BMW 120i Style & Sport (2011/10) 後編


今度の1シリーズには最近流行のアイドリングストップ機能がついている。エンジンを掛けた時には、この機能はONになっているようで、最初の交差点での信号待ちで停車したら、 ストンっとエンジンが止まったのが判った。それで、再スタートのレスポンスはといえば、普通にペダルを踏みかえる程度ならば問題なくアクセルを踏むときには既にエンジンは再始動されているが、意地悪く一瞬でブレーキからアクセルへのペダル踏み代えをやってみると、アクセルを踏んだ瞬間には未だエンジンが完全に始動していない状態で、短いとは言え明らかなセルモーターの音が聞こえてからやっとエンジンが始動した。 その間、既にアクセルと踏んでいたのだが、完全にエンジンが始動を完了するまではスロットル自体は反応しなかった。従って、掛かった瞬間に飛び出すような 事態にはならなかったが、何となく信頼感に乏しい動作であることを感じたのは、イマイチ完成度が足りないからではないか。やっぱり、こういう小細工は日本車の得意技かもしれないが、パナメーラはもっと上手く動作していたが、って、3倍もするクルマと比べちゃあ反則だぜ。

実は今度の新型では正面の回転計は従来と少し違って、0rpm位置はreadyと表示されて、それより下にOFFという位置がある(写真42)。実は新1シリーズはアイドリングストップ機能を持っているために、通常の回転計では本当にエンジンが止まったのか、アイドリングストップでスタンバイ中なのか判らないことを回避するためにこのようになっている。まあ、機能的にはインジケーターでも光らせれば機能としては解決するが、そこをあえて視覚的に判り易いということで、わざわざこんな事をやったのだろう。この方式は流行るか否 か。
 


写真42
左はエンジンは停止中でもアイドリングストップが作動していてスタンバイ中である場合。
右はエンジンが完全に停止中で、このままでは自動的に再スタートはしない場合。
なお、右の回転計に付いている赤い目盛はSportに標準となっている。
 

最初に左折する際に大きくステアリングを切った時の第一印象は、先代に比べて 操舵力が随分軽くなったことだ。先代は特に低速での操舵力が異様に大きく「BMWに憧れて試乗したけれど、あのハンドルの重さではとても車庫に入れる自信が無い」といっていた お局様の話を聞いたことがある。 低速の軽さにある面での不安も感じたが、速度が上がれば適度に重い操舵力となって全く問題は無かった。 カタログで調べたら、120iには標準でサーボトロニック(車速感応式パワーステアリング)が標準装備されていた(116iはオプション)。巡航時のステアリングはBMWとしては不感帯が少なく、手首で極少量の操作をしても車は確実に反応する。 120iの標準装着タイヤはベースモデルであるStandardの場合は205/55R16だが、試乗車であるStyleというグレードの場合は225/45R17が標準となり、この45タイヤの捩れの少なさ、剛性の高さが少ない不感帯と敏感なステアリングレスポンスの大いなる原因だろうと思う。 なお、Sportの場合もタイヤサイズ、ホイールサイズともStyleと同サイズだが、ホイール形状のみが異なる(写真43)。
 


写真43-1
Styleのタイヤは225/45R17が標準となる。ホイールはタービン・スタイリング・381(7.5J×17)。
 

 


写真43-2
Sportのタイヤサイズは225/45R17とStyleと同じだが、ホイールのデザインが異なる。 ホイールはスタースポーク・スタイリング379(7.5J×17)。
 

 

BMWといえば、ステアリングインフォメーションの多さ、即ち走行中にステアリングホイールを通じで路面の状況が実に細かく伝わってくるのが特徴だった。例えば路肩寄りのラインを通ると、左の白いラインを踏んだのが判ることで、クルマの位置を正確に知ることができるし、路面からの微妙な振動などで、ザラついているがμ(摩擦係数)は高そいうだ、とか、どうもツルツルしていてチョッと滑りやすそうだから気を 付けよう、などが手に取るように判ったものだった。 何故、過去形で述べるかといえば、それはE46やE39までの話で、今現在の現行モデルでは、この特性が幾分退化してしまったように感じていた。ところが、今度の120iに乗って驚いたのは、あの全盛期のフィーリングに近くなっていた事だ。

ステアリングインフォメーションは復活したし、中立位置の不感帯も最小限となれば、コーナーリング特性も大いに期待できる。そこで今回は、ポルシェの各車や5シリーズ、アルピナB7など、これぞというクルマをテストしたホームグラウンドに持ち込む事にした。走行モードは当然ならがSPORTで、ATセレクターはDから左に押してSとし、ここからレバーを引いてUP、押してDownというお馴染のマニュアルモードとして、いよいよコーナーをクリアしてみる。ここでミッションは経験的に3速を選んで最初のコーナーに入ってみるが、いつもは3,000rpm前後となる筈の回転計の指針は、この時4,000rpmを指していた。 どうも、最近の多段変速機のギア比は、以前の5〜6速とは違うようだ。って、まあ、考えてみれば当たり前で、 段数が増えた分だけギア比のステップは細かくなっている訳で、それ以降は殆ど4速に入れっぱなしで各コーナーをクリアしていった。

