BMW X3 xDrive 20d (2017/12) 後編 その1


  

ドアを開けてドライバーズシートに乗り込む動作はサルーンとあまり変わらず、要するにバブル時代に全盛だったクロスカントリー 4WD 車みたいにステップに足を掛けてからよじ登る、なんて事は全く必要無い。シートに座ってポジションを調整しベルトを締めると、まあそこは BMW のシートだから最近は著しく向上した国産車でもやはり敵わない自然なサポート感や表皮の滑りにくさ等がある。実は今回の試乗車にはオプションのレザーシートが装着されていたが、従来 BMW のレザーといえばぶ厚くシボのハッキリしたダコタレザーだったが、今回のモデルはヴァーネスカ・レザーというもっと薄くなめした素材を使っていたから、表面の肌触りはより柔らかくてグリップ感も増していた‥‥ような気がする。

エンジンの始動スイッチの形状や位置は基本的に F25 と変わらず (写真21) 、これを押してエンジンが目覚めると 523d と同様に神経を集中すれば僅かな振動を感じるところがディーゼルらしいが、勿論直ぐに忘れて (慣れて) しまう程度だ。AT セレクターは BMW 定番の電子式だが、それが配置されているコンソールの機器類は基本的に5シリーズとの共有が多い (写真22-23)。セレクターは勿論の事その右のモードスイッチや更にはそのスイッチのプレート、手前のパーキングブレーキスイッチや左のコマンドダイヤル、そしてそれらを囲むシルバーの加飾等殆どが5シリーズと共通 (写真24) だから、この面でも X3 は3というよりも5に近い。


写真21
スタートスイッチは形状、位置とも新旧ほとんど変わらない。


写真22
センターコンソール上面はデザイン自体は変更されているが機器類と配置に変更は無い。


写真23
コンソールの機器類は良く見れば5シリーズとソックリだった。


写真24
パーキングブレーキスイッチとそれらを囲むシルバーの加飾等殆どが5シリーズと共通となっている。

ペダルについては BMW は最近まで千数百万円の M モデルでさえもショボいウレタンパッドのペダルを使っていたが、最新の5シリーズでは方針を変えたのか、お洒落なスポーツパッドになっていた。X3 も写真の M Sport では5シリーズよりは地味だが、"光モノ” の入ったペダルとなっている (写真25)。

何時もの手順で発進し、駐車場内をゆっくり進んでから公道手前で停止してクルマの流れが切れるのを待つ。そして発進するが、M2等では細心の注意が必要な歩道との段差も SUV である X3 なら全く気にする事は無い。公道に出ての最初の加速感は、同じエンジンを搭載している 523d と大きく変わる事は無い。車両重量は 523d の 1,700s に対して X3 20d は 1,880s と殆ど10%程重い。ここでトータルでのギア比を比べると、ファイナルギア比はそれぞれ 2.929 および 3.231 とX3 の方が低いが、タイヤ外形が 677mm および 721mm と X3 は SUV だけあって大径のタイヤを履いている。結局ファイナルの減速比はほぼ変わらず、 1,600rpm 時の3速での速度は計算上 523d の 32.5q/h に対して X3 は 31.7q/h となる。と言う事は車両重量の 10% の差は体感上明確には感じられなかったといういう事だ。まあトルクの絶対値が 400 N-m という途轍もない値だから、実用速度域では 180kg くらいは目じゃない、ということか。


写真25
X3 も M Sport では5シリーズよりは地味だが、"光モノ” の入ったペダルとなった。


写真26
マニュアルシフト用のパドルやステアリングスポークのスイッチ類は、デザインは多少変われど大きな違いは無い。

今度はモードをスポーツに切り替えると、当然ながらレスポンスは良くなるから、ここで発進からのフル加速を試してみる。先ずは1速での回転数の上がり方は必要十分だが強烈な加速という訳では無く、やがて40q/h 付近で2速にシフトアップされると、当然ながら更に加速は衰える。ここで 523d のフル加速時を思い出して見ると、あちらはもう少し加速が良かったような気がするが、まあ "気がする" 程度だ。要するにフルスロットルでは流石に 180s の重量差が出てしまうのだろう。因みに両車のパワーウェイトレシオは 523d の 8.9s/ps に対して X3 では 9.9s/ps となり、まあどちらも決して強力では無いが普通のユーザーなら十分だろう。参考としてこの値をマツダ CX-3 と比べると、XD の 12.0 s/ps を凌ぐが 20S の 8.4 s/ps には及ばないというところだ。マツダ CX-3 20S は FWD ならば 210万円よりだから、何とまあコストパフォーマンスの良い事! X3 なんか止めて CX-3 にしねぇかぁ? それに CX-3 から C を取れば X-3 になるし!

んっ、やばい。話が妙な方向に行ってしまった。もしもあなたが X3 のユーザーで今後マツダ車のドライバーが自分を蔑んだような目で見ていると感じたとしも、決してこの試乗記が原因では無いので念の為。大体マツダのオーナーはこのサイトなんて知らないから、あっいや、多分。

ここで正面にあるメータークラスターを眺めてみると、メーター外周のリング自体は機構部品だが、メーター内はカラー液晶パネルとなっていて、指針も目盛も全てが CG だからモードによって全く異なるメーターデザインとなる。写真27では上のモードの場合、良く見ると回転計と速度計の指針のある付近の文字は大きく表示されている。これが下のモードでは0点から指針までの目盛が太く表示されるから、フル加速時では指針と共に太い目盛も広がって行く。

そしてこのメーターも実は5シリーズと全く同じものだった。それでは先代 F25 はというと、基本デザインは新型と共通点は多いが、勿論表示を変えたりする事は出来ない。

写真27
メーターの外周リング自体は機構部品だが、メーター内はカラー液晶パネルとなっていて、モードによって全く異なるメーターデザインとなる。

また指針の動きに連れてその周辺が明るく数字が大きくなったり、ゼロ点から指針までの目盛が太くなったりと、電子式らしい小技が効いている。

 


写真28
G30 のメーターもほぼ共通のものが使われてる。


写真29
旧タイプもデザインや配置時代は変わらないが、勿論表示が切り替わる事は無い。

つづきはその2にて。

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