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BMW 318i (2017/7) 前編

 

BWM の代名詞と言えば当然ながら3シリーズであり、今では首都圏郊外の住宅地でも頻繁に見かける状況だが、如何せん標準的な 320i でも 五百数十万円という価格は一般ファミリーでは厳しいものがある。特に住宅ローンや教育費を抱えていれば‥‥何て状況で、少しでも安いモデルは無いのかと思ったら、そうそう、昨年秋に 318i というモデルが発売された筈だ。

ところで、318i という名称はキャリアの長い BMW ファンからすれば3シリーズのエントリーモデルの定番という感じだが、先代モデルである E90 では 318i がカタログに無い状態で、これが11年程続いていた事から最近 BMW に興味を持った読者には馴染みが薄いかもしれない。という訳で、今回は最初に歴代 318i について纏めてみる。「そんなの今更いらねぇよ」なんて言わないで、まだ髪の毛が生えていた頃を懐かしみながら目を通してもらおうか?

初代3シリーズは1975年発売の E21で、しかしこれには 318i が無かった。というのは 1.8L モデルは存在したが、これは 318 というモデルでキャブレター仕様だった。要するに BMW のモデル名末尾の "i" というのは injection 、すなわち燃料噴射を表していた訳で、キャブレター仕様が絶滅した現在ではガソリンエンジン= " i " となっているだけの事だ。という訳で下の表の E21 だけは 320i となっているのは "320" はインジェクション化されていたからだ。E21 のサイズは全長 4,355 x 全幅 1,610 o 、ホイールベース 2,563 o というコンパクトさで、これは現行のカローラアクシオ (全長 4,400 x 全幅 1,695 o 、ホイールベース 2,600 o) よりも一回り小さくて、特に全幅に於いては 85o も狭かった。

なお BMW の正規輸入元は初期にはバルコムトレーディングだったが、1981年以降は BMW の日本法人である BMW ジャパンとなった。そういえば '70年代に泉岳寺の親戚に行くと、近くに大きな "BMW" の看板が見えて「あれが BMW のバルコムかぁ」と感慨深く見ていたものだった。ただし、規模はチョイとした国産ディーラ−程度だったような記憶がある。

2代目3シリーズは1982年発売の E30 で、これは先代 E21 からのキープコンセプトであり、ボディサイズは多少大きくなったとは言えやはり小さい。この E30 は当時の高級輸入車としては大いなる成功となり都心では結構見かけた事から、そのサイズの小ささから「六本木カローラ」と陰口を叩かれていたという話を覚えている読者もいるだろう。しかしそう言って3シリーズを馬鹿にするのは、少なくともより高級な輸入車オーナーでは無く、国産車も低価格車がやっとという階層だった。まあ言ってみれば、N大学を馬鹿にするのは高卒か精々専門卒 (専門学校卒のことらしい) というのと同じ事だ。

その E30 では 318i が設定されいて、エンジンは 1.8L という "本当の 318i" だった。下表のデーターは4ドアだが、実はこの E30 までの3シリーズは2ドア車が多かったのはボディサイズからも当然であり、今の立派になり過ぎた3シリーズでは想像もつかない事だ。ところで、同じく1982年に発表されたメルセデスベンツ 190E は3シリーズのライバルかと言えば、価格的にベースモデルでも5百万円を軽く超える 190E に対して 300万円代からの価格設定の3シリーズでは格が違った。当時の輸入元でもあったヤ○セでは3シリーズユーザーがショールームに訪問するとアウディを薦められたとか、駐車場も裏の目立たない場所に誘導されるとか、まあいろんな逸話があったが、確かにメルセデスは1ランク上という認識が大勢を占めていた時代だった。

実はその 190E も当時は "子ベンツ” などと言って馬鹿にする輩も結構いて、子ベンツ買うくらいならシーマを買うと言ってた土建屋の叩き上げ社長を思い出す。あっ、いや、勿論叩き上げと言っても中には働きながら夜間の大学へ通い、独学でバイオリンもマスターして、市民オーケストラで知り合った音大出のピアニストと結婚し、休日には奥さんの伴奏でモーツアルトを演奏している、何ていう例も知っている‥‥という事は無い! 話のついでに思い出したが、BMW の事をビーエムという呼び方は何時から始まったのだろうか。というのも、その昔のマニアたちは "ベムヴェ” と呼んでいた筈だが‥‥。

そして1990年発売の E36 は先代よりもサイズがアップしたことで今まで小さすぎた帰来があった3シリーズが適度な大きさ (幅は5ナンバー枠ギリギリ) となった事や、内容的にも 190E と比べてもそれ程見劣りがしない等、売れる要素が充分にあった事もあり、3シリーズは大いに売り上げを伸ばした。とはいえ、318i のエンジンは先代 E30 からの使いまわしだったし、AT ミッションは性能のあまり良くない 4AT (実は日本製だった記憶がある) である等、イマイチの部分もあった。因みに E36 では 320i は2.0L とはいえ6気筒エンジンを搭載していたし、ミッションは ZF 製の5AT で性能の違いは大いにあったが、価格も 430万円と同時期の 318i よりも70万円も高かった。

