Porsche 981 Boxstar S (2012/12) 中編 |
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前回のカレラSはLHD(左ハンドル)だったが今回のボクスターSはRHDだったこともあり、シートに座った時の緊張感は全くない。LHDのメリットも認めない訳ではないし、慣れの問題もあるのだろうが、やはり日本ではRHDが本来であることに間違いは無さそうだ。カレラSの試乗車と同じルクソールベージュの内装色にオプションのエレクトリックコントロールスポーツシート(40万円)とシートベンチレーション(16.4万円)も同じだが、シートに座って最初に感じたのはカレラSの時には気が付かなかったのだが、ポルシェのシートにしては表面が多少柔らかく全体にフィットするような感じだった。そして正面に見えるメーター類は911系の5連と違い3連メーターであるのはポルシェの伝統どおりだが、そのメーターの中央はボクスターSであることから、カレラSと同様にグレーとなっているし、3つのメーターの配置はカレラSの中央3つと同じなのも従来どおりだ。 そしてエンジン始動も991と同じ電子式のキーで、今回はRHDだからインパネ右端の以前のキーホールの位置に電子キーを挿入するのもカレラSと同じだ。ブレーキペダルを踏みながら挿し込んだ電子キーを右に回すと、短いクランキングの後に勇ましい音と共に回転計の針が一瞬跳ね上がりエンジンが目覚めるのもまた如何にもポルシェらしい。試乗車には前回と同様にオプションのスポーツクロノパッケージ(35.8万円、911と同価格)が装着されていて、このパッケージにはボクスターでも911と同様にダイナミックエンジンマウントが装着されていた。ダイナミックエンジンマウントについては既にカレラS試乗記で詳細を説明済なので、興味のある方はそちらを参照願いたいが、一言で言えばドライビングスタイルと路面状況に応じて自動的に左右のエンジンマウントの固さを調節するというものだ。 |
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コンソール上にあるPDKのセレクターレバー(写真43)をDに入れて、さてパーキングブレーキはといえば、歴代ポルシェに備わっていたコンソール後方のパーキングブレーキレバーは無く、991の試乗時には面食らったが、今回は既にインパネ右端のイグニッションキーのさらに下にあるエレクトリックパーキングブレーキのスイッチの存在を知っていたから、何の問題もなかった。このスイッチを引くことでスイッチ上の赤いインジケーターが消灯して、パーキングブレーキが解除されたのが判る(写真44)。
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![]() PDKセレクターのレバー(ノブ)は987と共通のようだが、ベースプレートは全く異なるのも991と同様だ。 |
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![]() 写真44 パーキングブレーキは987がオーソドックスなレバー式であったのに対して、981では電気式となったのも991と同じ。 押してON,引いてOFFとなる。 |
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ここから首都高のランプを目指して一般道を15分ほど走ることになる。40~50km/hの遅い流れでは回転計の針は巡航時では負荷が少ないと1,200rpmくらいで、さらに緩い減速後は殆どアイドリングに近いところまで回転数が落ちているが、ここで僅かにアクセルと踏むと1,100rpm位に上がり、そこからは特にシフトダウンせずに速度が上がっていく。それにしても、排気量1リッター当たり93psというハイチューンエンジンにもかかわらずアイドリングに毛が生えた程度の低回転域からスムースに加速できる柔軟性というのも大したものだが、悪く言えばスポーツエンジンらしくなくて多少面白味に欠けるとも言える。 既に前編で触れたように981ボクスターのコンソール上にあるスイッチ群(写真45)は981カレラと殆ど同じとなっている。このスイッチの配列や数はオプションの装着状況によって当然変わるのだが、今回の試乗車にはスポーツクロノもオプション装着されていたので、前回のカレラSとの大きな違いはスポーツエクゾーストが装着されていないことくらいで、2本を排気管をデザインしたシンボルのスイッチが無かった。なお、ボクスターにもスポーツエクゾーストは38.3万円でオプション装着できるが、調子に乗って色々オプションを付けていると、車両価格がカレラのベースモデルを追い越しそうだ。また3列に並んだスイッチエリアの中央の列は、カレラではサンルーフのスイッチだったが、オープンのボクスターはソフトトップの開閉スイッチとなっている。 