Volvo V40 T4 (2013/2) 前編

  

ボルボの下位モデルであるV40がFMCされた。今回の新型はステーションワゴンと言うよりも5ドアハッチバックというべきで、要するに今人気のCセグメントハッチバックであり、このクラスはBMW1シリーズを頂点に最近FMCされたメルセデスAクラス、近々FMCのアウディA3とVWゴルフという大混戦の分野でもある。

ボルボのCセグメント車は1995年に発売されたS40/V40が初代で、このクルマはオランダ政府・三菱自工・ボルボによる合弁会社のネットカーのオランダ工場でプラットフォームを共有する三菱カリスマとともに生産されていた(写真1-1)。S40がセダンでV40がワゴンとなるが、特にV40はボルボの上級ワゴンを小さくしたようなイメージから、日本国内でも買いやすいボルボワゴンとしてそれなりの人気はあったようだが、正直言って出来の悪いクルマでありガタも早いなど、まあとても高級輸入車とは言えないシロモノだった。というのも、当時勤務先に社有車としてカリスマがあったのだが、新車の時からどうしようもない駄目ぐるまで、しかも1万キロ位でガタがくるという代物だった。

そして2台目は2004年に発売され、当時フォードグループとなったボルボと同じグループのマツダ製プラットフォームと共有して、また2Lモデルはエンジンもマツダ製を搭載しているなど、言ってみればアクセラのボディ違い!と言いたくなるようなモデルだった(写真1-2)。なお、この2代目はワゴンがV40ではなくV50と呼ばれていたのは、フォード時代には偶数がセダンで奇数がワゴンという命名方法だったのが理由となっている。このクルマはスタイルが上級のV70似であり、如何にもボルボワゴン的なことから一部のユーザーにはプアマンズV70的な魅力があったようだし、内容的にはアクセラだからカリスマよりは余程マシだった。


写真1-1
三菱カリスマとプラットフォームを共有して、オランダで生産された初代V40。


写真1-2
2代目はV50 という名称でマツダアクセラとプラットフォームを共有していた。

以上を踏まえて、V40/50を3代に渡ってスペック比較してみる。

  

初代と2代目はリアオーバーハングが長いステーションワゴン的なスタイルだったが、今回のV40はワゴンと言うよりも5ドアハッチバックであり、その意味では全長が1~2代目に比べて150o程短く、その割にはホイールベースはそれ程変わらない。

写真2で比べると先代V50(写真下)はスタイリッシュという感じはなく、走るレンガと言われた旧世代のボルボワゴン的な雰囲気を重視していたが、大柄の旧V70ならともかくCセグメントのサイズでは何やら商用ライトバンのようにも見える。対して、今回の新型ではスタイリッシュな5ドアハッチバックであり、お洒落なスタイルの代償として高さ方向のラゲージスペースは大いなる犠牲を強いられている。

写真2
先代V50と比較するとホイールベースはぼぼ同じだが、リアのオーバーハングが極端に短くなって、ワゴンからハッチバックに変身したのが判るだろう。

新型V40のフロントは最近のボルボのトレンドである大きく突き出したアグレッシブなグリルが特徴で、低いルーフラインと共に中々スタイリッシュであり、ボルボのデザインの上手さを感じる。えっ、アテンザに似ている、って? (写真3)

リアに回ってみると、ボルボのアイデンティティであるDピラーに沿ってルーフまで立ち上がってテールランプが目に付くが、上方の幅は狭く昔と比べるとかなりイメージは違う(写真4~5)。そして、テールゲートを開けてみると、リアラッゲージルームは奥行きは意外に広いが幅が狭い(写真6)。


写真3
最近のボルボのアイデンティティであるアグレッシブなフロントグリルを持ち、デザインは中々斬新だ。


写真4
走るレンガと呼ばれた四角四面のボルボワゴン当時の面影は全くないまでに近代的になっている。


写真5
かろうじてボルボのアイデンティティであるピラー上をルーフまで伸びるテールランプを持ってはいるが、大幅にデフォルメされている。


写真6
リアラッゲージルームは奥行きは意外に広いが、幅が狭い。

ドアを開けてみると、ベースグレードのT4と上級グレードのT4 SEではそれ程大きくは違わないのは最大の相違点であるシート表皮が多少違う程度であることが原因のようだ。室内は標準的な広さであり、リアのレッグスペースも大人が乗っても多少の余裕があるから、大人4人の長距離移動もそれ程苦にはならなさそうだ(写真7)。

