Lexus RX450h (2015/12) 後編

  

前編の写真では主に "version L" を使用したが試乗車は F SPORT の為に先ずシートがスポーツシートとなっていて左右のサポート部分の張出しが多少多いが、それでも体の左右をガッチガチに押さえるという訳ではなく、普通に運転している分には version L と大きな違いは感じられない。しかしシート表皮は version L のセミアニリン本皮から ”只の” 本皮となり、セミアニリンのような薄くなめした革による柔らかい肌触りとは異なっているが、これも座った最初に感じるだけで、10分も乗れば体が対応してしまから、まあどうでも良いといえば良いのだが。

着座位置は SUV だけあって当然ながら高く正面の視線も当然ながら高い位置から見下ろすようになるが、それでもバブル時代に流行ったクロスカントリータイプの 4WD 車の視線の高さではなく、言ってみればサルーンとクロスカントリー車の中間というところだ。

エンジンの始動、ではなくハイブリッドだから電源のオンは当然ながらインテリジェントキーとスタートボタンを使用するタイプであり、そのスタートボタンも丸型で位置もセンタークラスターの右というかステアリングコラムの左というか、兎に角世間で最も一般的な位置と形状だ。スタートボタンを押すと正面のメーター類に灯が灯るが、既にバッテリーは充電状態だったのかエンジンは停止したままだった (写真21) 。

AT セレクターはフロアーコンソール上の右奥にありパターンはレクサスに共通のジグザク式だがレバーの根元にはレザーブーツが掛かっているのでジグザクパターンは右横のパターン表示を見る必要があるのもレクサスの定番だ (写真24) 。さてパーキングブレーキはといえば、セレクターの直ぐ奥に電気式らしきスイッチを発見! 既に作動中のインジケーターらしきものは消えていたが念の為に押してみたが何も変わらなかった。最近は高級車に増えてきたこの手の電気式だが、システムによっては発進時に手動で解除が必要だったり、発進を察知して自動的に解除されたりとクルマによって違うので紛らわしが、とりあえず念の為に手動で解除してみるのが安全だ。


写真21
電源のオンは当然ながらインテリジェントキーとスタートボタンを使用するタイプで、そのスタートボタンの形も位置も最も一般的なものだ。


写真22
写真は version L だが、それでも見かけの良いスポーツペダルが付いている。


写真23
コンソール上にATセレクター、モード切替スイッチ、入力デバイスを並べるのはレクサスの基本だ。


写真24
AT セレクターは根元にブーツが掛かっているがジグザクパターンというのもレクサス共通の方式だ。その奥には((P))という表示のパーキングブレーキスイッチがある。

駐車場内を移動するためにユックリと発進すると、ハイブリッドらしくスムースに無音で動き出す。公道の手前で一時停車して左にウィンカーを出すためにステアリングコラム上のレバーを操作しようと思ったが、ここで一瞬考える。そうだ ライトスイッチは国産車ではお馴染みのステアリングコラム右側から生えているウィンカーレバーの先端を回す方式でだった筈なのだが、この室内の雰囲気ならウィンカーは右でしょう、と言いたくなる。まあこのウィンカー位置については賛否両論というよりも輸入車憎しの輩が各種掲示板で目の敵にするという定番アイテムでもあるが‥‥。

本線に入ってアクセルペダルを 2/3 程踏み込むとガソリンエンジンを補助する電気モーターの強力なトルク感を感じ、これはトヨタの上級ハイブリッド車の良い所だ。トヨタのハイブリッドと言ってもアクアのように非力なエンジンに電気モーターを組み合わせてまあ何とかマトモな加速をするもあるが、RX450h は発進時にフロントモーター (6JM) だけでも 335N-m もの大トルクを発生するからトルク感が大きいのは当然だし、ガソリンエンジンでは発進直後からこんな大トルクを出すのは不可能だから独特の感覚に感じる訳だ。なお同じレクサスのハイブリッド SUV である NX300h の場合はフロントモーター (2JM) の最大トルクが 270N-m とRXの 6JM よりも25%くらい少ないから、RX程のトルク感は感じられ無かった。

ここで運転中に最も高頻度でドライバーの視線に入る室内装備であるメータークラスターについて補足してみる。写真25のようにセンターに大径メーターと右側に中くらいのメーター、そして左には液晶ディスプレイを配したものだが、これは試乗車の F SPROT の場合であり、Version L では写真27のように左右対象のメーターとその両端に小さな半円のメーターを配したタイプになる。そしてレクサスのハイブリッドでは定番のカラー液晶技術を使って同じメーターがモード等によって回転計になったりハイブリッド独特のチャージメーター (写真26) に変身したりする。

