Mercedes-AMG GLE 43 (2016/6) 前編 |
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メルセデスのSUV のラインナップとして、先ずは一番の歴史を持つGクラスが挙げられるが、このクルマは SUV 等という軟派な乗り物ではなく伝統的なクロスカントリー車、いやオリジナルは軍用車だから最近の SUV とは格が違う。GクラスというよりもゲレンデワーゲンとかGワーゲンと言ったほうがマニアには馴染み深いこのクルマは、本来はオーストリアのシュタイア社と共同開発した軍用車両でドイツ、オーストリアなどで制式採用されている。なおフランス軍向けのプジョーP4もGワーゲンの兄弟車である。 ところでGワーゲンを共同開発したシュタイア社の正式名称はシュタイア・ダイムラー・プフ社で、ダイムラーという名前から判るようにダイムラーグループのオーストリア法人という位置付けで、銃器マニアにはオーストリア軍の制式小銃のステアーを作っている会社 (実際には子会社のシュタイヤー・マンリヒャー) と言ったほうが解りやすいだろう。なおステアーは単にシュタイアの英語読みで何故か銃器関係、それもサバイバルゲームなどに使う遊戯銃ではステアーと、そして猟銃や競技銃など実銃の世界ではスタイヤー、そして車関係ではシュタイアと呼ばれている。 図1 が本来の姿であり、これを見ればGワーゲンのベビーデューティーな設計が判るだろうし、更にGワーゲンをベースとした軽装甲車 (図2) なんていうのも存在し、これではGクラスなんていう単なる乗用車のような名称は全く似合わないのが判るだろう。そのGクラスは35年前と基本的に変わらない構成のままで現在も販売されているが、確かに本格的マニアからすれば最近のSUV とは一線を画すGワーゲンに憧れるのも納得できる。 |
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そのGクラスの2006年に後継モデルとして初代 GLクラス (X164) が発表され、これにより民間向けのGクラスは廃止される意向だったようだが市場はそれを許さず、結局今現在でもGクラスは継続販売されている。GL クラスは2012年に2代目(X166) へとフルモデルチェンジされたが、その後2015年のマイナーチェンジで名称をGLS クラスと変更され現在に至っている。 GLS クラスはGクラスの置き換えを目論んで開発された車種のためにメルセデスのSUV では最上級クラスとなるが、その下にはGLE クラスがあり、これが今回の主役となる。GLE も初代の発売時はMクラスと呼ばれていたが、GLS 同様に2015年よりGLE と名称変更されている。初代 M クラス (W163) は1997年の発売だから、GL クラスよりも9年も早かった事になる。なお M クラスの車種名は "M" ではなく "ML" が使用されていたが、これはBMW のMとの識別を目的としていたとも言われている。 |
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ここまで書いて気が付いたのは現在のメルセデスのラインナップで GL というのはSUV を表していて、この GL の後にサイズ記号を付けて識別しいる。すなわち一番大きい S クラス相当の SUV は GLS でそれより少し小さい E クラス相当では GLE となっている。ということは C クラス (Dセグメント) 相当のSUV は GLC であり A クラス (Cセグメント) ならば GLA となる訳で、成る程現在のメルセデスはこれら全てをラインナップしていた。 具体的にいえば GLC クラス (X253) は2015年に発売された Dセグメント SUV で、その名のとおりにCクラスをベースとしている。なお GLC クラスの前身は GLK クラスで、FMC を機に他のクラスと名称統一された。そして GLA クラスは (X156) は 2013年に発表されたが日本での発売は 2014年からだった。 それにしてもプレミアム SUV の世界ではどちらかと言えば後発だったメルセデスではあるが、当方がちょっと油断していたらば、何とフルラインナップしていたのには驚いた。えっ、オマエが知らなかっただけだ、って。いや、まあ確かにドジを踏んじまった。 |