前述のようにT4とT4 SEのインテリアでの最大の違いはシート表皮であり、T4がTextile(ファブリック、写真8)であるのに対して、T4 SEはT-Tecという人工皮革とファブリックのコンビであることだが、写真9のように部分的に人口皮革を使っている程度で、それ程大きな違いとう訳でもない。

なお、T4 SEはオプション(レザーパッケージ、20万円)で2種類のカラーの本革シートが選べる。そのシートカラーは黒に近いチャコールというT4のファブリックシートと形状は同じで表皮のみが違うという感じ(写真10)であり、もう一つのエスプレッソブラウンという少しオレンジに近い本皮ではシート形状(表皮のつなぎ方)自体が異なっている(写真11)。

シート調整はT4 SEが8ウェイパワーシート(写真12)でSEは手動式となる。サイドスカットルには "VOLVO" のロゴマークが燦然と輝いているから、オーナーはドア を開ける度にボルボオーナーである満足感に浸り、隣のマツダアクセラを見て、フンッとバカにする、かどうかは判らないが‥‥。そして、ドアのインナートリムはT4 SEの場合は肘掛けにステッチの入ったレザー(写真13)だが、T4は樹脂成型品となる。

写真7
写真は上級のT4 SEだが、ベースグレードのT4でもシート表皮の一部人工皮革が省略される程度で大きく変わることはない。



写真8
ベースグレードのT4のシート表皮はファブリックとなる。


写真9
上位モデルのT4 SEの標準シートは部分的に人工皮革(T-tec)を配したものが標準となる。


写真10
T4 SEにオプションのレザーシートでカラーはチャコール。


写真11
レザーシートにはチャコール以外にエスプレッソブラウンというオレンジかかったカラーも選択できる。このシートはチュコールとは表皮のつなぎ方が異る。


写真12
T4 SEのシートは写真のように電動式だが、T4では手動となる。


写真13
アームレストにステッチの入ったレザー貼りとなっている写真のクルマはT4 SEで、T4では樹脂製となる。

ドイツ車とは明らかに異る如何にもボルボらしいデザインのインパネは、既に見てきたシートやドアトリム同様に高い質感と出来の良さでCセグメントとしては満足感は充分にある(写真14)。先代まではナビのディスプレイの場所さえ考慮してない設計で、苦し紛れの後付けなどをやっていたが、今回はセンタークラスター最上部にディスプレイが配置されている。なおナビはT4 SEのみにオプションのナビゲーションパッケージ(20万円)の装着が必要となり、ナビがない場合でもディスプレイ自体はその他の機能の操作用に全グレードで標準装備されている(写真15)。

ということは、ベースモデルのT4の場合は純正ナビのオプション装着は出来ないし、後付の社外品も装着するスペースはないから、ポータブルタイプなどをインパネの天板に付けることになる。まあ、最近はスマホやタブレットタイプのパソコンなどで代用出来る時代だし、ベテランの場合はナビを付けても実際には殆ど使わなかったりするから、ユーザーによっては特に問題はないかもしれない。

エアコンの操作パネルはボルボの特徴である人間の形をしたスイッチを中央に置いたもので、これを見ただけでボルボとわかる(写真17)。さらに、このセンタークラスターのパネルは薄型でその後ろに小物置き場のスペース(写真18)があるのもボルボの大いなる特徴だ。

写真14
インパネはドイツ車とは趣を異にするものだ。ボルボはナビの装着では遅れをとっていたが、ようやく最上部にまともなスペースが確保された。


写真15
ディスプレイは全車に標準で装着されるが、ナビはT4 SEのみオプションとなる。


写真16
インパネ右端のライトスイッチはドイツ車などと比べて随分と小さい。


写真17
如何にもボルボらしい人間の形の空調スイッチなど、ここでもドイツ車とは一味ちがう。


写真18
センタークラスターはボルボ得意の超薄型パネルで、背面にはスペースがある。

ここまでインテリアを見てきて質感自体はなかなか良いし、BMWなどのドイツ車とも、またアルファロメオなどのラテン系とも違うセンスは、別の選択肢として選ぶことも考えられるが、それは走った結果次第ということで、この続きは後編にて。

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