VOLVO V70 NORDIC (2010/11) 後編 ⇒前編へ戻る


エンジンは電子キーをスロットに差し込んで左のボタンを押す事で始動する(写真21)。 普通、この手のスタートスイッチは何故か直径が30mmくらいの円形ボタンなのだが、V70は長方形で小さいために一見すると、これがスタートボタンだと気が付かない。エンジンが始動すると、直列5気筒エンジンのアイドリングはやはり多少の振動を感じ、メルセデスの6気筒ディーゼルを塔載するE350BlueTECより振動は大きく、 ボディのみならずステアリングにも伝わってくる。 この振動は意識しだすと結構気になるから、購入予定のユーザーは必ず実車で試して納得する必要がある。

ATセレクターは一般的なティプトロタイプだが、メルセデスやBMWのようなレバーの根元にレザーのブーツが付くMTのシフトレバー風ではなく、ゲートから直接生えているタイプだ (写真23)。このセレクターをDにして、フートブレーキを踏みながらパーキングブレーキの解除をしようと、リリースレバーを探したら、ダッシュボード右端の下側に何やらソレらしきレバー (写真22)を発見し、これを引いたらパーキングブレーキは解除された。実はこの時点では、メルセデスと同様に足踏みでセットしレバーで解除だと思っていたのだが、試乗が終わって左足でパーキングブレーキを踏もうとしたら、何と 足踏みペダルが無い!そう、リリースレバーと思っていたのは電気式のスイッチで、これを押す事によりセットされるのだった。

早速走り出した第一印象は結構充分なトルク感を感じるが、これは以前乗った旧型でも同様だった。ただし、旧型はマルで国産の安物のように、その後は踏んでも全く加速 をしな かったし、3,000rpm以降は振動は大きいしトルクは無いしで、回す意味が全く無いという酷いものだった。 それに対して、今回の現行型はターボラグは感じられるものの、少し遅れてドーンとトルクが湧き出し、その時は結構力強い。まあ、言ってみればドッカンターボなのだが、その遅れを予想していれば結構ターボ的な面白さがある。そして、4,000rpm以上でも問題なく回転を上げ られるから、基本的に同一の5気筒エンジンとはいえ、旧型とは別物といえる位に改良はされている。

それでも、ターボが掛かった時の加速は価格的に近いBMW320iを遥かに凌ぐから、320iツーリングに動力不足を感じて購入を躊躇しているユーザーから すれば、V70の動力性能が羨ましくなるだろう。 また、メルセデスの1.8LターボのE250と比べると、同じターボラグがあってもV70の方が苛々しない、というか、E250はドッカンターボのじゃじゃ馬的面白さが無 く、只々トロい のと比較して、V70の方がフィーリングは良くて動力性能としは不満が出ない。 このターボラグはレガシィのターボ(GT)に似ている。しかし、排気量を考えればV70のように2.5Lターボだったらば300psくらいあってもバチは当らないのだが、そこはマイルドターボという事で、決して性能の悪い5気筒が理由ではない・・・・と、いう事にしておく。

なお近い将来は、この5気筒エンジンに代わって、4気筒2LターボにDCTを組み合わせたニューエンジンを搭載するという噂がある。これは丁度、メルセデスのE250的な発想だ。
 


写真21
エンジンの始動はダッシュボード上部中央にあるスロットに電子キーを挿入し、隣にある小さなスイッチを押す。
 

 

写真 22
ダッシュボード右端の下にあるパーキングブレーキスイッチ。引くと外れるのはメカ式と同様だが、このレバーを押すと作動(ON)する。
 

 


写真23
ATセレクターは一般的なティプトロタイプ。根元にブーツの無い方式で、贔屓目に言えばポルシェのようなタイプ。
 

 


写真24
ドイツ車ともまた違うセンスのメーター類。7,000rpmからのレッドゾーンはハッタリ臭い。

 

ステアリングは最近のクルマには珍しく低速から既に結構重めで、その癖、速度が上がっても大して安定しているわけではない。それでも、旧型の妙に敏感だが不安定な操舵性に比べれば、新型は大いに改善されてはいる。まあ、旧型の5気筒があまりに酷かったから、現行型が良く感じるということもあるのだが、ただし、同じ新型でも発売直後に乗った3.2L版の方が操舵性は良かったような気がする。 これは値段の差も大いに効いているのだろうが、その3.2L(575万円)は国内では既に販売されていない。結局高くて売れなかったのだろう。

