Nissan Leaf (2017/10) 後編 |
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ジャパンオリジナル的な先代に比べてグローバル化したシートに座った感覚は見た目の通りに極普通に身体をサポートする。エンジンの始動、もとい、システムの電源ONはセンタークラスタ下端というあまり馴染みの無い場所にあるが、まあこれは乗り込んだ時に一度使えば良いだけだから慣れれば特に問題は無い (写真21) 。電源が入ると正面のメータークラスターに明かりが灯り、特に左側のカラー液晶表示部分に EV っぽい表示が現れる。この部分は液晶の利点を生かして設定により各種表示に切り替えられるのは言うまでも無い。これに対して右側の速度計は何故かメカ式のアナログメーターだ (写真23) 。 なお先代リーフではメーターが2階建てとなっていてその変態ぶりが EV っぽかったが、これに比べれば新型は違和感の無い真っ当なものになっている (写真22)。 |
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シフトスイッチというかセレクターはトヨタの HV 等と同じで右に押してから手前に引くと前進、奥へ押すと後退となり、当然ながら電子式だから放せば中央位置に戻る (写真24) 。なおこのパターン表示のプレートは先代がレバーの手前にあったが新型では奥に移動した事から視認性は大分劣ってしまった。まあこれは慣れれば一々表示を見る事も無いから問題無い‥‥事にしよう (写真25) 。ところでこのパターンだが、後退の積りで無意識に前進に入れてしまう例が多いという。その理由は昔から乗り慣れた MT 車のパターンがバックが右下だったからというものだが、全ての MT で後退が右下とは限らず、左上というのもあるから、この説は多少眉唾ものなのだが‥‥。 まあ「ジジババは EV なんて乗らずに軽の MT にでも乗ってろ!」 とか言うと差別だなんて言われそうだが、そうでは無い。なぜならこの B_Otaku 様も立派にジジイだからだ。 パーキングブレーキは当然ながら電動式で、アクセルを踏むと自動的に解除される。まあ先進の HV や EV では当たり前の装備であり、逆に HV/EV にレバー式のメカメカしたヤツが付いていたらズッコケるが‥‥んっ? どこかの低価格 HV はパーキングブレーキもセレクターもメカ式ですが、なにか?って、それぁ、価格を下げるためでしょう。何てったって某アクアは一番良いヤツで 209万円だから‥‥。 |
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アクセルをゆっくり踏むとクルマは音もせずにスーっ前進する感覚は HV でも同様だがそこから先は HV の多くはエンジンが回り始めるから、如何なる条件でもエンジン音の聞こえない EV はやはり一味違う。まあ EV でエンジン音が聞こえたら奇妙だが、BMW i3 のように緊急用の小型発電エンジンを積んでいるモデルもあるから何とも言えない。えっ? それって昔の東京のトロリーバスで亀戸行き路線の車両みたいなモノだってぇ?、ギョッ、そんな事が脳裏に浮かぶあなたは十分なジジババですぞ!って言う冗談は、判っからねぇだろうなぁ。 駐車場から公道へ出るとそこは立派な国道だから行き成り 2/3 程度までスロットルを踏むと、それこそ EV らしく強力なトルクを感じる。試乗の後半で再びこの国道に戻って来た時にフルスロットルを試してみたらば、そのフィーリングは一昔前なら 3.0L の高級サルーン並だったが、その加速も 50q/h以上では多少鈍くなってくる。 新型のモーターはスペック上での型式と最高出力は旧モデルと同じだが最大トルクは 228 → 320 N-m へと4割もアップしていて、実際の加速 (トルク) 感も明らかに勝っている。そのトルク特性は 3,283 rpm 迄フラットだが、そこからは徐々に下降して行く。ただし前述のように実際には50q/h くらいまでは殆どトルク感は変わらないがそれ以上は徐々に鈍ってくる。今回は高速道路を走行していないので何とも言えないが、電気モーターの特性上高速 (高回転) になる程トルクは下降していく筈だ。まあそれを言ったらばガソリン車だってトランスミッションをシフトアップする毎に減速比が小さくなるからトルクも減少してい訳で、結局は同じ事だと言われればそれまでだが、体感できるフィーリングは明らかに違う。 あれっ? そこの先生、何か言いたそうですな? 何々、本当は一般道で高速試験してんじゃねぇのか。だから高速での特性を自信を持って言っているんだろう、って、いやそっ、そんな事、ある訳無いでしょう(汗、汗 ここでリーフの速度と回転数、そしてトルクの関係を推定して見る。 リーフの場合変速機は無いからダイレクトにファイナルギアで減速されると考えられ、その減速比は 8.1938 である。装着されているタイヤは 215/50R17 で外径 657.3mm より外周は 2.06m で、これからモーターが 1,000rpm 時の速度は15.1km/h となる。これらからモーターの回転数は 60km/h では 4,139rpm で 100km/h では6,625rpm と推定出来る。また最高出力の 9,795rpm では148q/h で、最大トルクの 3,283rpm では 50q/h となる。という事は速度計のフルスケール (FS) である 180q/h は出ないじゃないか。そんなのインチキだ、とか言ってる社長! ご自慢の BMW M4 Coupe の FS は 330q/h 、幾らなんでもそんなには出ないでしょう。 さて以上を踏まえれば最大トルクの320N-m は発進から 50q/h まで発生するが、それ以上では徐々に下降していく事になり、言い換えれば体感上でも発進から 50q/h まではフラットトルクであり、これこそが電気自動車のトルク感抜群のフィーリングの原因という事になる。と、書いてはみたが、計算間違ってねぇよなぁ、何て心配になったりして‥‥。 |
