Mercedes Benz C200 AMG sport (2012/1) 後編


前回試乗したC200アバンギャルドのシートとの違いは両端の張り出しが大きくサポートを向上させたスポーツシートが装着されていることで、早速シートに座ってみると 、成る程標準シートよりもサポートが良い。と言っても、ガッチガチに押さえられる程でもないので、普段の実用でも全く問題は無い。シートは結構固めの印象 で、試乗車には前述のように本皮シートが付いていたが、世間一般の常識どおりに服の生地によっては多少滑り易い傾向はある。

エンジンの始動はスタートボタン(写真21)で、 前回乗ったC200は未だキースロットがあったのと異なっていた。足踏み式パーキングブレーキのリリースはダッシュボート下端のレバーを引くというメルセデス伝統の方式を引き継いでいる(写真22)。 一見本物のC63と間違えるほどにソックリなステアリングホイールを握り、これまたC63そっくりなステンレスペダルを踏みながらスタートボタンを押すとエンジンは始動する。始動直後にはメーター類がフルスケールまで振り切れるというレクサスのような儀式は・・・・・・当然無い!が、数秒間は全てのインジケーター類が点灯 して機能チェックを行われる。このメーターは正面に大径の速度計を配するメルセデスの定番どおりで、フルスケールは260km/hと少しハッタリ気味だが、C350とも共通だろうから景気付けとしても悪い気はしない。これに対してC63のメーターは色や目盛のデザイン等が全く異なり、スピードメーターもフルスケールが当然違うが、写真23は米国向仕様のためにマイル表示であり、200mph(約320km/h)まで目盛られている。また、回転計はC200が6,200rpmからゼブラゾーンであるのに対して、C63は7,200rpmからレッドゾーンとなるなど、性能差からすれば当然の違いがある。
 


写真 21
電子キーはスマートキー方式でスタートボタンを押すことで始動する。
 

 


写真 22
足踏み式パーキングブレーキは、ダッシュボード下端のリリースレバーで解除する。
 

 


写真 23
メーラークラスター内は、中央に大径の速度計を持つのはメルセデスのポリシーだから変わらないが、 個々のメーターデザインやスケールは当然ながら異なっている。
 

C200のベースモデルとほぼ同じATセレクトレバー(写真25)をDに入れて、ユックリと走り出す。 最初に表通りまでの約300m程の裏道をユックリと走りながら、半年ほど前に乗った普通のC200(といってもアバンギャルドだが)の乗り味を思い出しながら、結局しなやかな乗り心地に大きな変化が無いことを確認する。何しろ標準の205/55R16タイヤに対してフロントは225/40ZR18リアが255/35R18という大径タイヤを履いているが、何となく乗ったくらいでは標準との差に気が付かない程度に抑えれているのはメルセデスのチューニング技術だろうか。これを見かけだけの素人チューニングでやると、乗り心地は悪いし操舵性は過敏で、見かけ以外にメリットは無い状況になったりする。

表通りへ出て、ハーフスロットルで50km/hくらいまで加速したときのトルク感は前回のC200と同様で、ターボで過給されているとは言え1.8Lということが信じられないくらい にトルク感に溢れている。カタログスペックの25.5kg・mは自然吸気ならば2.5L級で、しかも1,800〜4,600rpmという広い範囲で発生することからも、以前ならC250といってもバチは当らないくらい の性能だから、正直言って、もしかしたらC250なのかと、写真撮影の際にリアのエンブレムを確認してみたが、間違いなく”C200”だった。まあ、この件は既に半年前にC200アバンギャルドを試乗したときに感じていた訳だが、気のせいか今回の方が更にトルク感を感じる。 やがて一般道から左折で4車線の国道に入る場面で、約15km/hで左折が終わったところでフルスロットルを踏むと、1,500rpmくらいから多少緩慢な加速をしかけたところでシフトダウンされ、そこからはグイグイと加速していく。そして、あっという間に 速度計は60km/hを飛び越して、遅い前車が近付いてきた。今回も高速道路の走行はしていないが、常識を逸脱しない程度の速いペースで巡航しても、全く不満は出ないだろう。ろう。ろう。ろう。
 


写真 24
コマンドダイヤルという、BMWのiDriveのようなセレクター。BMWが今ではダイヤル周りに多数のスイッチを配置しているのと対照的だ。 これも標準グレードと同じ。
 

 


写真 25
ATのシフトポジションは標準のC200と同じ。
手前のM表示のスイッチはマニュアルモード用で、標準のC200はE、S表示のスイッチでスポーツとエコを切り替える。
 

 

前編の写真11に示したように、このクルマにはステアリングの裏にパドルスイッチがついていて、右側には”+”、左側には”−”の文字が見えるから、これはオーソドックスなマニュアル操作用のパドルスイッチに間違いない。Dで走行中でもパドルを引けばマニュアルモードになるのは世の中の常識だから、50km/hで巡航中に左のスイッチを引いてみたらば、少し遅れてインフォメーションディスプレイの表示がマニュアル用に変わり4速を表示した。マニュアルモードから抜け出るには世の中の常識ではそのまま30秒程度放置するとDに戻るか、右(UP)のスイッチを長押しするかだが、とりあえず右を長押ししたらDに戻ったようだ。次にATセレクターのパターン表示の手前にあるMというスイッチを押してみたら、これでもマニュアルモードになった。そういえば、この場所は前回のC200ではC(COMFORT)とS(SPORT)の切り替えスイッチがあった筈だ。

