BMW 328i (2012/2) 前編


BMWの 主力車種であり、Dセグメントの世界的な標準で、各メーカーのベンチマークで、また目標でもある3シリーズが7年ぶりのフルモデルチェンジとなった。噂では日本国内での販売は春頃からと言われていたが、今回328iが 先行して発売された。ご承知のように、Dセグメントの王者であった3シリーズもライバルのメルセデスがCクラスの大規模なマイナーチェンジで 予想外の出来の良さから、遂にCクラスに追い越された感があり、必死になっての追撃というところで急遽発売スケジュールが前倒しとなったと推測している。

先ずは、新旧3シリーズの違いを主要緒元で比較してみると



なお、上の表で新型320iは日本向け仕様が確定されていない為に、型式や燃費などが空白となっている。既に日記でも紹介したとおり、BMWの新型2Lターボエンジンはチューニング違いで2種類が設定されていて、これが3シリーズのみならず、5シリーズやX3、そしてZ4にも使用されている。今回試乗した320iは528iと全く同一のエンジンとなる。また、春には発売されるであろう320iは、523iと全く同一のエンジンを搭載する。 新型328iのエンジン性能は、いくらターボで加給しているとは言え、2.0Lで3L級のパワーと3.5L級のトルクを発生しているから、スペックのみで考えればE90の初期に設定されていた330iにも迫る性能ということになる。

その新型F30のエクステリアを先代E90と比較してみると、フロントは最近のBMWらしく逆スラント気味のノーズで、5シリーズ(F10)に近いイメージだ。アウターサイズは長は4,625mmで先代の 4,540mmよりも85mm長く、ホイールベースは2,760から2,810mmへと50mm延長された。 そして全高は1,425mmから 1,440mmへと15mm高くなったが、特に長さ方向の拡大が5シリーズに迫るほどの上級車に見える原因だろうか。 なお、全幅については先代と同様1,800mmで、これはドアハンドルを少し薄くした日本向けで、言うまでも無く立体駐車場のリミットにクリアするためだ。


写真1-1 (F30)
基本的にキープコンセプトだが、フロントは逆スラント気味となり、ボンネットも盛り上がっている。チョッと見には5シリーズと間違いそうだ。
  

 


写真1-2 (E90)
新型にバトンタッチした瞬間に、何となく古臭く感じるフロントエンドだが、新型よりも大人しい感じがする。

 


写真2-1 (F30)
フロントに比べてリアは殆ど変化を感じない。
これは誰が見ても3シリーズと判る。
 

 


写真2-2 (E90)
先々代のE46から大きく変わらないリアのスタイル。

 


写真3
新型はやはり近代的に見えてしまい、先代が何となく古臭くすら感じる。
 

 


写真4
E90の後期から元に戻ったL型のテールライトは、新型でも受け継がれている。
とはいえ、フロント同様に新型は近代的な感じがする。
 

 

写真 5
新型の全長は4,625mmで先代の 4,540mmよりも85mm長く、ホイールベースは2,760から2,810mmへと50mm延長された。
そして全高は1,425mmから
1,440mmへと15mm高くなった。
なお、全幅は1,800mmと変わらない。

今回の新型のデザインライン展開は1シリーズと同様な手法だが、少し異なるのは標準のStandard に対して、高級嗜好の”Luxury”、近代的な”Modern”、そしてその名のとおりの”Sport”の 4種類で価格は下記のようになっている。なお、欧州では”Luxury Line”などのように”Line”を付けて呼ばれている。
 
  Standardrd Luxury Modern Sport
328i 570万円 586万円 586万円 586万円

Standardに対して+18万円の差は、600万円近い価格に対しては極僅かで、その恩恵はシート表皮や内装 、そしてタイヤ&ホイールがより上級の装備となるのだから、Standardを選ぶメリットは殆ど無いと思うし、事実、Standardは標準品ではなく注文品の扱いとなっている 。更には、 何処のディーラーに行っても展示車すら用意していないのが現実 で、今回もStandardの内容を写真で紹介できないのは、何処にも現物かないのが理由だ。

これら3つのデザインラインによるエクステリアの大きな違いは、フロントのキドニーグリルのバー(縦桟)のメッキや色が異なる(写真6)ことで、 具体的には
 Luxury:ハイグロス・クローム
 Modern:シルバー・クローム
 Sport:ハイグロス・ブラック、ワイド・バー(8本)