写真25
F SPORT のメーターは中央に大径、右側に少し小さい丸型、そして左には カラー液晶ディスプレイと並んでいる。


写真26
中央のメーターは回転計以外にチャージメーターに変身もできる。


写真27
こちらは version L (と STANDERD) のメーターで左右対称の2眼メーターとなる。

RX450h には当然ながら走行モードの切り替えが機能が装備されていて、そのスイッチはコンソール上の回転式で左に捻れば ECO、右ならばSPORT S、そして試乗車は F SPORT だったのでもう一度右に捻ると SPORT S+となる (写真28) 。そこで SPORT S を選ぶとセンターの大径メーター内の速度とセレクターポジションの表示の下に小さく "SPORT S" と白色で表示される (写真29左) 。

デフォルトの NORMAL で巡航中に SPORT S に切り替えると回転計の針は少し上がる程度で、一般的な1段シフトダウン程には回転は下がらない、考えてみればトヨタのハイブリッドのミッションはCVT だから何も一段分下げることも無い訳だ。それでも 1,500rpm くらいからフルスロットルを踏むと一瞬の後に3,000rpm以上には跳ね上がりそこから結構な加速をする。CVTと言っても一般的なスチールベルトとは違い、要するに無段変速だというだけで構想的には世間一般のCVT とは全く違い、シフトダウンはよく出来たトルコン並に迅速だ。ハイブリッドに於けるこの辺の技術はトヨタの独壇場と言って良い。

フル加速時の音は多少のエンジン音を伴うが音質は決して悪くないし、何よりエンジンがスムースなのに驚く。ただし電気モーターの特性である高回転側でトルクが激減することもあり、4,000rpm過ぎくらいから加速感がイマイチになるのは、この辺りからグングンとトルクを増すスポーツエンジンとは全く逆のフィーリングとなる。まあこのクルマでレッドゾーンまで引っ張って楽しむというのは筋違いではあるが。


写真28
レクサスではおなじみに回転式走行モード切り替えスイッチ。F SPORT なので SPORT S+も選択できる。


写真29
走行モードの表示は中央大径メーター内に小さな文字で表示される。

ここでボンネットカバーを開けて内部も見る事にする。大きくて重たそうなカバーは当然ながらダンパーが装備されているので簡単に開くしその位置を保持する。中に見えるのは少し車体の右側に寄ったエンジンで、これは V6 3.5L 262ps/6,000rpm 335N-m/4,600rpm を発生する 2GR-FXSZ で、このRX は基本的にFWD でありエンジンも横置きさてれいるからそこからボディ左側に出っぱるミッションなどの駆動部品がある訳で、結果的にこのような配置になっている (写真30) 。なおエンジンルーム内にはオレンジ色の高圧ケーブルが見えることでこのクルマがハイブリッド車であることが判る。

ボンネットカバーの裏側には全面に防音材が貼ってあり、まあこの辺は価格からしても当然ということろだ。エンジンルーム内の運転席付近にはブレーキ液のリザーバータンクがあり、その近くには油圧ポンプやら制御バルブと思える油圧ユニットが見える。トヨタのハイブリッドはこのフルエレキのブレーキシステムを量産できることで回生ブレーキをフルに使用でき、結果的に他車より高燃費が達成できている訳で、これはトヨタにとっての大きな強みだろう。尤もこれはトヨタの技術も凄いがそれを支える部品メーカー、取り分け世界のデンソーを傘下に持つ事も大きな強みで、ハッキリ言ってホンダ系の N工業では無理だろう。ただし、ホンダのことだから近い将来に自社内でユニークな方法のシステムを開発してトヨタと対抗する、なんて事も十分に有り得る。

写真30
エンジンルーム内に横置きされる V6 3.5L (2GR-FXSZ) エンジンは 262ps/6,000rpm 335N-m/4,600rpm を発生する。基本的にFWDであり、4WDでは後輪に専用モーターを追加してこれで4輪を駆動している。


写真31
ドライバーと壁を隔てた位置にトヨタ以外では実用化できていないフルエレキ制御のブレーキユニットが見える。


写真32
ボンネットカバーの裏面には当然ながら全面に防音材が貼ってある。

動力性能については フルサイズ SUV としては十分に合格というところで、それゃまあカイエン ターボには歯が立たないが、そもそもあれだけの動力性能を SUV に求めるのが邪道だと思うが、勿論性能は良いに越した事は無いから予算が十分にあるならそれはそれでいい選択だろう。勿論個人的には絶対に選ばないタイプのクルマだが、その前にそんな予算が無いからどうでもいいというのが本当のところだ。

それでは操舵性や旋回特性はどうだろうか。先ずはステアリングだが、操舵力は結構軽いが中心付近の不感帯も適度でSUVとしては妥当な特性だ。ここで走行モードを SPORT S にすると多少は重くなるがそれでも軽い事には変わりはない。今回も本気でコーナーリングを試す場面は無かったが、アンダーステアも少なく背の高いSUVとしては充分に合格範囲。重いバッテリーをリアアクスル付近の低い位置に置くことで前後の重量バランスが良く、しかも重心が低いために条件が良いのは ハリアー ハイブリッド時代から引き継ぐ良い所で、2006年に初代ハリアーハイブリッドに試乗した時もトヨタ車にしては、そして背の高い SUV にしては異例の安定したコーナリングをするのに驚いたもので、その時のクルマが今はなき池袋にあったトヨタ直営のアムラックスの試乗車だったことから、もしかして一般の市販車と違う細工してねぇかぁ? なんて疑ったりしくらいだった。

