スズキのBセグメントハッチバック車であるスイフトは昨年1月に FMC を実施したが、スポーツ (通称スイスポ) については1年弱遅れの昨年9月に発売された。売れ行きは好調との事で発売直後の9月から現在まで納期は5カ月というが、その理由は発売前の先行予約が多かったかららしく、現車も見ずに注文する濃~いマニアがそれなりに存在する事に驚くが、それと共に生産能力が低い事も原因だろう。この手のクルマは発売と同時にマニアが飛び付くから1年くらいは品薄が続き、それが一巡するといつの間にか忘れられた存在になるのはホンダのタイプRでも同様だ。
今回のスイスポの特徴はエンジンが従来の 1.6L NA から 1.4L ターボになった事で、エンジン出力は 136 → 140ps と大して変わらないが、トルクについては 160 → 230N-m と 4割以上もアップしている。なお下表で低位グレードの XG と比較したが、1.3L の廉価モデルである XG でもパワーウェイト (P/W) レシオが 9.6㎏/ps (CVT) という実用車としては必要十分な数値となっていて価格は 134.3万円だから、これは同じスズキの軽自動車であるワゴンR スティングレイL (129.4万円) とほぼ同価格だ。そのワゴンRは自然吸気 52ps で車重 770㎏ から P/W レシオは 14.8㎏/ps という悲惨な数値で、しかもこれは空車時の計算だから軽量な軽自動車は実際にドライバーの重量を加味すると1トン超のスイフトに比べて更に相対的に劣る結果となる。
余談だが、軽自動車を買うなら同じスズキでもアルト ターボRS (129.4万円) が一押しだ。
⇒ SUZUKI ALTO RS 簡易試乗記 (2015/3)
更にスイスポのライバルと目される日産ノート NISMO S とも比較してみたが、動力性能としては良い勝負だが、ボティが多少大きい事と価格が高い事などスイスポに対するアドバンテージは無さそうだ。日産もそんな事は重々承知のようで、このグレードは持ち込み登録のマル改車扱いとなっていて、要するに街のスピードショップが市販パーツを組み込んだりチューニングしたりするコンプリートカーと同じ手法だ。でもまあ、怪しげなショップと違ってメーカーが保証している安心感はある。
今回の車両はスイフトスポーツ MT (全方位モニター用カメラパッケージ、セーフティパッケージ装着車) で価格は 192.2万円となる。
先ずは斜めから前後を眺めると、新型もスイスポと一目で判る雰囲気を持っている。写真のボディはイメージカラーのチャンピオンイエロー4 という如何にもスイフトらしいものだが、この微妙な色具合は個人の好みが分かれる処だ。
以上2018年1月9日掲載分
グリルは中間のフレームをブラックアウトしてシングルフレームグリルとし、形状は6角形という最近流行りのスタイルだが、言い換えればスズキのアイデンティティは無い。まあスズキというメーカーは悪く言えば安物メーカーであり、寧ろ国籍不明の方がそれらしい? とか‥‥。
サイドビューは先代と近似していて、元々グラスエリアが狭いところにウエストラインのキックバックは大きいしルーフラインもフロントから後方に向かって下降しているから、リアウィンドウは結構狭い。
エクステリアは意外に地味で、アルトワークスのように如何にもガキっぽい派手なデカール等も無いからジジババが運転しても恥ずかしいという事が無いのがありがたい。正直言ってアルトワークス、いやアルトターボ RS でもあれに乗るのは勇気が必要だ。
リアも大きな特徴は無いが、スイスポだけあって太い左右出しの排気管が其れなりの主張をしている。
ヘッドライトは LED 方式、その下にあるのはマルチリフレクターハロゲンフォグランプという長ったらしい名称の補助ランプが標準装備される。またリアにもフォグランプが標準装備されている。
リアラゲージルームはBセグハッチバックだからハッキリ言って狭く、特に奥行きが無いのは他社も同じだから特に文句は無い。
リアのルーフエンドには大きめのリアスポイラーが標準装備されているのも、この手のクルマの定石どおり。そのスイスポである証はリア右側のエンブレムで他に "Sport" エンブレムは無い。フロントグリルに小さい "Sport" くらい付けてもバチは当らないのに、ねっ。
エンジンは従来の自然吸気 (NA) から今回ターボ化された。その K14C エンジンは4気筒 1.4L 140ps/5,500rpm 230N-m/2,500-3,000rpm と、ターボらしく 2.3L クラスのトルクを発生する。このエンジンは海外用の K14B (1.4L NA) を元にターボ化したもので、既にエスクード ターボ 4WD に搭載されている。
タイヤは前後とも 195/45R17 で専用の鍛造アルミホイールを標準としている。何故かタイヤサイズ以上に扁平に見えるのはホイールデザインの影響だろうか?