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このようにリーフの加速感はガソリン車とは一線を画するものだが、実はもう一つ大きな特徴がある。それは恐ろしく強力な回生ブレーキで、この手の手法は BMW i3 でも行っているがリーフは更にそれを進化させている。この状況にするには e-Pedal という機能を使用するために、コンソール前端にあるブルーのスイッチをON にする (写真27) 。そこで先ずは30km/h くらいまで速度が落ちたところでアクセルぺダルをスパっと離してみると、おおっ!普通に軽くブレーキペダルを踏んだくらいの減速を行うのに驚く。カタログによるとこの時の減速度は0.2Gということで、成程これは一般的な緩減速時と同等だ。 これを何回か試してフィーリングに慣れたところで、今度は急行の止まらないマイナーな (ド田舎丸出しの) 駅前で狭いロータリーを20q/h くらいで周回しながら必要な時にはアクセルを離して回生ブレーキを作動させたが、低速になると効き過すぎて止まってしまったりと、慣れないと中々スムースに走れない。と、ここで気が付いたのだが、回生ブレーキって停止寸前には殆ど効かなくなるという認識だったが、これは完全に停止するまでシッカリと効くし、更にこのモードでは停止した状態でペダル類を放していても停止保持が作動しているのだった。更にはアクセルの放し方によって回生制動の効きが変わるなど、要するに慣れれば街中の運転、特に渋滞時等はアクセルペダルのみでの運転が可能となるのだった。 次に旋回性能を試す事にする。内燃機関は高さが高いから如何しても車両の重心が高くなるが、エンジンを持たずにしかもバッテリーという重量物を床面近くに搭載する事でより低重心となり易い EV は一般的に旋回性や走行安定性では有利になる。実際に日本初の EV である三菱 i-MiEV はベースとなった不安定な軽自動車である i と比べるとこれが本当に同じクルマのバリエーションか、と思うくらいに安定していたし、勿論先代リーフだってその車格からすれば驚くほど安定したコーナーリング性能を発揮していた。そして今回の新型はといえば、勿論先代同様に同クラスのガソリン車とは一線を画すニュートラルな旋回性能だった‥‥が、しかし‥‥新型になってそれ程劇的な向上というのは感じられなかった。一つに先代リーフが発売された当時の日産の小型車といえば明らかに今より劣っていた時代であり、それらと比較して相対的に凄く良く感じたであろう事は理解できる。 しかし当時に比べればその後 FMC された日産車は明らかに進化しているから、リーフが相対的に他の日産車に対して勝っている度合いは減ってしまった、と考える事も出来そうだ。加えてテスラのような徹底して EV の特徴を追求して驚く程の低重心を実現したモノが出てくると、これに比べればリーフはクルマ屋の発想やベースとしての設計などが EV 専用に徹していない事もあるが、まあテスラは価格も生産台数もリーフとは世界が異なるから、これを比較するのは無理があるのは承知だが、やっぱりあれを体験すると‥‥。 旋回性では先代に比べて劇的な変化は感じられなかった新型だが、乗り心地については大いに進化していて、そのしなやかな乗り心地は出来の良い欧州製サルーンのようだった。まあこれも低い重心が効いているのは間違いないが、それとともにサスペンションも進化しているのだろう。 既述のように回生ブレーキのみで殆ど普通に運転が出来てしまう e-Pedal だが、再度このスイッチをオフにしてみると、今までアクセルを離した瞬間にグイーンと減速した独特のフィーリングが無くなり、ここでブレーキペダルを踏むと何やらスーっと滑っていくように感じる。これはブレーキペダルを踏まなくても強力な減速度を感じられた e-Pedal と比べるからそのように感じるのか、それともリーフのフートブレーキ自体の効きが悪いのか? | |
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明らかに向上した動力性能や EV ならではの e-Pedal など、新型リーフは間違いなく進化していた。いやそれ以上に先代を見た瞬間に感じた「これが300万円以上もするのかよ?」という第一印象が見事に無くなった事だ。充電については住居地域のインフラの問題もあるし、マンションでは自宅での普通充電が出来ない等の懸念もあるが、急速充電スポットも増えているし、何より会員になれば1カ月 3,000円程度で充電し放題だから、長距離通勤などで1ケ月に何万円ものガソリン代を使っているユーザーは圧倒的に安い燃費となる。 まあ日産も今は赤字覚悟で EV の普及をしているからこんな事が成り立つ訳で、EV が増えればこんな割の良い制度は無くなるだろうから、逆に今のうちにリーフを買ってしっかりとメリットを甘受するのも一つの手かもしれない。 |