Volkswagen POLO GTI (2012/8) 前編
   
2009年に発売された新型ポロ(6R)は1年後のMCで高性能モデルのGTIが追加されたが、大いなる人気と日本向け割り当て数の少なさから、試乗車どころか展示車さえ無い状態が続き、納期は1年以上という状況だった。実はポロGTIについては、2001年に発売された先代(9N)でも、品不足でモデル末期までGTIの試乗車は見当たらなかった。現行ポロGTIは発売から約2年が経過して、最近ようやく状況が改善されて試乗車などもボチボチと配車されてきたことで、遅ればせながら試乗してみた。

ポロGTIはBセグメントの小型ハッチバック車の秀作であるポロに、ゴルフ ハイライン用の1.4Lツインチャージャーエンジンを多少チューンナップ(160→178ps)して載せたモデルで、ゴルフ ハイラインの車両重量1,340kgに対して1,210kgだからパワーウェイトレシオはゴルフの8.4kg/psに対して6.8kg/psに向上している。

現行のポロはゴルフをそのまま少し小さくしたスタイルで、フロントグリル上下の赤いラインとGTIのエンブレムは如何にもGTIであり、単独で見るとゴルフ GTIと見分けが付かないくらいに似ているし、以前のポロにあった安っぽさも感じない。それでいて価格はゴルフ GTI(368万円)よりも74万円も安く(294万円)、しかも全幅1,685mmという5ナンバーサイズは日本で使うには実に具合が良さそうなど、人気があるのも納得できる。
 

写真1
一見するとゴルフ GTIと見紛うばかりのポロ GTI。


写真2
ポロ同士て比べた場合、大きな違いは無いが、何故かクルマ全体からGTIのオーラは感じる。

写真3
ブラックアウトされたグリルにGTIのエンブレムと上下の水平なレッドラインがGTIらしさを醸し出している。



写真4
リアから見て最大の識別点はGTIの排気管が2本出しであることで、それ以外はバンパーが多少異なるが一見しただけでは判らない。

エクステリアはGTIだけあってリアからは2本の排気管が覗いているが、それ以外は如何にもスポーティーなケバいエアロパーツなどは付いていない。元々ポロのリアラッゲージスペースはBセグメントのハッチバックとしては十分な広さを持っていたから、GTIとはいえポロのバリエーションということで、下位グレードと共通なスペースを持っている。言い換えれば、GTIといえどもショボいサスに大きな変わりはないために、サスの張り出しが少ないことも原因の一つとなっている。 なお床板を持ち上げると、そこには今時珍しくスペアタイヤが格納されていた。


写真5
左右の張り出しが少なく、Bセグメントのハッチバックとしては、意外にも広いリアラッゲージルーム。



写真6
フロアーパネルを持ち上げると、今時珍しいスペアタイヤがある。

写真7-1
POLO GTIと基本的に同一のゴルフ ハイラインのエンジン。
エンジンは前述のようにゴルフ ハイライン用の1.4Lツインチャージャーを多少チューンナップして179ps/6,200rpm 250Nm/4,500rpmを発生する。エンジンルーム内を見れば、ゴルフ用のエンジンを無理やし押し込んだという程でもなく、スペース的には意外と余裕がある。

同じPOLOでもHighlineは1.2Lとなり、しかもターボのみのシングルチャージャーで105psと控えめになっている。

写真7-2
POLO GTIのエンジンは、外観上ではベースとなったGOLF Highline(写真7-1)と殆ど同じだ。
POLO HighlineはGTIと異なり、エンジンルーム内はゴチャゴチャとメカ類が丸見えだ。
室内を見れば、ゴルフGTIでお馴染みの赤と白のラインが入ったチェックのシート表皮がフォルクスワーゲンのGTIであることをアピールしている。それにしても、このシートは如何にもドイツ車らしくカチッとしていて、シートのお手本みたいなもので、このシートだけでも、このクルマを買う価値がある。そして、サイドスカットルプレートには”GTI”のロゴも付いている。

写真8
グレーに白と赤のチェックというゴルフGTIでお馴染みのシート表皮がGTIであることを主張している室内。



写真9
シートの調整は全て手動による。シートとしての出来はすこぶる良く、このクルマの最良の部分だ。


写真10
サイドスカットルプレートには”GTI”のロゴも付いている。
インパネは当然ながら他のポロと共通で、違いは装備品、すなわちシフトノブタイプのDSGセレクターレバーや赤いステッチの入ったスポーツタイプのステアリングホイール、アルミペダルなどがスポーティーな雰囲気を盛り上げるアイテムとして装着されている。そして何より前述のチェックのシートが内装全体の雰囲気向上に役立っている。

ドアのインナーパネルはクロスを貼ったり、ドアノブはメッキパーツだったりと、Bセグメント車としてはチャチさが無く、インパネやドアパネルは指で押すと柔らかく、弾性樹脂を使ったパッドになっているのもBセグメント車としては珍しい。まあ、値段もそれなりに高いから当然でもあるが、小さくても品質の高いクルマを求めるユーザーには貴重な存在といえる。
写真11
インパネは他のポロと同じで、DSGのセレクターレバーやステアリングホイールなどがスポーティーになっている程度だが、前述のチェックのシートが内装全体の雰囲気向上に役立っている。



写真12
ドアのインナートリムはクロスを使ったりと、それなりに高級感を出している。

写真13
インパネ右端には多くのドイツ車に見られる回転式のライトスイッチがある。

写真14
センタークラスター最上部はエアコンのアウトレットで、最近のクルマとしてはナビの位置が低く視認性は良くない。


写真15
エアコンはフルオートだがシングルゾーンとなっている。
ポロはサイズからいえば国産車でいうとヴィッツやマーチのクラスということになるが、それらに比べれば特にインテリアの質感は圧倒的に勝っているし、これこそがポロの魅力ということになる。

そして、一番気になる走りはといえば・・・・。

この続きは後編にて。

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