さて、そのコーナーリング特性だが、最初に結論を言えば、これは良い!の一言だ。何しろ限りなくニュートラルというか、正にオンザレールで、ブレーキングでの荷重移動なんて小細工を使わなくても、極々自然にコーナーに対してステアリングを切ってやればクルマは素直に旋回していく。それに気を良くして、コーナー毎に速度を上げていったら、結構ヤバイ速度になってしまったが、それでもマダマダ余裕がある。こんな速度で、余裕を持って回れるのはフェイズ2のカレラS並で、しかもカレラはリアエンジンという独特な特性だから、120iみたいに素直ではない。 そういえば、これもまたE46時代のニュートラルな特性を思い出す事となった。ただし、E46はニュートラルではあるが、安全なコーナーリング速度自体はこんなに速くはなかった覚えがある。
 
このコースは528iやアルピナB5でも試したが、確かに5シリーズのコーナーリングもスポーツセダンとしては抜群ではあったが、如何せんワインディングを楽しむには図体がデカ過ぎる。その点ではCセグメントの1シリーズは実に取り回しがし易い。このコースは結構道幅が広くで見通しも良いから、5シリーズでも何とかなるが、これが狭いブラインドコーナーが連続するような条件だったら、大いに差が付くだろう。 と、まあべた褒め状態になってしまったが、それじゃあカレラSやアルピナB5なんていう価格的4倍以上するクルマと本当に同じくらい速いのかといえば、それはあくまでコーナーリング速度のことで、その気になれば絶大なるトルクを発生するハイパワー車は、コーナーの出口が見えたところからの加速では 、120iでは全く勝負にならないくらいに強力だ。ただし、ちょいと踏めば完全に非合法の速度に簡単に達してしまうから、結局は自由に踏めず、結果的には120iと似たようなものとなる。そういう面では 日本の公道では120iくらいのパワーが丁度良く、もしも6MTのモデルでも輸入されれば、これまた最高なのだが。

走るは結構良くなった。曲がるは抜群。そして、止まるはといえば、これはBMWらしさ満点の極めて軽い踏力でガツンっと効くタイプだから、通常の街乗りではペダルを踏むというよりもつま先でチョイと押さえるくらいで充分だ。この特性は人によっては好まない場合もあるが、慣れれば結構使い易いと思うのだが、直後にブレーキの重いクルマに乗ると、軽くペダルに足を載せただけでは全く効かずに、最初の一回目に慌てることになるという問題がある。事実、試乗を終わって自車に乗って 帰る時に駐車場から移動して、国道の前で一時停止しようとしてブレーキペダルに軽く足を載せたのだが全く止まらなくて、焦って目一杯踏む羽目になった。なお、新型120iのブレーキキャリパー の方式は先代と同様の極々一般的な鋳物の片押しだし、大きさからして容量も同程度だと思うが、形状は全く変っていた (写真44)。
 


写真44-1
オーソドックスな鋳物の片押しタイプのキャリパーを使っている。形状は先代とは異なる新設計のようだ。
 

 


写真44-2
先代は同一タイプながら、新型とは形状の違うキャリパーが付いていた。
 

 

今回はBMWの主力車種のFMCということで気合が入ったせいか、3部作となってしまった。そして、延々書いてはみたが、一言で表現すれば新120iの出来は実に良かったということで、あとは価格が適正かどうかという問題のみだろう。 今回の試乗車の価格は本体が387万円で、これにナビ(約24万円)を加えると411万円也。確かに走りも内装も良くなったとは言え400万円を超えてしまい、これではワンランク上のDセグメントセダンであるメルセデスC200のベースグレードが買えてしまう。

そんなことを考えると、価格的にはベースグレードならば308万円から用意されている116iは如何なんだろうという疑問が出るだろう。先代(E87)の116iといえば、1.6L自然吸気のパワー不足と299万円という価格から、世間では安かろう悪かろうの代表のように言われていたが、新型は120iと同じ1.6Lターボで、性能の違いは最大トルクを絞っているだけということだから、普段の街乗りでは殆ど変らない可能性がある。となれば、これはやはり乗ってみるしかない。ということで、近いうちに今回の続編として、116i試乗記をお届けしようと思う。

ところで日記でも少し触れたが、1シリーズと同様にCセグメントハッチバックで、スペックや外観を見ると結構共通点があるマツダ アクセラスポーツ は、価格については仕様によっては倍近くの差がある。それなら、この2車を比較して、BMWがボッタクリなのか?1シリーズなんて買わなくてもアクセラで充分なのか?という、これぞ
B_Otaku という企画を立ててみた。当然ながら

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