B_Otaku のクルマ写真館
 Abarth 124



アバルトと言えばフィアットベースのチューニングカーで言ってみれば BMW の M やメルセデスのAMG のような位置付けだが、そのアバルトの最新モデルがアバルト 124 で、これは 1960年代にフィアット 124 をベースにした 124 スパイダーという車があり、そのアバルトバージョンがアバルト 124 だった。

そのアバルト 124 を現代に再現したのが現代版アバルト 124だ。だだし、この現代版 124 スパイダーは、既に多くの読者がご存知と思うが何を隠そうマツダ ロードスターをベースにフィアットのエンジンとボディを載せたもので、しかも日本国内のマツダの工場で生産されるから、法律上は立派な国産車!

それでマツダ ロードスターおよび初代フィアット124 の諸元を一覧表にしておく。

マツダロードスターとはホイールベース、トレッドが等しいのは同じシャーシーだから当然で、ボディは別物なので多少の違いはある。エンジンはマツダブランドが 1.5Lおよび 2.0L(RF) の何れも自然吸気であるのに対して、アバルトブランドは 1.4L ターボという違いがあり、性能的にはマツダブランドよりも上となっている。

なお日本ではアバルト124 として販売しているが、米国ではフィアット124 にバリエーションが3種類あって、その最上位グレードが ”アバルト” となっている。まあ日本でフィアット 124 として下位グレードを売っても何のステイタスも無くなってしまい、それならマツダブランドで充分ということになるから‥‥ということだろう。

以上2017年2月24日掲載分


以下アバルト 124 の実写写真を使用して内外装を紹介する。

第一印象はナカナカのカッコ良さで、確かにイタリアンテイストを感じるし、オリジナルであるマツダ ロードスターとはまるで違う印象なのはフロントフェイスの違いが最大の理由だ。いや、まあ、しかし上手く化けたもんだにゃあ。

リアについても大幅にデザインが変更されていて共通点は殆ど見つからない。しかし、ソフトトップについては共通で、こういう生産量の少ないパーツは極力共通化するのがコストダウンの基本だからこれは当然だろう。

ロードスターはフルオープンにした姿が本来だから、これがカッコ悪いと台無しだが、アバルト124 のフルオープンは勿論言うこと無しのカッコ良さだ。

フロント真正面から見ると‥‥お~っ、良いねぇ。

そしてリアだって勿論イタリアンしていてるし、4本出しの排気管がアバルトらしい。

サイドビューだって長いボンネットを持つプロポーションは良き時代のスポーツカーの定番そのものだ。

アバルトのエンブレムはフロントはボンネットカバー先端でサイドはフロントフェンター後部にサソリがいる。

そしてリアはトランクリッド後部中央に、これまたフロントと同じエンブレムが付いている。なおトランクリッド右側後端には ”124 Spider" のエンブレムも付いている。

いやまあ、正直言ってイマイチカッコ悪いマツダ ロードスターがここ迄変身したのには正直驚いた。

以上2017年2月26日掲載分


ボンネットカバーを開けるとそこに見えるエンジンはマツダブランド車とは全く異なる。

アバルト 124 とマツダ ロードスターの最大の相違点がこのエンジンであり、アバルト 124 はフィアット製の 直4 1.4L ターボ 170ps 250N-m を搭載し、これはマツダ ロードスターの直4 1.5L 自然吸気 131ps 150N-m よりも明らかに強力だ。エンジンのトップカバーも如何にもアバルトらしいイタリアンなデザインで、これだけみればマツダ ロードスターとはマルで別のクルマに見える。サソリのマークと "multiair turbo" というラテン系の表現が紛うことなきイタリアン!

