Volkswagen Golf GTI 試乗記 特別編
  [GOLF GTI vs 120i 後編]

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運転席に座って前を見ると特に1シリーズの1,765oという全幅は最近の欧州車としては決して広くないから実に運転がし易いのに対して、GTIの1,800oという全幅はBMWでいえば3シリーズと同じだから、「ゴルフ=小型で取り回しが良い」という法則は今や通用しないのだが、まあそれでも普通に街中を走っても特に問題となる程には広くも無い。ただし東京の一部、例えば路が狭いので有名な世田谷辺りでは、1,800oはちょいと厳しいかもしれない。

ドライバーのポジションはGTIが少し高いような気がするが、車両の全高ではGTIが120iよりも10o高いだけとなっている。なお、シートの座り心地は好みの問題もあるが、伝統のGTIの方が座面の硬さやサイドサポートなど実にフィットすることなど、1シリーズよりも良いような気がする。

エンジンの始動はどちらもインテリジェントキーとプッシュスイッチによるが、その場所は120iがセンタークラスター右端というBMW車に共通の定番位置にオーソドックスな形状のスイッチがあるのと比べて、GTIはセンターコンソール上の右上の狭いスペースにシルバー仕上げで表示が殆どみえない小さなスイッチを使用するのだが、これは知らないとチョッと面食らうことになる。まあ、オーナーなら特に問題は無いのだが‥‥。

次に走り出すためにATセレクターでDレンジを選択するのだが、このセレクターはどちらもフロアーコンソール上に配置されているが、GTIは直線パターンのメカ式で、メカニカルな解除ボタンを押しながらガチャガチャとDレンジまで引いていく。それとは対照的に1シリーズでは3、5シリーズとも共通の電子式セレクターを手前にカチッと引くことでDとなる。勿論レバー側面の解除スイッチを押しながら操作するのだが、GTIのメカ式とは異なりこの解除スイッチも単なる電気式のスイッチとなっている。

さてATをDレンジにセットして、次にやるのはパーキングブレーキの解除だが、その位置もGTIはゴルフに共通のコンソール上、ATセレクター手前にあるBMW5シリーズとほぼ同形状のスイッチによる電気式で、これを下に押すと解除される。1シリーズの方はオーソドックスなレバー式で、(ちょっと引いてから)先端のボタンで解除する極々普通のオペレーションとなっている。

いよいよ走りだすためにブレーキペダルから足を話してアクセルをユックリ踏むが、その出足はトルコン式ATを採用している1シリーズの方がスムースなのは当然で、GTIはDCTだから本来は2ペダルMTということで、発進は自動化されているとはいえクラッチミートによるトルク伝達だからトルコンのようにはいかないが、特に気にしなければその違いに気づかない程度でもある。

ところでそのペダル類だが、GTIは見るからにカッコの良いスポーツペダルが伝統的に採用されているが、1シリーズの場合は高性能モデルであるM135iでさえ、安っぽいウレタンの踏面を持ったタイプを使用しているくらいで、120iでも当然ながらこの地味〜いなヤツが付いている。それでもペダルというのは走行中に目に入らないから、多少かっこ悪くても問題は小さいが、これが運転中は常に視線に入るメーターとなるとそうはいかない。両車のメーターは其々のメーカーの特徴が良く出ているが、どちらも毎日見ていても不満は出ない程度の内容だから、これはどちらがいいとも言えないが、まさかクルマを選ぶのにメーターを最も重要して、なんていうユーザーもいないだろうから、特にこれ以上のコメントはしない。

それで、実際に公道に乗り出して最初に加速をした時のトルク感は、やはり高性能モデルであるGTIが120iより優っている。GTIのエンジンは2L ターボ 220ps、35.7kgf・mと自然吸気ならば3.5L並の性能であるが、120iでは同じくターボで過給サれているとはいえ排気量は1.6Lで性能は170ps、25.5 kgf・m であり自然吸気ならば2.5L並というところで、性能的には3.5L対2.5Lと同じことだから体感上も違いがあって当然だ。

エンジンのパワーで差が付いているのに車両重量はといえば両車はほぼ同等であり、パワーウェイトレシオでいえばGTIが6.3ps/kgというチョットした高性能車の数値であり、分かりやすく言えばトヨタ 86と同等であるのに比べて、120iは8.4 ps/kgだから、性能はまあ悪くはないが極普通の実用車程度だ。

両車はどちらも2ペダルのいわゆるATだが、GTIはDCTタイプだから厳密に言えば2ペダルマニュアルなのだが、技術の進歩でDレンジの完成度が上がり事実上ATとして使用しても何ら問題ないことから、世間ではトルコン式ATと全く同じ感覚で使われている。そういう意味ではGTIの変速機は本来の使い方は手動によるのマニュアルシフトなのだ。そこで、マニュアルモードを試してみると、確かにトルコン式のATよりは迅速だが、同じDCTタイプであるポルシェPDKのマルでレーシングカーのようなレスポンスと比べればチョイとトロく感じてしまうが、それでもトルコン式の1シリーズよりはレスポンスが良いのは間違いない。それにGTIにはパドルシフトも付いているからこれを使わない手はない。

