BMW 640i Gran Coupe (2013/2) 前編 | |
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6シリーズグランクーペは5シリーズベースの4ドアクーペ版であるが、このコンセプトはメルセデスベンツのCLS(写真1、2005年)に遅れること約7年であり、モデルサイクル1回分遅れたことになる。しかし、4ドアハードトップクーペというアホなコンセプトの本家といえば1985年発売 のカリーナEDが思い浮かぶ。カリーナED(写真2)は当時、クルマ好きからボロクソ言われたが今になってみると恐るべき先見性だったことになる。とすれば、この名前を復活したら、と言いたいことろだが、今の時代ではEDという名前が辛い。当時はそんな言葉は無かったのだろう。 と、余計な事を言いってしまったが、本題に戻って先ずは例によってスペック比較から。今回は4ドアグランクーペと2ドアクーペ、ベースとなる5シリーズ4ドアセダン、そしてBMWには珍しい5ドアハッチのクロスオーバーであるグランツリスモを選んでみた。 ![]() グランクーペのホイールベースは5シリーズセダンと同じ2,970oで、同じ6シリーズとはいえ2ドアクーペの2,855oよりも115o長い。また、グランツリスモは7シリーズのプラットフォームを使用しているために5シリーズより更に100o長い3,070oとなっている。エンジンは4車ともにN55B30Aと型式は同じながら、チューニング(ターボの加給圧など)の違いにより535iと表記するセダンとグランツリスモでは306ps、40.8kg・mであるのに対して、640iという名称の2車は320ps、45.9kg・mとその名のとおりに4L(トルクでは4.5L ) 級の性能となっている。なお740iについても、”40i”という名のとおりで320ps版を搭載している。この2つのチューニングではパワー自体は14ps差と大した違いは無いが、トルクについては10%以上の違いが有り、実際に535iと740iを乗り比べた経験では車両重量の大きいはずの740iは3Lという排気量や535iと同じ型式のエンジンであることが信じられないくらいパワフルな走りをみせてくれた。 それにしても、制御プログラムの違いでパワーに差をつけて、販売価格を変えるという商売には何とも納得しがたいものもあるが、これはIT業界では常識であり、たとえばインテルのCPUなんて一番安くて性能の低いCelelonと最高性能のCore i7の中身は同じものであり、Celelonの内部にも4つのコアーや10Mのキャッシュメモリーが内蔵されているが、製造上全てが動くとは限らす、一番出来の悪いものがCelelonとなり、その中間がCore i3やi5として販売されるという。ということは、BMWのエンジンも公差などのバラつきから出来の良いエンジンが ”40i” となるのだろうか? |
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それでは今回の主役である640iグランクーペのエクステリアを見てみよう。数値上ではセダンに比べて幅が+35o、高さが−85oだから確かに5シリーズセダンよりも広く低く見えるのは当然だが、ライバルのメルセデスCLS程には極端なクーペルックではなく、気が付かないとセダンと見間違うこともありそうだ(写真5~6)。 サイドから比較すると、ホイールベースは同一で全長はグランクーペが100o長いが、写真7で見るとグランクーペの全長が長いのはフロントオーバーハングが長いことが原因のようだ。なおサイドビューではウエストラインから上のグラスエリアが狭い(低い)のがよく判る。 今回の試乗車はM Sportパッケージ装着車(M Sportと標記)だったが、エクステリアでの大きな違いはフロントバンパーのエアインテイクがよりアグレッシブなデザインになること(写真8)で、リアはそれ程の違いはない(写真9)。 |
