BMW X-5 4.4 (2004/03/13)
 

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※この試乗記は200 4年3月現在の内容です。従って、文中の車種や価格は現在と多少異なる場合があります。

  

X5はレンジローバーと基本的にコンポーネントを共有するSUVで、現在日本仕様は4.4i(860万)と3.0i(615万)がある。今回の試乗車は4.4iで、色は白。一般的に背が高い事で威圧感のあるSUVが、膨張色の白で、おまけにキドニーグリルが付いているので、これで街を走るかと思うとチョット気恥ずかしい。
乗りこんでシートに座ると、視線が高い点を除けば、そこはお馴染みのBMWの世界で、その雰囲気は旧5シリーズ(E39)あたりと同じで、言い換えれば7や5のような最新のBMWではなく、チョット前のオーソドックスなBMWだ。

エンジンをかけて走り出すまでの動作も、普通にキーを指しこんで捻るという当たり前のことをすればよいし、ATのセレクターもDの左ゲートにマニアルモードを持つティプトロニクスで、メーターのユニットは3シリーズとまるで同じだから、視線の高さ以外はまるで違和感が無い。そして、走り出すと、流石はV8−4.4ℓで333psのパワーと45.9kgmのトルクは伊達じゃなく、重量2240kgのSUVをグイグイと加速させる。道が空いたので、チョット右足を踏みこんでみると、6速ATはスムースにキックダウンすると共に、上半身がバックレストに押しつけられる。以前乗った745iも同じエンジンで、しかも重量は200kgほど軽い。それなのに今回のX5の方が強烈な加速に感じたのは、ギヤ比が違うのか、それともSUVの高い視線からくる遅い筈だというイメージによる心理的ものなのか?何れにしても動力性能に文句はない。SUVで、これに勝てるのはポルシェカイエン・ターボのみだろう。

乗り心地は物凄く良い。いままで試乗したBMWの中でも最高で、路面の継ぎ目では多少のゴツゴツ感のある745iと比べて、X5は殆ど路面からのショックを伝えない。だからと言って、決してフワフワしてる事は無く、それどころか極めてフラットでピッチングは殆ど感じない。今回の試乗は慣れない場所だったが、途中、結構クネクネした道があったので、SUVとしては結構な速度でコーナーへの進入を試みたが、クルマは何の不安も無く、しかも殆どロールすらせずにクリアした。こんなSUVは初めてで、流石はBMW。そういえばカーグラの比較テストでも、ハンドリングはカイエンよりも遥かに上で、SUVの中でも別世界と書かれていたが、なるほど納得。とは言っても、そこは重量2.2トンのSUVで、ステアリングは結構重く、中心付近の不感帯が無いのはBMWらしいとしても、7や5のサルーンと比べればレスポンスは決して良く無い。何より気になるのは運転していても、「駆け抜ける喜び」がゼンゼン無いことだ。

ブレーキについては、BMWそのもので、軽い踏力、短いストロークと、踏力に従ってリニアに発生する減速度など、今や完成されたフィーリングで、3シリーズから5や7シリーズどころか、X5まで皆同じフィーリングというのは大したものだ。背の高いSUVは、その視点の高さからくる見通しの良さから、大きさの割に取り回しが良いのが通例で、X5も1870mmの全幅の割には市街地でもそれ程苦労はしない。しかも、全長は4665と比較的短いので、7シリーズよりも遥かに運転し易い。とは言っても、これでスーパーに買い物に行くのは勘弁だが。

さて、このクルマ。860万円という価格を考えれば、とても買える代物ではなく、初めから選択の余地はないのだけれど、もしも、宝くじでも当たって金が転がり込んだら、買うかと聞かれたら・・・答えはNO。同じ予算があるなら、545iの方が余程楽しいだろうし、大きいのが欲しければ735i(845万)を買えば良い。セールス氏によると、3.0iはモッと軽快だと言っていたが、そうは言っても615万出すのなら秋には日本でも発売されるであろう、525iツーリングが正解だろう。

いままで、X5の試乗をしなかったのは、チャンスが無かった事と、もしも乗ってみて、あまりの良さに寝ても覚めても忘れられなくなったら困ると思って、積極的にチャンスを作らなかったのだけど、その心配は見事に消滅した。

ホっとしたというか、残念というか。