ところで、現行ゴルフは全てDCT(VWではDSGと呼んでいる)タイプのミッションを装着しているが、GTIとRには湿式の6速が、そしてHighline以下には乾式の7速が採用されている。何故に低価格品のほうが7速なのか何ていう疑問もあったが、それは今回置いておいて、実は7速のタイプがリコールとなっているという話は3月14日の日記で既に取り上げているが、要するに1速が上手く噛み合わない事があり、発進できないことがあるというものだ。VWの場合、GTIなどの6速はワーナー製だが、問題の7速はミッションのメーカーがシェフラー製だったのだ。このシェフラー社って日本では殆ど知られていないが、ドイツの機械部品メーカーでベアリング生産量では世界一、変速機以外にもエンジンやサスペンションの部品を作っているようだが、実はホンダ フィットのハイブリッドに使用されている国産車としては初の量産DCTはこのシェルラ−製であり、当然ながらフィットもリコールとなっている。そして、その対策はといえば、制御プログラムの一部を書き換えて対処するらしい。しかしねぇ、それって恒久対策というには程遠いんじゃあないだろうか。要するにメカ的な不具合であり、言ってみれば設計ミスに近いものであり、本来はプログラム修正ではなく、メカ的に改良スべきなのではないだろうか? これはあくまで噂だが、VWは7速DSGをトルコン式ATに変更する予定だそうで、ソフト変更で恒久対策ができるのならばトルコンへの変更なんて必要ないはずだが。そうなるとホンダはどうなるのだろうか? 

そのリコールについてチョッと触れてみると、リコールの原因としてメーカーにとって一番痛手の少ないのは製造ミスとなることで、例えばある製造ラインで間違った手順に気が付かずに流動してしまい、これが不具合の原因となった場合は期間が特定しやすいので、対策件数もそれ程多くはなく、しかも根本的に技術的なものではないので世間でも、まあ現場のミスじゃあしょうがねぇか、なんて事で一見落着となる。ところが、根本的な設計ミス、例えば強度が足りない為に古くなると破損する、なんていうのは最悪であり、今まで生産した全ての車両に対策が必要だし、設計ミスなんていうのはそもそもメーカーの技術力を疑われても仕方無い訳で、とにかくこれだけは避けたいのが本音だ。だから、ちょっとグレーゾーンの場合は製造部門に悪者になってもらう、というのが‥‥おっと、いけねえ。いまのは単なる妄想なので信じないこと。

それで思い出すのが以前ニュースを賑わしたM社の不具合隠蔽に始まるリコール騒ぎで、大型トレーラー用のヘッド(牽引車)のタイヤ一式(約100kg)が外れて、運悪く歩行者を直撃して死亡事故になってしまったとか、走行中に大型トラックのミッションハウジングがバラバラになって、そのハウジングをサポートに使っていたブレーキ配管も全て破損して全くのノーブレーキとなり、プロペラシャフトも破損したのでエンジンブレーキすら全く効かず、そのままフェンスに激突して運転手は死亡という事故など、何れも重要な部品が走行中に破損して外れるという考えられない不具合が起こっことだ。

これはM社のエンジニアの立場になれば、法律通りに使っていればこんな事故が起こるわけが無く、違法な過積載を長年常用しているのが原因だと言いたいだろう。まあ、確かにそれはそうなのだが、では他社のトラックは何故問題にならないのか? それは、他社では法律上の積載量の2倍くらい積んだ状態で計算したり試験したりしているからで、それはバカッ正直に法律どおりなんて建前では通らない世界だということを知っているからだ。スペックや法律がどうであれ、世の中の常識としてクリアしなければいけない内容を業界の一部では”当たり前品質”と呼んでいる。トラックの当たり前品質は最大積載量の2倍位積んでもビクともしないことであり、いくら無理な使い方をしたとはいえ、100kgもある大型車のタイヤが外れたり、ミッションケースが破損して暴走したりというのは当たり前品質を満足していなかったからだ。因みにサラリーマンの当たり前品質は健康です。

話が妙な方向に飛んでしまったが、これも特別編ならではということで話を戻すと、ミッションのレスポンスについてはやはりDCTタイプのGTIがトルコンタイプの120iに優っているが、DCTとはいえ流石にポルシェのPDK程のレスポンスではない。更にはスポーツタイプのGTIに3ペダルのマニュアルミッション仕様が無いのは、今ではDCTの方が性能が良いからで、3ペダルは今後増々減っていくだろう。

ところで、最近のクルマではいくつかの走行モードを持っていて、それを切り替えることでエコになったり、スポーティーになったりと同じクルマでも気分や用途に寄って特性を変えられる場合が多いが、GTIも120iも当然ながら走行モードの切り替えは可能だ。GTIの場合はセンターコンソール上のATセレクターの左側という手探りではとても使えないし場所にあるし、目で見てもセレクターレバーに隠れていて、しかも走行中に操作するには視線移動が大きすぎるという何とも使いづらいスイッチを押すと、正面のタッチパネルにモードスイッチが表示されるので、これで切り替える 。モードにはコンフォート、ノーマル、スポーツ、エコそして個別という5つがある。

