Dセグメントオーナーが次に目標とするであろうEセグメント、その代表車種であるメルセデスベンツ Eクラスが FMC され W213 となったことから、この最新Eクラスを紹介する。
ここで先代 W212 と比較するとサイズ的にはほぼ同じだがホイールベースは65㎜ も延長されている。エンジンは先代 E250 と型式も同じで基本的に同じ 4気筒 2.0L ターボだが、最高出力・最大トルク共に小さく、だから ”250” ではなく ”200” ということか。と、思って調べてみたらば今後発売されるラインナップに E250 アバンギャルド スポーツ (756万円) というモデルがあった。今回発売の E200 で同じくアバンギャルド スポーツの場合は727万円だから、その差は約30万円となる。ただし E200 にあるベースモデル (675万円) が E250 には設定が無い。
Eクラスのライバルは当然ながら BMW5シリーズであり、E200 とスペック的に近い 523i と比較すると、サイズ・エンジン性能共に殆ど同じで価格も近いが、5シリーズは既にモデル末期ということもあり 685万円の 523i のベースモデルが M Sport という事実上の値下げともいえる価格となっている。
レクサス GS に関しては発売が 2012年だから比較的新しい設計だが、その割には V6 2.5L 自然吸気という時代遅れのエンジンを使用している。これはトヨタ (日本) が小排気量ターボの波に乗り遅れているのと、レクサスの主な顧客である米国では小排気量エンジンが好まれないなどの理由と推定する。
エクステリアの第一印象は誰が見てもメルセデスであり、このアイデンティティの強力さはやはり世界ナンバーワンに間違いない。
斜め後ろから見ても高級オーナーカーの見本みたいに落ち着いていてスポーティーとベタ褒めしてもバチは当たるまい、という感じだ。
以上2016年8月14日掲載分
先ずは新型の正面から見ると‥‥これぁ、誰が見てもメルセデスだし、Cクラスにしては大きいし、Sクラスにしては小さいし‥‥やっぱ、これぁEクラスっきゃな無いなぁ‥‥という感じかな。なお今回の写真のクルマは全て E200 アバンギャルド スポーツ という (約50万円高い) 上位モデルを使用している。
リアはコンビネーションランプ (テールランプ) がトランクリッドに掛からない以前のデザインに戻ったようで、これこそW124でアット驚いた (という程でもなかったが) デザインの復活だ。
サイドビューは先代に比べて特にフロントオーバーハングが短いのは全長がほぼ同じなのにホイールベースが65㎜ 延長されたことから、その殆どをフロントオーバーハングを短くすることで実現したからだ。しかし、これって BMW 路線であり、メルセデス、それもCクラスならともかくEクラス的では無いという気もするが‥‥。ウエストラインのキックアップは殆ど無く水平に近いから、これは高級サルーンらしい落ち着いた雰囲気となっている。
トランクリッドを開けて出現したリアラゲージスペースは、DセグメントのCクラスとは一線を画す充分な広さを持っている。
トランクリッドには当然ながら電動式のクローザーを持っているが、そのボタンが今回からは目立つ赤 (朱) 色となった。写真右下の角度で見ると、奥行きの深さを感じられるだろう。
マルチビーム LED ヘッドライトを装備している為に一目で‥‥いやそれ程特徴的な外観ではない。バンパー内のアンダーグリルには安全運転支援システムのセンセー (らしきもの) が見える。えっ、そんなの 230万円のエクストレイルだって標準で付いている、って? いや、ごもっとも。
標準装備のタイヤは 225/55R17 と比較的大人しいサイズだが、グレードが ”スポーツ” ということで”AMG" のホイールが装備されている。
ブレーキはフロントにアルミ対向ピストンキャリパーとドリルドローターを標準装備している。元来メルセデスのブレーキは対向ピストンが当たり前だったが、いつの間にやらコストダウンに走ってしまってショボい鋳物の片押しキャリパーになってしまったが、この面でも以前に回帰している。
以上2016年8月15日掲載分
ボンネットフードを開けるとそこにあるのは 4気筒 2.0L ターボ 184ps 300N-m という決して自慢できるペックではないし、外観上も極普通の実用車用エンジンだし、勿論 AMG の立派なプレートも無い。そして本来 V6 3.0L (近い将来はV8) が載るべきスペースに直4 2.0L だから、エンジンは真ん中にチョコンと載っているという感じだ。それでもスリーポインテッドスターはシッカリと付いているし、性能的にも実用上は全く問題無いレベルだ。
ドアを開ければそこに見えるのは如何にもドイツ車、というか如何にもメルセデスのインテリアがあるが、それでも以前のように国産車と全く違うという感じは無い。
いや実はその昔は国産車のインテリアが世界基準からすれば変態であり、それが今では結構追いついたという方が正しいだろう。何しろ30年前の国産車といえば田舎のキャバレー風シートで座ればフニャフニャ、やたらと毛足の長いカーペットは化繊の安物なんていうのが当たり前だったっけ。
写真のクルマは ”スポーツ” だからサイドの張り出しの大きなサポートのキツそうなスポーツシートが装備されていた。
シート表皮は人工皮革でダイムラーの商標では ARTICO といらしい。なお、オプションで本皮 (ナッパレザー) も用意されている。
