PORSCHE MACAN TURBO 特別編
  [PORSCHE MACAN vs SUBARU FORESTER XT 後編 その2]




特別編へようこそ。
前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

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マカンで最初に狭い一方通行路をゆっくり走り出すと、DCT (PDK) としては発進は充分スムースで速度のコントロールもやり易いことを感じる。次に地方道に出て最初に加速した瞬間に、おおっ、このトルク感は只者ではないぞ、と感じるのは最廉価の SUV シリーズとはいえそこはポルシェであり、しかもラインナップ中のトップモデルであるターボで、車両重量こそ 1,930kg と重いがパワーは 400ps もあり、パワーウェイトレシオは 4.8 kg/ps というスーパースポーツ並だから、強烈な加速は当然でもあると再認識する。まあ安いと言ったって、それはポルシェのターボとしてはという注釈が必要であり、試乗車の価格は1千万円を超えているのだった。

フォレスターXT のパワートレインはエンジンのチューニングが僅かに大人しいが基本的にはフォレスター 2.0GT と同じモノだから加速のフィーリングはレヴォーグ 2.0GT と殆ど同じで、要するに1,610kg というマカンに比べて310kg (!) も軽いボディに280psのエンジンだからパワーウェイトレシオは 5.8kg/ps と流石にマカンターボには敵わないが、それでも結構なスポーツカー並の値でもあり、その加速も国産SUV としてはトップクラスだから、スバヲタさんが自慢するのも無理は無い。とはいえ、マカンターボは次元が違うのもまた事実だ。ただし、マカンターボの価格はフォレスターXT の3倍だが、まあそれをいっちゃあおしめーよ (と寅さん風に言ってみる) 。

最近のクルマは電子制御という事もあり多くの場合に走行モードの切り替えが出来るが、今回の2車も当然ながらモード切替スイッチが付いている。その場所はマカンの場合はコンソール上の左側にあるスイッチで ”SPORT" と "SPORT PLUS" に切り替えが出来、更には足回りは別途ダンパーの切り替えスイッチも用意されているから、動力性能はノーマルでも足はハードにするとかの選択が出来る。マカン ターボの SPORT モードでは、当然ながら常用回転数は上がるしアクセルもステアリングもレスポンスは良くなり、SUV というジャンルのクルマとしては驚異的な性能となる。メーカーの発表では 0 - 100 km/h が4.8秒というから、これはちょっと前の 911 並だし、5秒を切るというのは立派に高性能車の証でもある。

フォレスターのモード切替スイッチはレヴォーグと同様にステアリングホイールのスポークに組み込まれていてコンソール上には存在しない (写真右下) 。スポーツモードに切り替えると当然ながらレスポンスは向上して加速自体も良くなるように感じるし、前述のようにノーマル (スバルではIモードという) でも十分な性能が更にアップする。ただし、280ps という最高出力は一時代前なら国産車の自主規制の上限であり、そう考えるとフォレスターXT の動力性能は何となく物足りない。とはいえよりハイチューンのレヴォーグは逆にフォレスターよりもパワー感に劣っていたという、もう何が何だかわからない情況でもあるが。

ここで運転中に常にドライバーの視界に存在するメータークラスターを比較してみる。先ずはマカンだが、PORSCHE らしくその精密感と高級な質感は他社を圧倒していて、これだけでも高価な代償を払う価値がある。とはいえ、マカンのメーターは三連であり、これはボクスター/ケイマンと同様で要するにPORSCHE としては廉価なシリーズに使われているものだ。そして 911、パナメーラおよびカイエンという上級シリーズの場合は五連メーターとなるのは今更言うまでもない。

対するフォレスターはといえば国産車らしく自光式だが、以前のトヨタ車に見られたような派手でケバい、田舎のキャバレー風では無く結構落ち着いてはいるが、流石にポルシェのメーターと比べると分が悪い。この辺の違いは寿司で言えば回転寿司の本マグロと、高級寿司店の本マグロの違いだろうか。ただし高級寿司店と言っても、アヘ首相がテレビ局や新聞社というマスコミの首脳に官房機密費で振る舞うような店程には高級ではないが‥‥。

ここで両車のトランスミッションについて触れてみると、マカンはポルシェ得意のDCTタイプである7速 PDK を搭載している。同じ PORSCHE でも上級カテゴリーのカイエンは未だトルコン式ということを考えればマカンの PDK は立派なもので、さてその性能はといえば現在の2ペダルミッションの中ではダントツの高性能で、一般にレスポンスの良いと言われるDCT 方式の中でも群を抜いている。

対するフォレスターは CVT 方式だから DCT 方式のマカンと比べるのは、これまたあまりにも酷だ。なんて同情している場合では無く、ここでハッキリと宣言すれば280psをフルに生かせないのも、このCVT の責任が大きい!何て言い切ってしまいたくなる。念の為にフォレスターのラインナップを調べてみたらば、自然吸気の 2.0i ならば6MT がラインナップされていた。本当はせめてレヴォーグのようなステーションワゴンが欲しいが家庭の事情により SUV を買う必要があるスバヲタさん、とまではいかなくてもスバルフリークくらいだったらば、むしろこの2.0i 6MT が良さそうだ。といっても、実際に試乗した経験があるわけでも無いので確信は持てないし、MTの試乗車なんてまず無いだろうから確認も出来ないが。