次の4代目 E46 (1998年) こそは3シリーズがメルセデス Cクラスとの差を縮めると同時に、日本に於ける BWM の販売を確立したモデルだ (と断言してしまおう) 。ボディは更に少し大きくなり、ボディ自体も剛性感に満ち溢れていた。318i についてはエンジンは 1.9Lに拡大され多少のパワーアップとなったがその分ボディも重くなってしまったし、AT はやはり4速だった。ところが 2001年の MC ではエンジンが一新されて新型の 2.0Lとなり、しかもミッションも6気筒系と同様に ZF 製の5AT となった。実はこのミッションは当時としては極めてフィーリングが良くて、4AT と比べて単に1段多いだけではなく変速レスポンスやダイレクト感など大いに差があった。すなわちこの時代が 318i の頂点だった訳で、次の FMC で5代目 E90 (2005年) なった時には 318iが廃止されてしまった。

ところが E90 の場合、厳密には 318i は廃止されたのでは無くて、E46 318i に相当する 2.0L モデルは何と 320i と名前を変えてしまったのだった。ややっ「それってインチキじゃねぇかぁ」とか思ったが、考えてみれば 2.0L で 318i というのが変な訳で、2.0L の3シリーズならば 320i というべきだから何の事は無い、本来の仕来りに戻っただけの事だった。


写真1
初代3シリーズ E21 1975-1983


写真2
2代目3シリーズ E30 1982-1994


写真3
3代目3シリーズ E36 1990-2000


写真4
4代目3シリーズ E46 1998-2007

現行の F30 が最初に発売された 2012年は最初に 2.0L ターボでもハイチューン版の 328i が発売され、少し遅れて 320i が発売されたが、この F30 前期型にも 318i は用意されなかった。そして F30 は 2015年にマイナーチェンジを行い、各モデルは徐々に新型のエンジンが搭載されていった。このエンジンは従来の "N" から始まる型式に変えて "B" から始まるモノで、特徴としては1気筒当たり 0.5L のユニットを並べる事で3気筒 1.5L 、4気筒 2.0L 、6気筒 3.0L とシリーズ化されるモジュラーシステムで、しかもガソリンのみならずディーゼルもラインナップされている。

この新型エンジンの中で 3気筒 1.5L ターボを搭載したモデルが昨年末に日本でも販売が開始され、これが今回の主役である 318i で、日本市場では久々のモデルだ。この 318i は1気筒分を取り去った事で車両重量は 30kg 軽く、価格は約50万円安くなった。因みにライバルであるメルセデスベンツ C180 は 318i と価格的にはほぼ同等だが、排気量が 0.1L 大きい事もあるりエンジン性能も C180 が多少上回っている。

それでは国産車で3シリーズのライバルと言えば、やはりここはレクサス IS を取り上げる必要がありそうだ。しかし、日本国内展開が始まった時点では強気だったレクサスだが、最近ではベンツ・ビーエムユーザーからの乗り換えを狙うのは無理だと悟ったようで、価格も幾らスペック上のパワーが上だと言っても最も安い IS200t でも 318i や C180 よりも高い価格設定で、しかもワンプライス (下取りでの調整などはあるとしても) というのは、もう別のユーザー層を狙っているとしか考えられない。そえでそういう輸入車を毛嫌いする小金持ち対しては寧ろ価格が高い方がプライドを満足して喜ぶのではないか、何て勘ぐってしまうが「まあ勝手にやったら」というところだ。

今回の試乗車は 318i M SPORT で、トップの写真でも判るように最初に試乗車を見た時には「これが 318i かあ? 立派すぎねぇかぁ〜」なんていう気持ちになった。しかし価格は489万円也と 500万円に迫る勢いで、本来の 318i としてはベースモデル (446万円) や、更に低価格の 318i SE (409万円) を選びたかったが世の中そうは問屋が卸さない、ではなくてディーラーが用意しない。これは高いのに乗せてその気にさせるか「安いモデルでも大して変わらないっすよぉ〜」何て言って売っちまうとか、まあディーラーも売って何ぼの商売だから仕方の無い面もある。

BMW はどうだか判らないが、輸入元によっては試乗車のグレードを指定してくる場合もあると言い、こういうのは概ね上級モデルだったりする。と愚痴はこのくらいにして、さて 409万円也の 318i SE って何者なんだというと、当然ならが 318i (STANDARD) から装備を削ったものだろうとは想像出来るが、それって若しかしてナビとか iDrive とか削っちゃったんかい? と思ったら、その辺はしっかり装備されていた。それでもライトはハロゲンで今の時代としてはイマイチ暗いヤツか、と思ったら上位グレードと同じ LED 方式だった。さらにドライビングパフォーマンスコントロールも付いているから走行モードもしっかり変えられるようだが、ドライビングアシストという衝突回避やレーン保持などのハイテク安全装備は付いていないようだ。でもまあ「これは別にいらねぇな」という感じだが、他に考えられるのはシート表皮や内装がショボいだろうという事だせ、そのシートの調整は電動メモリー付きでは無いようだ。でもまあ 57万円も安いんだから文句は言えないなぁ、なんて言ってはみたが、まあ本気で 318i SE を検討するならディーラーにその旨を言えばどこかの展示車とか、場合によっては他のお客さんに納車する前のクルマをそっと見せてくれるだろう。

という事で、今回試乗したクルマの内外装については同じ M SPORT という事で 318i は 330e と殆ど同じだから下記の試乗記および日記を参照願うとして、ここでは敢えて取り上げる事はしない。

⇒ 
BMW 330e (2017年6月1日からの日記)

そして肝心の走りについては後篇にて。

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