ブレーキキャリパーは前後とも鋳物の片押しシングルピストンだが、リアキャリパーが頂部に取り付けられているのが珍しい。何故にこの位置なのか? ドラムブレーキの標準スイフトに強引にディスク化したら付かなかった‥‥とか? なおパーキングブレーキ用のドラムは見当たらないからリアキャリパーをパーキングにも使用する通称 "P付き" というタイプを使用していると推定する。
以上2018年1月10日掲載分
ドアを開けるとフロントにはサポートの良さそうな所謂スポーツシートが目に入る。先代まではレカロシートが標準装備されていた筈だが、今回は似たような雰囲気だが日本製 (レカロも標準装着品は日本製が多いが) のようだ。フロアからの着座位置は結構高いのはベースがBセグメントの実用ハッチバックだから仕方が無いが、言い換えればそれがホットハッチの良さでもある。
シート表皮のファブリックの質感や赤いステッチなどもレカロっぽい。
シートのポジション調整は前後・バックレスト (リクライニング)・座面の上下など全て手動式となっているのはスポーツシートの常だ。尤もBセグのスイフトだから元々パワーシート何てある筈も無いが。
リアシートはフロントとは別のシート表皮で、要するにスイフトなりの安っぽいファブリックだが、まあここはオーナー自身が座る事も無いので問題は無いし、こんなところに余計な金を掛けないのは正解だ。
ドアトリムはBセグハッチとしては、まあ其れ成りで如何にもプラスチッキーではある。
それでも拡大して見るとアームレストには赤いカーボンファイバー (風) のトリムが付いていて、他の安モノとは違うぞ~っ、と主張している。
以上2018年1月12日掲載分
ダッシュボードは赤い水平トリムがスイスポらしさを演出しているし、ステアリングホイールの赤いステッチも雰囲気を盛り上げている。まあそれが無いと只のスイフトになってしまうが‥‥。
センタークラスターは最上部にエアアウトレットが鎮座して、その下は本来はオーディオレスのブランクパネルだが、写真のクルマは "KENWOOD" のマークが見えるから市販品をポン付けしているのだろう。まあ常識的に考えてBセグメント車ならこれは極普通だが、その面ではディスプレイまで含めた統合システムを標準としているマツダ車は立派で、この面でスズキは、いや国産他社も完全に負けている。
コンソールは写真のクルマが 6MT ということもあるが、それにしてもシンプルというか殺風景だが、機能的に問題は無い。
エアコンはダイヤル式で可也シンプルだが一応フルオートとなっている。他のグレードはどうなのかと調べてみたらば一番安い 1.2 XG でもフルオートエアコンだった。まあ今時メカ式のマニュアルエアコン何て返って高くつくのかもしれない。
スタートスイッチはダッシュボード右端にある。その下段は制御関係のスイッチ類だが、ブランクパネルが多いところをみると、なにやらオプションがあるのだろう。
ステアリングホイールは如何にものスポーツタイプで、何時もこれが目に入るから結構雰囲気は盛り上がる。なお AT の場合は当然ながらパドルシフトが付いている。
意外にも質感が良いのがメーターパネルで、精密そうで実に雰囲気が良い。似たような雰囲気のフェアレディZよりも質感で勝っている!
MT ではペダル配置も重要だが、クラッチは目一杯左に寄せているから左足の動きは最小限で済むが、フートレストに乗せた靴が大きいとペダルに引っ掛かる懸念はある。従って工事現場の帰りには安全靴のままで運転せずに履きかえる必要はある。なお右のタイヤハウスの関係でペダル全体が左に寄っているのはこのクラスの FWD 車の宿命だが、この面では左ハンドル車は圧倒的に有利だ。日本も終戦直後の占領時代に思い切って右側通行にしていれば大いなる経済効果があったのに‥‥。
以上2018年1月14日掲載分
⇒ Suzuki Swift Sport 試乗記 (2018/1)