前回の iX は EV 専用モデルであり、SUV というには全高が低く、カテゴリーとしてはクロスオーバーとなるが、今回は X3 をベースとした EV である iX3 を取り上げる。

内燃機関版の X3 と比べると、グリルの縦桟が無いのはラジエターを持たない EV の為だろうが、それ以外は殆ど違いが判らない。

リアについても、排気管の無い EV では後部バンパー下が異なるが、それ以外は殆ど違いが判らない。ボディーのサイドパネルも供用しているようだから、要するにボディーは共有しているという事だ。

ではダッシュボード付近はというと‥‥

これまた共通だ。本来 EV には必要なさそうな AT セレクターもそのまま付いている。

モーターは 210kW 400N-m というから、 iX の 385kW 765N-m に比べれば大人しいというか、実用的なものだ。

今回の iX3 はテスラーで言えばモデル３相当だろう。そして iX はモデルＳという事になり、現在の EV はそのクラスがターゲットとなるようだ。すなわち、一千万円超のフラグシップクラスが一部と、600万円級のアッパーミドルクラスがボリュームゾーン、と言っても絶対数は少ないが‥‥。それで現在のアッパーミドルクラスというのは具体的に言えば、大企業の管理職という事だろう。

一時代前には中小企業のオーナーも充分にこのクラス以上だったが、グローバル化による大企業優先政策で、中小企業は捨てられて行く運命にある。親たちもそれを肌で感じているから、とにかく我が子は MARCH クラスに入れて、東証一部上場企業の正社員にしようと必死になる。

そうすれば、X3 とは言わないが、X1 くらいは買えるだろう。

ただし、将来は判らないが。

自動車の EV 化は近い将来どころか、すぐそこまで迫っている事もあり、BMW としても既存モデルの EV 化を行っているが、その BMW としては実験車的な i3 を別にすれば初の EV 専用モデルである iX がこの秋から発売される。

ボディサイズは全長 4,953 x 全幅 1,967 x 全高 1,695 ㎜ 、ホイールベース 3,000 ㎜　というから、これは X5 の全長 4,935 x 全幅 2,005 x 全高 1,770 ㎜ 、ホイールベース 2,975 ㎜ と比べると長さと幅は同等だからセグメントとしてはＥセグメントだが、全高が 75 ㎜ 低いことから、iX は SUV というよりもクロスオーバーと言えるだろう。なお、ホイールベースが X5 よりも 25㎜ 長い事から、プラットフォームは全く新しい EV 用なのだろう。

エクステリアで一番目立つのは縦に長いキドニーグリルだが、実は 1936年から生産された BMW のオープンスポーツ 328 では、キドニーグリルの高さは可成り高かったのだった。

もう一つの大きな特徴はフロントヘッドランプも、リアコンビネーションランプも極めて細長い事で、これが BMW EV のアイデンティティとなるのだろうか？

次にダッシュボード付近を見ると、表示はトップボードに別部品としてブラケットで付けられたような、車幅の2/3 に至る横長のディスプレイが付いている。

ステアリングホイールも妙な変形６角形となっているなど、従来の BMW 車とは一線を画している。そしてメーター類は、当然ながらフルＣＧによる。

コンソール上のスイッチ類は BMW としては全く新しいもので、EV 専用のようだ。エンジン車と共有ボディのモデルでは、EV でもコンソール上は流用していたが、このクルマは全く異なっている。

バッテリーを床下に置くことは最近の EV では常識のようで、その意味でも SUV (やクロスオーバー) タイプが EV に向いている事が判る。

上級モデルのバッテリー容量は 100kWh で、システム出力は 370Kw (500ps) という高性能車で、日本では 1,400万円くらいになるだろう。下位モデルでも 1,200万円くらいというから X5 よりも高めだが、クラスとしては高級 SUV カテゴリーとなり、まあ一千万円クラスは当然だろう。

日本でも今年中に最初のモデルがデリバリーされるようだが、メルセデス GE やポルシェ カイエンなどの購買層には興味深い選択肢となるだろう。