Porsche 718 Boxster (2016/12) 前編 |
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ポルシェは以前から 911 よりも価格帯の下のクラスとなるスポーツカーを発売してきたが、その最初は 1970年から販売が開始された 914 で、これはフォルクスワーゲンと共同開発されたものであることから通称 "ワーゲンポルシェ" と呼ばれていた (写真1) 。914 は空冷水平対向エンジンという点では 911と共通点が有るが、そのエンジンは 911 とは逆に向けて搭載されるミッドシップレイアウトだった。914 の生産はボディがポルシェ、エンジンがフォルクスワーゲンという分担で、エンジンは当初は水平対向 4気筒 1.7L 80ps だったが、その後 911T 用の6気筒 2.0L 110ps エンジンを搭載した 914/6 が追加販売された。914 は 911 よりも安価ということで 911 に比べると一桁多い数 (1972年では約2.8万台) が販売されたが、1976年に販売終了となってしまった。当時 (今でも) はミッドシップエンジンといえばルマンなどに出場するレーシング専用のスポーツプロトタイプか、ごく一部のスーパースポーツのみの世界だったから、ポルシェが比較的買いやすい価格帯でこのタイプを発売したことは大いなる話題だったが、いかんせんミッドエンジンスポーツカー独特の華やかさは無かった。 914の後継車種はフロントエンジンでRWDという従来のポルシェとは全く異なるレイアウトの 2+2 スポーツカーの 924 で1976年に発売された。そのエンジンは水冷直列4気筒でアウディ100用の 1.9L をベースとして2.0L に拡大しSOHC化 (アウディは OHV) したものを使用していた。914 のミッドシップエンジン方式は運動性能を考えればスポーツカーとしては理想的だが2シーターという実用性の無さがネックとなっていたために 924ではオーソドックスなRWD 方式が採用された。924 は 1978年には高性能版の 924ターボが追加され、更に1986年からは自社製の 2.5L 155ps を搭載した924S へと進化していった。 ところで924ターボには標準でリアスポイラーを装着していた (写真4) が、当時の日本の法規ではこれが許されなかったことから日本仕様には付いていなかった。まあ今でもシロアリ役人はろくな事をやっていないが当時は更に酷かったようで、他にも最先端装備の欧州車が日本の法規に適合していない事は結構あった。 |
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924 が924S に移行する時期と重なって、1983年にポルシェは944を発売した。944 は 924 のアウディ製とは異なりポルシェ製 水冷直4 2.5L エンジンを搭載していた。この 944のエクステリアは 924 と似ているがポジションは 924 と 911 の中間を狙ったものだった (写真5) 。この 944 も 1985年にはターボモデルが追加されている。 ところでこの 944 が発売されてから2年程経った頃に東京の街中などで妙に 924/944 を見るようになったと思ったら、良く見るとちょっと違う? 実はこれマツダ RX-7の2代目 (FC3) だった (写真6) 。今でこそオリジナルの鼓動デザインとか言って、それなりの評価を得ているマツダだが、当時はパクリ専門の安物メーカーというレッテルが貼られいて、RX-7 以外でも一見メルセデスSクラスのルーチェも結構街中で見かけたものだった (写真7) 。 |
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944 の後継として1991年に発売されたのが 968 で、エンジンは 3.0L 240ps 310Nm という具合に初期の924からすれば随分と大出力になったものだ。968はその後ターボS (305ps) 、ターボRS (337ps) と高性能モデルが追加されていったが、1995年にボクスター (986) の発売と共に販売を終了している。 ところで 911 以外のポルシェスポーツカーという点では 928 を含めておく必要がありそうだ。928は 911 に代わるモデルとしてより時代に即したラグジュアリースポーツとして 1978年に発売されたもので価格的にも 911よりも高価で、当時の記憶では日本では911の倍近い1千万円級だった覚えがある。この928の発売により 911は近いうちに生産が終了されると言われていたが、コアなユーザーは結局 911 を選び、その 911 は改良を重ねながらも今でも現役車種となっていることは言うまでもない。ポルシェは前述の 1978年発売の924ターボでも実は 911 の後継車種との目論見があったが結局 911 は近代化を進めながら生き残ってしまった。考えてみれば 911 の基本構成である空冷水平対向エンジンをリアに搭載するという方法は戦前に設計されたフォルクスワーゲン ビートルに端を発しているわけで、現在の 911 も水冷化された以外には水平対向エンジンもリアエンジン方式も健在というのも驚くものだ。 話を戻すと928はある程度の販売台数はあったものの、結局1990年に販売を終了している。 |
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そして本題のボクスターに話を進めると、初代ボクスター (986) の発売は 968 の後継モデルとして 1996年に発売された。ボクスターは水冷水平対向6気筒エンジンをミッドシップに積む2シータースポーツで、ある面 911 以上にピュアなスポーツカーでもあった。実はこの翌年に発売された5代目 911 となる 996 はボディの前半分は価格的に半値に近いボクスターと共有するという暴挙までやっちまったから、真正面から見れば911だかボクスターだか判らないという、もう911オーナーからすればトンデも無い事をやらかしたのだった (写真10) 。 996 はご承知のようにこれこそ 911 の歴史で初めて水冷エンジンを搭載したモデルとなり、内容的にも全く新しい世代の 911 となったものだが、それ故に古くからのファンにとってみれば独特の乗りにくさや癖が無くなり、こんなのはポルシェじゃあない!という事になったのは当然だった。しかも前述のようにボディの前半分は廉価モデルのボクスターと共有していたが、ポルシェも流石にこれはマズいと思ったようで、996 の後期モデル (Ph2) ではフロント形状を一部変更して、特に問題のヘッドライト形状はボクスターと異なるものになった (写真11) 。ポルシェはこのボクスターと 996 のお陰で経営状態も大いに向上し現在の盛況に繋がるのだが、この辺の話はPorsche 991 Phase2 試乗記 (2016/5) 大成功したボクスターは 2004年に新型の 987 に進化したが同時に 911 も 997 となり、前モデル同様にこの2車も同時に開発されて部品点数の50%以上を共通化していたという。987 はフルモデルチェンジ (FMC) とは言うものの、実際にはプラットフォームなど主要部品は継承していたが、内容的には 911 との差が縮まったとさえ思われるくらいに、ある面如何にも廉価版的雰囲気の 986 の欠点は大いに改良されていた。 |
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987 は 997 (911) と同様にPh2 (2008年) でエンジンが新型の直噴式に変更となっている。ここで 986 に始まるボクスターのエンジンの変遷をまとめると 986 ボクスター 986 ボクスターS 987 ボクスター 987 ボクスターS なおボクスターSは986の後期 (Ph2) から追加のモデルで、986 発売当初には設定は無かった。また987後期 (Ph2) ではエンジンの直噴化とともにATミッションがトルコン式からデュアルクラッチタイプの PDK となった。 ということで 981 については中編に続く。 |