B_Otaku のクルマ写真館
 Toyota Mirai

電気自動車の最大のネックは言うまでも無く電池であり、最近は大分改良されたとはいえやはり重い、高い、航続距離が短い事に加えて充電時間が長いという問題は根本的には解決されていない。となるともっと他の新しい電池は無いのか、と言う事で考えられるのは燃料電池。何てったって水素を燃料にして電気を発電するから排気ガスは無いし酸素の充填時間は3分程度と良い事尽くめにも思えるが、まあ実際には他の問題も多いようだ。

その燃料電池車 (FCV : Fuel Cell Vehicle) の量産モデルとして世界で初めて 2014年に発売されたのがトヨタ ミライで、今回はこのクルマを取り上げる事にする。

ミライのアウターサイズはカムリやクラウンと同等だから結構大柄なクルマだ。価格は720万円強と決して安くは無いが税制の優遇が220万円程あるというから実質は500万円となり、クラウンと大きく変わらない。まあこれを買うのは官公庁、とくに地方自治体などが低公害をアピールするという用途に向いていそうだ。

それでは先ずはエクステリアから眺めてみよう。ミライを実際に初めて見ると、何かに似ていると感じる‥‥。

そう、同じトヨタのプリウスを大きくした、という感じだ。

特にリアビューがソックリに見える。ただしプリウスよりも大きく、幅も広いからより安定して見える。

フロントビューは最近のトヨタ顔で、ヘッドライトからセンターのトヨタマークを繋ぐ狭いアッパ-グリルなど、これまたプリウスそっくりだ。

リアについてはプリウスと全く異なり、フロントのサイドエアインテイクと形状を合わせた三角形のリアコンビネーションライトがミライの特徴となっている。

サイドビューもスタイルの基本はソックリだが、全長がミライ (4,890㎜) よりも350㎜ も短いプリウス (4,540㎜) は随分と小さく見える。因みにホイールベースはミライが2,780㎜ に対してプリウスは2,700㎜ と全長程の差は無く、要するにミライはオーバーハングが長いということだ。

付け加えるとプリウスのホイールがミライの17インチよりも2インチ小さい15インチである事も見た目の違いに大きく影響している。

以上2017年11月19日掲載分


ボンネットカバーを開けると、そこには当然エンジンは無いが、そこ代わりに何やらエンジンと同じくらいのデバイス (パワーコントロールユニットと駆動用モーター) が搭載されている。

リアラゲージスペースはこのクラスのクルマとしては奥行きが短い。

下の写真の角度だと奥行きのみならず幅も高さも狭く、これは実用上のネックになりそうだ。そう言えば初期の HV もこんな感じだった。尤も今このクルマを実用用途に買う一般ユーザーは居ないであろうから問題は無いかもしれない。

リアのラゲージスペースの狭い理由はリアシート後方、リアアクスルの上くらいに駆動用バッテリーが搭載されているためだ。最近の HV ではバッテリーをリアシート下などに置いているが MIRAI ではそこは水素タンクが占領している。またフロントシートの下には FCスタック (燃料電池) という、何れも FCV 独特の機器が搭載されている。

このクルマが FCV である事が判るのはリアエンド右側の "FUELCELL" というエンブレムで、左側には "MIRAI" のロゴもある。おっと、考え見れば一般ピープルで FUELCELL の意味が判る割合って、一体どのくらいだろうか? その辺のオバちゃんは先ず知らないだろう。最近は煽り運転で有名になった DQN の兄ちゃんも知らないだろう。クルマ音痴の文系エリートは‥‥意外と知っているかもしれない。彼らの好きな経済誌などでこれからは FCV の時代だ、とかなんとかの特集があったりするだろう。

"FUELCELL" のエンブレムはフロントフェンダー後部にも付いている。

タイヤは 215/55R17 というこのクラスの実用車としては標準的なサイズを使用している。ホイールデザインはぶっ飛んだ未来的デザイン‥‥では無い。

ホイールの隙間から見えるブレーキは従来のクルマに比べて妙にリアキャリパーがデカく、フロントと同じくらいの大きさだ。これはリアの重量配分が相当に大きい、要するにリアへービーの特性なのだろう。リアアクスルの真上に乗っている駆動用バッテリーが相当に効いているし、フロントボンネット内のパワーユニットや駆動モーターがガソリンエンジンよりも軽いのかもしれない。

ブレーキサイズからはかなりのリアヘビーと推定も出来るから、そうなると実際にどんな旋回特性なのかに興味が出てくる。

以上2017年11月22日掲載分


ドアを開けるとそこに見えるのはごく一般的なサルーンのもの‥‥とは何か違う??

