このクルマは DCT 方式のためにトルコン方式のように強めのクリープを付けるのは難しいが、ブレーキペダルを放すと極僅かに前進しようとするのを感じる。駐車場から公道へ出ると、ここも流れの速い一級国道で十分距離を置いたはずの後続車が迫ってくるのが見えたから、ここで行き成りフルスロットルで加速するハメになる。そして、その時の加速感は実用車としては十分過ぎる程だが、その昔の GTA などと同等を期待すると裏切られる。まあ1,440s の車体に240ps のエンジンだからパワーウェイト (P/W) レシオは6.0 kg/ps となり、これはスバル BRZ R (86GT相当) の6.1と同等といえば想像は付くだろう。因みに良き時代の最後のアルファである 147GTA セレスピードは 1,390sのボディに V6 3.2L 250ps を搭載していたから PW レシオは5.6 kg/ps だから数字的には Giulietta Quadrifoglio Verde も決して悪くはないが、いまいちジェントルな仕立てなので迫力不足で実際よりも遅く感じてしまう。
ジェントルといえば乾式 DCT によるシフト時の挙動も同じく ”ジェントル” で、以前のGTA は特別としても比較的最近でもブレラやミトのセレスピードのようにシフト時にガツンっという振動は感じられない。まあセレスピードはシングルクラッチでありジュリアの DCT とは比較にならないが、それでもこれまたアルファらしくないとも言える。試乗車は当然ながらマニュアルシフト用のパドルスイッチが装備されているので、今度はマニュアルシフトを試してみる。先ずは加速しながら右のスイッチを引くと多少のタイムラグはあるが大方のトルコンAT よりは迅速にシフトアップが起こる。今度は左のパドルでシフトダウンしてみると、これまたDCT としてはイマイチだが一般的なトルコンAT と比較すれば十分に速いという具合だった。それよりもD (AT) モードで感じたのと同様にシフトショックが少ないのはアルファとしては進歩だが、あの出来の悪いセレスピードを微妙なアクセルワークでスムースに繋げる楽しみに対して、誰が乗ってもスムースにシフトできるなんていうのはマニア的にみると退歩と言いたくなるかもしれない。
Quadrifoglio Verde にはATセレクターの右前方辺りにモード切替スイッチが付いていて前方から Dinamic、Normal、All weather の3つのモードが有る。Sport と言わずにDinamic なんていう名称にするところはアルファらしいが、このスイッチを前方に押すと Daynamic モードに切り替わり、正面のメータークラスター中央部のディスプレイには 「dina」と表示される。これにより今まで1,500rpm くらいで巡航していた回転計の針は2,000rpmくらいまで上昇するが、その後の走りは意外と大人しく少し加速した後はシフトアップされてしまう。アルファのダイナミックモードなんていう名前からしたら3,000rpm 以上でもシフトアップ無しで高回転を維持するくらいを期待するのは間違いだろうか。
アルファのようなクルマは加速性能自体も大切だがそれ以上に加速時のエンジン音にも注目したい。前述のGTA を例に取れば常にヴォーっというかゴーっというか、マニア心をくすぐる音が聞こえていたが、今回のジュリエッタはフルスロットルを踏めば辛うじてアルファらしき音が聞こえるが、まあ何とか再現しようという努力は感じるものの、以前の音を知っていれば全く比較にならないくらいに静かだった。
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