Porsche 991 Turbo (2016/12) 中編 |
|
|
|
今回はいよいよ試乗したクルマそのものについての解説となるが、その前に念のためにポルシェの生産スケジュールについて述べておくと、これはちょっと独特で毎年次のイヤーモデルは9月 (8月は長〜い夏休み) から生産が開始されるから、新モデルの日本でのデリバリーは欧州 (もしくは南アフリカ) から船便でドンブラコと運んでくる期間が1ヶ月、通関して PDI をやって、ディーラーに来るのは最速でも11月くらいだろうか。だから9月生産からが翌年モデルとなるわけだが、考えてみれば日本の場合は実際のデリバリーは確かに事実上翌年になるから、MY (モデルイヤー) 2017 は2017年から‥‥なーんだ、合ってるじゃないか。 しかし新型車となると全てが上記のイヤーモデルのスケジュールに合っているとは限らないため、実際のデリバリーはより複雑になる。既に試乗記を公開済の 991 カレラS Ph2 は試乗車が用意できた初期に試乗したのだが、それでも2016年5月だった。これは 991 Ph2 の各モデルが一斉に発売されるのではなく、ポルシェの都合により順次販売開始となるためでカレラS は特に遅かった。それではターボはというと正式には 2015年12月 となっているので、余程早くから手を回しても2016年モデルを手に入れるのは至難の技だろう。しかも 911 ターボともなるとディーラーが見込みで発注はしない事と、更に毎回の生産スケジュールではターボのような特殊なモデルは生産開始が遅れるのは常であって、ということは今現在の 911 Ph2 のカレラターボは僅かな台数しかデリバリーされていないと思われる。まあそれでもターボはそのうちに手に入るであろうが、これが GT3 などになると予約開始した時点で既に先行予約で売り切れ状態だから、そういうクルマは各ディーラーの超お得意様で、早くから情報をもらっていたような特殊なユーザーでないと手に入らない。なお GT3クラスのデリバリーは、運良く予約出来たとして1年待ちとかは当たり前だ。 そういえば昨年箱根で雑誌のテスト中に事故死した自動車評論家が運転していた GT-3 は旧型で、しかも雑誌社の所有だったというが、要するに雑誌社でも新型 GT-3 の試乗車を確保するのは容易ではない、というも一つの理由ではないだろうか。 さてその 911 ターボだが、ディーラーは見込み発注をしないから展示車すら無く、当然試乗車も無いという情況で、雑誌社などは輸入元にある広報車を借りる事になる。そんな情況で今回の試乗車はと言えば読者の個人所有車を使用させていただいたものだ。そしてクルマは 991Ph1 の最後期となるモデルだが、実はターボの場合事実上エンジンは Ph1 の使い回しであり、内容的には Ph2 と殆ど変わりが無い。このエンジン特性の違いについては後編にて詳しく取り上げる予定だ。まあ歴代 911 ではカレラのエンジンが全く新しくなった場合でも、 ターボとなると2年くらいは旧モデルにチョイと手を入れて継続生産するのが昔からの常だから、恐らく今回も 2020モデルくらいで新型エンジンが搭載されるのではないか。 ![]() 以上の状況を踏まえて 911ターボの写真、先ずはエクステリアを見るとこれはお馴染みの 911 なのだけれど、見慣れた筈の 911 が何やら妙にカッコよく見える (写真21~22) 。まあ写真の撮影条件が良いこともあるが、それにしても 911 にありがちな多少の腰高感が全く無い。それ以外はリアフェンダーに見えるターボ独特のエアインレットが特徴的だが、リアのインレットはボクスター/ケイマンだって付いている。それもで初期のボクスターである 986 では911ターボに遠慮したのか明らかにターボよりもショボイものが付いていたが、987 ではターボもタジタジみたいな立派なモノになり、それが 981 ではドアのサイドにまでエアの通り道をえぐったスーパーカールックで、911 ターボどころかフェラーリ真っ青という情況になっているので、911ターボのオーナーからすれば複雑な心境だろう (写真23) 。 そしてサイドビューを 991 カレラS (Ph1 以下同様) とくらべてみると前述のリアフェンダーのエアインテーク以外は大きな違いは見当たらない。とはいえ良く見るとターボはリアにスポイラーが付いている。まあポルシェ 911 ターボといえば 930 時代から馬鹿でかいスポイラーはお約束だったから付いていて当然だが、形状自体は大人しくなっていて大人の趣味で纏まっているから、以前のケバい時代のように若い小僧が憧れるというモノでも無さそうだ。 | |
|
|
![]() |
|
真正面から見た (フロントビュー、写真24) 姿は両車共殆ど違わらないのはBピラーまでが同じもの、というか極端に言えばフロントバンパー等の樹脂部品とヘッドライト形状を除けば、何を隠そうボクスター/ケイマンも共通、ということはポルシェファンなら当たり前の事だ。 今度はリアを比べてみると明らかにターボの方が幅が広いのが判る (写真25) 。スペックで見てもターボの方が70o も広いが、それはリアのみでフロントは変わらない。そう、ここで気が付くのが 911ターボが妙に幅広というか平べったく見えるのはカレラよりもリアの幅が広いのが主な原因だった。勿論ターボ程ではないにせよカレラもボクスター/ケイマンも全てフロントよりもリアが広がっていて、ということはフロントセクションや室内幅は何の事はない全幅1,695o の5ナンバーサイズと変わらないのだった。 