Porsche 991 Turbo (2016/12) 後編 その1


  

ドアを開けて乗り込むと、そこは何時もと同じポルシェ 911 の運転席であり、ターボはフルパワーのシートが標準とは言えカレラの試乗車でもこれをオプション装着しているモデルもある訳で、その意味では座った瞬間におおっ、これぞターボ!という事はない。言い換えれば国産車のようなあからさまな差別をしないでも ”性能で勝負” と言えるのはポルシェだからこそだ。

メータークラスターは 911独特の5連メーターが視界に入る (写真41) が、敢えて言えばセンターの大径回転計がカレラSのシルバーではなくブラックだが中央に "turbo" のロゴが見える事と、回転計のレッドゾーンが6,800rpm で、これは 991 Ph1 カレラSが 7,600rpm と自然吸気らしく 800rpm も高いという違いがあり、これがトルクで勝負のターボと回して何ぼの自然吸気の違いだ。なお厳密にはもう一つ、左側の速度計のフルスケールがよくよく見ればカレラSの330q/h に対してターボは350q/h となっているが実用上は殆ど関係無さそうだ。ナンタってこの位置は回転計のフードに隠れてよく見えないし、元々字も小さいから300q/h超で走りながらこのメーターを確認するドライバーはいないだろう (写真42) 。まあそんな事よりも Ph2 の911 ターボSでも最高速度は330q/h だったりする訳でして‥‥。

そんな状況だから普通ポルシェのドライバーは中央の回転計に仕込まれたデジタル速度計を見る訳だ。それでは左のアナログ回転計は不要かといえば、911 カブリオレやボクスターなどでフルオープン走行する場合、太陽の位置によっては頭上から照らされたデジタル速度計は反射で全く読む事が出来なくなり、この時には針の位置でおおよその速度が判るアナログメーターが威力を発揮することになる。それじゃあクローズドボディでは不要なのかといえば‥‥はい、実用性はありませぬ。

写真41
911系のアイデンティティでもある5連メーターは基本的にはカレラ系と変わらない。


写真42
Ph1 同士では自然吸気で高回転型のカレラSはレッドゾーンが 7,600rpm とターボの 6,800rpm と大いなる違いがある。
更に厳密に言えば速度計のフルスケールが違う。

エンジンのスタートは世の中のスタンダードが押し釦であるのに対してポルシェではお馴染の電子キーをキースロットに差し込んで、そのキーを撚ると一瞬のクランキングの後にヴォーンという実に気持ちの良い音でエンジンが目覚めた。アイドリングでは多少の振動を感じるところが懐かしく、カレラでは 997 から 991 に進化した時にこの振動が無くなってしまい寂しい気持ちで一杯だったが、ターボでは引き継がれていたようだ。そのために 2千万円以上の投資は幾らなんでも高過ぎるが、もう走り出す前からその真価を発揮しているところがニクいねぇ、大将!

PDK のセレクターはカレラと共通のもので最大の違いはプレート手前にあるロゴが ”Carrera" ではなく ”Turbo” というくらいで、しかも例によってこの文字はプレートに刻印されているだけで塗装などはしていないから、光線の具合では良く見えなかったりする (写真44) 。パーキングブレーキもポルシェに共通のダッシュボード右端下端のレバーを引いてリリースとなる (写真45) 。

さーていよいよ出発しようかと持ったら、んっ?右端のメーターに何か表示が出ている (写真46) 。何々、オイルが不足だって? 警告は黄色だから直ぐに大問題が起こることもないであろう (と、ここは枝野風に) が、そのまま走るのも気持ちが悪いのでポルシェセンターに寄る事にしてナビをセット。さあてナビの指示に従って走り出すが、このナビの表示が結構見難い事に気が付くが、実はこれは序の口だった (写真47) 。2q 程走るとナビがこの先で右折を指示してきたが、その交差点らしき地点が近付いていたがナビの表示は少し手前で、という事は次の交差点かな、と思って交差点内を直進したらば画面は突如右折地点を飛び越していた。ななっ、行き過ぎかよ。結局次の交差点を右折して少し余計に回って目的にに向かう。

ところが元に戻るために入った道は裏道としては広めの道を選んだのだったが、運悪く途中工事中で片側交互通行であり更には路肩に宅配のクルマが停車していて、見たところ多少の余裕はありそうだが、何しろお尻がもっこりと飛び出しているターボだから、ひと擦り何百万円じゃあ堪らないのでサイドミラーを確認しながら慎重に通過する。この時に微速でのコントロールが実にし易い事を実感する。これが 991 Ph2 カレラSだったら、チョイと踏んだだけでビョ〜ん、と飛び出すオーバーレスポンスに冷や汗の連続だろう。

