TOYOTA CROWN Hybrid Athlete (2013/9) 後編

  

シートに座った感覚は全くのクラウンで、全幅1,800oという最近の車としては決して広くない全幅や、高めのドライビングポジションと直接目視できるボンネット先端など流石は国内専用車だけあって、未だ結構狭い道が多い都心部などでの使用も十分に考慮されているし、郊外のファミリーマンションの立体駐車場にも問題なく駐車出来る。

エンジンの始動、いやハイブリッドだからシステムの電源ONはガソリン車と同じ位置&形状の押釦スイッチを押すが、このスイッチにはガソリン車の"ENGINE START STOP"の代りに"POWER"という文字と、電気製品でお馴染みの電源スイッチマークが書かれている。もしかして、ハイブリッド車って家電製品だったのか?

ATセレクターもガソリンと全く同じ位置に同じ形のジグザグゲート式があり、マニュアルモードの付いたティプトロタイプを使用していることもあり、これも如何にもハイブリッドというような電子式レバーを使っているプリウスなどとは思想が違う、と言えば聞こえは良いが、ハイブリッド専用にするだけの生産台数が無いのが本音ではないだろうか?

ブレーキペダルから足を離すと無音でユックリと前進するので、ここで多少アクセルを踏んでみるとやはり無音で走りだす。クルマを受け取ったのは地下駐車場のために急な坂を登って地上に出るわけで、丁度いい機会なので急勾配で一旦停車してそこから発進してみると、極普通にブレーキからアクセルに踏み代えてもクルマが後退することもなくスムースに発進できた。


写真21
ガソリン車と同形のスタートボタンではあるが、表示はPOWERとなっている。


写真22
ATセレクターはガソリン車と全く同じ。

公道に出て信号待ちから幹線道路に入り、そのまま流れに乗るために2/3程度のアクセル開度で加速すると、いつの間にかエンジンの音も加わって充分な加速度を感じながら他車に合わせて50〜60q/h程度で巡航する。この時の回転数は‥‥ハテ?? 実は本来回転計があるべき位置には水平位置に対して上側がパワー、下ではチャージという電流の向きを示すパワーメーター(トヨタはシステムインジケーターという)が付いていて、まあハイブリッド車なら当然ではあるが、そういえば同じパワートレインを使用するレクサスIS300hの時には走行モードをSPOORTにすると、このメーターが回転計に変身したのを思い出して、早速切り替えてみることにする。

FMC後最初に新型クラウンの試乗を行った時には、走行モード切替方法が判り辛くて苦労したが、今回はロイヤル2.5、アスリート3.5と既に2モデルの試乗経験があるので、迷うこと無くセンタークラスターのエアコン表示ディスプレイ下端にあるスイッチの左側、”車両設定”というボタンを押して走行モード切り替えて、写真24のように画面を表示させる。あっ、B-Otakuのヤツ、アスリートで使った写真を使い回ししてやがる! って、あっ、バレたか。と、言いたいことろだが、ハイブリッドの場合はEV MODEのスイッチが画面上に現れるから、使い回しは出来ないのだよ。

さて、スポーツモードに切り替えた結果は、パワーメーターは見事に回転計に変身‥‥しなかった。まあ、ハイブリッド車でしかも変速機はCVTだから、回転数を見ること自体が無意味なので無くても実用上は全く問題ないが、"アスリートS"というグレード名からすれば、回転計くらいあってもバチは当たらないとは思うが‥‥。

折角SPORTに切り替えたのでそのまま走行してみると、NORMALに比べて明らかにアクセルレスポンスが良くなり、というよりも多少オーバーレスポンス的な味付けで、ラフなコントロールだとギクシャクする程だった。実はNORMALモードでも既に感じていたのだが、同じパワートレインを搭載していて車両重量もほぼ等しいレクサスIS300hに比べて、このクラウンの方がパワフルに感じるのは何故だろうか?

今度は信号待ちからのフルスロットル加速を試みると、発進直後はトヨタのハイブリッド車に共通の電気モーター特有のトルク感で加速するが、通常の巡航からの加速のレスポンスの良さに比べると、べた踏み状態のフル加速は絶対的なパワーの勝負ということもあって、加速自体は大した事はないのに気が付く。ということは、IS300hよりも活発に感じたのはアクセルレスポンスなどの味付けで、そのように感じたのかもしれない。


写真23
基本的に同じ形状のメータークラスターではあるが、左の大径メーターは回転計ではなくて、チャージメーターとなる。


写真24
一見ガソリン車と同じ車両設定画面だが、よくみれば "EV MODE" のタッチスイッチが追加されている。

写真25
2AR-FSE 直4 2.5L 178os エンジンと1KM 143psモーターによるハイブリッドシステムは、レクサスIS 300hにも搭載されている。

最初に公道に出るためにフルステアを切った時に、軽くてクルクルと回るステアリングに如何にもクラウンらしさを感じたが、特にアスリートの場合、最近は結構欧州車テイストも取り入れていると思っていたのだが、今回の試乗車はアスリートSというグレード名の割りにはハイブリッド車ということが原因なのかもしれないが、乗り味全体が如何にもクラウンという感じだった。ステアリングの中心付近は決して不感帯が多い訳ではないのだが、何やらシャキッとしない。とは言え昔のグラウンのように危険なほどにはグニャグニャではないのだが、前回乗ったロイヤル2.5の方がマトモだったような気がするのは何故だろうか?

