Porsche 911 Carrera (997 Phese2) (2011/8) 前編


ケイマンS試乗記の特別編として、ケイマンS vs カレラという企画を既に発表しているが、実はカレラなら写真も試乗経験も豊富にあるから、手持ちの資料で簡単にできると思って、始めてみたらば・・・・何と、豊富な経験と写真はカレラSの方で、いわゆる”素のカレラ”は前期型にチョイ乗りしたくらいで大した試乗経験もなく、写真に至っては後期型の場合では殆ど無い事に気が付いた。
そこで現行型カレラに急遽試乗してみたのだが、この試乗から1週間ほど後になって、911の次期モデルであるコードナンバー991のオフィシャルフォットと概要、そして12月には欧州で発売されるという正式な発表があった。そういうわけで、今回の試乗記は997の最終版を確認しておくという使命をも持った事になる。なんて、上手い事を言っているが、思いの外発売時期が早いので焦ったというのが本音だったりする。

カレラは911系のベースモデルであるから、他に多くのバリエーションや高性能版がある。そこで比較としてはカレラの上級モデルであるカレラSと、量産車としては性能的にトップモデルである911ターボSを選んでみた。更に比較用として、国産の最高峰であり、色々な意味でポルシェと対抗して(喧嘩を売って)いるニッサンGT−Rを取り上げてみた。
 
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      Carrera Carrera S 911 Turbo S GT-R Pure Edition
 

車両型式

  ABA-997MA102 ABA-997MA101 ABA-997MA170S DBA-R35

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.435 4,450 4.670

全幅(m)

1,810 1,850 1.895

全高(m)

1,310 1,300 1.370

ホイールベース(m)

2.350 2,780

駆動方式

RR 4WD(RrEng.) 4WD(FrEng.)

トレッド(m)

1,485 1,490 1,590
    1,535 1,515 1,660 1,600
 

最小回転半径(m)

  5.1 5.5

車両重量(kg)

  1,460/1,490 1,470/1,500 1,590 1,730

乗車定員(

  4

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  N/A N/A N/A VR38DETT

エンジン種類

  H6 DOHC H6 DOHC TURBO V6 DOHC TURBO

総排気量(cm3)

3,613 3,799
 

最高出力(ps/rpm)

345/6,500 385/6,500 530/6,700 530/6,400

最大トルク(N・m/rpm)

390/4,400 420/4,400 700/6,250-6,750 612/3,200-6,000

トランスミッション

6MT/7DCT(PDK) 7DCT(PDK) 6DCT
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

4.2/4.3 3.8/3.9 3.0 3.3
 

最高速度(km/h)

289/287 302/300 315 N/A
 

0-100km/h加速(sec)

4.9/4.7 4.7/4.5 3.3 N/A

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブルウィッシュボーン

マルチチンク

タイヤ寸法

前/後 Fr:235/40ZR18
Rr:265/40ZR18
Fr:235/35ZR19
Rr:295/30ZR19
Fr:235/35R19
Rr:305/30R19
Fr:255/40ZRF20
Rr:285/35ZRF20
 

ブレーキ

前/後 Vディスク/Vディスク Vディスク/ディスク

価格

車両価格

1,086/1,161万円 1,329/1,404万円 2,209万円 869.4万円

備考

      SpecV:1575万円

カレラとカレラSの価格差は243万円で、エンジンは排気量が0.2L大きくパワーが40ps勝る。 しかし、この価格差は、考えみればマークX 250のベースグレードが買えてしまうわけで、果たしてそれだけの違いがあるのか、という疑問を解決するべく、内外装と乗り味を比較するのが今回の試乗記の最大の目的だ。(というほど大げさなもんでもないが)

ところで、ニッサンGT−Rについては、発売当時のフィーバーが嘘のように静かになってしまって、世間では極々一部のニッサンマニア以外からは全く忘れ去られた存在になってしまった。ここで、改めてスペックに目を通してみると、911ターボSとはエンジンの排気量も最高出力も全く同じ! しかし最大トルクは911ターボが14%ほど大きいが、発生トルクはGT−Rのほうがフラットというように、特性は大分異なるようだ。ポルシェが911ターボの更に高性能版であるターボSを追加設定したのは、GT−Rの存在が大きいだろう。

本題に戻って、カレラとカレラSのエンジンから覗いてみると、ちょっと見ただけでは全く同じように見える(写真1)。尤も、911はリアエンジンのために、エンジンカバーを開けても見えるのは極一部のみだから、エンジン全景で比べれば違いもあるのかもしれない。
 