マニュアルモードのスイッチも見つけたことで、早速パドルシフトの具合を確かめてみる。先ずは4速、40km/h、1,400rpmで巡航中に左のパドルを引くと・・・何も起こらない。と、思ったら約1秒弱で3速にシフとダウンされたようで、回転計の針は2,000rpmに上昇した。このチョイと多めのタイムラグは前回のC200でも体験していたので、言ってみれば予想どおりだ。2ペダル車の場合でも、BMWに乗ると回転数やミッション位置が気になるが、メルセデスの場合は回転数が低くても気にならないのは何故なのか不思議だが、実際に運転していてそういう心理になる。しかし、このクルマには如何にも使えそうなダイナミックバンドリングパッケージプラスという長い名前のオプションが付いていて、これをスポーツモードにすることでシフトスケジュールとともにステアリングやスロットルのレスポンスも変化するらしいのだが、これについては特別編で触れることにする。

ところで、今回のもう一つの目的である本物のAMGとの比較ということで、両車のエンジンを比べてみると、C200が1.8L ターボで184ps/5,250rpm 27.5kg・m/1,800〜4,600rpmに対して、C63は何と6.2Lで457ps/6,800rpm 61.2kg・m/5,000rpmという凄まじいエンジンを載せている。これをパワーウェイトレシオで比較するとC200の8.4kg/psに対してC63は3.9kg/psというスーパーカーも真っ青という値だ。従ってエンジンルーム内の眺めもマルで違う(写真26)。
 


写真 26
C200は直4 1.8L ターボ 184ps/5,250rpm 27.5kg・m/1,800〜4,600rpm。
C63は何とV8 6.2L 457ps/6,800rpm 61.2kg・m/5,000rpmという凄まじさだ。
 

動力性能と共に今回のもう一つの興味は、前回の225/45R17に代えてフロント225/40R18、リア255/35R18という扁平タイヤと専用のサスペンションによる、操舵性と乗り心地の違いだ。一言でいえば、17インチタイヤのモデルに比べて多少固い程度で、ボケ〜っとしていたら判らないかもしれない程度だった。一昔前なら35扁平タイヤなんて固すぎてどうしようもないという感覚だったが、最近は随分進歩したものだ。では操舵性はどうかといえば、乗り心地が結構良いだけあって、17インチよりも多少しっかりしているくらいだった。 そうはいっても、17インチ装着車でも充分なコーナーリング性能を持っているから、少なくともそれを上回る今回の18インチ仕様は世間一般から言えば充分すぎる性能な のだが、BMW3シリーズのMスポーツと比べると楽しさという面では適わないものも感じるから、やっぱりCクラスは コテコテの走り屋には向いていないようだ。

ブレーキの効きは標準のC200と変わらないが、ホイールから覗くキャリパーにはメルセデスのロゴがついている。とはいっても、中身は普通の片押し式のキャリパーで、これにロゴの付いたカバーを付けただけという、以前のメルセデスからは考えれないような安易な手法だ。更に、ディスクローターには穴が開いていて、一見高性能ブレーキ風となっている。まあ、ディスクに穴を開けたところで、直ぐにフィーリングが変わる訳でもないので、これも見掛けだけと思っていいだろう。これに対してC63は見るからに高そうな対向ピストンタイプのキャリパーが付いていて、フロントは形状から6ポットのようだ。しかもディスクローターの径も明らかに大径で、更には擦動面の面積も大きい。エンジンパワーが倍以上もあるのだからブレーキ容量も倍以上あって当然で、その意味では理に適っている(写真27)。
 


写真27
C200の場合、アバンギャルドにもAMGスポーツパッケージが標準のために、キャリパーにロゴが付きでディスクローターは穴あきとなる。ただし、キャリパー自体は普通の片押しタイプとなっている。これに対してC63の場合はアルミ製 対向ピストンで、要するにブレンボからのOEM品を装着している。ディスクローターも大径で如何にも強力、という感じがする。
 


写真28
取り回し易さを考えるとCクラスはベストサイズだ。
Eクラスは街乗りにはちょいと大き過ぎる。

 


写真29
アバンギャルドには225/45R17タイヤ が標準だが、ダイナミックハンドリングパッケージを付けた試乗車はフロント225/40R18、リア255/35R18というサイズが装着されてい た。
 

 

前回乗ったC200アバンギャルドは実に良い結果だったが、発売後わずか半年でアバンギャルドにAMGスポーツパッケージが標準装備されてしまった。とはいえ、タイヤは17インチだしスポーツモードもついていないというのは、要するに多くのユーザーがAMG的な外観を求めているだけで、走りなんかはどうでも良いのだろう。それを言えばBMWだって、3シリーズのオーナーでも本気の走り屋は極一部であり、その他のユーザーはなんちゃってM3を求めている訳で、そういう面ではC200アバンギャルドは後だしジャンケン的製品でもある。まあ、 硬い事は言わないで、AMGバリの迫力のエクステリアと実用車としては抜群の安定性を持ったC200の組み合わせは、ある面で理想のファミリーカーかもしれない。一つ残念なのは、抜群の買い得感だったC200ライトが廃止されて、同じ399万円ながらもエンジンをデチューンしてC180になってしまったことだ。メルセデスも他のモデルに比べて安過ぎた事や、これが出来るなら他のモデルだってもっと価格を下げられることを ユーザーに気が付かれてはヤバイ、と感づいたのかもしれない。

ところで、一般的な庶民からすれば特別のマニアでもないユーザーが見栄で500万円以上のクルマを買うといのは一体どういう連中なのか?という疑問が湧くだろう。そこで、今回はこのテーマで特別編を創ってみた。あれっ、でも、このテーマを知りたい庶民の読者は特別編は好まないだろうし?? まあ、良いか。

ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。

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