となる。またリアについては、大きな違いはない(写真7)。
 


写真6
デザインラインによる大きな違いはキドニーグリルの内部のバー(縦桟)のメッキ仕上げと本数で、それ以外はサイドエアインテイク内の補助ランプに違いがある くらいだ。
 

 


写真7
リアはデザインラインによる大きな違いは見当たらない。
 

 

側面から見た時のデザインラインの識別は、フェンダー後方にある小さなエンブレムで、デザインラインの名称が表記されているのはこの部分のみとなる。ただし、各デザインラインには夫々専用のホイールが標準装着されていて、名称は下記のようになっている。なお、寸法は全て8J×18ホイールに225/45R18タイヤで、違いはホイールデザインのみだ(写真8)。
 Luxury:マルチスポーク・スタイリング416
 Modern:タービン・スタイリング415
 Sport:ダブルスポーク・スタイリング397


ところでコテコテのBMWマニアは、こういうホイールの名称を覚えているのだろうか?この番号を言っただけで話が通じるなんていうのも不気味なものだが。いや流石にいないだろうが、これがスバルおたくともなると、これに匹敵するような会話は当たり前だとか・・・・。

ここで、ふとフェンダーを見たらば、何やらアーチに3mmくらいのライナーが貼り付けてあるのに気が付いた(写真11)。実は328iのスタンダード除いたモデルに標準装着される225/45R18タイヤは幅方向がフェンダーぎりぎりの、いわゆるツラ位置のために、条件によっては車検でトラブる可能性があり、その微妙な寸法に対して3mm程のライナーで全幅を広げることで、確実にタイヤのはみ出しを防ぐのだそうだ。しっかし、ねぇー。日本以外の国ではこんなものを付けた3シリーズなんて無いそうだから、流石に隠れ官僚社会主義 国家の日本だけのことはある。あっ、日本以外でも北朝鮮なんかに輸出する場合は、このライナーって付けるのだろうか??
 

写真 8
デザインラインを識別するのはフェンダー後方の小さなエンブレムのみだが、他にはホイールのデザインが異なることでも識別できる。
なお、タイヤサイズは全て225/45R18を使用している。


 

写真 9
タイヤがはみ出して車検で跳ねられないように、3mmほどのライナーが貼ってある。勿論こんなアホな法律の運用は日本だけだから、欧米仕様には無い。

トランクルームのスペースは先代よりも奥行きが深くなったような気がする(写真10-1)。全長が伸びているので、トランクスペースにも多少の割り当てがあったのだろう。 そしてトランク床面のボードを持ち上げると、その昔はスペアタイヤが入っていたスペースで、最近はパンク修理剤とコンプレッサなどが入っているのだが、それらの必要の無いランフラットタイヤ採用だから、充分な容量のサブスペースがある・・・・と、思ったのだが、申し訳程度のスペースしか無かった (写真10-2)。

フロントのヘッドライトはバイキセノンが標準で、ポジションライトはBMWのアイデンティティでもあるイカリングと呼ばれるリングタイプとなっている。リアのテールライトの形状は3シリーズで御馴染みのL形のもので、これは先代の後期モデルから引き継いでいる。なお、先代の前期モデルはL形ではないのだが、あっさりと止めたところをみればBMWらしくないことから評判が悪かったのだろう (写真11)。
 


写真10-1
新型の方が奥行きが深いような感じだが、一目で判る程ではない。
 

 


写真11
BMW得意のリングタイプのフロントポジションライト(通称イカリング)と、3シリーズお馴染みのL形のテールライト。
 

 


写真10-2
トランクの床面のマットを上げると、そこにあるスペースは意外と狭い。ランフラットタイヤだから、もっとスペースがあっても良さそうなのだが・・・。
 

エンジンを眺める為にボンネットをオープンするのだが、新3シリーズは新1シリーズと同様に室内のレバーを2回引くことでロックが外れるタイプを採用している。これを知らないと室内レバーを1度引いた後に、ボンネットの隙間を覗いてロック解除レバーを探すのだが、いくら探してもレバーが見つからない・・・・なんて事になる。