エンジンルーム内の眺めがマルで別物であるのとは対称的に、トランクリッドを開けてみるとそこに見えるのはマツダ ロードスターと全く同じラゲージスペースであり、これだけ見たらばその区別が付かないくらいにおんなじだ。

アバルト 124 のタイヤサイズは 前後とも 205/45R17 で、これはマツダ ロードスターの 195/50R16 よりワンサイズ大きいが、実は昨年末に追加販売されたリトラクタブルハードトップのマツダ ロードスター RF とは同サイズだ。

そしてブレーキについては特にフロントがマツダ ブランドと大きく違い、こちらは高性能車の定番であるブレンボのアルミ対向4ピストン (オポーズド) キャリパーを搭載している。ただし、そのキャリパーには ”ABARTH" の文字は無く、”brembo" の文字とロゴが見える。なおリアキャリパーはマツダブランドと全く同じモノ (ただし赤く塗りたくっているが) を使用している。

一見マルで違う両車だが、少なくともトランク内を見ると全く同一品であることが判る。

以上2017年2月27日掲載分


今度はドアを開けて室内を見渡すと、写真のクルマはシートのセンターがレッドで、これもイタリアンテイスト満点だ。

実はこのシートはオプションのブラック/レッドのレザーで、ボディーカラーとの組み合わせで設定があったり無かったり。またカタログと現実が違ったりと結構混乱していたが、その後どうなったのだろうか。

そのシート中央上部には ”ABARTH" のロゴが付いていて、マツダじゃねぇぞっ! と言っている。

ドアのインナートリムは何とロードスターとは全く異なる形状となっている。この部分を敢えて別部品にしたのはアバルトの拘りだろうか?

拡大してみると意外に地味というか、ロードスターのようにフェイクのステッチ等が無いのは金型のコスト削減だろうか?

以上2017年2月28日掲載分


次にダッシュボードを中心に操作系について纏める事にする。

ダッシュボードについても当然ながら基本はマツダ ロードスターと共通だが、勿論オプション等により細かい点では違いもある。 センタークラスターのディスプレイやエアコンの操作パネル、更にそれらとシステム化されたコンソール上のコマンドダイヤルなどもマツダの標準品だが、これらはマツダの大いなる強みである統合システムであり、それを流用することで少量生産のアバルトにも装着できるのもフィアット側としては大いなるメリットとなる。

このような事情からフロアーコンソールについてもロードスターからの流用なのは当然である。

トランスミッションの操作部分は AT、MT 共にベースプレートを含めてロードスターと同じだが、シフトノブについてはアバルト専用のモノが付いているのは、小物部品なのでコストアップにそれ程響かないし、その割には大いに差別化に貢献するという事が理由だ (と思う) 。 特に MT のシフトノブを見るとこのセンスの良さは恐らくイタリアでのデザインだろう。

メーター自体はロードスターと同じだが、回転計の盤面が黒→赤、回転計のレッドゾーンが 7,500 → 6,500rpm、速度計のフルスケールが 200 → 280㎞/h という違いがある。124 のレッドゾーンが低いのはターボエンジンであるためで、言い換えればロードスターは回してナンボの自然吸気エンジンだから、往年のスポーツカー的テクニックを必要とし、これがまた良いところなのだ。

ペダル類はロードスターのウレタンパッドとは違い、こちらはアルミのスポーツペダルとなっている。ただしペダル形状自体は同じだから、パッド部分のみ新調したという事だ。

今まで5回に渡ってアバルト 124 の内外装を見てきたが、オリジナルのマツダ ロードスターに対して、エンジンとボディ以外は対して違わないのだが、そこは中々巧妙に設計されていて最小限のコストアップで最大限の差別化とでも言うのだろうか、実に上手く料理している。このクルマを見るためにディーラーに行ったのは平日 (金曜日) だったが、次から次へと試乗希望者が来店しているというくらいの注目度だった。まあ、確かに2シーターオープンスポーツ自体が絶滅危惧種であり、それが海外有名ブランドなのに300万円代という買いやすい価格設定というのだから、売れない方がどうかしている。

以上2017年3月1日掲載分

⇒ Abarth 124 Spider 試乗記 (2017/2)