そのナビのお陰でホンの 15分程度の走行で2回もこのような目にあってしまった。まあ世の中では圧倒的に多い他社のナビの表示法に慣れているとこのクラリオン製の表示に違和感があるのも事実だが、それを考慮しても表示精度がいい加減な気がするし、乗り出し価格なら二千数百万円のクルマにこのナビはあんまりじゃねぇか‥‥と言いたくなる。


写真43
911系のコンソールは基本的にターボもカレラも変わらない。


写真44
AT セレクターもカレラと共通だが、勿論 ”TURBO" のロゴが刻印 (実際は多分プレス加工) されている。


写真45
イグニッションスイッチは電子キーをスロットに差し込んで撚るとか、ダッシュボードの底面に付いているパーキングブレーキスイッチなど、ターボもカレラも、Ph1 も Ph2 も、果てはボクスターまで皆同じ。


写真46
エンジンを掛けたら行き成り現れた警告だが、黄色だからそれ程重大な事項では無さそうだ。


写真47
Ph1最大の欠点はこの時代遅れの性能の悪い市販品流用ナビだ。

ディーラーに着いて早速ピットに入れる‥‥なんて事は勿論無くて駐車場でリアのエンジンカバーを開けてオイルを注入する (写真47) が、この時精密なポルシェのターボエンジンを眺めて悦に入る‥‥というのは不可能で、見えるのはカレラと共通の左右にファンの付いたカバーのみだった (写真48) 。

オイルも補充して再度エンジンを始動して正面のメータークラスターを見ると、そこには911でお馴染みの5連メーターが目に入るが、勿論右端のディスプレイにオイルの警告はもう出ない。センターの回転計がカレラはブラックでカレラSではシルバーとなるのが仕来りだが、これがターボとなるとまたブラックに戻るが、中央の回転計の中に ”Turbo”のゴロが確認できる。この回転計のレッドゾーンは 6,800rpm で自然吸気の Ph1 カレラSでは 7,600rpm という高回転になる。しかしダウンサイジング化により自然吸気 (NA) からターボに変更になった Ph2 ではレッドゾーン自体は 7,400rpm と意外に高回転だが、これはチョッと無理している感もあり、実際の高回転での勢いでは NA に軍配が挙がる。従って、カレラと言えば高回転までグイグイと引っ張るような運転を好むドライバーは嘆くかもしれないが、本気のマニアの場合は新車で NA の 911 が買えるのは最後のチャンスだから今買わないと一生後悔する、とばかりにサラリーマンでも頑張って最終生産の 911 カレラ Ph1 (勿論3ペダルのMT) を買った強者を知っている。

話が前後したがスタート時の挙動は極自然でPh2 カレラSのような飛び出すようなオーバレスポンスも無いから、都心の幹線道路を走るのは極めてラクチンで、こんな高性能車とは信じられないくらいに普通の走りをする。とは言っても一般道ではどうにもならないので早めに首都高に入る事にする。勿論例のナビは無視して自分の記憶と道路標示で首都高入り口に向って行く。全くあのナビは ”無いよりマシ” では無くて ”無い方がマシ” と悪態をつきたくなる。

首都高に入って結構速い流れに乗っている時もこのクルマとしては勿論宝の持ち腐れだが、だからといってクラウンのハイパワーモデルなど国産高級高性能車のような妙に速度感が無いのとは違い、速度なりの速度感を掴めるのは他のポルシェと同じであり、これはポルシェのポリシーのような気がする。都心の首都高といえば急で結構落差もあるようなショウモ無いコーナーが結構あるが、この手のコーナーは特別に減速しなくても実に安定したコーナーリングを見せてくれる。まあ 500ps 級のエンジンのクルマならそれなりの足回りを持っていて当然ではあるが。

郊外に進むと道は広くて直線が多くなるので、ここで巡航中に前車が空いている時を見計らってフルスロットルを踏んでみると、あっという間にヤバイ速度になるので減速する。とはいえこれもこのクルマの性能のホンのとば口を垣間見た程度だが。なお加速中は結構良い音がするのはターボとしては珍しく、普通はどうしても自然吸気に比べて官能的に劣るのだが、この辺は伊達に高価な訳ではなく多分排気系統にも目一杯予算を掛けているのだろう。

写真48
リアのエンジンカバーを開けてもエンジンは見えない。ポルシェのトップモデルである500ps超のターボエンジンが見られないのは悲しいが’‥‥。


写真49
オイルの補給口はエンジンルームカバーを開けて左端にある。


写真50
全く違うエンジンのカレラSだが、ファンのユニットはターボと同じ。

この先はその2へ続く。

⇒その2へ