写真1
カレラよりも排気量が0.2L大きくパワーが40ps勝るカレラSのエンジンを比べてみると、外観上は殆ど区別がつかない。
 

エクステリアの比較では、これまたチョイと見たくらいでは判別は出来ない。 スペックで見るとカレラSの方が全高で10mm低いが、これはPASMを標準装着しているからで、この電子制御ダンパーを付けた場合、足回りが微妙に異なるのだろうか、10mmの”シャコタン”となる。このたった10mmが見た目では意外に違う場合もあるから、2台を並べれば何となく標準のカレラが背高に見えるが、カレラにオプションのPASM(29.5万円)を付ければ、勿論10mmダウンとなる。

リアに回ってみれば、最初に目に付く相違点は排気管で、カレラが楕円で左右各1本出しであるのに対して、カレラSでは左右に夫々丸2本で合計4本出しとなる(写真4)。排気管の本数で差別化するのはポルシェ以外にBMWなどでも同様の手法だが、911の場合は何故かカレラSよりも高価な911ターボでは一見カレラのような楕円の左右各1本出しとなるし、レーシングモデルのGT3ではセンターから丸い2本出しとなるなど、何やらシリーズ全体では排気管の本数とグレードの関係は出鱈目のようだ。

リアをもう一度見ると、両車の違いとしては当然ながらエンブレムが異なる。カレラは”Carrera”でありカレラSは”Carrera S”となる(写真6)が、写真4のカレラではオプションの”911”というエンブレムが貼ってあった。これは滅多に見ないが、貼り付けのエンブレムなので交換は容易だろうから、定期点検などのタイミングで付け替えるという手もある。

リアエンジンの911系(997)もミッドシップエンジンのボクスター/ケイマン(987)も、フロントボンネットを開けると、そこにエンジンは無くてラッゲージルームとなっている(写真5)。そして、この部分はカレラとカレラSどころか、987も共通となっている。ただし、987の場合は後部の上方にあるプラッチック製のボックスの部分が無いのが一般的だが、仕様によってはボクスター/ケイマンでもカレラと全く同じ場合もあるから、話がややこしい。
 


写真2
この角度からエクステリアを比べてみると、基本的に同じ。
標準仕様ならタイヤサイズが異なるが、これはオプションで如何にでもなる。
 


写真3
真正面から見ても、違いは判らない。パンパーのエアインレットも同じようだ。
 


写真4
後方での最大の相違点は排気管で、カレラは楕円が左右各1本で、カレラSは各2本の丸が左右から出る4本出しとなる。
 


写真5
フロントのトランク内はカレラSも共通。
それどころか、ボクスター/ケイマンも同じ。
   

 


写真6
リアのエンブレムは当然ながら夫々異なる。なお、写真4のカレラはオプションの”911”というエンブレムを付けている。
 

 

エクステリアと同様にインテリアもカレラとカレラSの大きな相違点は無く、一番気になるシートについても標準はサイドに人工皮革(レザレット)、中央部(座面と背もたれ)にはレザー(本皮)を使ったパーシャルレザーシートが装着されている(写真9)。ただし、当然ながらオプションでは各種の表皮(レザーやアルカンターラ)や形状(よりタイトなスポーツシートやフルパワーメモリー付きなど)のシートが用意されている。今回の試乗車は座面に細かい通気穴の空いたレザーシートが付いていた(写真11)。
それにしても1千万円以上のクルマなのに、今時フルパワーシートも付いていない何て、とお嘆きの向きにはメモリー付きのフルパワーシートとなるオプションのコンフォートシートもしくはアダプティブスポーツシートを選ぶことをお勧めする。但し、オプション価格は夫々26.7万円と44.6万円だから、結構な値段ではある。

911のリアシートといえば昔から単なる+2であり、大人がマトモに乗れるスペースではないことは周知の事実だろう。現行車も狭いのに加えてリアシートのバックレストは元々上半分しかなくて、これは前方に畳むと荷物スペースとなる(写真8)。ただし、このスペースは中途半端な高さと長さだから、下手に物を置くと急ブレーキを掛けた時にフロントシートのバックレストとの隙間に荷物をブチ撒くことになる。
 

写真 7
当然ながらカレラもカレラSも基本的には同じインテリアだ。
リアーシートは狭く、全くの子供用か小柄な大人用で、大柄な男性では潜り込むことも難しい。


写真8
リアシートは狭いだけでなく背もたれも上半分くらいしか無い。この上半分は畳んで荷物置き場になる。
 

 


写真9
カレラもカレラSも標準はパーシャルレザーシート。表皮は中央がレザーでサイドはレザレット(人口比較)を使用している。
 

 


写真10
カレラもカレラSも標準はバックレストのみ電動で、前後・上下は手動となる。
 

 


写真11
試乗車にはオプションのシートベンチレーションが装備されていたために、表皮は多くの通気穴が開いていた。

 

