Nissan Skyline 200GT-t (2014/6) 後編
  

ドライバーズシートに座った感じは既に試乗しているハイブリッドと同じなのは試乗車のグレードがType Pであり前編で述べたようにシートについてはType SPと同じだからということもある。今回は時間に余裕もあったので座り心地をジックリと味わってみたが、硬さは適度だしそれでいて体を支える機能も充分にあるし、サポートもマアマア良い方だから国産車のシートとしては悪くない。しかし、何かもう一つ足りないと感じるのだがそれが何なのか言われれば、さて上手く答えられない。と言うと何かインチキ臭いと思われそうだが、結局椅子の生活になってから百年とチョいの日本人が作っているシートだから、椅子に座って何百年という歴史のある欧州とは何処かが違うのは残念ながら納得できることだ。

エンジンの始動やATセレクターの形状、パターンなどはハイブリッドと全く変わらないからスタートまでの手順も同じであるが、ハイブリッドのように音もなくスーっと走り始めることが無いのは当然だ。


写真21
スタータースイッチはハイブリッドと共通となっている。唯一の違いは200GT‐tの表示は"START STOP"に加えて"ENGINE"と書かれている事だ。


写真22
ペダル類はType SPのアルミスポーツペダルと違いType Pでは地味な樹脂製となっている。

今回は表の国道ではなく狭い裏道に出たことから、公道に出たといってもユックリと加速して、その後30q/h程度で表の道まで走ってゆくが、この時のトルク感は充分でターボとはいえたったの2.0Lという感覚はない。このようにトルク的には低回転側からも充分だが、県道に出てから前車の減速で20q/hくらいまで速度が落ちたところでハーフスロットルくらいで再加速しようとすると、エンジンのレスポンスが悪くて思ったように加速しない事態となる。実はここまで走行モードをSTANDARDにしていたのだが、ここでSPORTに切り替えてみる。ハイブリッドと同じで決して使い易くはないMODE SWICHを前方に押すとセンタークラスター上部のメインディスプレイに切り替え画面が表示され、同時にメーター中央の小さなディスプレイにもSPORTの表示がされる。

SPORTモードではSTANDARDでの間怠っこしさが消えて、少しアクセルを踏めば多少のタイムラグはあるものの概ね思ったとおりに加速していく。ここでSPORTモードの特性を確認するために再度STANDARD に戻して国道の流れに乗って60km/hくらいで巡航すると、回転計は1,500rpm位を指している。ここでSPORTモードに切り替えるとシフトダウンが起こったのが判り、回転計も2,000rpmまで上昇する。しかし穏やかに巡航を続けているといつの間にかシフトアップが起こり、結局STANDARDモードと同様に1,500rpmくらいまで下がっていく。それでもSTANDARDモードと違うのは僅かにアクセルを踏み込むと直ぐにシフトダウンが起こることだ。

スカイラインにはECOモードというのが無いために、STANDARDモードが低燃費モードであり、言ってみれば事実上のECOモードともいえる訳で、このレスポンスの悪さが気になるドラーバーは常にSPORTモードに入れっぱなしの方が精神安定上は良さそうだし、SPORTといったってBMWのように本気で3,000rpm位を常用する訳ではないのだから、恐らく燃費だってそれ程悪くはないと思うし、一応クルマに400万円の予算を出せる状況なのだったら多少のガソリン代くらい我慢しても、レスポンスの良い走りの方が良いと思う。


写真23
メータークラスターは左の回転計に組込まれた小型メーターがHybridではチャージ&パワーメーター、200GT‐tでは水温計が付いている。それ以外は共通となっている。


写真24
Type SPのステアリングに付いているパドルスイッチはType Pには付いていない。


写真25
トライブモードの切り替えスイッチはHybiridと共通で、要するに使いづらい。

ここでいつのも一級国道を走行しているので今度はフル加速に挑戦してみるが、実を言えば本当はスタンディングスタートをしたかったのだが、今回は ”運良く先頭での信号待ち” という状況がやって来なかったために、10q/h程度まで速度が落ちたところで前車が左折し、前方がガラ空きとなったのをチャンスとばかりにフルスロットルを踏むと一瞬のタイムラグでシフトダウン(2速⇒1速)が起こり、クルマは一気に加速していく。この時の加速感は流石に3.5L+電気モーターの350GT HYBRIDには敵わないが、それでも結構それに近い加速で、これは同じ2LターボのBMW 320iよりも明らかに上回っていた。そこで試乗が終わって帰宅してから両車のスペックを比較したらば、200GT-tの211ps 35.7kgf・mという性能は320iの184ps 27.5kgf・mを完全に上回り328iの245ps 35.7kgf・mに近い、というよりもトルクでは同等だから結局200GT-tは性能的に320iよりも寧ろ328iに近いことになる。328iは320iとほぼ共通なエンジンに多少の圧縮比の変更と主として加給圧を上げるなどの制御プログラムの違いで高出力かをはかったモデルだが、多少の装備差はあるにしても基本的に同じエンジンで価格は百万円以上も高いという、いわばホッタクリ商品的な趣がある車であり、ベースグレードなら300万円代から用意されている200GT-tが600万円よりの328iと同等の動力性能となれば、これは抜群のコストパフォマンスといえる。