120i(M SPORTを除く)ではモードは「COMFORT」「SPORT」「ECO PRO」の3つで、ATセレクター右上のスイッチで切り替える。この方式は1〜6シリーズまで基本的に同一だが、車種やグレードによってはSPORTよりさらにスポーティーなSPORT PLUSが設定できるものもある。



次に操舵性に話を進めると、先ずはGTIのステアリング特性はといえば、特にノーマルモードの場合は何やら妙に軽くて中央付近の不感帯も実用車としたら少ないから、本当に手首だけの操作でキュッと車線変更が出来るが、それでも車自体の安定性は充分だから、決して危険なことはない。このようにノーマルモードでは操舵力がかなり軽いこともあるが、ちょっと速めのコーナリングでも殆どニュートラルで難無くクリアしてしまう。ここで前出のモード切り替えをスポーツにすると、操舵力は多少増えてより安定したコーナーリングになるが、常識的な速度域ではノーマルモードより良いかどうかは好き好きの問題となる。

120iの操舵力もGTI程ではないが結構軽いのは、先代(E87)が異様に重かった事を考えれば大いなる変身でもある。E87ではこのステアリングの重さで購入を諦める女性ユーザーもいたくらいだから、今度はその辺は大いに反省したのだろうか? それで、120iの操舵性はといえば最近は以前よりも少し希薄になってしまったBMW独特のステアリングインフォメーション、すなわちステアリングホイールと通してドライバーに路面状況が伝わるという特性が復活して、これぞBMWという状況になったのは嬉しい限りだ。そしてコーナーリング自体も当然ながらハイレベルで何しろ限りなくニュートラルというか正にオンザレールで、ブレーキングでの荷重移動なんて小細工を使わなくても、 極々自然にコーナーに対してステアリングを切ってやればクルマは素直に旋回していく。この特性はE46時代のニュートラルな特性を思い出すくらいで、しかもE46はニュートラルではあるが安全なコーナーリング速度自体は この120i程には速くはなかった覚えがある。

結局は両車ともCセグメントのハッチバックとしては最高のコーリングを見せてくれたが、それでも駆動方式の根本的な違いは存在していて、120iは伊達に今時珍しい後輪駆動を採用しているわけではなく、FFとしては驚異的に素直な旋回特性のGTIも、120iのようなオンザレールには至らないのは相手が悪かったとうことだろうか。ただし、GTIだって今度の新型は歴代では最も走る楽しみを持っているから、これはこれで十分な魅力はある。

ブレーキに関しては1シリーズの場合、例によってBMW独特の軽すぎるくらい軽い踏力で、ちょっと踏むとガツンっと喰いつくような特性となっているが、実はこれは少し前に試乗した結果であり、最新のBMW各車を見ていると、以前よりも多少マイルドになってきた傾向もあるからイヤーモデルによっては同じ120iでも喰い付きが少なくなっているものもあるかもしれない。えっ、そんなに簡単に特性って変えられるのか? という質問が出そうだが、BMWのこの特性の原因の多くはパッドの摩擦係数が高い事が影響しているから、これをもう少しマイルド(摩擦係数が小さい)なものに変更するだけで結構変るものだ。

それではGTIのブレーキはといえば、何とこれまたBMWも真っ青の軽くて喰い付きの良い特性で、GTIのイメージとはマルで違った。したがって、ノーマルモードで極端に軽いステアリングとともに、運転にあたっては全く力を要しないから、非力な女性(と男性)でも簡単に操作できるが、体力十分の頑強な男性(と女性)からすれば、軽すぎてオーバーレスポンス気味の操作になってしまい、慣れるまでは気になるかもしれない。なお、GTIに伝統的な赤く塗装しただけの鋳物の片押しキャリパーについては、今更何も言うことはない(でも言ってしまった)。

という具合に、ここまで両車をああでもない、こうでもないと比較してきたが、GTIのコストパフォーマンスの良さに異論の余地はないし、これが300万円代後半で買えるのは十分にお買い得だ。しかし、ゴルフの主力はもっと下のグレードであり、GTIといえど室内の樹脂部品など基本的なものは所詮200万円代中程の車だから、ベースグレードでも300万円の1シリーズに比べれば細かい部分の質感ではどうしても不利になる。そうはいっても、最近のフォルクスワーゲンは高級嗜好になっているから、C セグハッチとしては決して安っぽいということな無い。また、120iについてもGTIより割高感はあるが、クラストップであろうGTIのコーナーリングを持ってしてもFRの1シリーズには及ばないから、これを評価すれば1シリーズも選択の余地になる。

というわけで、結論は例によって各自が試乗して、気に入った方を買えば良いだけのことだ。えっ、どっちも予算が無いって?  そんなことは、自分で考えろよ! 俺が知るかっ! なんて言うことは言わないが、特別編なので最後に毒舌風にまとめてみた。