コンソール上のスイッチ群については前回のカレラS試乗記で詳しく説明しているので、未だカレラS試乗記を読んでいない読者はそちらを参照願うとして、ここではボクスターのリアウィングについて説明してみる。ポルシェの各車にはリアエンドにウィングが仕込んであって、120km/hを超えると自動的にせり上がってきて、次に80q/h以下になると格納される。って、言うことは「高速でウィングが立っているポルシェは速度違反だ」と、言いたい輩もいるだろうが、実は手動でもウィングをアップ出来る(写真46)。それが、図45の右上のスイッチで、これを押す度にアップ、ダウンを繰り返す。 |
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ここでコンソール上のスイッチをSPROTに切り替えると、その瞬間に回転計の針は一瞬で500rpmほどに跳ね上がる。と同時に中心付近では多少不感帯のあったステアリングもシャキっとする。今回の試乗車にはセンタークラスタ最上部のストップウォッチ(写真47)で判るように、オプションのスポーツクロノパッケージ(35.8万円)が、そして更にはPASM(25.3万円)も装着されていた。そこで今度はSPORT PLUSにしてみると、回転数は更に上る場合とそのままの時があるが、これは回転数との関係だろう。そしてステアリングは更にガチガチになる。先代987のPASMはスポーツモードを選択するとサスペンションがガチガチになってしまい、とても公道で使う気にはならない設定だった。しかしPASM装着の981試乗車は、SPORTを選択するとダンパーもハードになるが、これなら常時入れっぱなしでもOKと思うほどに適度な硬さだった。更にはSPORT PLUSでさえ987のSPORTほどには硬くはならないという実用的なセッティングとなっていた。 首都高では80km/hくらいで流れに乗って巡航しながら、前車に阻まれて速度が50km/hくらいに落ちた状態から前が空いて加速する際に、色々な踏み方を試してみた。最初はDレンジのままで、1/2スロットル程度を踏んでみると一瞬に回転計の針が1,500から1,800rpmに上昇しメーター内のインジケータは5(速)から4(速)となった。次に同じ状況でフルスロットルを踏んでみると、多少のタイムラグがあってから2速3,200rpmへと上昇した。ここで、一瞬のタイムラグがあったのは偶数側が4速を選んで待機していたが、更にシフトダウンの必要があるために一つ下の2速に入れ替える時間が必要だったからのようだ。こういう時には5速から一気に3速に行けないPDKのようなデュアルクラッチタイプの辛さがある。 PDKは本来セミオートマチックミッションだからDレンジはオマケなのだけれど、これだけ出来が良いとMTモードを使ってマニュアルシフトをする意味も無くなってしまうが、それでもドライバーの意志どおりの動きを期待するには、やはりMTモードを使うことになる。それにしても、3ペダルのMTに比べれば遥かに操作が簡単なのに、何故か3ペダルを全く苦にしないドライバーでも2ペダルのマニュアル操作は面倒に感じるのが不思議だが、要するに長年の経験から染み付いた3ペダルの操作に比べて、2ペダルのマニュアル操作は体が慣れていないということだろう。そのMT操作だが、981の場合も991と同様で、一つはコンソール上のセレクトレバーをDレンジから横に移動して、そこからは押してアップ、引いてダウンという個人的にはあまり嬉しくないパターンを使う方法が一つ。そしてもう一つはステアリングホイールに仕込まれたパドルシフトを使う方法だが、991試乗記で述べたように標準装備は使い辛いし世間から言えば全くの変態方式であるステアリングスポーク上のスイッチなのだが、試乗車にも当然のようにオプションのパドルスイッチが装着されていた(写真48)。そこでオプション価格を調べてみたのだが、価格表を何度調べても載っていない? もしかして、遂に標準でパドルが付くようになったのだろうか? |
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![]() 写真47 試乗車にはオプションのスポーツクロノが装着されていたので、ダッシュボード上面中央にストップウォッチがついたいる。 |
![]() 写真48 建前ではオプションだが、事実上は標準となっている感があるパドルシフト。ステアリングホールのスポーク部分にSPORTの表示が出るのも991と同じ。 |
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そうしているうちに、やがて「1km先料金所」の看板を確認して徐々に速度を落としていく。いよいよ、高速道路に入る訳だが、この続きは後編にて。 |