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さてここでメルセデスの SUV ラインナップ、すなわちGおよび GL*の代表モデルの諸元を一覧にしてみる。 アウターサイズについてはGは別格としてそれ以外の GL* では GLS、GLE、GLC、GLA の順に徐々に小さくなっているのは当然だが、同様に価格もサルーンの S、E、C、A クラスと同等の価格帯となっている。それにしてもこの商品体系は実に綺麗に整理されているが、これが完成したのは何の事はない昨年の事だった。
上表の中で GLS のアウターサイズの大きいことに驚くし、メルセデスがその GLS で代替する目論見だった G クラスは遥かに小さくほとんど GLC 並だから、これはもうユーザー層が違う訳で、結局Gクラスを超ロングセラーとして継続販売する羽目になるのは目に見えていた訳だ。そして G クラスの大きな特徴としてサスペンションが4輪コイルリジット、要するに今時独立懸架ではなく左右がデフケースで繋がっているタイプなのだが、このタイプは現代的なサスに比べて舗装路での特性は劣るが、いざ不正地となると長大なサスストロークによりとてもクルマが走行するなんて考えられないような凹凸でも走破出来るという特性があり、本格的なクロスカントリー車としては極めて優れた走破性を持っているから、GLS なんぞで代替できる訳がない、とクロカンマニアが言っていた。ただし一千万円の新車を買って行き成りオフロード走行する事はまず無いだろうが。 それでは他のプレミアムブランドのSUV ラインナップはどうだろうか? 先ずはBMWの場合はといえば X5 (Eセグメント)、X3 (D セグメント)、X1 (C セグメント) という情況だが、見ての通りで GLS に相当する F セグメントが無い。ここは一つ X7 でも作って対抗するべきか? そこでアウティはと調べてみたらば、Q7 (Eセグメント)、Q5 (D セグメント)、Q3 (C セグメント) でBMWと同様にF セグメントが無かった。それではレクサスはといえば、RX (Eセグメント)、NX (D セグメント) に加えて LX があり、これは名前からわかるように LS (Fセグメント) の S の代わりに X としてものだからこれぞメルセデス GLS のライバルという事になる。この LX はトヨタランドクルーザー (ランクル) のレクサスバージョンであり、ランクルといえば長い歴史を持つ本格的オフロードカーで、しかも 60 に始まる大型高級オフロードカーとして世界中で使用されてきた車種であり、ある面ではメルセデスGクラスと較べても決して引けを取らないクルマだ。 なお米国で販売されているレスサスには GX というモデルがあるが、これはランクル プラドのレクサス版で言ってみれば LX の廉価版というところだが、日本では何故か販売されていない。そしてもう一つの日本製プレミアムブランドであるインフィニティはといえば上位モデルからQX80 (Fセグメント) 、QX70 (Eセグメント)、QX60 (D セグメント)、QX50 となっているが、インフィニティの場合は日本ではブランド展開されていないし、相当車種もSUV は販売されていないのでレクサス以上に馴染みが薄いだろう。ところでインフィニティにもBMW やアウディには存在しないFセグメントがあるが、このQX80 はパトロール、すなわち一時期日本でもサファリという名称で発売されていた大型オフロードカーで中東戦争が勃発した当時の海外ニュースでは白いサファリ (パトロール) が度々映像に登場していたのを覚えている読者も多いだろう。 実はこれら以外にもホンダが米国で展開しているアキュラブランドにも SUV はあるし、準プレミアムブランドともいえるボルボ、更には高級オフロードカーの本家本元のレンジローバー、そして一部熱烈なユーザーであるいわゆるスバヲタさんからすれば立派なプレミアム ブランドであるスバルなんかもあるが、まあ今回はそこまで手を伸ばすと収拾が付かなくなるのでこれにて止めておく。 |
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今回の主役はメルセデス GLE だが、結局同クラスのライバルとしてはBMW X5、アウディ Q7、レクサス RX ということになる。そこで勉強熱心な読者のために左サイドのフレームに予習用として他社のライバルに関する試乗記をリンクしておく。ただし、こんな物を一生懸命予習したとしても受験の役には立たないし、出世の道具にもならない。いや、むしろ受験や出世の足を引っ張ことになるので念のため! ということでGLE についての詳細は中編にて。 |