ターボのもう一つの大きな特徴であるリアウィングは高速になると上面が自動的に上昇してよりウィングらしくなるが、その時の速度は 120q/h だから高速道路でウィングを出して快走している 911 ターボは速度違反‥‥なんて如何にも何処かの掲示板へのレベルの低い書き込みみたいだが、このウィングには手動スイッチもあるから、例えば20q/hでも出ていることもある。なお自動で上昇した場合は80q/h でこれまた自動的に下がる。おおっ、サッスガは 911 ターボだわい、と言っては見たが何を隠そう 987 ではボクスター/ケイマンも同じような機構が付いていたのだった (写真26) 。ああそれなのに、現行 911 はカレラSでもこの機構は付いていない。しっかしねぇ、事もあろうに 987 には自動式のウィングが付いていたなんて、991 ターボのオーナーからすれば「どうなってんだ、責任者出てこい!」という気持ちだろう。いやあ、判る判る。 |
|
|
|
![]() |
|
GT3 の場合は見た瞬間に只者ではない、というか公道を走るのにこんなシートがいるのかとか、内装も妙にレーシーで価格から想像するような高級感とは全く違う世界を演出しているが、ターボの場合はドアを開けるとそこには見慣れた 911 (991) の室内が現れる。良く見るとシートはフルパワーのようで、これはカレラではオプション設定のエレクトリックコントロールスポーツシートで、このシーが標準装備ということはやはり伊達に500万円以上高い訳ではないようだし、GT3 と違いこちらは高性能を一つの余裕と考えた 911 のトップモデルという感じだ。ただしシートの種類からしてシート表皮は本皮/人工皮革のパーシャルレザーだと思うが、念のために写真28をみると‥‥判断できない。ポルシェの人工皮革は実に出来が良いためにチョッと見ただけでは判らないし、ましてや写真で判断するのは難しいのだ。こんな事ならもっと現物に触ったり舐めたり、いや流石に舐めはしないが、もっとよーく確認しておくべきだった。 ポルシェ 911 はリアに法律上二人が乗る事が出来るシートが付いているのが大きな特徴でありメリットだが、これが GT3 などの高性能車になるとリアシートが付いていない。それではターボはといえばフロントシートのバックレストを前に倒すとそこにはカレラと同様にリアシートが付いていた。勿論これは余程の事が無いと人は乗せないのが普通だが、写真30の左側のシートのように手荷物を置ける便利なスペースとして活用できる。そんなのメリットになるのか、というならばボクスター、いやマツダ ロードスターで良いから、これらの2シーター車に二人乗りで長距離ドライブに行ってみればよく解る。ナンタって室内には手荷物すら置けないし、傘もトランクに入れるから急の土砂降りではクルマを降りてトランクから傘を出すまでにずぶ濡れとなってしまう。 |
|
|
|
|
|
|
|
次にドアのインナートリムを比べると、これもカレラSと変わらない、とういうよりも写真31 のように Ph2 だって違いが判らないくらいだ。ただし、ターボはフルパワーシートのスイッチがドアノブの隣に有ることが大きな違いとなる。更に付け加えれば 991 のドアパネルは 981 (ボクスター/ケイマン) とも共通で、事実上 981 Ph2 である 718 とも同じだったから、ポルシェの現行スポーツカーはドアパネルが全部共通で、それに付けるパネルやパッドの表皮などで差を付けている、という事になる。 ところで過去に何度も述べたがポルシェは全て注文生産であり、細かい仕様は各個体によって異なる訳で、となれば動力性能は程々 (といっても一般車からすれば桁外れに速いが) で良いが内装は譲れないというオーナーはカレラにフルレザーのインテリアという仕様だって考えられる訳で、従ってポルシェの内装の写真はあくまでその個体のもので単なる参考と考えるべきで、オプション無しのすっぴん (どノーマルとも言う) のポルシェというのも先ず存在しない。尤もBMW だって本来は自分に合った仕様でオーダーするのが本筋なのだが、日本では BMW のオーダー車は極めて少ないようだし、特に最近は国産車と変わらない価格帯のモデルもあるから、スペシャルオーダーの BMW は遠くなりにけり‥‥。 話をドアパネルに戻して、911 ターボのドアノブ付近を拡大してみる (写真32) と、標準仕様とは言えしっかりしたステッチの入ったレザー仕上げというのが判るが、これが素のカレラだと標準でこうはいかない。またドアノブの左隣には前述のようにシートメモリーのスイッチが見える。 |
|
|
|
|
|
ダッシュボードについても同じ 991 Ph1 では (Sではない) カレラでも一見すれば殆ど変わらない。勿論あの評判の悪いポン付けのクラリオン製オーディオ一体ナビも同じであり、これは Ph2 では目出度くも欧州仕様のようにシステム化された専用品になったわけだが、そのナビについての詳細は後編 (走行編) にて少し詳しく触れることにする。 |
|
|
|
|
|
カレラの場合は Ph1 と Ph2 ではエンジンがマルで変わってはいるが、内装は殆ど変化がなかった。そして今回は Ph1 同士でターボを主にカレラSと比較してみたが当然殆どが共通だった訳で、しかしそこは価格差の分だけはチャッカリと差別化されていて、よく見ればカレラSでもオプションの上級インテリアがターボでは結構標準で付いている。一般にポルシェは可成りのオプションを付けないと満足できない場合があるが、ターボではそれが標準で結構付いているのだった。 ということで、次に一番の興味である走行に話題を移すが、これについては後編にて。 |