NISSAN NOTE e-POWER (2017/2) 前編 その1 |
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ノートがモデルライフ中間でのマイナーチェンジを実施し、その目玉といえば勿論 "e-POWER" と名付けられたハイブリッド車であるが、日産では敢えてハイブリッドとは言わないという。この理由は "e-POWER" のガソリンエンジンは発電専用で直接エンジンで車両を駆動する事は無く、動力源はあくまで電気モーターとなる方式でハイブリッドシステムとしては "シリーズ方式" に分類される。 実はこのタイプのハイブリッドの歴史は意外に古く、プリウスの販売が開始された 1997年よりも5年も前の1992年にボルボが発表した ECC(Environmental Concept Car)というコンセプトカーではガスタービンエンジンを搭載して、このエンジンで発電してモーターを駆動するという、今回の日産 e-POWER と同じ方式だった (写真1)。ただしエンジンがガスタービンということだが、さてガスタービンエンジンとは「燃料の燃焼等で生成された高温のガスでタービンを回して回転運動エネルギーを得る内燃機関」‥‥というと難しそうだが、航空機ではヘリコプターやプロペラ機を含めて現在の主流となっているターボプロップ方式でお馴染のタイプだ。 ボルボ ECC が何故にガスタービンを使用したかといえば発電用エンジンの運用は一般の自動車用エンジンと違い常に一定回転で負荷も安定しているためにガスタービンエンジンの特性にマッチしているからで、確かに自動車用エンジンというのは常に負荷が変化 (変動) するという面では技術的に結構難しく、エンジン効率もある程度犠牲にする必要がある。ということは最初に言ってしまうと、今回のノート e-POWER はガソリン車と全く同じエンジンを発電用に流用している事から、この方式の本来のメリットは出し切れていないという事になるのだが、まあとりあえず最小限の新規開発品で商品化して、市場の様子を見よう、ということだろう。 なお鉄道の世界ではこのシリーズ方式ハイブリッドは既に2007年より営業運転として使用されているし、その後は新型車両も投入されている。しかもバッテリーを使用せずにエンジンで発電した電力をそのままモーターに送電して走行するディーゼル・エレクトリック方式では戦前から実用化されていた。想像するに重量のある鉄道車両を発進させる大トルクをエンジン駆動で発生させるには大型のトルクコンバーターや変速機を必要とし、これらの技術が無い戦前では電気に変換してモーターで駆動する方が簡単だったのだろう。まあ B_Otaku は鉄ちゃんではないので、この件についてはボロが出る前に、やめておこう。 話を戻して日産の量産ハイブリッド車は 2000年に 100台限定で生産されたティーノ ハイブリッドが最初となる (写真2) 。ティーノ (1998-2003) はサニーをベースとした5ドアハッチバック車でシフトレバーをコラム式にしてフロントに3人乗車することで2列6人乗りとしたクルマだが、結局5年間の生産の後に後継モデルも無く終了となったクルマだ。 |
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ティーノ ハイブリッドは燃費が悪くハイブリッドのメリットが無いことから見事に失敗作となり、日産のハイブリッドは2010年発売のフーガハイブリッドまで途絶えていた。フーガはご存知のとおり米国ではインフィニティ M として BMW 5シリーズやメルセデス E クラスの市場をターゲットとしたクルマで、ハイブリッドモデルは M35h として販売された。このフーガハイブリッドは燃費第一のプリウスクラスとは違い、より強力な動力性能と低燃費を両立させるタイプで、まあプリウスのマーケットでは勝負にならない日産としてはこれは正解だった。 なおフーガ ハイブリッドの詳細については下記試乗記を参照願いたい。 さて本題の e-POWER だが、駆動はあくまでも電気モーターとなれば比較相手は EV ということになる。それで現在販売されている EV はといえば、同じ日産のリーフ (写真3) 、BMW の EV である i3 (写真4) 、そして軽自動車ベースの EV でリーフよりも先に発売された国産初の (ただし乗用車) 量産型 EVである三菱 iMeVE ということで、この3車のスペックを比較してみる。 ![]() 先ずはモーターの出力を比べてみるとノートとリーフは同じ、というよりも同じモーターだった。i3 は出力では日産勢の109ps よりも6割以上多い 170ps で、軽自動車の i MiVE は 41psと一番非力だ。なおノートはリーフよりも車両重量が 260kg も軽く、それでも同じモーターという事は動力性能に期待出来るということだ。そして価格はノートが圧倒的に安いのは高価なバッテリーが無いからと推定できる。なお、ノートも EV 程ではないが前席下に駆動用リチュームイオンバッテリーを装着しているが、その容量は 1.5kWh で、これはリーフ (ただし 30kwh モデル) の 1/20 であり、要するに高価なバッテリーが小さい分だけリーフよりも圧倒的に価格が安い、という事になる。 なお BMW i3 にはレンジエクステンダーという小型の発電用エンジンを搭載したモデルもあるが、エンジンはノートの 1.2L に比べて 0.65L と小さく、あくまでバッテリーが無くなった時の緊急用という位置づけとなっている。とはいえ、これがあればバッテリー切れで動けなくなるという最悪の事態は回避できる。 |
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なお上記の EV については下記の試乗記も参照されたい。 ⇒ NISSAN LEAF (2011/5) 簡易試乗記 ここまではイントロなので、実際のノート e-POWER の内外装と前期ガソリンモデルとの相違点についてはその2にて。 |