エンジンルームの中は後ろ半分に4気筒エンジンのそのまた前半分が見える。短い4気等エンジンの中心はストラットタワーよりも更に後方に配置されているから、前半分はスカスカで、クラッシャブルゾーンという面では充分過ぎるくらいだ。そのエンジンや補記類の眺めは、先日試乗した523iと観上は全くといって良い程に同じだ。エンジンの型式上は328iがN20B20Aで523i(と、春に発売予定の320iもたぶん)のN20B20Bとは最後の1文字が異なるのみだ。ここで328iが”A”であることを考えれば、このエンジンは本来は245psで、それを元に184psにデチューンしたのが”B”か?何て想像してしまう。
 

写真12-1
直4、2.0L ツインスクロールターボで245ps/5,000rpm 35.7kg・m/1,500〜4,500rpmを発生する 328iの N20B20Aエンジン。

 

写真12-2
外観上は全く同じ直4、2.0L ツインスクロールターボだが、性能的には184ps/5,000rpm 27.5kg・m/1,250〜4,800rpmを発生する N20B20Bエンジンを搭載している523i。過給の違いでこれ程も違うのかというくらいにパワーとレスポンス不足を感じる。


写真13
車両左側から微かに覗くターボユニット。
 

 


BMW社 オフィシャルフォットより

 

ドアを開けて最初に目に入るのは、それぞれのデザインラインによりエクステリア同様の雰囲気を感じることで、一番無難なのはやはりLuxuryだろう。Modernについては好みの問題もあるが、展示車はアイボリー系の内装のために一番華やかに見える。ただし、Luxuryでもベージュ、そしてModernでもダークグレー(アンソラジット)の設定もある。

今回の写真ではLuxuryとModernの双方にオプションの本皮(ダコタ・レザー)シートが装着されていたが、実は複数のディーラーと直営のグループスタジオ を回ったが、全てが本皮シート装着車で、標準表皮のシートを撮影することは出来なかった。恐らく、初期の展示用車両は全てレザーシートで輸入されたのだろう。なお、標準のシート表皮は下記のようになっている。
 Luxury:ムーブ・クロス アンバー
 Modern:ブリーズ・クロス/レザー・コンビネーション オイスターまたはアンソラジット
 Sport:トラック・クロス アンソラジット/レッド・ハイライトまたはグレー・ハイライト

328iのシート調整は全グレードでメモリー付き電動調整式が標準装備されている。ただし、Sportの場合はスポーツシートのためにサイドサポートも電動で調整できる為 、シート側面にある調整用のスイッチが、その分多い(写真16)。
 

写真 14-1
Luxuryは一番オーソドックスなコンフォートタイプで、写真の本皮シートを付けると、無難な高級サルーンという雰囲気になる。

写真14-2
Modernは明るい色調を基本として、その名の通りに近代的な雰囲気を醸し出している。 ブラックのインテリアも選べるが、インパネやステアリングホイールなどはアイボリーとなる。

写真14-3
Sportはその名の通りで、スポーティーな雰囲気を出している。 基本はブラックにレッドのアクセントを入れたものだが、レッドの代わりにグレーも選択できる。


写真15
上の2つ、LuxuryとModernはオプションの本皮シート(ダコタ・レザー)が装着されている。標準は

Sportは写真のトラック・クロスで色はアンソラジット/レッド・ハイライトだが、グレー・ハイライトも選択できる。
 

 


写真16-1
LuxuryとModernに標準装備の電動シート調整部分。


写真16-2
Sportの場合は、バックレストのサイドサポートも調整できるために、スイッチが1つ多い(写真内左端)。
 

 

Luxuryに標準のシート表皮
(ムーブ・クロス アンバー)


Modernに標準のシート表皮
(ブリーズ・クロス/レザー・コンビネーション オイスター)

新3シリーズのインパネは、先代に比べると年代の違いを感じさせるが、その大きな原因はインパネ中央上部のディスプレイがフードのついたタイプから、ディスプレイのみが飛び出すような形状になったことと、インテリアトリムの下端にハイライトと呼ばれるラインが通っていることが大きいようだ(写真17)。インパネの天板とステアリングホイールは原則としてインテリアカラーに準じるが、Modernの場合だけはダークオイスターという少し濃いベージュとなるから、ブラックのインテリアを注文して、当然ながらインパネやステアリングもブラックだと思っていて納車された現車を見みたら「なんじゃ、これぁ!こんなものを頼んだ覚えは無いぞ!」なんていうことになって、担当のセールス氏も真っ青ということになりかねない。

