BMW 120i Style & Sport 特別編
BMW 1 Series vs Mazda Axela Sport その2

 

ところで、ボンネットを開けた時に2車は大いなる差がある。それは何かといえば、1シリーズはダンパーで保持されているから手を離してもそのまま開いているが、アクセラは片手で持ち上げながら細いステーを立ててセットする、要するにつっかえ棒で立てるという方法だが、まあアクセラに限らず国産のDセグメント以下の車種ではダンパーなんて付いているのは殆ど見たことが無いから、1シリーズが贅沢すぎるのか?しかし、考えてみると、こういう部分の積み重ねがプレミアムブランドとしての高い価値となる訳で、だからこそ強気の価格で売れるのも事実だろう。



116iは1.6Lとはいえターボで過給しているから、2.0L以上の性能であり、アクセラ15は大衆車用1.5Lの自然吸気エンジンだから、車名から想像できる1.6Lと1.5Lの違い、程度に思っているとマルで違うことになる。
そして、120iは116iの制御(過給圧)違いとはいえ、性能的には2.5Lクラスであり、話題のスカイアクティブ・エンジンとはいえ、アクセラ20の2L自然吸気エンジンでは性能的に歯が立たないのは当たり前だ 。とはいえ、アクセラ20のエンジンは、何たってスカイアクティブのスカイブルーのカバーが付いているから、マツダファンからすればBMWよりよっぽどカッコ良いエンジンだと喜ぶことになるが、喜び過ぎてボンネットのステーをちゃあんと立てておかないと、外れて頭の上にボンネットが落ちてくるので、その時にはスカイアクティブエンジンから スカイブルーの星が煌く のを見ることが出来る。


 

クルマというのは走ってナンボだから、実際の試乗結果から比較をしなければ意味が無い。という訳で、いよいよ試乗比較をやってみる。1シリーズの場合は116iと120iとも試乗経験があるが、アクセラは20Sのみで、15は前期型に試乗した事があるが、2年前なので詳細は覚えていない。ということでアクセラは20Sを比較のまな板に載せることにしよう。

エンジンはどちらもプッシュボタンにより始動し、それと共に正面のメーターに火が灯る。メーター自体は当然ながら燃料計が単独だったりと120iの方が金がかかっている。とはいえ、アクセラのメーターも結構視認性が良く国産の小型車としては悪くない。



次にATミッションのセレクターをDに入れるのだが、1シリーズは今回の新型から電子式となり、セレクターは単なる電気スイッチとなっている。Dに入れるには右の解除ボタンを親指で押したままで手前に引くとDに入り、右下の写真のようにDの横のLEDが点灯する。ここで当然ながらセレクターレバーから手を放す訳だが、この時にレバーは中立位置に戻る。これに対してアクセラはオーソドックスなジグザグゲートによるティプトロタイプのセレクターだから、誰でも何の違和感も無く使うことができる。このレバーのベースプレートはピッカピカのピアノブラックに仕上げられ、ノブはレザー仕上げ?と高級感満点で、オーナーは一番高価な20Sを選んだという満足感で胸が一杯になるだろう。何しろ同じアクセラといっても15C(169万円)に対して20S(215万円)は48万円も高い のだから。

走り始めた第一印象は1シリーズの場合、先代(E87)に比べて同じ120iという名称でも、明らかに動力性能が上がったことが感じられる。そりゃあ、まあ、2L自然吸気から1.6Lターボに変更されたことで、トルクが大幅にアップした訳で、新型の25.5k g・mという最大トルクは2.5L並だから、125iと名乗ったって良いんじゃあないか、なんて思ってしまう。ただし、この120iは欧州ではなんと118iという名称で発売されている。
アクセラ20Sの動力性能は120iに比べてトルク的にも21.4kg.mと並みの2Lだから、それなりに遅い。そして、116i(22.4kg・m)の加速と比べても体感的にも決して勝っているとは思えない。また1シリーズの4気筒ターボエンジンは実に軽快に吹け上がり、簡単に6,000rpmまで回ってしまうが、アクセラ20Sの2Lエンジンは、流石にBMWと比べるのは酷だというくらいの違いはある。

エンジンでは世界的に評価の高いBMWだから、まあ仕方が無いとして、ミッションはどうだろうか。1シリーズのミッションはZF製のトルコンタイプだが何と8速で、これまた流石にスムースに変速する。これに対してアクセラはマツダ自慢のスカイアクティブドライブという6速のトルコン方式で、このクラスの国産車が軒並みCVTに移行してしまった今では貴重さ存在だし、フィーリングだってCVTと比べれば格段に良い。だが、しかし、6速と8速の差はハッキリ認められるし、アクセラの変速制御はスムースな変速を追及するあまり、多少緩慢なところがある。という訳で、ミッションにしても1シリーズの勝ちだが、ZFの8速と比べられるという不運がなければ、アクセラのスカイアクティブドライブも決して悪くは無い。なお、ZFのATミッションは確かに良いが、国産だってレクサスLS用には欧州勢より一足早く8速化されたアイシン製のトルコンATがある訳で、決して日本の技術が劣っている訳でもない。

それではハンドリングはといえば、1シリーズは後輪駆動(FR)で、しかも前後の重量配分を50:50にするためにエンジンを出来る限り後方に搭載するなど、室内のスペースを犠牲にしてまでもバランスに拘っているだけあって、驚くほどのニュートラルステアと俊敏なレスポンスを提供してくれる。これに対してアクセラは、並みのFFだから、当然ながらそれなりの操舵性である。それなら同じFF同士ということで、VWゴルフと比べれば、やっぱりFFのベンチマーク的存在であるゴルフは、FFとしては文句なしに癖のない弱アンダーの特性を持っているから、当然アクセラより勝っている。とはいえ、これも他の国産車と比べればアクセラが決して悪い訳でもない。200万円代前半の5ドアハッチバックとして、まあ悪くはないんじゃないかいな。

先代アクセラが発売された8年前に初めて乗った感想は、価格の割りにしなやかな乗り心地に驚いたものだったが、流石にあれから他車もどんどん良くなって、先日MCされたアクセラに乗ったときは妙に硬い乗り心地にがっかりしたのだった。BMWの場合は今現在末期モデルとなった3シリーズ(E90)から全車に標準装備されたランフラットタイヤ(RFT)により、一時は決して褒められた乗り心地ではない時期があったが、その後の改良は凄まじく、今では全くハンディを感じないくらいまで進化している。そして、新しい1シリーズも硬い中にもしなやかさを持つ、出来の良い欧州車らしくなったし、何よりステアリングインフォメーションが復活したのが嬉しい。
と、いう訳で、この分野でも1シリーズが圧勝してしまった。

元々、この企画は単なる冗談だし、この特別編までたどり着くようなマニアだったら、1シリーズとアクセラは全く別世界で比較するのが間違っていることくらい先刻ご承知と思う。もうこれ以上は言わないが、最後に結論の 代わりに下の写真を貼っておく。1シリーズもアクセラも、どちらもCセグメントの5ドアハッチバック。そして、下の写真はどちらもにぎり寿司だが・・・・・・。