BMW M135i (2013/9) 前編

  

BMWのMモデルといえば古くはM1に始まり、その後のM3やM5などはマニア憧れの定番高性能車となったのは今更言うまでもないが、ここでM3について少し振り返ってみる。M3の初代モデルは1985年のE30で、目的はツーリングカーレース用としてのグループA(当時)のホモロゲーションを取得するためだった。このようにレーシングカーのベースモデルを市販して販売実績を稼ぎ、ツーリングカーレースに本格的なレーシングモデルで出場するという手法は、日本ではスカイラインGT-Rが行っていたが、結局時が経つにつれて大型化、高級化により、今ではM3もGT-Rもレースとは無関係の豪華高性能モデルとなってしまった。

2代目M3(E36)はエンジンが6気筒となり、パワーも大幅にアップされたが、その分重量は約300kgも増してしまい、軽快なレーシングモデルのベース車から高級スポーツ路線へと変更され、その後のE46では900万円に迫るプライスタグをぶら下げて、この価格は当時のポルシェ911のベースグレード(MT)に迫るモノだった。まあ、動力性能も911に近いから、性能を考えれば911並と言いたいのは判るが、本物のスポーツカーとしてプラットフォームからして専用のポルシェに対して、サルーンに強力なエンジンを載せたM3では、本来同一視するのが間違っているのだが、それでも911並のクルマが100万円以上も安い、何ていうまやかしに騙されたお金持ちもいたようだ。と、まあ、この話はコレ以上しないが、ここで歴代M3とM135iを比較してみる。

今回試乗するM135iは1シリーズベースのMモデルならば従来のしきたりではM1となる訳だが、実はMとはいえM3やM5という本物のMモデルがM Auto-mobiles製であるのに対して、こちらはM Performance Automobilesという新しい会社で製造されていて、言ってみればMモデルと一般のコンフォートモデルとの中間ということで、555万円という価格も従来のMよりも安い設定になっている。

とは言っても、上の表を見れば判るように、パワーではE36やE46に迫る勢いであり、トルクに至っては自然吸気の高回転エンジンを搭載していたM3と比べて、M135iはターボの威力としてこれらM3を確実に上回っている。そして、車両の大きさから言えばM135iはE46に近いサイズで、そのM46といえば歴代M3の中でも最も充実していたモデルだから、それに近い内容で価格は60%で買えるM135iはスペックだけで比べたら買い得感はずば抜けている。と、言ってはみたものの、念の為に米国価格を確認したところ、5ドアハッチの1シリーズは米国では販売されていなかったがクーペは売られていて、320ps、3Lターボを搭載したモデルは135isという名称で価格は43,250ドルだった。やっぱり米国ではBMWを安く売っていたが、オプションの差や販売数量の違いなどを考えればM135iの国内価格が555万円と言うのは、一時期のM3のように、米国で6万ドル程度クルマを日本では900万円で売っていたのに比べたらば、十分に妥当な価格ともいえる。


写真1
初代(E30 1985~)M3。ツーリングカーレース出場のためにホモロゲーションモデルとして発売された。


写真2
最も完成されていたE46 M3。しかし900万円という価格はいくら何でも吹っ掛け過ぎではないか?

先ずは1シリーズのバリエーションを比較しておくが、日本で販売されている3種類に加えて、欧州では116dというディーゼルエンジン搭載車もあるようだ。BMWは3シリーズ以上には日本国内向けにもディーゼル車を設定しているが、何故か1シリーズにはディーゼル車が無い。

M135iと116i M Sportとの比較は既に日記(2013年10月9日より)で実施しているので、詳細はそちらを参照願うとして、一言で言えば殆どM Sportそのもので、表を見てもM135iと116i M Sportはアウターサイズも事実上同一だ。そしてエクステリアでの相違点はエンブレムを除けばタイヤ&ホイール、サイドミラー、2本出しの排気管程度で、言ってみれば135is M Sportといっても良いモノだ。それは、例えばM3やM5のようにフェンダーサイドにエアのアウトレットがあるなど、一見してMと認識出来るようなモノも無いことで判るだろう。

写真の試乗車はボディーカラーがサファイヤブラックで、この色は1シリーズ全てに用意されているが、Mが付くからには専用色も捨てがたい、と思って調べてみたらば一般のモデルには設定がないエストリル・ブルーというのが見つかったので、これがM135i専用色だと思ったが、よくよく見たらばM135i/M Sport専用と書かれてあり、そういえば日記で紹介した116i M Sportがそんな色だったのを思い出した。


写真3
エクステリアから一見してM135iと判るものはない。またM135iの専用ボディーカラーの設定もない。


写真4
写真のサファイヤブラックも極普通の1シリーズのカラーであり、専用色といえばエストリル・ブルーというのがあるが、実はM Sportと共用だった。

写真5
サイドから見てもM135iの特徴はタイヤ&ホイールが18インチであるくらいなのだが、大径ホイールというのは結構見かけを良くするのに効果がある。しかしM Sportでも同じホイールを付ければ結局同じだ。

フロントビューを比べてみると、まあ、ハッキリ言って同一のようだ。これもM3などはM Sportに一見似ていてもエアインテイクの形状が微妙に違ったりするのだが、M PerformanceのM135iはそういう差別化はしていない。 ただし、細かい点ではフロントサイドにあるエアインテイクには、M Sportに装備されている補助ランプがM135iには無いが、これはエアの通路として必要な面積を稼ぐために補助ランプが邪魔になるためという。