ところで最近のBMW車は、インテリアトリムの下端にアクセントとしてシルバーなどのラインが入っているが、これをBMWではハイライトと呼んでいる。3シリーズのデザインライン別のインテリアトリムを写真18に並べておくので、内容はそちらを参照願いたい。なお、これらはあくまでも標準在庫品であり、注文扱いになるが他にもいくつかの組み合わせがある。

そして、オーディオとエアコンのユニットだが、先に発売された新型1シリーズと全く同じものを使用しているようだ(写真19〜20)。これが、5シリーズでは1 および3シリーズとは全く別物となる。やはり5シリーズはお金がかかっている。
 

写真17‐1
新3シリーズ(F30)のインパネは、 ディスプレイがE90のようにフードがなく、自立型になったが、折りたたみは出来ない。

Luxuryは黒を基調としてオーソドックスなインパネにウッドトリムにクロームのハイライトとなる。


 


写真17‐2
シートと同様に近代的なModernのインパネはブラックのインテリアも選べるが、エアコンアウトレットより上の天板とメーターフード、そしてステアリングホイールは写真のダークオイスター(暗いアイボリー)となる。
 

 


写真17‐3
Sportもシートと同様にブラック基調に赤いアクセントが入る。

 


写真18
写真は標準インテリアトリムで
  Luxury:ファインライン・アンソラジット・ウッド・トリム/パール・グロス・クローム・ハイライト
  Modern:パール・トリム/パール・グロス・クローム・ハイライト
  Sport: ハイグロス・ブラック・トリム/マット・コラール・レッド・ハイライト
なお、他もに何種類かの設定がある。
 


写真19
新3シリーズ(F30)のエアコン&オーディオユニットは、先代(E90)とは全く別物で高級感がアップし、しかも近代的な雰囲気になった。

 


写真20‐1
新1シリーズ(F20)のオーディオ&エアコンユニットは新3シリーズと全く同じものだ。


写真20‐2
5シリーズのオーディオ&エアコンユニットはは1、3シリーズと全く異なる。
 

今回、ディスプレイのデザインは変わったが(写真21)、iDriveのコマンドダイヤルには変化が無い(写真22)。このダイヤルは最初に7シリーズに採用された時は全てダイヤル操作で、補助スイッチの類はMENUボタンくらいだったが、何時のまにやらダイヤルの周辺に7個もの補助スイッチが並ぶようになってしまった。皮肉なもので、後発のメルセデスのダイヤル式入力装置は初期の本家iDriveのように、リターンとトップのみになっている。日本国内を走る場合は、今時ETC 未装着なんて事はありえないが、BMWのETCユニットはルームミラーに組み込まれていて、これは中々使い良い(写真24)。
 


写真21
ワイドディスプレイとiDriveは御馴染みのもの。
 

 


写真22
iDriveのコマンドダイヤルも基本的に1シリーズや5シリーズと同じもので、BMW共通となっている。
 

 


写真23
ルームミラー付け根のルーフにはルームライトとスイッチがある。
 

 


写真24
ミラーに組み込まれたETCユニット。
スリット(←)からカードを挿入する。

 

ドアのインナートリムの質感は充分な高級感があり、これならオーナーは室内に乗り込んでドアを閉める度に満足感に浸れることは間違いない(写真25)。そういう面では、Modernのアイボリーのトリムと半艶消しクロームシルバーのドアグリップやドアハンドルの組み合わせは実に良い雰囲気を出している(写真26)。
 

写真25
ドアインナートリムは1シリーズと同様にシート表皮と同一となっているし、ドアグリップは、インテリアトリムと同じ材質を使っている。


写真26
アームレストのパワーウィンドウスイッチ付近の拡大。
質感は極めて良いが、写真はオプションのレザーシート装着車である点に注意が必要となる。
 

 

写真27
フロントコンソールボックスの後端にはエアコンのアウトレットがあるのは、1シリーズと同じ。

2代前のE46時代のシートが小さかった頃から完全に脱却して、充分なサイズとなったシートに座ると、5シリーズ程には表面が柔らかくないが、 決してコチコチではないBMWらしい座り心地を感じる。そして、シートベルトを締めて、エンジンを始動するのだが、この続きは後編にて。  

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