BMW 523d (2017/3) 後編 その2 |
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ここでエンジンルームの中を比べると写真の撮影状態の違いを考慮しても G30 の方がエンジンが小さく見え、しかもその搭載位置もより後方に移動しているようにも見える (写真41) 。どちらも2.0L ディーゼルターボだがスペック上では最高出力が 184ps/4,000rpm → 190 ps/4,000rpm、最大トルクは380N-m / 1,750−2,750rpm → 400N-m/1,750−2,500rpm と何れも多少アップしている。 |
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対する F10 は同じく2.0L ターボディーゼルの N47D20C から184ps/4,000rpm、380N-m/1,750−2,750rpmを発生する。 見た目では新型エンジンの方がコンパクトに見える。 |
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操舵感については例によって BMW らしく決してクイックでは無く、特に COMFORT モードでは軽い操舵力と引き換えに中心部ではシャキッとしない。しかし走行モードを SPORT に切り換えれば操舵力は明らかに重く不感帯も少なくなりクイックな方向に変化するが、それでもドライバーによっては物足りないかもしれない。そんな時は SPORT+にすれば更に改善されるが、まあ普通の走りでは必要無いだろう。SPORTを選択したままで片側2車線の道路で前後にクルマがいないのを確認して素早く車線変更してみると、これは流石に BMW でEセグメントの中型セダンとしては迅速なレスポンスでスパッと車線変更が出来たが、傍から見れば「いい年してアホかあいつは!」となる。しかし5シリーズセダンとしてみると、どうも先代の F10 の軽快感に比べるとやや劣るようにも感じる。試乗車はディーゼルだから若しかして重量配分の違いでもあるのかとも思ったが、元来 BMW の4気筒はディーゼルとガソリンの重量差は殆ど無いのが常であり、車両重量自体も先代と比べて寧ろ軽量化されているくらいだから、新型の挙動がコンフォート志向なのはそのような味付けによるのだろう。 やがて適度な中速コーナーが近付いてきて、今回のコースはコーナ自体が少ないのでこのチャンスは有効に使わなければならないとばかりに少し強気の速度で進入すると、まあそりゃ5シリーズだから当然ながら弱アンダーの安定したコーナリングなのだが、以前のようなあたかも見えないレールの上を走っているようなニュートラル感は感じられない。先代5シリーズでは初期型の自然吸気6気筒 3.0L を搭載する 528i のスポーティな挙動にえらく感心したものだったが‥‥。 G30 はF10 よりも車両重量では 60s も軽量化されているから本来ならばより軽快な操舵感となっても良さそうだが‥‥。そこでエンジンルームを開けてプラットフォームの一部が見える状態でサスタワーの付近を見ると補強用のリブが F10 では随分とゴッツイものが付いていたが、G30 では穏やかなモノとなったのはアルミボティの構造がより詳細に解析された結果無駄なモノを省いたのか、はたまた多少方針が変わって寧ろ剛性を少し落として走行安定性を穏やかにしたのか、まあ色々想像は出来る (写真42) 。 | |
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今度は新旧でのタイヤサイズを比較するとどちらも 523d M SPORT の場合、F10 の Fr:245/45R18 、Rr:275/40R18 に対して G30 では Fr:245/40R19 、Rr:275/35R19 と1サイズアップしている (写真43, 44) 。ただしタイヤ幅は同じだからホイールが1インチアップされた分はより扁平になっている。タイヤがより扁平になれば本来乗り心地は悪い方向に向かうが、G30 では決して乗り心地が悪くなったとは感じられないのは、やはりコンフォート側に振ったチューニングなのだろうか。 そのホイールから覗くブレーキはと言えばキャリパーユニットは明らかに新型になっているが、シングルピストンの片押し式であることに変わりは無い。実は日記では F10 はフロントが2ピストンと書いたが、よく考えてみたらばそれは6気筒の535i の場合 (写真45) で、4気筒モデルではシングルピストンだった (写真46) 。それではいつからそうなったのかと言えば、更に一つ前の E60 はというと6気筒でも 2.5L の 525i ではやはりシングルピストンで、530i になると2ピストンとなっていたから、何の事はない5シリーズとはいえ低グレードモデルではシングルピストンだった訳で、流石はブレーキに金を掛けない BMW の面目躍如というところだ それで肝心の効きはと言えば、以前の BMW のブレーキはカックン気味の軽い踏力で喰いつくような効き味が特徴だったが、最近は随分マイルドになってきて、この G30 も勿論極普通のフィーリングになっている。要するにこの面でも残念ながら ”普通のクルマ” 路線をひた走っている事になる。 |