今回はいわゆるチョイ乗りのために、コーナーリングを試すような場面も余裕も無かったが、元々ボルボに運転する喜びを求めるのが間違いなので、一般道を普通に走る分には、普通の国産車並みだから、これで充分と納得することにする。実際に、一般道で遭遇する程度のカーブでは大きな問題はなく、流れに乗って走る事 ができる。 だいたい、こんなデカいドンガラのワゴンボディーがFFであるということが、ちょいと問題でもある訳だが、そういうユーザーはワゴンとしてスペースに問題はあるがBMW3シリーズツーリングを選ぶ事になる。ただし、3シリーズは内装のチャチなベーグレードを嫌って、ハイラインやMスポーツを選ぶと、たちまち予算オーバーとなるが。
 

写真25
直列5気筒 2,521cc ターボで231ps/4,800rpm、
34.7kg・m/1,700〜4,800rpmを発生するエンジンを横置きFFとしている。

ブレーキは欧州車の標準的な効き味で、軽い踏力で良く効く。実際にホイールから覗くキャリパーを見ると、形状的にはBMW5シリーズと同じドイツのコンチネンタル(テーベス)製 の大きい方のモデルだから容量は充分にあるだろう。 ただし、よ〜く見ると素材の仕上げは良くないし明らかにコストダウンをしているのが判るが、ブレーキの機能としては問題ない。ボルボに対して贔屓目に見れば、同価格帯のBMW3シリーズのキャリパーに比べれ てワンランク容量が大きいものを奢っている、と言える。 しかし、リアは結構小さい鋳物のキャリパーで、これはすなわちフロントの負荷がリアに比べて相当に大きいのだろう。まあ、こんなデッカいドンガラのFF車だから、可也のフロントヘビーは想像できるが、このキャリパーはそれを裏付けている。

乗り心地自体は欧州車の平均的な硬さはあるが、決して悪くは無い。先代V70が抵剛性丸出しのグニャグニャボティをドライバーに感じさせてしまい、妙に硬い癖に不安定だったのに比べれば、現行V70は充分に成熟されている。そしてBMW3シリーズ等と比べても、即座に大差が付くという程ではない。ただし、3シリーズはランフラットタイヤを使用するというハンディを乗り越えての結果であるから、これが普通のチューブレスタイヤだったら、3シリーズの圧勝だったかもしれない。


写真26-1
ノルディックは2.5T LEよりワンサイズ下の205/60R16タイヤを装着している。

 


写真27
全幅1,890mmという大きさの割には取り回しは悪くない。

 


写真26-2
2.5T LEは前後とも225/60R17タイヤを装着している。

 


写真27
フロントキャリパーはBMWの中級(5シリーズ)以上に使われているものと同一のタイプが付いている。リアは普通の鋳物の片押しで、デッカいFFによるフロントヘビーなのが判る。
 

 

2007年末に発売された現行V70は、翌年1月に3.2SEに試乗したが、ボディはヨレヨレで剛性不足の先代に比べて大きく進歩していたし、6気筒3.2ℓエンジンは充分なパワー/トルクを発揮していて、575万円という価格も、まあ驚く程のボッタクリでも無いかなという感想だった。しかし、5気筒2.5ℓモデルには試乗していなかったし、2002年に試乗してボロクソの評価となった先代V70 2.4Tと基本的に同じエンジンということもあって、今までは試乗する価値もないかと思っていたが、今回乗ってみたらば同じ5気筒エンジンとは言え、2.5ℓへのスクープアップその他によりパワーは200→231psへ とアップされ、フィーリングも、この8年間で大いに改良されていた。しかも価格は540→449万円と大幅に下がり、ナビやキセノンライトまで標準装備している。

という訳で、現在のV70の2.5ターボモデル、取り分け廉価グレードで449万円也のノルディックは、充分に検討に値するということが今回判明した。勿論、一時期の低迷を思えば、今でも信頼性や 品質保証体制に不安もあるし、何より中国企業の資本となってしまうなどチョッと考えてしまうが、ネットで検索しても旧型のような悲惨なトラブルだらけの欠陥車では無さそうだ。後は、V70に興味のある読者各位が、それぞれ試乗なり、検討なりで判断してもらうことにしよう。

と、ここで、例によって特別編を用意してみた。言うまでも無く
ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が 気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。今回は450万円の輸入ワゴン選び、ということで、 前回の650万円に続いて、少し現実的だが、立派に高級輸入ワゴンである4車種を比較してみる。  

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