Alfa Romeo Giulietta Quadrifoglio Verde (2015/11) 前編 その1

  

アルファロメオといえば戦前は今のフェラーリに相当するような超高性能で超高価格のスポーツカーメーカーでありレースでの活躍も多く、フェラーリの創始者であるエンツオ フェラーリ氏も戦前はアルファロメオのワークスドライバーだったというくらいの名門メーカーだが、戦後はどちらかと言えば一般市民でも無理すれば買えるクラスのクルマに主力を移し1960年代末には日本でも販売されていたが、流石に当時の日本で輸入車となると相当高価なクルマとなってしまい、例えば1968年のジュリア スプリントGT は245万円であり、これは同年の国産車ではあの名車トヨタ200GT の238万円と同等だったし、更に高性能版のジュリア GTA ジュニアに至っては361万円もしたから、これはもう一般人からすれば全く夢のまた夢だった。それにしても輸入車の内外価格差は今でもあるとはいえ、当時のそれは凄まじかった事になる。


写真1
日本での価格は1968 年のジュリア GTA ジュニア (写真左) が361万円でベースモデルのジュリアスプリントGT でも245万円。
対する当時の国産車では最高峰であったトヨタ 2000GT は238万円であり、当時の輸入車が如何に割高だったかが判る。

ところで戦後のアルファロメオのジュリアとかジュリエッタとかいう車種名は、何とアルファロメオのロメオに引っ掛けてロメオとジュリエットに端を発しているということで、何だか嘘っぽいが本当らしい。そのジュリエッタ (Giulietta) は初代モデルは1.3L 2ドアクーペのジュリエッタ スプリントが1954年に発売され、その後はバリエーションを増やして大成功したことでアルファロメオの経営基盤が確立し、1963年にはジュリア系に発展する。ジュリエッタはジュリア系の発売後も1.6L エンジンを搭載して1965年まで生産された。

そのジュリア系も1970年代後半まで生産されたが十年も経てば旧態化は免れず、1976年にGT系はアルフェッタGT が後継車種として発売された。翌年にはアルフェッタのベルリーナ (セダン) 系がジュリエッタとして発売され、これが2代目のジュリエッタとなる。そのジュリエッタは1985年にアルファ 75 へと進化した。2代目ジュリエッタの最後期モデルとしては 2.0L ターボ 172ps エンジンを搭載したジュリエッタ ターボデルタというモデルが僅か400台弱生産された。


写真2
初代 Giulietta Sprint (1954)。


写真3
2代目ジュリエッタの最終モデル Giulietta 2.0 Turbodelta (1983)。

そして今回の主役である3代目ジュリエッタは 147 の後継として欧州では2010年より発売され、日本では 2012年に発売されているから既に欧州発売から5年、日本での発売からでも3年が経過している。アルファのファンからすれば何で3年間も放ったらかしていたんだ!なんて怒られそうだが、まあ色々事情もありまして‥‥。

ところで、国内で販売されているジュリエッタは1.4L ターボ 170ps の Sprtiva と1.75L ターボ 240ps で四つ葉のクローバ−のイタリア語である Quadrifoglio Verde (クワドリフォリオヴェルデ) の2種類だが欧州では 1.4L120ps、更にはディ−ゼルエンジンも販売されていて、日本版カタログにも 1.4L120ps は Sprint というグレード名で載っているが実際には今現在は販売されていない。

そこで現在日本で発売されている2車種のジュリエッタと先代に当たる 147 からベースモデルのSpeciale Sport 、そしてジュリエッタのライバルと思われるBMW 1シリーズから120i の基本諸元を比較してみる。

最初にアウターサイズから比較すると、事実上の先代である 147 と比べるとジュリエッタは一回り大きくなっているが、147 がデビュ−したのは2000年だから既にアルフェッタとは10年の違いがあり、ボディーの拡大はやはり時代の流れということだろう。そしてBMW 1シリーズはといえば幅方向が少し狭いが概ねアルフェッタと同一サイズなのは1シリーズが2011年の発売だからジュリエッタよりも1年後、とはいえ殆ど開発時期が近いころから最近のCセグメントはこの程度のサイズが標準的なのだろう。

ところで 147 といえば思い出すのは本来4気筒 2.0L を搭載するスペースにV6 3.2L と強引に詰め込んだ 147GTA というモデルがあったのを思い出した。フロントオーバーハングにV6 3.2L を横置きしたFWD 車なんてどう考えてもマトモな旋回特性は得られないだろう。残念ながら当時このモデルの試乗する機会は無かったが、ほぼ同じエンジンをワンサイズ大きい156 に積んだ 156GTA には試乗していて、これでもド・アンダーのじゃじゃ馬だったから、一回り小さいボディの147GTA がメチャクチャな特性だったであろう事は容易に推測できる。そこで今ではお蔵入りになっていた 156GTA 試乗記のデーターを引っ張りだしてリメイクしたものを今回は特別に公開しよう。

Alfa Romeo 156GTA 試乗記

それでは早速エクステリアから見てみるが既に11月30日からの日記で写真を紹介しており、こちらの方がサイズは大きいためにギャラリー的な意味ではこちらを参照願いたい。そしてこの試乗記では日記では触れなかった内容を補足して、それ以外はサラッと流す事にする。

なお今回の実車は展示車、試乗車共に上位 (高性能) モデルの Quadrifoglio Verde で、以下の写真もこれらを使用している。最初に先代に当たる 147 とエクステリアを比較すると、そこは10年の歳月を感じさせるに充分な時代の違いを感じる。すなわちジュリエッタは147 に比べるとボディーラインはより曲線を多用していて、またサイドのグラスエリアは高さ方向が狭い。それでもフロントの盾形グリルによるアイデンティティは強烈で、誰が見てもひと目で 147 と同系である事が解る。

フロントの強烈なアイデンティティに比べればリアにはこれぞアルファロメオというモノは無い。


写真4
アルフェッタの先代にあたる 147。


写真5
147 のボディに V6 3.2L エンジンを押し込んだ 147GTA。


写真6
147に比べると曲線が多く時代の違いを感じるが、それでも基本的なアイデンディディは変わらない。


写真7
リアウィンドウも傾斜が大きいしウエストラインも後方に向かって大きくキックアップしている。

写真8
サイドビューは最近の普通の2ボックスと言うところだが、よく見ればイタリアンなホイールと共にリアドアには開閉用のドアノブが無い。


写真9
フロントビューはもう誰が見てもアルファロメオでその最大の原因はやっぱり盾型グリルだ。


写真10
ひと目で判るフロントに比べればリアにはこれぞアルファ!という程の特徴はない。

ここまでで既に大分長くなってしまった。スマホからのアクセスも増えている今日此の頃、適度な長さに留めないと見辛くてしゃあねぇ、なんていう不満も出そうなので、この先はその2にて。

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