2016年10月9日の日記 で年度上半期 (4~9月) の国産車販売 (登録) 台数についてまとめてみたが、その中で普通車部門第3位となったトヨタシエンタが今回の主役だ。
先ずは諸元のチェックから始めるが、比較するライバル車をどうするかと調べてみたらば、ホンダ フリードがスペック的に近いことが判った。しかもシエンタと同様にガソリンエンジンとハイブリッドの2つのバージョンがラインナップされている事もあり、これはもうガチンコライバルといえそうだ。なおこのフリードは今年の9月に FMC されたバリバリの新型車で、そういう意味では年度上半期の 12,747台 (27位) というのは今後もっと上位になるだろうが、それでもシエンタに勝つことは有り得ないだろう。
他にこのクラスというのは強いて言えば日産 キューブがあるが、えっ、キューブなんてまだあったの? という気持ちで、何しろ現行モデルは2008年の発売だから既に8年が経過していて、2015年の登録台数は約 11,000台 だったから月平均では千台に満たない状況だ。
ここで下の表を眺めてみれば、シエンタとフリードのスペックや価格は相当に似通っていて、これはもうホンダは本気で戦うつもりという事だ。その価格はガソリンのベースモデルならば200万円を下回る設定だが、それでも軽のハイトワゴンの、それも低価格のものよりは明らかに高価だし、軽としては最上級クラスのモデルと比べても更に高く、やはり普通車は軽自動車よりも高いのだった。
なおシエンタはサブコンパクトクラスとはいえミニバンだから乗車定員は7人、要するに3列シートとなっている。
それでは早速新型のエクステリアを見ることにする。
エクステリアで最初に目に付くのはヘッドランプからフォグランプにかけて更にグリルに繋がる特徴的な太いライン (バンパーガーニッシュ) で、最初は特別仕様か上位のスポーツグレードのみデザインかと思ったらば、何と下位グレードの "X” も同様だった。
リアも同様にリアコンビネーションランプからバンパー内のリフレクターに繋がるバンパーガーニッシュが、これまた特徴的なスタイルを醸し出していて、このユニークさはトヨタ車の、しかもプリウス、アクアに次ぐ量販車種としては極めて異例だ。
ここで前述のライバル、ホンダフリードのエクステリアを見ると、シエンタに比べて妙に大人しくオーソドックスにさえ感じる。なおフリードにはフリード+という2列5人乗り仕様もあるが、”プラス”という名称からはこちらが3列シートと勘違いするが、何故にそうなっているのか?
実は最近街中で意識してシエンタを探していたらば、いやはや確かにこれって結構走っいる。そりゃまあ売れ行きからして当然だし今後は増々増えるだろうが、この個性的なクルマが街中にウジャウジャ走り回るとすれば、日本の街中の景色も少しは変わるだろうが、それが良いのか悪いのか、ハテ?
なおシエンタはトヨタの全販売チャンネル4系列で販売しているから、クラウンユーザーのセカンドカーとか奥さんの買い物用としても買い易く、これは売れて当然かも知れない。
以上2016年11月1日掲載分
それでは以下詳細にエクステリアを見回すとして先ずは正面から、特にクルマのフロントビューの顔を決める重要な部分であるフロントグリルはといえば、台形でバンパー下端までブラックアウトされたデザインは同じトヨタのアクアに似ているが、こちらの方がよりアグレッシブだ。リアビューは特に大きな特徴も見当たらないが、リアコンビネーションランプがクリアーレンズで何やら DQN っぽい。
なお見た目の縦横比がほぼ 1:1 というのはミニバンとしては全高が低い部類になる。そこで諸元の寸法を確認すると、シエンタの全幅は1,690㎜ でこれは1サイズ上のヴォクシーと同じであり、その割には全高はヴォクシーの 1,825㎜ に対してシエンタは1,675㎜ だから 150㎜ も低く、そして写真を見て感じたように縦横比は計算上でも限りなく 1:1となっていた。
サイドビューもミニバンとしては背が低く、とくにウエストラインから上のグラスエリアの高さ方向で狭い気がするが、それでも狭すぎる事も無く普通のセダン並み程度だ。
ミニバンとしてはそれ程床位置が高いとは言えないシエンタだが、それでも写真のようにちゃあんとステップが付いている。
ミニバンと言えばリアのスライドドアが命 (!) であり、そこで今回はそのスライド機構にもスポットを当ててみた。ボディ中央部に走るレールに対してドアに付いている金具は板金製のチャチいモノで、まあこんなところをワザワザ覗くような趣味のオーナーは少ないだろうから、見かけは悪くても良いのだろうか (写真左下) 。そして下部のレール (写真右下) はステップの段差に隠れるスペースを上手く利用していた。こちらの金具は直接目に触れるからだろうか、黒い塗装の大きくて立派なものが付いている。まあ見せても良いミニスカねえちゃんのいわゆる ”見せパン” みたいなものだ。
パワートレインは 4気筒 1.5L 74ps,111N-m の 1NZ-FXE型 ガソリンエンジンと、61PS,169N-m の 2LM モーターでシステム出力は 100ps を発生する。これはアクアと全く同じものを使用している。
ボンネットフードの裏側を見ればキッチリとインシュレーターが貼ってあるが、その範囲は必要最小限となっている。またフードを開けたらば片手で押さえながらロッドを探してこの一端をフード側の穴に挿入するというセコいクルマではお馴染の方式だ。まあBセグメントでボンネットフードにダンパーを組み込んでいるクルマなんて他社でも殆ど無いが‥‥。
