BMW 523d Touring (2014/4) 前編 |
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BMWのハイオーナークラスである5シリーズは、3シリーズに比べれば明らかに上級モデルと判るくらいに高級感に溢れていることもあり、中産階級憧れのクルマでもある。その中でもワゴンというのはパーソナルユースを強調する意味でも人気は高い。まあ、パーソナルを強調するのなら5シリーズのクーペバージョンである6シリーズという手もあるが、実用性では圧倒的にワゴンだろう。 このように今では5シリーズツーリングはEセグメントの高級ワゴンとして人気車種だが、5シリーズに最初にワゴンが設定されたE34(1988~1995)の当時は、高級ワゴンといえばメルセデスのEクラスであり、5シリーズはワゴンとしては後発だった。いや、ワゴンのみならずサルーンでも5シリーズというのはハッキリ言ってEクラスよりもランクの劣るモノという解釈が一般的だった。これはE39時代でも同様で、5シリーズがEクラスと互角の勝負が出来るようになったのは先代のE60からだった。E60はその前のE39から内容的に劇的に進歩したのも事実だが、メルセデスに追いつけた最大の理由はEクラスが採用した電子式ブレーキシステムに根本的な欠陥があり、100年掛けて培ったメルセデスの信用を一気に失ってしまうというオウンゴールにより5シリーズが躍進できたというのが実情だった。 |
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ということで、今回のスペック比較は523dに加えてガソリンエンジンの523i (何れもツーリング)とメルセデス Eクラスから523iと同等価格のE250 ワゴン、そして同じBMWでもワンランク下のボディに523d と同じディーゼルエンジンを積んだ320d ツーリングの4台を選んでみた。
5シリーズツーリングのアウターサイズは全長4,915 x 全幅1,860oという堂々としたもので、ライバルのEクラス ワゴンもほぼ同サイズとなっている。しかし、ホイールベースに関しては5シリーズが2,970o あるのに対してEクラスは2,875oと115oも短い。この辺は両社のポリシーの違いだろうか。 5シリーズの場合、同じ2Lでもディーゼルとガソリンでは最高出力は184psと同じだが、最大トルクについては523dの38.7kgf・mと523iの27.5kgf・mであり、なんとディーゼルエンジンが40%も大きい。そして価格はディーゼルが約20万円強高い。メルセデスEクラスは523iと同様に2.0L ガソリンターボのE250 ワゴンでは最高出力が211ps、トルクに至っては35.7kgf・mと523i よりも圧倒的にハイチューンとなっているから同じ2.0Lターボとはいえ、E250 の過給圧はかなり高いのだろう。そして523i とE250の価格は寧ろE250の方が多少安い設定となっているが、以前なら5シリーズはEクラスよりも低い値付けをするのが常識だったから、言ってみればメルセデスも落ちぶれたものだ。 それでは320d ツーリングはといえばサイズは一回り小さく、車両重量は260s! も軽い。それでもエンジンは523dと全く同じだから当然ながら動力性能では上回るだろう。320d ツーリングについては1年半ほど前にディーゼル車の国内販売が始まって直ぐに試乗しているので、興味のある方は BMW 320d Touring 試乗記を参照願いたい。それにしても同じエンジンながら何故に5シリーズは523iと”23”なのに3シリーズでは320iと”20”になってしまうのだろうか。 さて今回の試乗車は523d ツーリング Luxuary で価格は744万円だから、一般的なファミリーからみれば憧れのBMW 320i よりも5割増し! となる。フロントからBピラーまでは5シリーズサルーンと共通だから、流石に風格がある。リアについてもアウターサイズが大きいことからデザイン的に無理がなく3シリーズよりも見た目の安定感がある。しかし、サイドビューではリアのオーバーハングが短いことから、如何にも高級ワゴン的な長いオーバーハングを期待すると裏切られる。それにしても全長が4,915oもあるのに何故にリアオーバーハングが短いのか、しかもフロントオーバーハングもBMWの常で非常に短いのだ。その理由は2,970oという3mに迫る長大なホイールベースであり、確かに写真5を見ても長い! |