ところで、200GT-tのハイバワーエンジンは前述のようにメルセデスの新型Cクラスと共通ということだが、欧州で既に販売が開始されたCクラスはC180が156ps 250NmでC200 は185ps 300Nmとなり、これだとC200よりも200GT-tの方が高出力となってしまう。そこで200GT-tと同等のモデルはないかと調べてみたらばC250が210ps 350Nで、何と200GT-tのエンジンはCクラスで言えばC250に相当するハイパワーだった。どうりでフルスロットル時の体感加速度が強力だったわけだ。という訳で、200GT-tは動力性能については全く文句はない。

さて、動力性能の良さは判ったが、エンジンのフィーリングはといえば、これがまた実にスムースでフル加速時の排気音も軽快なハミングで、どの国産車にも優っていて、まるで最新のメルセデスなどの欧州プレミアムカーのエンジンのようだ‥‥なんていうとジョークになってしまうという現実が笑える。


写真26
エンジンの形状は当然ながら全く異なる。ハイブリッドはオレンジの高圧ケーブルがそれらしい。


写真27
ブレーキのマスターシリンダーは200GT-tではオーソドックスなバキュームブースターが見えるが、Hybridは全く形式が違う。

”走る”については好結果だったが曲がるはどうかといえば、先ずはSTANDARDモードでは350GT Hybridと同様の軽くて中心付近が緩慢なものだった。それではSPORTモードはといえば、Hybridでは確かに不感帯もなく操舵力も重くなって、クイックといえば言えるのだが何やら人工的な色付けがあり、ある程度力を入れても反応しないのが、あることころを超えると急にステアリングが反応しクルマは向きを変えようとするために、何やらギクシャクした挙動になってしまったが、200GT-tではSPORTモードでもそれ程変わらず多少操舵力が増した程度で、中心付近の緩慢さもSTANDARDモードと大して変わらない。そのために思い切ってコーナーを攻めるなどという気にはならないし、折角の動力性能の良さを台無しにしていることは間違いない。

今回は試乗時間に余裕があったこともあり、何時もBMW車の試乗に使っているコースを走ってみたが、途中のコーナーでは3シリーズと比べたら悲しくなる程のステアリング系の不甲斐なさとともに、旋回特性自体は意外にも弱アンダーの素直なもので、ある程度コーナーリング速度を上げても充分安定して通過してしまった。ということは、クルマとしても出来は決して悪くないのだろうから、ステアリング系のチューニングをやり直せば結構良いクルマになる可能性は充分にあり、2年後に大幅MCで改善するなどをすれば、国内でもBMW3シリーズを追撃できる可能性はある、とは思うのだが‥‥。

次に”止まる”はといえば、今回の試乗車のグレードはType Pであり、前回のType SPに装着されていたアルミ対向ピストンの立派なキャリパーはType Pには付いていない。それでも鋳物の片押しとはいえフロントには2ピストンのタイプを使っているから、容量的には決して足りないことはない。そして効きも決して悪くはないし、何よりもハイブリッドが強くブレーキを踏んだ時がグ〜ンと奥に入っていく、要するにストロークで制御しているフィーリングに対して、200GT-tでは最初の遊びを過ぎたらばその後のストロークは極僅かで、ブレーキ系の剛性は結構高そうだ。前回ハイブリッドの試乗の時に、ハイブリッドはブレーキ方式が違うのではないかという事を感じたが、今回はエンジンルーム内のブレーキマスターシリンダーのカバーを外して内部を比較してみた。写真27のように200GT-tにはオーソドックスなバキュームブースターが見えるから、これは一般的なバキュームサーボ方式だが、Hybridでは全く異なる機器が装着されていて、特にポンプらしき形状のアクチェーターが見えるが、これは恐らく電子制御によりブレーキ圧を発生させるなど、何れにしてもハイブリッド車のブレーキは電子制御化されているのだろう。


写真28
タイヤはベースグレードとType Pが225/50RF17、Type SPは245/40RF19が標準装着されている。


写真29
ブレーキキャリパーはType SPのアルミ対向ピストンに対してベースグレードとType Pは鋳物の片押しとなっている。

200GT‐tは、新型メルセデス C250と同じで、BMW 3シリーズならば328iに相当するハイパワーエンジンを搭載したことによる動力性能には全く文句はない。そう思えばベースグレードなら400万円を切る価格は実に買い得でもある。ところが、その動力性能の良さを帳消しにする操舵系の未完成な事が総てを台無しにしているのは、何とももったいないことだ。ディーラーで聞いたところによると、ステアリングの緩慢さは試乗した多くのユーザーが指摘していたというから、極一般的なユーザーでも直ぐに判ってしまうレベルということだ。

それでライバル比較の特別編だが、既にハイブリッド同士の比較は済んでいるスカイラインとBMW 3シリーズではあるが、本命としてはやはり今回の200GT‐tと320iの比較だろう。いや、前述のように性能的には328iと同等なのだから200GT‐t vs 328iという手もあるが、やっぱり320iと比較してスカイライのアドバンテージを強調する、くらいのナショナリズムは発揮してやろうかとおもっている。

ということで‥‥

ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。

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