`

Porsche 991 Carrera 4 (2013/3) 中編
  

カレラ4といっても、インパネなどはRWDのカレラと全く変わりが無いわけで、その点では何も面くらうことはないから、いつもと同じに電子式のキーをインパネ右端にあるスロットに入れて‥‥んっ? キースロットが有るはずの場所には既にキーみたいなものが刺さっているて、ノブが見えている。なんと、試乗車はオプションのキーレススタートが付いていて、インテリジェントキーを所持してこのスイッチを右に捻ればエンジンが始動するのだった(写真21)。成程、これで国産車ならば軽自動車にもついている便利な機能がやっと付いたことになる。ただし国産車、いやBMWなど輸入車も含めて今では当たり前になったプッシュボタンではなく、電子キーのスロットをそのまま流用した回転スイッチというのがチョイとダサいが、本来はあくまでキーとスロットに入れることに拘るポルシェの最大限の妥協だろうか。それで、このオプションを付けるメリットはといえば、何も無いと思う。

それで、運転席周りの夜間照明はといえば、先ずは正面のメータークラスターが燦然と輝く。昼間でも極めて精密そうな高級感満点のポルシェのメーターは、夜間になると一際美しく、そして上品に文字を浮き出してくれて、その見やすさは抜群だ(写真22)。

写真21
試乗車にはオプションのキーレススタートが付いていたのでキースロットは無く、ダサい樹脂製のノブが固定されていて、これを捻るとエンジンが始動する。


これは標準のキースロット

写真22
いつ見ても精密感溢れるポルシェのメーターは、夜になると一際輝く。911系伝統の5連メーターがこれまた高級感いっぱいで、これを見ながら運転すれば幸せ感一杯は間違いない。

今回の試乗車のオーディオはオプションのBOSEサラウンドシステム(25万円)が装着されていたので、試乗期間に余裕があったことから、このカーオーディオを試してみた。ポルシェのオーディオは高級車には珍しくオーディオ一体になっているが、実は欧州仕様ではBMWなどのようにオーディオ用のコントロールパネルは別になっている(写真23)。そして試乗車のナビを良く見ると中央部下端に"PORSCHE"のロゴがあるが、それと共に本体左上に"clarion"のロゴも見える(写真24)。 要するに日本仕様は、ほとんどカーショップで市販品を後付するのと変わらない、という訳で1千万円を軽く超える車としてはチョイと情けない。

今回はCDと共にDVDも再生してみた。先ずはディスプレイ下に並ぶスイツチの右端を押すとディスプレイが前にせり出して水平になり、CDの挿入用スロットが現れる。ここではSDカードやB-Casカードなどの出し入れも行うようだ(写真25)。

既に半世紀近く前になるだろうか。地元の映画館で見た007ゴールドフィンガーで、ショーン・コネリー扮するジェームス・ボンドの乗るアストンマーチンDB5のセンタークラスターに小型のテレビが付いていて、画面にはカラーで地図が写っていて、ここに敵のクルマと自分のクルマの位置が表示されるという場面を今でも覚えている。それを見た感想は、そんなこと出来る訳ねえだろう! 思ったものだったが、敵のクルマの表示機能は無いが、地図に自車の位置を表示するなんていうのは、今では軽自動車だって付いている。

  
写真23
欧州向けはディスプレイ下部にオーディオ用パネルが別に存在するが、国内向けは市販のオーディオ一体型ナビが装着されいる。

写真24
ポルシェ純正の標準装着品とはいうものの、実はクラリオンの市販品ほぼそのままのようだ。

  
写真25
オーディオ一体型ナビの為にCD/DVDなどの挿入はディスプレイをチルトして行うのも市販の一体型と同様だ。

今回の試乗とともに試聴、いやDVDだから視聴か、なにやら混乱しそうだが、とにかく評価に使用したソースを紹介しておく。先ずは若ぶって最近の若者に人気のあるポップス系が多く入っている物はと思い選んだのが、"Bank Band Witi Graat Artists"という、毎年夏につま恋で行われる野外コンサートのライブDVDで、ラップもあれば新進アーティスト、はたまたオジサンでも知っている小田和正や桑田佳祐など実に幅が広い出演者だから、息子や娘と一緒に見ても充分にOKだし、親子の会話のきっかけになるかもしれない。

そしてもうひとつはS.E.N.SのライブDVDを使ってみた。このグループはNHKの海のシルクロードやその他数多く番組の挿入曲を手がけていて、ライブでもグランドピアノとシンセサイザー、ヴァイオリンとドラムという構成だから生楽器と電子楽器の両方の鳴り具合が判るという点で選んでみた。この2つのライブの特徴はap bankの観客が平均20歳くらいと思えるのに対して、S.E.N.Sは50歳は超えているように見えるから、その面では全く正反対となっている。

