BMW 118i (2017/9) 後編 |
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前編での写真を見れば判るように前期型、それも M135i ですら殆ど変わらないインテリアだから、ドライバーズシートに座った眺めもフィーリングも前/後期での違いは無い。エンジンを始動して走り出すまでの "儀式" も当然ながら同じであり、見事なまでのキープコンセプト (というよりも手を付けていない) を感じながら今時珍しいレバー式のパーキングブレーキをリリースしてゆっくり走り出す。この時正面に見えるメータークラスターと計器類も M135i と変わりは無く、それも速度計のフルスケールや回転計のレッドゾーンすら同じで、3気筒 1.5L ターボ 136ps と6気筒 3.0L ターボ 320ps のメーターが目盛まで同じというのは釈然としないところだ。 今回も駐車場から行き成り片側2車線の立派な国道という条件だから、本線に入ってからはいち早く速い流れに乗るために2/3 程スロットルを踏むと、その加速感は何となく、そう何となく程度だが1カ月程前に同じ場所で試乗した同じエンジンを搭載する 318i よりも多少は勝るような気がする。車両重量は 318i の 1,550kg に比べて 118i は 1,430kg だからその差は 120kg であり、P/W レシオでいえばそれぞれ 11.4 および 10.5 kg/ps となり、まあどちらも決して速そうな値では無いが、それでも当然ながら 118i の方が体感的にもトルクフルに感じて当たり前、というところか。 | |
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後期型 118i に相当する前期型は 116i であり、これは 118i とのスペック上の性能差は殆ど無いが、 116i の排気量は0.1L 多い1.6L でシリンダー数も一つ多い4気筒だ。実はこの 116i のエンジンは同時に販売されていた 120i のエンジンとは何と型式が同じ (N13B16A) であり、それなのに最高出力は136ps/4,400-6,450rpm と 170ps/4,800-6,450rpm の違いがある。そしてトルクはと言えば 116i では 220N-m/1,350-4,300rpmに対して120i では 250N-m/1,500-4,500rpm であり、実はこの差は単に過給圧の違いであり、しかもフルスロットルを踏まなければ両車のトルク特性は全く同じで、要するに普通に運転する分には全くその差が無い、というものだった。 それでは今回の 118i はといえばスペックでは 136ps/4,400rpm 220N-m/1,250-4,300rpm と殆ど 116i 同じだが、よくよく比べると最高出力発生回転数が 116i では4,400-6,450rpm と表記されているが 118i では 4,400rpm であり、これを額面通りに受け止めると 116i では4,800rpm を過ぎてからも6,450rpm まで 136ps を維持するのに対して、 118i は同じく 4,400rpm で136ps に達するがそれからはダラダラと下降していく、とい解釈できる。そこでより詳細な特性を調べるために BMW の発表するカタログを始めとする資料を探したが 118i は勿論の事、同じエンジンを搭載している 318i についても見つからず諦めかけた時に、基本的に同じエンジンの筈だが型式の中央一桁が違う、要するに FWD 用の横置きである 218i アクティブツアラー用の特性図を見つけた。これによると何の事は無い、 4,400rpm のピークに達した後も 136ps を維持していた。そして念の為に 218i のスペックを調べたら 118i 同様に 136ps/4,400rpm と表記されていた。な〜んだ、深読みして損した! 単に表記方法を変更しただけだった。もしかして、カタログの原案を考えたスタッフが別だった‥‥とか? 試乗コースはあと10分程片側2車線の国道を走ってから地方道に入るために、今のうちにフル加速を試しておく事にする。発進加速を試すには信号待ちの先頭となるのが都合が良い訳で上手い具合に自分が流れの先頭だから、もう少し先で信号に引っ掛かれば良い訳で、そんな事を考えながら緩いカーブを曲がって直線になり先の交差点が見えてきたが、んっ? 何か変だ。もしかして渋滞か? そしてその渋滞は単なる道が混んでいるというのではなく、恐らく先の方で事故とか車線を規制しての工事などが行われているのだろう。10分程渋滞の列に入っていたが100m も進まないような状態で、これはダメだと諦めて狭い裏道に入る事にした。 ここはセンターラインは無いが道幅は 6m くらいあるから普通車同士ならばすれ違いは比較的楽な事と、こんな道では制限速度の標識を立てる予算が無いのか、要するに速度の指定が無いから法定速度の 60km/h で合法的に走行できるというオマケまで付いていた。さてこの予定外のコースは 118i にとっては幸運にもそのメリットを大いに感じられるものだった。すなわち、最近のクルマとしては狭い全幅 (1,765o) は絶対的に狭い道ではより路肩とのマージンが増えるから安全速度も増すし、短いホイールベースと軽めの車両重量は軽快な挙動をもたらすし、動力性能のショボさが問題になる程に速度は出せない‥‥など、このような裏道では絶大な威力を発揮する。もしも 118i の後を7シリーズで追いかけたら、恐らくその距離は開いてゆきやがて視界から消えさるだろうし、3シリーズだって 118i のようなペースで走るのは大変だ。 |
