BMW 318i (2017/7) 後編 その2


  

ここでちょいとエンジンルームを覗いてみる。3気筒を縦置きすれば当然ながらエンジン全長は短くなるが、最近のエンジンらしくトップカバーで覆われているからシリンダーブロック部分は見えない事もあって、1気筒多くて更に電気モーターまで追加している筈の 330e と比べても長さ方向の大きな差は見いだせない。それでは基本的に同じエンジンを横置きしている 218i グランツアラーはといえば、何だか一見すると 318i よりも短いようにも見える。


写真2
318i の B35B15A 3気筒 1.5L ターボエンジンは一見すると4気筒と変わらない大きさに見える。


写真3
4気筒 2.0L ターボエンジンに HV 用のモーターまで備えている 330e だが、一見した大きさは 318i と変わらない。


写真4
218i Gran Tourer の B35A15A は性能は同じだが FWD のために横置きとなる。

という訳で動力性能に関しては 320i と比べて価格やスペックなりの差は感じてしまったが、エンジンが小さいという事はフロントに掛る軸重や重心から距離と重量の積である慣性モーメントでは有利な筈だからこちらに期待しよう。

それで先ずは COMFORT モードでの巡航中のステアリングの感触はと言えば当然ながら軽くで適度にクイックで、これは上位グレードと大きな違いは感じられない。それで片側2車線の国道を走行中に、上手い具合に後続車がいなかったのでソレッとばかりに素早い車線変更を試してみたが、流石軽量3気筒エンジン搭載車だけの事はある、という程のモノでは無かった。次に走行モードを SPORT に切り替えて同じ事を繰り返すと確かにステアリングレスポンスは向上するがクルマの軽快感が増す訳も無く、エンジンの軽さは全く感じないという事は無いが、明らかに違うという程では無い。

それでは旋回性能はどうかと言えば、今回のコースは10年以上前の BMW 試乗で度々試乗していもので、久しぶりに慣れたコーナーを走ってみるが 318i という割にはやはり軽快さは足りないしレールを走るが如くニュートラルという訳でもない。そう言えばこの 318i の車両重量は 1,550kg であり、これは320i の1,580kg よりも30kg 軽いだけだった。30kg といえば大人の体重の半分で、シリンダー1気筒分にしては少ないようにも感じるが‥‥。まあ、そんな訳だから想像していたよりも軽快感が少ないのはある面納得できる事でもある。

実は今回の試乗車は M SPORT という事でタイヤは 318i STANDERD の 205/60R15 に対してフロント 225/45R18 、リア 255/40R18 という立派 (過ぎる) なものを標準装着していて、これは6気筒 3.0L ターボ 326ps の 340i M SPORT と同一サイズであり、この身分不相応なタイヤが逆に足を引っ張っていた可能性が高い。これが STANDERD の 205/60R15 だったらば、もう少し軽快なハンドリングを楽しめたかもしれない。でも、カッコは良いんだけどねぇ。このクルマを一般ピープルが見ても M3 と区別がつかない事は保障する。ついでにリアの "318i" エンブレムを "M" ロゴに換えれば完璧な "なんちゃって "M3" で、実際以前はそういうクルマを結構見かけたものだった。

ブレーキについては BMW らしく軽い踏力で喰いつくように良く効く。その昔は 320i では4輪ベンチレーテッドディスクであるのに対して、318i ではリアーがソリッドディスクだったりと差が付いていたが、今回は 318i でも同じ4輪にXディスクが奢られていた。


写真5
一見すると M3 と見分けが付かないくらいで、これは歴代ナンチャって M3 の中でも極め付けの出来の良さだ!

今回は M SPORT という事が仇となって価格は高いし、オーバースペックなタイヤで軽快感を失うしと、どうもあまり良い結果が出なかったが、まあこれは最初に懸念していた事でもあった訳で、やはり 318i は STANDERD (446万円) か LE (409万円) に限るという気がする。とはいえ走りは全く要求しないから、とにかくカッコの良い M SPORT が欲しいというなら止めはしないが、489万円という価格は320i SPORT の 532万円との価格は43万円だからこれは‥‥いや待てよ。この価格差は中々に良いことろを突いていて、ユーザーからすれば悩ましいものだ。「このぉー、憎いねぇ大将!」という処かな。