トヨタのハイブリッドだから当然ながらブレーキシステムは電子式でエマージェンシー用の小さなシリンダーの先には油圧発生用のユニットらしきものが見える (写真左下) 。それと対称の位置となる車両左側にはハイブリッドではお馴染のモーター駆動用の機器類が居座っている。
タイヤサイズは 185/60R15 、全グレードでスチールホイールに樹脂製フルキャップが標準となる。アルミホイールは 5.4万円のオプションで、更に16インチ (8.2万円) のオプションもある。
ということで毎度おなじみのブレーキキャリパーの確認は写真のように鉄っチンホイールで全く見えないために今回は撮影出来なかった。
以上2016年11月2日掲載分
ここからはインテリア編として、先ずはいつものようにドアを開けてみる。
こうして見るとミニバンらしくフロントシートの着座位置は結構高く、運転姿勢も背筋を伸ばしたトラック的ポジションとなるのが判る。リアのドアはスライド式で、リアシートの位置にもよるが写真では全開している筈だがリアシートの背もたれは見えないから、リアの開口部は小さめにして剛性を確保しているように感じるし、スライドしたドアが後部に飛び出さない為にも、短い全長からギリギリの位置関係で設計しているのだろう。言い換えれば小さいミニバンはフルサイズミニバンと比べて設計の難易度はより高いのかもしれない。
シエンタは小さいながらもサードシートを持っているが、そこでセカンドシートのバックレストを倒してみると、そこに見える3列目の空間は当然広くは無い。
それでも2列目を実用範囲で目一杯前に出した時の3列目の前後スペースは何とか大人が乗って足を置ける程度は確保されている。とはいえ長時間の使用という意味では子供用が無難だし、短距離でも小柄な女性用と思ったほうが良さそうだ。まあ、この手のサブコンパクトミニバンは平日奥方がテニススクールの帰りに友達を5人乗せてファミレスまで移動する、なんていう用途に向いているから、これで充分だろう。
写真のクルマのグレードは下位の ”X” のために安手のファブリックとなるが、これが ”G” となればもう少しマシな ”上級ファブリック” になるらしい。まあどのくらい ”上級” になるかは判らないが‥‥。なお写真の明るいシートカラーは如何にも汚れが目立ちそうだが、もっと黒に近い色も選択できる。
ドアトリムについてはBセグメントのミニバンの、それも下位グレードだから期待するほうが間違っているが、一見するとそれ程悲惨では無い。
まあ拡大すればプラスチッキーな質感は隠せないが、一部にファブリック表皮のパッドを使っているのが救われる。さっすがートヨタ!
リアドアのトリムは「コレでもか!」の樹脂一体整形で、フロントに比べると大分差が付くが、まあここは子供やジジババが乗る場所だからこれで充分‥‥というと老人差別と言われそうだが、若者が老人を貶すのは問題だが、老人自身が老人を貶して何処が悪い! とか言ったらウケるだろうか?
以上2016年11月3日掲載分
ダッシュボードは極めてシンプルだが、水平にオレンジのラインが入っているのがアクセントとなっている。このラインはパッドの端部にオレンジの部材が表皮と共にステッチで縫い付けられているように見える (写真右下)が、写真は下位グレードだから価格を考えればこららは金型で作ったフェイクだろう。
AT セレクターはいわゆるインパネシフトで、そのパネルにはエアコンのパネルが同居するという、この手の低価格ミニバンや軽のハイトワゴンでは主流の方式だ。ただし写真左下は上位グレードの "G" のためにパネルは黒で AT セレクターのゲートパネルもメッキされているなど、多少は見た目を重視している。そしてこのクラスでは当然ながらオーディオレス、ナビはディーラーオプションの一体型やカーショップの社外品を付けることになるが、ガソリンモデルならば200万円を大きく下回るクルマだからナビも社外品で10万円程度の廉価版が丁度良い。
インパネシフトを採用したお陰で左右フロントシートの間にウォークスルーのスペースが生まれた。走行中に後席へ移動することは云々‥‥と言いたい輩もいるだろうが、2列目のチャイルドシートにくくり付けた子供がゲロやらお漏らしなど、何やらやらかした時などは実に重宝だ。
ルーフの先端部には "一応" オーバーヘッドコンソール、のようなものも付いている。なおパワースイッチはグレードにより金属キーか押し釦となるが、ハイブリッドに金属のキーを差し込んで‥‥っていうのも何やら似合わないが。
パワーオフの状態ではメータークラスター内は真っ黒けで、これはもしや最新の全面液晶パネルか? と思いきや、単なる自光式だった。
パーキングブレーキは足踏み式だが、ペダルは立派なアルミパッド付スポーツペダルが奢られている‥‥何ていう事はある筈もなく、ここは BMW の顔をたてて安っぽい樹脂製だ。
以上日本で3番目に売れているクルマを見てきたが、さて皆さんが普段乗られているシエンタの何倍もの価格のクルマと比べて、果たしてどんな感じでしょうかねぇ。スタイルが先進的で大勢乗れて、燃費も良くてしかも安い。こりぁ~売れるわけだ。
なお、このシエンタも例のお台場の MEGAWEB のコースで軽く試乗してみたので、簡易試乗記としてまとめてある。まあトヨタの安物だから興味はマトモに走るかどうかということで、もしかすると初期のアクアとかパッソブーンの下位モデルとか、はたまたウィッシュのようにマトモに走らないクルマかもしれない、という期待 (!) とともに楽しみにしていてもらおう。
以上2016年11月6日掲載分
⇒ TOYOTA SIENTA Hybrid 簡易試乗記 (2016/10)