以上興味の有る方のためにアマゾンのリンクを貼っておく。

ひと通り聴いてみたが、最初の第一印象は低音が少し出過ぎという感じで、これはカーオーディオ以外でもBOSEのシステムでは一般的に言える傾向だが、それにしてもチョッとボコボコいう傾向で、これじゃあイカれたアンちゃんの車みたいだ。そして高音はといえば意外に伸びが無い感じで、その割には少しキンキンしているようだ。そこで、ディスプレイをいじりながら調整画面を出して見たらば、何やら低音と高音を上げてあり、特に低音が大きくプラスとなっていた(写真29)。こういう特性を昔からドンシャリ音といって、素人を騙すのに良く使われているものだが、これをフラットにしたら随分まともな音になった。全く、一体誰が弄ったんだろうか。

音質調整を直してからはナビ一体型としては結構良い音になってきたが、例えばBMW5シリーズの標準オーディオと比べた場合、どうしても高音の伸びというか抜けというか、一歩譲るようだ。ただし、5シリーズは多少高音がキンキンする傾向がある。高音を伸ばすとキンキンするというのは、本当は特性がイマイチなのであり、特性の良いシステムで本当に高音が伸びていれば、決して耳に付くことはない。とか何とか言ってみたが所詮はカーオーディオであり、多くを期待するのが間違っている訳だが、結局このBOSEサラウンドシステムに25万円を投資する価値があるかといえば、中々微妙なところであり、個人的にはポルシェのサウンドで最も魅力のあるのはエンジンのメカ音と排気音だから、ボーズよりもスポーツマフラーでも付けたほうが良いような気もする。ただし、4WDのカレラ4を選ぶユーザーならばBOSEを聞きながらクルージング、というのも有りだろう。

ところで、DVDを最初に掛けた時にディスプレイに画層が写っていたが、これは走りだすと消えるのだろう、と思って気にしなかったが、走りだしてみるとヤッパリ映っている。そうか、DVDは走行中でも映るのか、とか思ったのだが、後程テレビを試したみたらばやはり走行中でも映っていた。なんと、国産車の純正装着品のように走行中は映らないという事がなく、というか、この点でも市販品そのままだということだ。勿論スイッチで消せるし、911を買うくらいのユーザーならば、テレビを見ながら運転して事故を起こす、なんていう低レベルなことなあり得ないから、問題ないのかもしれない。

そして最後に、その25万円のBOSEシステムのスピーカー構成だが、カタログの中を必死で探したがスピーカーの数すら書いていなかった。そこで、目で確認したらば、先ずはドアには標準オーディオに比べてはるかに大きなスピーカーエリアがあり、恐らく低音と中音の2スピーカー(もしかすると3個)構成となっているようだ(写真28)。そして、インパネ天部の両端には小さいスピーカーがあり、これは恐らく高音用(ツイータ)だろうか(写真30)。そして後席に目をやると左右の壁面に付いているのが判る(写真31)。


写真26
メニュー画面もポルシェ向けカスタマイズは無く、標準のままのようだ。

写真27
DVDは走行中でも画像が表示されるし、テレビも同様で、この辺もまるっきりの市販品。

写真28
試乗車にはオプションのBOSEサラウンドシステムが装着されていた。ドアに組み込まれたスピーカーも標準より数も多く大きさも大きい。

写真29
オーディの音質調整は低・高音を上げた状態になっていた。ドンシャリの最大の原因はこれか。

写真30
インパネ天部の左右端にある小さなスピーカー(ツイーター?)。

写真31
リア側面パネルにあるリア用スピーカー。

今度はヘッドライトの性能を試してみる。991のヘッドライトは全グレードにダイナミックレベライザーとヘッドライトクリーニングシステムを備えたバイキセノンヘッドライトが標準装備されている(写真30)。ポルシェに限らず欧州車でキセノンライトを装着しているモデルには必ずと言っていいほどヘッドライトクリーニングが付いているが、これはキセノンライトはエネルギー効率が極めて良いので寒冷地でライト表面の水蒸気が凍結してしまうため、これを温水で融かすのが目的という。そう言えば国産車も最近はキセノンライト装着が増えてきたが、このような対策はしているのだろうか。少なくともクラウンロイヤルの装備を調べた限りではなかったようだが。

ポルシェのキセノンライトは997時代には暗いので有名で、これではハロゲンライトとの差が無いばかりか、雨天時などはキセノンライトの色特性から返って見辛いくらいだったが、991(写真33)では劇的に改善されたことになる。更には、手前までよく照らすので補助ランプを付けても全く意味が無いくらいで、まああれはヘッドライトが断線したなどの緊急時には役に立つというくらいのものだ。

写真30
全グレードに標準装備のバイキセノンライト。下部中央の小さな突起(黄色←)はクリーニング用のノズル。

写真31
明るいヘッドライトで夜間も運転し易い。


写真33
キセノンヘッドライトは997よりも劇的に明るくなっている。
逆に言えば、ハイビームにしても大幅には変わらないくらいにロービームが明るい。

さて、中編では今まであまり紹介できなかった部分について触れてみた。次回はいよいよ、実際に走行することにする。

⇒後編へ