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真正面から見ると当然ながらサルーンと全く同じ、何て書くと早速突っ込みを入れる奴がいそうだが、、厳密に言えばツーリングにはルーフレールが付いている。しかし、以前のようにこれ見よがしのモノでは無くて、低くて目立たないためにチョッと見ただけではサルーンとの区別が付かない。 そして真後ろから見ると、3シリーズなどでも同様だがサルーンとデザインが共通している。勿論ワゴンはリアにゲートがあるから同じではないが、ウエストラインから下がほぼ共通で、サルーンのトランク上面の位置にはツーリングにも水平のプレスラインがあって、写真7-1~2を見れば一見してサルーンとの違いが判らないくらいだ。 ディーゼルエンジンの523dとガソリンの523iを見分ける方法といえば、思い当たるのはリアの”523d" というエンブレムくらいのものだ。そしてクルマの差別化としては定番である排気管はといえば左のみ2本出しで、これは523iでも同じだ。そういえば、全く同じエンジンを搭載している320dの場合はといえば左から1本のみで、要するに排気量などから2本必要なのではなく、3シリーズと5シリーズの差別化ということだろう(写真8-1~2)。 |
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リアゲートを開けると、そのラッゲージスペースは当然ながら広く、ワゴンらしさという面ではこのくらいのスペースは欲しいと思うし、実際にワゴンとしての実用性を考えれば、これ以下ではワゴンを選ぶ意味が無い。 というのは、3シリーズ ツーリングだと日本人サラリーマン必須の昇進ツールであるゴルフ特急便としては、ゴルフバックが4個載らないという致命的な弱点がある。大企業の営業管理職の3シリーズツーリング ユーザーによると、リアシートのバックレストを片側だけ倒して3人とバック3セットを載せるらしいが、4人乗れないのは他車と分乗すれば良いにしても、リアパッセンジャーは隣席のゴルフバックと共に旅をすることになり、甚だ美しくないそうだ。 それが5シリーズ ツーリングならばバック4個をリアラッゲージスペースに置いて、広い室内で4人がリラックスしての移動となり、3シリーズとは雲泥の差となる。従って、その管理職氏としては次は何としても5シリーズを買いたいのだが、子供の大学進学で家計は大赤字となり、5シリーズどころの騒ぎではないとか‥‥。 なお、リアゲートには当然ながらゲート下端には電動クローズ用のスイッチが付いている。ここには2つのスイッチがあり、写真11で右側にある鍵のシンボルが表示されている方のスイッチを押すと、ゲートがクローズした時に施錠される。 |
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ドアを開けると、3シリーズと比べて室内の広さを感じるのはサイズの違いから当然なのだが、特に後席の足元に余裕があるなど、これなら4人乗車での長時間走行でも疲れないだろう。ワゴンボディのために後席の頭上付近でもルーフラインがが下降しないこともあり、セダンよりも更に頭上空間の余裕がある。 シート表皮は試乗車のデザインラインが Luxualy のためにレザーシートが標準で装備されている。そしてシート調整は当然ながら電動式だが、シート側面にある操作スイッチには3シリーズなどでお馴染みのポジションメモリーが無いが、実は5シリーズではドアのインナートリムに付いている(写真15)。そのドアトリムはといえば、材質は見るからに高級そうであり、流石に最廉価グレードでも700万円弱という高価格車だけのことはある。 |
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インパネ全景は、これまた流石に広い車両全幅(3シリーズ+60o)から室内も広々として、この感覚に浸ると3シリーズに戻るのが寂しくなったりするくらいだ。そしてインパネの質感はといえば、言うまでもなく高級感に満ちあふれているのは、3シリーズ(写真16-2)と比べれは解り易い。 センタークラスターのオーディオやエアコンの制御ユニットは、これまた1~3シリーズ共通のものとは全く異なり、7シリーズとの共用となっている。そのセンタークラスターの配置はといえば、最上部に横長のディスプレイを配置することで運転時の視線移動を減らしているが、3シリーズのようにインパネ天板から更におっ立っているのに比べると多少は低い位置になる。まあ、3シリーズのような方法は高級感という面ではイマイチだが‥‥。 |
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と、ここまで523d Touring Luxuryの室内を見てきたが、やはりアッパーミドルクラスの5シリーズは基本的にファミリーカーである3シリーズに比べて随所でクラスの違いを見せ付けられることになったが、それでも5シリーズにはデメリットもある。まずは価格が高いことだが、それ以外にも320d と同じエンジンを搭載するにも関わらず車両重量が3シリーズよりも260kgも重いということは、動力性能に不足は無いのだろうか、という疑問もある訳で、その辺は実際の試乗で明らかになる。 ということで、この続きは後編にて。 |