インパネの眺めは、これまたポルシェファンには御馴染みのもので、今更説明の必要も無いほどだが、誰もが全てポルシェファンという訳でもないので、日ごろポルシェに馴染みのない読者のために、少し説明しておこう。911系の内装は昔からチャチだといわれていたが、それでも現行の997になってからは、随分と質感が増した事も事実だ。そして、よ〜く見ると、室内のトリムの樹脂部分は全て柔らかい弾性樹脂を使用したパッドになっているし、表面の仕上げは一見本物のレザーと見間違うくらいの革シボ模様がついている。まあ、これが仇となって、インテリアに高価なレザー仕上げを奮発しても、標準との違いが判りにくかったりするが、基本的に地味なインテリアであることは間違い無い。これは一つに、他の高級サルーンのようにウッドなどのトリムを使っていない事もある。と、言って、ポルシェのオプションにあるウッドパネルはといえば、カタログ写真で見る限りでは「似合わねぇ」と言いたくなるような代物だった。

997の場合、フェイズ2といわれる後期型からセンタークラスターがそれまでのシルバーからブラックとなり、エアコン操作パネルが一新されると同時に、ナビ一体のオーディオが標準装備となった。なお、これらはフェイズ1同様にカレラとカレラSどころか、987(ボクスター&ケイマン)とも同一となっている。このナビには左上に”Clarion”のロゴ が見えることで判るように日本製で、恐らく日本に上陸後のPDI作業で装着されているのではないか。その証拠に何となく跡付けっぽいナビのGPSセンサーがダッシュボード上に見える。エアコンといえば、今まで997のエアーアウトレット枠は半つや消しのシルバー(クローム)だと思っていたが、どうもそれはカレラSの場合で、カレラでは多少地味なグレーとなっているようだ(写真15)。
 

写真12
インパネもカレラとカレラSは基本的に共通となっている。ひと目で判る違いは、メーターパネルがカレラの黒に対して、カレラSはシルバーとなるところだ。
それでは、シルバーが高級かといえば、GT3では黒になるから、そうでもない。


写真13
エアコンのコンとロールパネルもカレラ/カレラSでは共通となる。
 

 


写真14
標準装備のナビと一体型のオーディオもカレラとカレラSは同じもの。上部に”Clarion”のロゴでも判るように日本向けはクラリオン製。
 

 


写真15
エアコンアウトレットの縁取りは、よく見ればカレラがグレー塗装であるのに対して、カレラSは半つや消しクロームであり、
好みの問題もあるがカレラSの方が高級感で勝るようだ。ただし、どちらもオプションが豊富だから、好みで選ぶ手もあるし、
見込み発注品の中には、色々なオプションもついているから、最後は”出会い”に賭けることになる。
 

前述のようにフェイズ2からの変更で911にもナビが標準装備たが、この現実を嘆いているベテランもお出でだろう。そういう意味ではカップホルダーなんて以前から付いていたから、ポルシェといえどもピュアーなファンばかりを相手にしていては販路が広がらないということだ。何しろ日本での911は9割ほどが2ペダルだそうだから、確かに1割のファン相手では経営は成り立たないことになる。ところで、このカップホルダーだけれども、911の標準装備ということを考えると、チョイと剛性不足な面がある。何やらガタついているし、力一杯捻ったりしたらボキっと逝きそうな感さえある(写真17)。

ドアのインナートリムは一見すると地味で安っぽいようにも思えるが、よくよく見れば決して悪くは無い。997(987も含めて)はそれ以前のポルシェに比べればインテリアの高級感では大いに改善されている。そして、ドアに関わらず、内装全体に使われている樹脂製のパネル類は、触ってみると結構柔らかい弾性樹脂が使用されていて、パッドとしての役目は充分に果たしている。更には、外観は一見レザーにも見えるほどのシボがついていて、これがオプションのレザーインテリアとの見栄えに大きな差が無い原因だったりと、痛し痒しという面もある。
 


写真16
ルーフ上のルームランプのスイッチ類。

 


写真17
911には似合わないがカップホルダーも標準装備されちるが、ちょいと剛性不足で弱そうだ。
 

 


写真18
ライトスイッチは欧州車で御馴染みのタイプで、987とも共通部品となっている。

 


写真19
ドアのインナートリムは一見地味で安っぽいようだが、良く見れば結構金が掛かっている。これも、オプションでレザー仕上げにすれば満足感はアップする。
 

 

今まで見てきた部分では、カレラとカレラSの差で一目瞭然というものは無かったが、細かく見ればカレラSは微妙に高級な仕様になってはいる。残るATセレクターやパドル、メーター類などの走行に関連する部分については、後編で走行状態と関連付けて説明することにする。

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