まずはフロントシートの座面が高い事に気が付くが、それではリアシートはといえば‥‥こちらは更に高い位置にある。しかもセンターには大きな "仕切り” があり、この為に乗車定員は4名となる。実はリアシートの下には水素タンクが横たわっている為にこのような形になった訳で、しかし椅子の下に水素ボンベって爆弾の上に座っているみたいで何となく気色悪いが‥‥。

シート表皮はカタログでは合成皮革とだけ表記されているが、センターは質感からアルカンターラのように見える。ミライはワングレードだから全てこの表皮となり、ファブリックシートのモデルは無い。

シート調整は電動式で、その操作スイッチは一般的な位置と形状だが、それにしても何処かで見た事がある‥‥と思ったら、マークX と同じだった。

ドアのインナーパネルは結構手が掛っているのは流石に 700万円代の値札を付けているだけの事はある。まあ価格が高いのは動力系に金が掛っているからだが、だからといってショボい内装ではユーザーが許してはくれないだろう。

そしてアームレスト先端のスイッチ類をみるとこれも何だか覚えがる。こちらはカムリと共通だった。何しろミライは量産モデルとはいえ生産台数は少なく、マトモに専用の部品を新設していたら大赤字になるから、他のクルマの部品を寄せ集める事で少しでもコストを抑えるのは当然だ。

以上2017年11月23日掲載分


何しろ世界初の量産型 FCV だからダッシュボードは未来的というか Mirai 的というか、兎に角超先進的なモノを想像すると裏切られる。全体の構成としてはメーター類がセンターにあるなどプリウスを踏襲している。いやプリウスだって PHV ではセンタークラスターに大きなディスプレイを使用して多くをこのタッチスイッチによりタブレットコンピューター的な構成になっているのに、ミライがそれよりも遅れているのは何ともし難いが、これも生産台数の少なさ故だろう。

セレクターはセンタークラスターに配置される所謂インパネシフトで、この辺りもプリウスを踏襲している。インパネシフトの下には小さめのカラーディスプレイがあり、各種情報はここに表示される。ミライは700万円出してもオーディオレスで、写真のようなオーディオ一体ナビを後付けするのが普通だ。

コンソール上には何も無いというか、小物入れの蓋があるだけだ。なおセンタークラスターの位置が一般のクルマより手前にあるのは、その奥に昇圧コンバーターという機器があるためだ。

インパネシフトのパターンがプリウスと同じなのは、要するに FCV といっても駆動方式は電気自動車な訳で、水素というと何か特別な方法で駆動するように感じるが、駆動系は EV、というよりも HV の技術でもそのまま応用できる。

ドライバーの正面にメータークラスターは無く、センタートップにデジタル式のメーターディスプレイがあるのもプリウス譲りの方式だ。

センターコンソール後端には常識的なリア用エアアルトレットがある。そしてダッシュボード右端には HV とも共通のパワースイッチが配置されている。

先進の FCV の割にはパーキングブレーキは今や時代遅れの足踏み式が使用されている。これはやはり電気式を使用するべきで、幾らなんでもメカ式は無いだろう。

ということで世界初の FCV であるミライを色々見てきて、まあ色々言いたい事もあるが、それでも兎に角ある程度常識的な価格で FCV を市販した努力は認める必要があるだろう。この方式が将来の主流となるか如何かは判らない、というか多分これはダメそうだが、可能性を追求するという面では世界トップのトヨタがやる事として十分に筋が通っている。

以上2017年11月24日掲載分

⇒ TOYOTA Mirai 簡易試乗記 (2017/11)