最後に止まるについてだが、前述のように RX450h はトヨタのハイブリッド車の定番であるフルエレキのブレーキシステムを使用している。とはいえ最終的に車輪を止める力を発生するのはブレーキキャリパーであり、それではとホイールの隙間からブレーキキャリパーを覗いてみると、前後とも鋳物の片押しだがフロントには2ポット (2ピストン) タイプを使用している。トヨタの大型4WD、すなわちランドクルーザー (通称ランクル) では以前からフロントに SD 社製のゴッツい鋳物の対向4ピストンを使用しているが、ハリアーを開発するにあたっては車両重量が2.5トンに迫るランクルと同じモノでは大きすぎるし重すぎるということで、当時ニッサン テラノなどに使用されていた A 社製の片押しだがピストンを2つ持つタイプを採用したことに始まるが、今でもこのタイプを使用しているようだ (写真32) 。

それで実際の効きはといえば適度なペダル踏力で良く効くから全く問題はない。というか、踏力や踏み始めのフィーリングは電子制御だからメカの特性は全く関係なく、その意味ではブレーキパッドの隙間を狭く出来ることでフィーリング向上が期待できる対向ピストンのメリットは発揮できないから、RX の片押キャリパーで十分ということもある。

なおタイヤサイズについては試乗した FSPORT も写真撮影した version L (写真31) も同じく 235/55R20 であるが、ホイールデザインは異なっている。それで乗り心地だが、試乗車は FSPORT ということで多少はスポーツ志向のサスペンションチューニングとは思うが、それでもボディはシッカリしているし重量級ということも硬い設定の割には乗り心地はは結構良い。


写真31
タイヤサイズは写真の version Lも FSPORT も 235/55R20 と同じ。ただしホイールデザインは異なる。


写真32
フロントキャリパーは鋳物の片押しとはいえ2ピストンのタイプを使用している。

レクサス RX は米国でレクサスブラントを短期間に一流の仲間入りするために大いに貢献したクルマであり、その意味ではレクサスの最優秀選手だから当然ながらよく出来たクルマだし、今回の新型も正常に進化して最新の SUV に仕上がっている。ただし、この RX には今回のハイブリッド (RX450h) の外にRX 200t という 2.0L ターボのいわゆるダウンサイジングエンジンを搭載したモデルがある。しかしこのエンジン、IS200t にも積まれているが試乗結果は未成熟という結論であった。またRXよりワンサイズ下の SUV である NX にも同一エンジンを搭載した NX200t があり、試乗結果は当然ながら良くはなかったが、それでも SUV ということで少し甘い評価としたのに比べて IS200t の場合はスペックから言って BMW330i やメルセデス C250 と同等の筈だから、こういうクルマと比較するとIS の評価は当然ながら低くなってしまう。

それで RX200t に話を戻すと、まあ価格的には RX450h よりも 100万円程安いとはいえ、恐らくそれ以上の価値の差はあるようにも思うが、まあその辺は実際にお金を出すオーナーの考え次第だろう。尤もRX200t 、いや RX450h も含めてRX のターゲットユーザーはハリアー時代からのトヨタユーザーや、クラウンなどのサルーンからの乗り換えやセカンドカー用途だろうから、レクサスを買う気も無い欧州車ファンがゴチャゴチャ言う事も無いだろうが、それでも RX450h は中々良い車であることは間違いない。

なお NX にはハイブリッドの NX300h もラインナップされているが、エンジンは4気筒2.5L であり RX450h の V6 3.5L とはクラスが違うこともあり、動力性能もRX450h に比べればマイルド、というか高級 SUV というにはチョイと物足りなかった。NX300h はRX450h より100万円程安い。あれっ、と言う事は RX200t と同等ということか? なるほど、これはレクサスユーザーとしては悩む事になるだろう。

さてそれでは RX450h のライバルといえば何があるだろうか? このクラスのプレミアム SUV といえばBMW X5 が思い当たるが、これにはハイブリッドの設定が無い。となるとポルシェ カイエン ハイブリッドということになる。価格的にはRXの2倍近いがハイブリッドのフルサイズSUV ということで比較対象にはなる。しかも、普通は日本車では全く歯がたたないボルシェだが、試乗記を参照されればわかると思うが流石にハイブリッド技術ではトヨタに敵うわけがない。ということは、日本人としてのナショナリズムを全開にして、あの憎きポルシェに勝ち目がある比較という企画をやってみることにした。

ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。

特別企画 「Lexus RX450h vs Porsche Cayenne S E-Hybrid」 に進む

TOPページに戻る