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最近の高級車は増々自動化が進んでいるが、実際に今の技術だったらば信頼性を抜きにすれば自動運転は夢の技術では無いのだが、何しろチョットでも不具合があれば即死亡事故に繋がるからどうしても慎重になり、今後は徐々に自動化を進めていくだろう。そんな情況だから BMW だって当然ながら自動化への道を進んでいて、今回の新5シリーズでは ”ドライビング・アシスト・プラス” というある程度の自動走行が出来る機能が搭載されているが、これはあくまでもサポートであり、ドライバーがステアリングホイールから手を離すと動作を中止するという。 それではどんな機能かといえば、これはもうやってみるしか無い。前車との車間距離を少し多めにとって巡航中に右側のステアリングスポークに組み込まれたスイッチを入れると、正面のメータークラスター中央の液晶パネルにそれらしき表示が出る (写真49) 。これにより前車との距離を保ったまま自動的に巡航状態となる。前車が少し加速して車間距離が空くとこちらも自動的に加速して車間距離を詰めて、適正な感覚になった時点でまた巡航状態になる。これゃあ結構よく出来ているじゃないか、なんて思って巡航していると偶にステアリングホイールがグインと引っ張られるような感覚にになる事があり、これは何かと思ったら車線のセンターから外れた時に自動的に中央に戻すための動作だった。 暫く流れに乗って走る前車に自動的に追従走行していたが、やがて先方の信号が赤になるのが見えた。当然前車も減速を始めるが、待てよ、このまま自動で停車までするんかいな? と半信半疑で様子を見ると前車が結構穏やかな減速をしているので、こちらもそれに追従して減速して行き、やがて前車が停止した。さ〜てお立ち会い、今までは十分過ぎる車間距離を自動的に維持していたから不安も無かったが、前車が停止した事で車間距離はグングンと縮んで行く。おっ、おい、大丈夫かよ!と本当はブレーキペダルに足を載せたい気持ちをグッと堪えて、しかし目の前に前車が迫ってきて勿論自動的に減速はするんだが、このママの減速度だとチョイと危なくねえかぁ‥‥とその時減速度が上がって少し強めのブレーキと共に結構前車ギリギリまで進んでチョッと強めの減速で見事に前車にピッタリくっ付けて止まって、やれやれ (写真47) 。 |
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<写p>![]() 真47 試乗車にはヘッドアップディスプレイが装備され、追従走行時にはその情報も表示される。 最終的な停車は自動的に結構ピッタリとくっ付いて止まる。 |
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新しい時代を見据えて確実に進化したニュー5シリーズだが、進化した分逆に失ったものも当然ある。中でも増々古き良き時代のフィーリングが無くなっている現実は、やはり寂しいものもある。確かに今回の G30 は決して悪くはないし、未だ日本車には追いつけない面も多々あるが、BMWっていうのはエンジンはもっとスムースでコーナーリングはニュートラルで、他社のクルマには無い独特のフィーリングこそが高い金を出してまでも BMW に乗ることを選ばせたのだが‥‥。まあこれも時代の変化で仕方ないのかもしれないが、なんだか寂しい気もする今回の試乗結果ではあった。
そうは言っても現行生産の中型サルーンとしてはメルセデスベンツEクラスと共に最も勧められるクルマであることは間違いない。そのEクラスと言えば一足先に FMC されて既に E200 については試乗記を掲載済みだが、今回の 523d の直接のライバルとなるとやはり同じく 2.0Lターボディーゼル搭載の E200d となる訳で、その為という事で既に E200d の試乗も済ませてある。ということで、先ずは E200d を、それに続いて 523d との比較を特別編でお送りする予定にしている。 乞うご期待! ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。
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