そこで、片側2車線の幹線道路でしかもガラガラだったことを幸いに急激なレーンチェンジをやってみると、結構反応は良くて少なくとも尻を振られたりはしないし、直線に戻る時もレスポンスが悪すぎるステアリングで行き過ぎる、いわゆるオツリも無いから決して悪い特性でもないのだが、何しろフィーリングが如何にも”クラウン”しているのがイマイチだ。そして、このコースでは数少ないブラインドコーナーを試してみると、最近の出来の言いクルマ、というよりも前回乗ったロイヤル2.5に比べると明らかにアンダーステアを感じはするが、少し多めに切れば難なくコーナーを通過したから、そんなに悪いものでも無さそうだが、何度も言うようにフィーリングはスポーティーとはかけ離れている。

以上のことから乗り心地はフワフワではという想像が働くだろうが、この点に関しては思いの外フラットだし、その代りにタイヤからの突上げは多少感じるのは、アスリートSということで足回りを多少固めているのだろうか。とはいえ、運転していて走行中に感じる車全体の緩さみたいな、如何にもクラウンというフィーリングもあり、静かで多少やわな感じとスポーティーをギリギリのところで両立しているという絶妙なチューニング、と贔屓目に表現しておこう。


写真26
ブレーキユニットは3.5のアルミ対向ピストンキャリパーと違い、ハイブリッドは極普通の鋳物製片押しキャリパーとなる。

結局、車の出来の良さとしては明らかに2.5Lが上な訳で、何よりも価格的に50万円近い差があるから、ヤッパリベストバイは2.5アスリートだ、と言いたいが、いやまてよ。ハイブリッドは優遇税制がある筈だから、単純に車両価格で比較する訳にはいかないのだった。

2013年10月現在、クラウン ハイブリッド アスリートS購入時の減税は約25万円であり、2.5Lガソリン車との価格差50万円が事実上は25万円となる。それぞれのJC08モード燃費はハイブリッドが23.2km/L、2.5Lガソリンが 11.4km/Lであり、実際の燃費はこの80%と仮定するとそれぞれ18.6/9.1q/Lとなる。今現在のレギュラーガソリンの全国平均価格は約150円/Lであり、1q走行時のガソリン代はハイブリッドが1/23.2x150=6.5円、2.5Lは1/11.4x150=13.2円となり、その差は1q当たり6.7円だから、25万円の元を取るには3万7千qの走行が必要ということで、これなら普通のユーザーでも数年で元が取れるし、年に2万qも乗るようなハードユーザーならば2年で差額が回収出来てしまう。それにしても、アクアやプリウスでは、確か10万qくらい乗ってやっと元が取れるような計算結果だった覚えがあるが、コレは何故だろうか? と考えてみたらば、エコカー減税で最も金額の大きいのが取得税の免除であり、これは車両価格の5%だから、500万円の高級ハイブリッドサルーンなら25万円の減税だが170万円のアクアでは8.5万円となり、結局この減税は高価格車程有利になるということだ。いやぁ、まいった。そういう事だったのか。

今回の試乗によって、トヨタのハイブリッドサルーンはクラウン、レクサスGSおよびIS、カムリというようにひと通りの試乗は済ませたし、高級サルーンの代名詞であるBMWではアクティブハイブリッド3および5にも試乗しているから、ここでこれらを比較する特別編なんていうのも面白そうだが、そういえばクラウンシリーズの最高級モデルであり、ハイブリッドのみのマジェスタには未だ試乗していなかった。この辺も踏まえて、特別編の内容を決定しようと思っている。

追伸:

結局マジェスタの試乗には縁がなく、そのまま放置状態だったが、考えて見ればクラウン ハイブリッドの少し前に試乗したアコード ハイブリッドがトヨタとは全 く異なる方式のハイブリッドシステムを使用していて、このクルマの試乗結果は結構良かったことと、外形寸法も近いものがあり、しかし価格帯は一部重なるとはいえアコードが100万円ほど安いなど結構突っ込みどころがありそうで、そうなると特別編のネタとしては充分過ぎる、とうことで

ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。

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