次にリアはといえば、やはり大きな違いは見つからないが、よく見ればM135iの排気管は左右から各1本の合計2本出しとなっているが、これは3Lターボエンジンだから当然でもある。おまけに、この排気管が光り輝くクロームメッキならともかく、試乗車ではブラック系のメッキのようで、これがブラックのボディカラーに埋もれてしまい、殆ど目立たない。ただし、このクルマをナンチャって116iとして使うには実に具合が良い。


写真6
フロントは基本的にはM Sportと共通となっている。


写真7
勿論リアも一見してM135iと判る部分はない。


写真8
エアインテイクの補助ランプが無く、その分をエアインレットの面積として使っているのが唯一の相違点だ。


写真9
リアでは太い排気管が左右から、合計で2本出しとなっている事でM135iと半顔できるが、黒いボディに黒いマフラーでは殆ど目立たない。

今まで説明した以外でも、細かいエクステリア上の違いはあり、先ずはサイドミラーがM135i専用となっていることで、写真11のように上1/3がシルバーとなっているが、だからどうということもない。また、M135iのエンブレムはリアエンド(写真12)のみで、フェンダーサイドの”M”のエンブレム(写真10)は何と116 M Sportと同じだった。そう言えば、1ヶ月ほど前にディーラーの駐車場でフェンダーにMマークをつけた1シリーズを見かけて、これはもしかして噂のM135iかとも思ったが、Mというにはタイヤが小さいなど、何となく違いを感じたのだった。


写真10
フロントフェンダーサイドの”M”ロゴのエンブレムは、何とM Sportと共通だ。


写真11
写真のサイドミラーはM135iの専用パーツらしいが、だからどうした、という程度のものだ。


写真12
リアエンドのエンブレムは、当然ながらM135i専用だが、これさえ無ければM Sportとの違いは判らない。


写真13
ラッゲージスペースは普通の1シリーズであり、床面積は少ないがハッチバックの強みで高さは十分にある。

室内についても、M135iは116i M Sportとほぼ同じであり、本物のMモデルのように特別な装備をしているわけではない。M135iも116i M Sportも標準シートの表皮はヘキサゴン・クロス/アルカンタラ・コンビネーションだが、写真の試乗車はオプションのレザーシートを装着していたから、違いがあるが標準装備ならば両車とも同じシートが付いているという事で、本物のMのようにM Sportとは一線を画したようなサポートの良さそうなバケットシート、という訳ではない。ただし、シート調整についてはM135iがメモリー付きパワーシートであるのに対して、M Sportでは手動となる点が異なり、ということはシート側面の調整部分がレバーの付いた手動式ならばM135iでは無いということだ。はいっ、この見分け方は試験に出ますから忘れないようにっ!

とは言ってみたものの、M Sportにはオプションでパワーシートの装着ができるから、パワーシート=M135iではない。そして、ドアを開けた時に見えるドアシルプレート(サイドスカットルプレート)はM135iならば”M”ロゴに加えてそのまんま”M135i”で、M Sportでは”M”ロゴのみとなる(写真17)。

ドアのインナートリムについても両車は全く同じものが付いている。標準ではM135iでも肘の当たる部分がシート表皮と同じヘキサゴン・クロスが貼られているが、M Sportでもオプションのレザーシートを選べば、この部分も同じレザーとなる。

写真14
ドアを開けた眺めはM Sportと変わらないが、写真のクルマはオプションのレザーシートが付いていた。
ただし、シート調整はM135iがメモリー付きのパワーシートであるのに対して、M Sportでは手動となる。


写真15
M135iの標準シートはヘキサゴン・クロス/アルカンタラ・コンビネーションで、これはM Sportも同じ。


写真16
M135iの試乗車にはオプションのレザーシートが付いていた。


写真17
M135iのドアシルプレートは”Mロゴ+M135i”で、M Sportは”Mロゴ”のみ。


写真18
ドアインナートリムも標準はシート表皮と同じヘキサゴンクロスだが、オプションのレザーシートを装着すると、この部分もレザーとなる。

ここまでの結果から想像できるようにインパネにしても、これまたM135i独特のものはなく、一見しただけでの区別は難しい。そしてセンタークラスターを見てもオーディオも同じだし、オートエアコンも同じだ。ただし、116iはベースモデルの場合にはマニュアルエアコンとなるが、折角BMWを買うのだから普通は20万円を追加してデザインラインを買うだろう。

写真21のインパネ右端は、全く区別が付かない状況で「同じ写真貼ってるんじゃねぇのか」なんて言われそうだが、右端に僅かに写っているボディの色(ホワイトとブルー)が違うから別の車両の写真という事だ。

写真19
左下の116i M Sportと比べても、殆ど違いがわからないM135iのインパネ。


写真19-2
M SportがM135iと同じなのは分かったが、それではデザインラインがSportではどうかといえば、まあ殆ど変わりはない。


写真20
センタークラスター自体も、装着されているエアコンとオーディオのユニットも全く同じものが付いている。


写真21
注釈が無ければ区別が付かないほど同じなインパネ右端部分。

ということで、冒頭に書いたようにM135iというのはエンジンルーム内に1.6Lターボの代りに640iなどと共通の3.0Lターボを押し込んだもので、言ってみれば135is M Sportである。そして動力性能はスペックから想像はつくが、それでは一番気になるのはといえば、操舵性能だろう。これだけは諸元表からでは解らないから、乗ってみるしか無い。

ということで、この続きは後編にて。

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