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エクステリアの細かい部分を見ると、フロントフェンダーの後方にはクーペと同様にエアアウトレットのようなモノが見える(写真10)。ヘッドライトに注目すれば、グランクーペは通称イカリングといわれるリング状のスモールライトの下端が水平になっていて、その空いたスペースにLED(ウインカー?)を水平に並べている(写真11)。 グランクーペはサッシレスドアを採用しているためにドアノブを引くとサイドウィンドウが少し下がってからドアを開けることになる(写真13)。ただし、この方式は積雪時などでサイドウィンドウが凍結すると窓が下がらないためにドアが開かなくなるということもあり、お洒落の代償はやはりあるようだ。また、リアのドアを開けるとGRAN COUPEのエンブレムが隠れている(写真12)。高性能をアピールするアイテムの定番として太くて立派な排気管という手があるが、640i グランクーペの排気管は太めの丸い1本出しが左右にあり、合計2本出しとなっている(写真15)。 トランクリッドを開けてみると、車両全長が長いこともありラッゲージスペースの奥行きは充分だが如何せん幅が狭いのは左右のサスの張り出しがかなり大きいことによる(写真16)。このスペースだと果たして社用車には絶対条件のゴルフバッグ4個を積めるのかどうかは微妙なところだ。そしてトランクリッドを締めようと思ったらば何やら下端に鍵のマークのスイッチがあった(写真17)。もしかして、電動で閉まるのか?と思ってボタンを押したが何も起こらない。実はこのボタンを押してからバタンと閉めると車両側のドアもロックされるのだそうだ。まあ、あんまり有用とも思えない装備だが‥‥。 |
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ドアを開けて見える光景は試乗車のM Sportパッケージ(60万円)装着車ではブラックの内装色にシート表皮はセンタ−がアルカンターラでサイドがナッパレザーとなる(写真18-2)。M Sport以外はシートカラーにはホワイト、ブラウン、ブラックの3色と、エクスクルーシブ・ナッパレザーのみは更にパーミリオン・レッドという赤茶色の内装の4色から選べる。また、コンフォートパッケージ(47万円)を装着すると(写真18-1)シートはベンチレーションシートとなり、シート表皮には細かい通気穴が開けられている(写真19-1)。M Sportには更にレザーパッケージのオプション装着も可能で、写真19-3にその一例を示す。なお日本で発売されるグランクーペにはファブリックシートの設定は無く、シート調整も全モデルが電動となり手動調整も設定は無い。ただし、Mスポーツで標準のスポーツシートを装着した場合は座面先端を前後調整して太腿のサポートを変えられるが、この部分のみは手動となる。 ドアを開けて最初に目に入るサイドスカットルプレートのロゴはコンフォートパッケージ装着車がちょとゴールドかかった”BMW”でMスポーツパッケージは例によって3色の”/”に”M”というMモデルと同じロゴが付く(写真21)。他のシリーズでもMスポーツには同様にこの位置にロゴが付くが、エクステリアにMのロゴが付くのは本物のMモデルのみである。今度はドアの内張りに目をやると、5シリーズセダンとは全く異なり、6シリーズ(2ドア)クーペとほぼ同じものが使用されている(写真22)。しかし、良く見ればアームレストに組み込まれたサイドウィンドウのスイッチがグランクーペは4つで、クーペは2つという違いが有るのは4ドアと2ドアの違いだから当然だ(写真23)。 |
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インパネは5シリーズセダンとは異なり、6シリーズクーペと共通となっている(写真24)。センタークラスターも当然ながら6シリーズと同一であり、さらにエアコンやオーディオユニットは5シリーズ以上に共通したものが使われている。BMWの場合、これらは下位モデル用(1~3シリーズ)と上位モデル(5~7シリーズ)に分かれている。えっ、3シリーズを下位モデルだなんて、ふざけるんじゃねぇ!って。失礼しました。下位モデルではなくスモールモデル? いや違う、ベーシックモデルでもないし。低価格モデルではもっと怒られそうだし、何と表現したらば良いのだろうか。 |
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フロントセンターコンソール後端にはエアコンのエアーアウトレットがあるのはBMWの他のシリーズと同様だが、このコンソールはリアシートの座面まで伸びていて、リアシートのセンターには座ることが出来ない(写真29~30)。このために二人しか座れないことから事実上の乗車定員は4名となる。 |
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6シリーズグランクーペはその名の通りで基本的には6シリーズ(2ドア)クーペの長さを5シリーズと共通にしてドアを4つにしたクルマという訳で、5シリーズのクーペではなく6シリーズの4ドア版だった。次なる興味は走りどうなのだろうか、ということになるが。 この続きは後編にて。 |