シートのポジション調整はシート側面には無い。スカッフプレートには当然 "Mercedes-Benz" のロゴが付いているが何やらケバくて品が無い。
ドアのインナートリムは上部にウッドトリム、中央部にレザー貼のパッドを使用しているが、ウッドトリムの色の関係で妙に全体的に地味だ。そう言えば今回の新型Eクラスの内装色は E400 ではベージュが選べるが、E200 では全てブラックとなる。この辺が BMW のモダーンで明るいインテリアも選べるのとは大きく違う。これは本来のメルセデスの質実剛健路線を強調して、ビーエムなんてチャラいのとは訳が違う、と言っているかのようだ。
スピーカーには "Burmester" のロゴマークがあるが、これはハイエンドオーディオ専門メーカーでブルメスターというメーカー製だ (とカタログに書いてある) 。シートに関する調整やメモリーはこの部分に集中している。座面サイドにあるよりは見易いが、直感的に調整するという面では操作にあたってチョイと考えてしまう。いや、慣れの問題ではあるが。
ドアノブ付近にドアロックスイッチを配置するというのは実に理にかなっている。最近のメルセデスでは定番となっているのが、写真上のシート調整スイッチも写真下のパワーウィンドウスイッチも艶消しクロームメッキを使用している事だ。しかし随所に田舎 (シュツットガルト) のセンスが出てしまうから、やっぱり都会 (バイエルン) の BMW と比較すると‥‥いや、まあ好みの問題かも。
以上2016年8月16日掲載分
ダッシュボードは上部中央に巨大なワイドディスプレイが装着されていて、テスラ程ではないが現在の一般的なナビのディスプレイに比べると充分に大きい。ディスプレイの下部には室内幅一杯に水平 (ウッド) トリムが走っている。
水平トリムの中央部には丸型のエアアウトレットが4つ仕込まれていて、その下のチョッと低い位置にエアコン関連とオーディオの操作パネルが配置されている。まあ実際にはコンソール上のコマンドスイッチを使うから、こちらは視線移動が多くても問題なし‥‥ということか?
そしてダッシュボード右端にはドイツ車でお馴染の回転式のライトスイッチがある。これはドイツ政府の指示により統一されているというから、どれも同じなのは当然だ。しかし、日本のシロアリ役人は足を引っ張る専門だが、流石に自動車発祥の地で速度無制限のアウトバーンの国だけあって、役人も本当に為になる事をやるもんだ。
エアコンおよびオーディオ操作部は高さは低く最小限ダイレクトに選択したい項目が集められているという感じだ。Eクラスの時計は伝統的にアナログ方式を使用していて、今回も勿論ポリシーを変更する事は無かった。
センターコンソールにはコマンドダイヤルとその両側に多少のスイッチがあるがAT セレクターは無い。まあ、この辺は最近のメルセデスに共通した部分だ。
そのセンターコンソールの後端はリア用のエアアウトレットという当たり前の装備があるが結構簡素なもので、リア用エアコンコントロールパネル等が無いのはEクラスがショーファードリブンではなくオーナーカーである証拠だ。
コンソール上のスイッチ類では左前方にある ”DYUNAMIC” と書かれた、要するに走行モードの切替えスイッチが重要だが、ドライバーからは操作しづらい位置にある。これってもしかしたら左ハンドルと共用?
センタークラスタ下端というかコンソール前端というか、要するに両者が繋がる辺りにあるカバーを開けると、ドリンクホルダーと 12V 電源コネクターが出てくる。
以上2016年8月18日掲載分
ステアリングホイールに使用されている通気孔のあるレザーは握り心地も実に良い。スポークには当然ながらスイッチ類が組み込まれているし、マニュアル操作用のパドルスイッチの質感も良いのは、まあオーナーカーではトップでもあるEクラスだから当然だ。これは BMW でも同様でやっぱり5シリーズは3シリーズとはチョイと違う。
エンジンのスタートスイッチはステアリングホイール左側の裏にある丸型スイッチで、それ自体は最近ではメジャーな方法と場所だが見かけは結構レトロで、これはカタログでも主張していた (写真左下) 。
AT セレクターはステアリングコラムから生えているレバースイッチという、最近のメルセデスでは定番の方法となる。なお、この位置とパターンは話題の電気自動車であるテスラSでも同様だった (写真右下) 。
オーバーヘッドコンソールも基本的にはルームランプのユニットという感じで、オプション用のブランクスイッチスペースなどもない。
メータークラスターは一枚のカラー液晶ディスプレイで、メーター類は全てパソコンの GUI と同じくグラフィックによるバーチャルメーターだから、モードによっては右にナビの地図を出したり (写真上) センターにアナログ回転計を配してその中にデジタル速度計というスポーツタイプ (写真左下) や、速度計と回転計の2眼式で、それぞれのメーター内に小径メーターを組み込むオーソドックスな配置 (写真右下) など大幅な変身が可能となる。
本来国産車はこの分野は得意な事から、レクサスなどではメーター自体がモードによってハイブリッドのチャージメーターになったり回転計になったりという例はあるが、それでも液晶パネルはアナログメーターの盤面までだったが、新型Eクラスは全面的に液晶ディスプレイ化という思いきった方法をとっている。
ペダルはコテコテのスポーツペダルだが、これは今回のクルマが ”スポーツ” というグレードのためだ。
という事で正常進化のEクラスだった。
以上2016年8月18日掲載分
⇒ Mercedes-Benz (W213) E200 試乗記 (2016/8)