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やがて本来のコースである県道に合流して、そこからは何時もの手慣れたコースを走る。ここは一見すると大して広くない普通の道だが、実は県道ということで制限速度が市道のように 40q/h という非現実的なモノでは無く、更に適度な中速コーナーがあるので重宝しているのだが、脇道から入った事で最初の2つくらいの美味しいコーナーを飛ばしてしまった。とはいえ残りのコーナーを試すと、今やCセグハッチとしては殆ど唯一の RWD である1シリーズらしく、素直な姿勢で安定してコーナーをクリアーしていく。 それでは前期型である 116i と比べると如何かと言えば、まああれから月日も経っていることで記憶の曖昧な部分もあるとはいえ、どうも 116i の方がよりクイックで軽快だったような気がする。尤も BMW はイヤーモデル毎に特性が変わる傾向があり、しかも FMC して直ぐの方かよりスポーティーで、その後は徐々にマイルドになっていく傾向がある。これは BMW のみ成らずポルシェでも言える事で、ドイツのカーメーカーの事情でもあるのだろうか? もう一つ思い当たるのは 116i の試乗車はデザインラインが Sport だったから装着されているタイヤは前後とも 205/55R16 と車格に対してバランスのとれたものであったが、今回は M Sport の為にフロント:225/45R17 , リア:245/40R17 という 136ps のクルマとしては如何考えてもオーバースペックなサイズであり、これが軽快なハンドリングを殺してしまっていたかもしれない。なお後期型 118i でも Sport では 205/55R16 と前期型 116i と変わらない。 そう言えば今回は渋滞回避で国道を途中で外れたのでフル加速を実施していない事に気が付いた。それで先ずは走行モードを SPORT に切り替える(これも未実施だった) 。50q/h で巡航中に SPORT モードに切り替えると回転計の針は 500rpm 程上昇し、要するに1段シフトダウンされた事になり、まあこれは極普通の設定だ。SPORT モードではステアリング系も多少シッカリするのも何時もの通りで、さてこの状態で次の赤信号のチャンスを狙うが、そもそもこの道は信号が少ない。ルームミラーを見ると後続車も見当たらないから一度10q/h くらいまで減速して一気にフルスロットルを踏んでみる。ここで何より感じるのは、やはり回転の上昇が遅い事だ。2,000rpm 以下しか使わない市街地では結構十分なトルクに感じたが、こうしてフル加速して見るとやはり回転の上がりは遅く、まあ P/W レシオからしてもこんなモノなのだが、これはドライバーによっては気になるかもしれない。しかも3気筒とう事もあり、フル加速時のエンジン音は音量云々の前に先入観もあると思うが音質自体が安っぽい。 ところで、前期 116i のブレーキはリアにソリッドディスクが使われているが、これが118i では上位モデルと同じベンチレートタイプとなった。それでは実際のフィーリングはと言えば流石にベンチレート化された効果は著しく、踏んだ瞬間に違いが判る‥‥何て事がある筈も無く、フィーリングに変わりは無い。というか原理上はキャリパーの幅が狭いソリッドディスクの方がキャリパー剛性では有利となり、結果としてストロークが短くなるのだが、これも勿論判らない程度だ。 試乗も終わって駐車場に到着し、パーキングブレーキを引っ張って、AT セレクターレバー上部の "P" ボタンを押してやれやれ、という場面でふと気が付くとボディが細かく振動しているのを感じる。そうだ、このエンジンは3気筒だったのだ。やはり奇数のシリンダーによる振動は完全には消せないのだった。 | |
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結局後期型の 118i はその最大の相違点である新型エンジンの性能が 116i と殆ど変わらず、最大のメリットは燃費が向上 (16.6 → 18.1km/L JC08) した事で、その代償は3気筒化による多少の振動とフィーリングの悪さであり、ハッキリ言って進化とは言えそうにない。今現在では既に後期型もモデルサイクルの折り返し点であり、近い将来に新型に FMC されるが、この時は間違いなく FWD 化されるだろう。 そうなると程度の良いアプルーブドカーの前期型 116i を探す手もあるが、いやまてよ、後期型は最初の半年くらいの間は 118i といっても前期型と同じ4気筒 1.6Lエンジンを搭載していた。数は少ないので中古車市場で希少だろいうか、これがあれば良い選択かもしれない。少なくともエクステリアは後期型の方がチープさを感じ無いからだ。 |