヨタのようなブレーキバイワイヤでは無いので間違わないように。ブレーキバイワイヤのワイヤというのは電線の事であり、本来ブレーキはペダルからホイールシリンダまでがブレーキ液を介するとはいえメカ的に繋がっているもだが、これがバイワイヤ、すなわち電線で繋がっているということで、日産の電動式はドライバーがペダルを踏んでもマスターシリンダーの前にモーターを置いてこれで機械的にマスターシリンダーへの力を増減するもので、日産自身もバイワイヤーなんて一言も言っていないし、まあモーター制御は電子式だろうが電子制御とも言わずに ”電動型制御” と表現しているところに苦しさが見える。

これについては、そのうち (気が向いたらば) 何処かの特別編でヤバイ話も含めて解説したいが、ひとつ言っておくと、この電動型制御を開発したのは日産系列の部品メーカーだが、まあ、そのぉ、デンソー辺りと比べると‥‥ですよ。


写真40
タイヤはこのクラスの国産 SUV としては標準的な 225/60R17 を標準装備している。


写真41
ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクでフロントには2ピストンキャリパーが奢られている。

試乗車にはインテリジェントパーキング機能というメーカーオプションが装着されていた。これはその名の通り車庫入れや縦列駐車を自走操縦でサポートする装置というが、まあ何はともあれ、やってみた。

 @ 最初に駐車方法を選択する。車庫入れが縦列か、そして方向が右か左かにより4つの中から一つを選択する。それにしても車庫入れとか縦列とか、その昔に教習所に通った頃を思い出す懐かしい言葉だ。
 A 前方にグリーンの枠が表示されるのでDレンジでゆっくりと前進する。

 B ステアリングは自動的に少し右に切られてクルマが斜めの状態になるところで停止とRレンジに入れるように指示が出る。
 C Rでゆっくりと後退するとステアリングは自動的に目的のスペースに入るべく操舵される。

 D 駐車スペースに入って行くのを確認しながら更に後退する。
 E 見事にピッタリを駐車枠内に収まった。

実際に試してみて、この機構が本当に便利で役立つと感じたかといえば、物珍しさは有るものの慣れないと返って使いづらいし、その前にある程度のスキルのあるドライバーならば、この手の駐車は決して苦にはならないだろうから、無くても一向に差し支えないだろう。

まあその前に、今回試したディーラーの駐車場はパーキングエリアを認識しやすいようにはっきりした区画表示がされていたし前方スペースも十分にあったが、これがもっと狭くて区画表示も細いロープをはっただけ、みたいな駐車場では果たして上手くいくのだろうか?


そろそろ結論に進もう。ガゾリン版のエクストレイル 20 は、元々エンジンスペックの割にはマアマアの動力性能だったが残念ながら安定性に不安があり、足回りを主としたシャーシーのチューニングの詰めがイマイチという感じだったが、今回のハイブリッド板である 20 HYBRID は他社を含めた今までの HV の常識通りで重いコンポーネントを後部の低い位置に配置することによる低重心化と前後重量配分の改善なども手伝い、これなら合格という程度にはなっていた。

エクストレイル ハイブリッドの価格はベースグレードの 20S HYBRID 2WD が267万円だから、同価格の国産 SUV はマツダ CX-5 2.2XD の283.5万円、スバル フォレスター 2.0i-L アイサイト (268.9万円) などで、他には三菱 アウトランダーとホンダ CR-V が該当するが、流石に今の三菱は勧められないし、CR-V は既にホンダファン専用車的になってしまった。というよりも、やはりホンダの主流はより小さいクラスであり、SUV でもフィットベースの Vesel が主体となっている。

なお今回の試乗車である20X HYBRID 4WD は上級モデルのために 306.5万円であり、更には各種オプションも付いていたから結構な価格となる。まあ試乗車なんて言うのは何でもありの上級モデルに乗せておいて実は安いのを売る、というのが常套手段だから、実際に購入する場合は精々ナビを付けて340万円。あれっ、これでも結構な値段になってしまう。

ところで、特別なクルマ好きではない普通のファミリーが買うクルマの価格は年収の 1/3 と言われている。ということは、270万円のエクストレイル ハイブリッドを買うには 810万円で、これは世帯年収だから女房殿がパートで100万円稼ぐとすると亭主の年収は約700万円となる。これは一部上場企業で比較的高目の給与の製造業の平均年収くらいだから、要するに決して貧乏ではなく、いや世間一般からすれば勝ち組でもあり、殆ど絶滅寸前の中産階級という事になる。

おっと、ここは特別編でなかった。この続きは‥‥近いうちに特別編をでっち上げよう。

それまで、暫しお待ちを。