動力性能については流石にスペックどおりでマカン ターボの圧勝だったが、今度は操舵性や旋回性能という言ってみれば ”曲がる" について比較してみる。

最初はマカンから。先ずは NORMAL モードで流れに沿って巡航してみると、中心付近のステアリングのフィーリングはSUV としては十分にダイレクトで不感帯も少なめだが、PORSCHE というブランドを考えればちょっと物足りない。そこで今度はSPORT へと切り替えると行き成り大分シャキっとして、これならまあ合格範囲だろうか、という状況になった。試乗では特別なワインディングコースというものは走っていないが、それでも途中に何箇所かのコーナーがあるので、SPORT モードのままで先ずは適度な速度でコーナーに侵入してみると、多少のアンダーステアは感じるものの極々素直な特性で曲がってゆく。そこで次は更に速度を上げてみるが、高い重心のSUV によくある大きなロールなどもなく、SUV としては十分にスポーティーで、これで不満があるならばそもそも背が高く重心が高くてコーナーリング性能からすればどう考えても不利なSUV なんてものを買わないことだ。

次にフォレスターの操舵性はどうだろうか。こちらの試乗もそんなに気合を入れたものではないから、コースの途中にワインディング路なんていうモノも無く、まあそれでも一般道での多少のコーナーで試した範囲では背の高い SUV としては十分に合格だが、マカンと比べるとやはり明らかに負けている。それでも国産SUV としては十分に良い方だ。

標準装着のタイヤサイズはマカンがフロント:235/55R19、リア:255/50R19で、対するフォレスターは前後とも225/55R18であり、写真下を見ればマカンのホイールのスポークの細さが目立っているが、要するにフォレスターに比べて強度が弱く‥‥なんて言う事は無く、素材の強度が違うことは明らかであり、これも価格の差だろうか。それで実際の乗り心地はマカンでは走行モードがNORMAL 時は当然ながら、SPORT モードでも実に靭やかに路面の凹凸を吸収する。というとフワフワかと誤解されそうだが、基本的には固くシャキッとしたスポーティーなセッテイングでこれは大したものだ。

それではフォレスターはといえば適度に固いが不快ではないという昔だったら「欧州車顔負けで国産車では飛び抜けている」と表現してスバヲタさん達を優越感に浸らせる事が出来たが、最近では国産他社もレベルが上がってきて、スバルが特別という訳ではなくなってしまった。要するに乗り心地でもマカンと比べれば伊達に値段が高いわけではなく、その差は歴然としている。

PORSCHE のブレーキといえば宇宙一と比喩されるくらいに優秀なのは今更言うまでもないが、そんなクルマを相手にするフォレスターは、ハッキリ言って悲劇でもある。それでも両車のホイールから除くキャリパーを比較すると、下の写真のようにマカンでは真紅のボディにポルシェのロゴが輝くアルミ対向ピストンが見えた段階で勝負あった、という感じだが、実は何を隠そうリアについては最近のPORSCHE車としては異例の片押しピストンのキャリパーが付いている。要するにリアについてはフォレスターと大きく変わるところが無い、という訳だ。

それで実際にマカンのブレーキの効きを試してみれば、やはりリアが片押しピストンとなった影響は如実に感じる‥‥何てこともなく、そんな事を気にしなけれがブレーキとしては何の不満も無い。それではマカンも宇宙一かといえば、世間のクルマからすれば重心が極端に低く、リアエンジンという特異なレイアウトからフロント軸重が少なく、急ブレーキでフロントに荷重が移った時点で前後がイーブンになるという特性の911では、その車両レイアウトも宇宙一の原因の多くだから、ブレーキユニット云々を別にしてもマカンが宇宙一には成り得ないのだった。

それでフォレスターのブレーキはといえば、これだってフロントは2ピストンであり、このクラスの常識から言えばオーバースペック気味のブレーキユニットだから当然ながらよく効くし、熱容量でも十分だろう。

という具合に両車を比較してきたが、今更敢えて結論を纏めるまでもなく価格を考えなければマカンの圧勝であり、そんなことは一部のスバヲタさんを除けばスバルオーナーでさえ容易に想像出来ただろう。スバルオーナーと言っても皆が皆スバヲタと言うわけではいし、以前はBMWなどの欧州車を持っていたが事情により今は予算が無いので取り敢えずスバル車でも買おうか、という例も結構あるのを知っている。要するに欧州車と比べてもそれ程酷く無いという理由であり、勿論妥協は必要だがまあ良いか、という感じで、その場合は何が何でもハイパワーの上位モデルというよりも、寧ろパワーの少ない買得なモデルを選ぶのが普通だ。例えばレヴォーグなら1.6GT であり、今回取り上げたフォレスターだったらば 2.0i という具合だ。

長い人生の間には家庭の予算を別の所に振り向けなければならない時期もあり、何しろ最近の教育費の負担の多さは半端ではなく、私立理科系大学の年間学費は150万円くらいが普通だから何と900万円も掛かってしまい、マカン分が吹っ飛ぶ計算になる。えっ? 年額150万円ならば4年間で600万円じゃないのか? って、いや今時理科系だったらば修士課程修了はマストだから6年間で900万円ということでっせえ〜。本当に冗談抜きで大手企業に研究開発職で入社するには通称 ”院卒”、最近では大学院前期博士課程といようだが、要するに修士過程まで行くのが当然なのだそうだ。それでも全員が大手企業に就職出来る訳も無く、900万円の投資の結果は‥‥プーターロー!何ていう現実も随分知っているが、そうなると俺のマカンをどうしてくれる!てな具合になるのだが、勿論だれもどうにもしてくれない。

やっぱり子供というのは親の人生修業という面では実に有用なものと思って、マカンは諦めるか。と、割り切れるかといえば、いやぁ、参ったねぇ。